救国の魔女と滅国の皇子~プログラマーは魔法も作れる!?~

一条弥生

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プログラマー、魔法技術者に転職する

25.本心

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「なんだよそれ...いくらなんでも酷すぎるだろ!!」

「ハンソン!! 」

「じいちゃんも知ってるだろ!サウルタイガーは騎士団や冒険者が大勢で相手してやっと倒せる魔物なんだ!ツバキが瀕死にしたから」

「連れてきのはあの女だろう!村を危険に晒したんだぞ!」

コンザはどうしたもんかと唸って頭を掻いた。

皆、ハンソンがツバキをよく思っていないことは知っていたが、ここまでとは思っていなかった。

何を言っても自己中心的な言い分が出る。ハンソンは何がなんでも今ツバキを追い出したいのだ。

「ハンソンさん。」

ラルは落ち着いた声だったが、ハンソンを睨んでいた。

「ツバキは確かに勝手だ。」

「ラルさん!」

「俺達がやらなくていいと何度も言ってるのに、仕事を手伝う。ほとんどが男の俺達が忙しくてできないキツい仕事だ。それをツバキが最近やらなくなったのは、嫌になったからじゃない。」

ラルは怒気を込めて睨み付け、ハンソンの反論を許さなかった。

「昨日、ツバキが仕舞い忘れた羊皮紙の束を見たら、全部設計図だった。図を見れば何の設計図かわかった。あったら良いが魔法が使えない俺達では作れない、全部そんな道具だった。ツバキは話を聞くために仕事を手伝ってたんだ。やらなくなったのは作業が次の段階に入ったからだ。」

「だからなんだ!」

「あの子のことだから、道具を作っても作りたくて作っただけだとか言うだろうが、俺達のために何かしたいって気持ちがあるからやってる。そんなの後にして、準備を優先すればいいのに。だからハンソンさん、ツバキが俺達のことを顧みてないって言い方は間違ってる。ツバキはツバキで、村のために頑張ってるんだ。」

「それがなんだ!サンを買い物に付き合わせたり、迷惑ばかり掛けてるじゃないか!」

「じいちゃんいい加減に」

「ハンソンさんはツバキが気に入らないだけだろ!!」

レックは誰よりも声を張り上げた。その目には涙が浮かんでいた。

「ツバキがハンソンさんに何したって言うんだよ!」

「なんだと!」

「何もしてない癖にそんなこと言うならお金返せよ!ツバキが命懸けで戦って倒したサウルタイガーのお金、ツバキに返せよ!」

「それとこれは別だ!ガキは黙ってろ!」

「おばさん達が言ってたぞ!ハンソンさんは女が褒められるのが嫌なだけだって!なんで女だからダメなんだよ!」

ハンソンの顔は見る見る赤くなったが、誰も怒ったレックを止めなかった。

「ツバキじゃなくて女だから嫌なんだろ!男だったら同じこと言うのか!?なんとか言えよ!!!」

「このガキ!!」

ハンソンがレックの襟元を掴んだ瞬間、ラルはその腕を掴んで捻り上げ、ハンソンの顔を思い切り殴った。

「レック!大丈夫かい!?」

家の外に殴り飛ばしたハンソンの前に仁王立ちしたラルは、ハンソンを見下ろした。

「ツバキはよそ者だが、俺が預かっている間は俺達の家族だ。息子に手を上げる奴も、娘を貶す奴も誰であろうと許さない。」

「ハンソン!」

コンザは駆け寄ったが、サンは軽蔑する目を向けていた。

ハンソンはそれがショックだった。自分は何も間違ったことは言っていないと思っていたからだ。

「誰が何を言って来ようと、俺はツバキが自分で出ていくまで家に置く。ここで暮らしたいなら家族として迎える。ツバキになんかしてみろ、その時は本気で殴ってやる!帰れ!」

ハンソンはコンザが肩を貸し、家に連れて行った。

肩の力を抜いたラルは引き返し、家に戻った。

メイルはタオルを用意していて、ラルの頭にタオルを掛けると微笑んだ。ラルも微笑み返した。
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