推理の果てに咲く恋

15章

命を賭けた推理合戦

第15章: 命を賭けた推理合戦

夜明け前、葉羽たちは市内の古いアパートの一室に身を潜めていた。佐々木の親戚の家で、普段は使われていない部屋だ。

「さて、これからどうする？」佐々木が疲れた表情で尋ねる。

葉羽は深く考え込んでいた。「まず、我々が持っている証拠を整理しよう」

三人は持っている全ての情報を並べ始めた。書類、写真、録音データ。そして、彼らの記憶の中にある会話や出来事。

「ここに何かがある...」葉羽が呟く。「全てを繋ぐ鍵が...」

突然、彩由美が声を上げた。「あ！思い出した！」

二人が彼女を見つめる。

「中村先生が言っていた言葉...『全ては始まりの地に還る』って...」

葉羽の目が輝いた。「そうか！それが暗号を解く鍵かもしれない」

三人は必死に考え始める。始まりの地...学校？いや、もっと根源的な...

「わかった！」佐々木が叫ぶ。「この町の創立記念碑！」

葉羽が頷く。「そうだ。そこに何かがあるはずだ」

しかし、その時、外から物音が聞こえた。

「誰か来た...」彩由美が小声で言う。

葉羽は素早く窓の外を確認する。「くそっ、見つかったか」

中村先生を筆頭に、数人の男たちがアパートに近づいてくる。

「逃げるぞ」葉羽が決断を下す。

三人は急いで荷物をまとめ、裏口から抜け出した。しかし、そこにも敵が待ち構えていた。

「そこまでだ」中村先生の声が響く。

葉羽たちは包囲されてしまった。逃げ場はない。

中村先生が不敵な笑みを浮かべる。「さて、ゲームオーバーかな？」

その時、葉羽が一歩前に出た。

「いいえ、まだです」彼の目に強い光が宿る。「先生、一つ提案があります」

中村先生が眉をひそめる。「何だ？」

「推理合戦です」葉羽が言う。「もし私が先生の計画の全容を言い当てることができたら、私たちを自由にしてください。逆に、失敗したら...」

「命を差し出すってことか」中村先生が笑う。「面白い。いいだろう」

緊張が走る。彩由美と佐々木は不安そうに葉羽を見つめる。

葉羽は深く息を吐き、話し始めた。

「まず、この計画の始まりは10年前。町の再開発計画が持ち上がった時です」

中村先生の表情が僅かに変化する。

葉羽は続ける。「しかし、その計画には裏があった。巨額の資金を横領し、さらに生徒たちの個人情報を利用して新たな利権を作り出す...」

葉羽の推理は、驚くほど的確だった。彼は証拠と直感を組み合わせ、事件の全容を明らかにしていく。

中村先生の表情が徐々に変わっていく。驚き、そして...恐れ。

「そして、全ての証拠は...」葉羽は最後の一手を放つ。「創立記念碑の下に隠されている」

場が静まり返る。

中村先生は、ゆっくりと拍手を始めた。

「見事だ...君の推理力は本物だ」

しかし、その目には諦めの色はない。

「だが、それでも君たちを自由にするわけにはいかない」

中村先生が手を上げた瞬間、突然のサイレンの音が鳴り響いた。

「警察だ！動くな！」

混乱の中、葉羽たちは咄嗟に逃げ出す。

「行くぞ！」葉羽が叫ぶ。「創立記念碑へ！」

三人は全速力で走り出した。背後では銃声と叫び声が響く。

彼らの運命は、創立記念碑へと向かっていた。そこに、全ての真実が眠っているのか。それとも...。

夜明けの光が、新たな展開の幕開けを告げていた。