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1章
月影館への招待
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東京の閑静な住宅街。夏の強い日差しが、神藤葉羽の豪邸の庭に置かれたポストを照らしていた。
「葉羽くん、見てみて!」
幼馴染みの望月彩由美が差し出したのは、高級な和紙で作られた一通の招待状だった。艶のある紺色の封筒に、銀色のインクで「月影館」と記されている。
「彩由美、それ、どこから?」
「うん、私の叔父さんから。物理学者の望月俊介...知ってるでしょ?」
葉羽は頷きながら招待状を手に取った。望月俊介と言えば、量子物理学の世界的権威だ。たまに新聞やテレビにも登場する著名な学者である。
封を切ると、中から同じく高級和紙の便箋が現れた。そこには達筆な文字で以下の文章が記されていた。
『拝啓
この度は、月影会夏期特別会合にご招待申し上げます。
場所:月影館(伊豆諸島・月影島)
日時:8月13日~8月17日
参加者:月影会会員12名、および特別ゲスト
なお、本招待状は望月俊介氏の推薦により、神藤葉羽様、望月彩由美様に特別にお送りするものです。
謹白』
「月影会?」葉羽は眉をひそめた。「聞いたことないな」
彩由美は首を振る。「私も。叔父さんに電話で聞いたんだけど、詳しいことは話してくれなかったの。ただ、『面白い経験になるはず』って」
葉羽は招待状をもう一度じっくりと見つめた。紙質、インク、文面...全てが最高級だ。しかし、どこか不穏な雰囲気も漂っている。
「ねぇ、行ってみない?」彩由美が明るい声で言った。「夏休みだし、離島の洋館って、なんだかワクワクするじゃない」
その瞬間、突風が吹き、庭の木々が不気味に揺れた。葉羽の背筋に寒気が走る。推理小説好きの彼の直感が、何かを警告していた。
「まぁ、行ってみるか」葉羽は少し考えてから答えた。「でも、その前に月影島のことを調べておいた方がいいな」
その日の夜。葉羽は自室のパソコンで月影島について調べていた。するとある記事が目に留まる。
『30年前、月影島の洋館で起きた怪死事件の謎 ―4名の科学者が密室で死亡―』
記事の詳細を読もうとした瞬間、パソコンの画面が突然真っ暗になった。再起動しても該当ページは見つからない。まるで、誰かが意図的に消したかのように。
葉羽は窓の外を見た。満月が不気味な光を放っている。招待状に書かれた銀色の文字が、月明かりに照らされて微かに輝いていた。
8月13日。葉羽と彩由美は東京の港から高速船に乗り込んだ。約2時間の航海の後、視界に月影島が見えてきた。島のほとんどが断崖絶壁で、その最も高い場所に、西洋建築様式の古い洋館がそびえ立っていた。
「すごい...」彩由美が息を呑む。「でも、なんだか怖いような...」
確かに、月影館には何か只ならぬ雰囲気が漂っていた。灰色の石造りの外壁、とがった尖塔、無数の装飾が施された窓...まるでゴシック小説に出てくる館のようだ。
桟橋で二人を出迎えたのは、黒服の執事だった。無表情な彼は、「お待ちしておりました」と言うだと、二人を館へと案内し始めた。
石畳の急な坂道を上っていく間、葉羽は周囲を観察していた。島には他の建物は一切ない。完全な隔絶感。そして...監視カメラ?建物の至る所に、小さな黒い物体が設置されているのが見えた。
月影館に到着すると、重厚な扉が音もなく開いた。広間には既に11名の大人たちが集まっていた。全員が一様に高価そうなスーツやドレスを着ている。
その中から、白髪交じりの男性が二人に近づいてきた。
「よく来てくれた」望月俊介だ。しかし、彩由美の叔父の表情は、どこか硬く、暗い。「君たちを推薦したのは私だが...」
その言葉の後に続くはずの言葉は、突如鳴り響いた館内放送によって遮られた。
『ようこそ、月影館へ。月影会の皆様、そして特別ゲストの皆様。これより、4日間の特別会合を始めさせていただきます』
その声は、どこか機械的で、人工的な響きを持っていた。
葉羽は、館の大きなシャンデリアを見上げた。クリスタルのしずくが、夕陽に照らされて血のように赤く輝いていた。これから始まる悪夢の前触れのように。
「葉羽くん、見てみて!」
幼馴染みの望月彩由美が差し出したのは、高級な和紙で作られた一通の招待状だった。艶のある紺色の封筒に、銀色のインクで「月影館」と記されている。
「彩由美、それ、どこから?」
「うん、私の叔父さんから。物理学者の望月俊介...知ってるでしょ?」
葉羽は頷きながら招待状を手に取った。望月俊介と言えば、量子物理学の世界的権威だ。たまに新聞やテレビにも登場する著名な学者である。
封を切ると、中から同じく高級和紙の便箋が現れた。そこには達筆な文字で以下の文章が記されていた。
『拝啓
この度は、月影会夏期特別会合にご招待申し上げます。
場所:月影館(伊豆諸島・月影島)
日時:8月13日~8月17日
参加者:月影会会員12名、および特別ゲスト
なお、本招待状は望月俊介氏の推薦により、神藤葉羽様、望月彩由美様に特別にお送りするものです。
謹白』
「月影会?」葉羽は眉をひそめた。「聞いたことないな」
彩由美は首を振る。「私も。叔父さんに電話で聞いたんだけど、詳しいことは話してくれなかったの。ただ、『面白い経験になるはず』って」
葉羽は招待状をもう一度じっくりと見つめた。紙質、インク、文面...全てが最高級だ。しかし、どこか不穏な雰囲気も漂っている。
「ねぇ、行ってみない?」彩由美が明るい声で言った。「夏休みだし、離島の洋館って、なんだかワクワクするじゃない」
その瞬間、突風が吹き、庭の木々が不気味に揺れた。葉羽の背筋に寒気が走る。推理小説好きの彼の直感が、何かを警告していた。
「まぁ、行ってみるか」葉羽は少し考えてから答えた。「でも、その前に月影島のことを調べておいた方がいいな」
その日の夜。葉羽は自室のパソコンで月影島について調べていた。するとある記事が目に留まる。
『30年前、月影島の洋館で起きた怪死事件の謎 ―4名の科学者が密室で死亡―』
記事の詳細を読もうとした瞬間、パソコンの画面が突然真っ暗になった。再起動しても該当ページは見つからない。まるで、誰かが意図的に消したかのように。
葉羽は窓の外を見た。満月が不気味な光を放っている。招待状に書かれた銀色の文字が、月明かりに照らされて微かに輝いていた。
8月13日。葉羽と彩由美は東京の港から高速船に乗り込んだ。約2時間の航海の後、視界に月影島が見えてきた。島のほとんどが断崖絶壁で、その最も高い場所に、西洋建築様式の古い洋館がそびえ立っていた。
「すごい...」彩由美が息を呑む。「でも、なんだか怖いような...」
確かに、月影館には何か只ならぬ雰囲気が漂っていた。灰色の石造りの外壁、とがった尖塔、無数の装飾が施された窓...まるでゴシック小説に出てくる館のようだ。
桟橋で二人を出迎えたのは、黒服の執事だった。無表情な彼は、「お待ちしておりました」と言うだと、二人を館へと案内し始めた。
石畳の急な坂道を上っていく間、葉羽は周囲を観察していた。島には他の建物は一切ない。完全な隔絶感。そして...監視カメラ?建物の至る所に、小さな黒い物体が設置されているのが見えた。
月影館に到着すると、重厚な扉が音もなく開いた。広間には既に11名の大人たちが集まっていた。全員が一様に高価そうなスーツやドレスを着ている。
その中から、白髪交じりの男性が二人に近づいてきた。
「よく来てくれた」望月俊介だ。しかし、彩由美の叔父の表情は、どこか硬く、暗い。「君たちを推薦したのは私だが...」
その言葉の後に続くはずの言葉は、突如鳴り響いた館内放送によって遮られた。
『ようこそ、月影館へ。月影会の皆様、そして特別ゲストの皆様。これより、4日間の特別会合を始めさせていただきます』
その声は、どこか機械的で、人工的な響きを持っていた。
葉羽は、館の大きなシャンデリアを見上げた。クリスタルのしずくが、夕陽に照らされて血のように赤く輝いていた。これから始まる悪夢の前触れのように。
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