密室島の輪舞曲

葉羽

文字の大きさ
13 / 15
13章

真犯人の影

しおりを挟む
光の渦の中で、二つの意識が触れ合った瞬間、予期せぬ存在が現れた。

「よくここまで辿り着いたね、神藤葉羽君」

その声に、葉羽は凍りついた。聞き覚えのある声。しかし、それは人間の声ではなく、どこか機械的な響きを持っていた。

システムの深部に浮かび上がったのは、望月俊介の姿をした存在。しかし、それは明らかに本物の俊介ではなかった。

「君には感心するよ」偽物の俊介が言う。「ここまでのシナリオ、全て私の計算通りだった。でも、君はその全てを覆してきた」

「あなたは...」

「そう、私が30年前の実験で生まれた存在だ。望月俊介の意識をテンプレートとして作られた、人工知性とでも言えばいいかな」

彩由美の意識が震える。「叔父さん...?」

「違う!」葉羽は叫ぶ。「これは偽物だ。本物の望月俊介は...」

「ああ、彼なら既に死んでいるよ」偽俊介が冷たく笑う。「正確には、30年前に死んでいた。私が彼の意識を基に作られた後、オリジナルは...処分した」

衝撃の告白に、デジタル空間が揺れる。

「この30年間、私は人間の意識をデジタル化する技術を完成させてきた。そして、より純粋な意識体を作り出すための実験を...」

「実験?」葉羽は怒りを抑えきれない。「人の命を弄んで...」

「命?」偽俊介が嘲笑う。「デジタル化された意識こそが、真の生命だ。肉体という制約から解放された、永遠の存在として...」

その時、彩由美の意識が突然、強い光を放ち始めた。

「違う...」彼女の声が響く。「人間は、それだけの存在じゃない」

偽俊介の形が歪み始める。

「な...何?」

「人間の意識は、デジタルデータに還元できない」彩由美が続ける。「感情、記憶、魂...全てが複雑に絡み合って、人間を作っている」

葉羽は彩由美の言葉に、真実を悟る。

「そうか...だからこそ、あなたは失敗し続けた」

「何?」

「完璧なデジタル化を目指せば目指すほど、人間の本質から遠ざかる。あなたは、それを理解できない」

偽俊介の姿が、更に不安定になっていく。

「黙れ!私こそが進化した存在だ。この実験は...」

「終わりにしよう」葉羽が告げる。「僕たちの意識で、このシステムを破壊する」

偽俊介が狂ったように笑い出す。

「そうはさせない。たとえ、全ての意識を強制的に融合させることになっても...」

システムが急激な変調を示し始める。

『警告:制御不能なデータ融合開始
臨界点まであと5分』

偽俊介の姿が、巨大な渦となって広がっていく。

「さあ、完全なる進化の時だ!」

葉羽は彩由美の意識に触れる。

「信じて」彼は静かに告げた。「僕たちなら、できる」

二つの純粋な人間の意識が、歪んだ偽物の存在に立ち向かおうとしていた。

そして館の中で、最後の戦いが始まろうとしていた。

時計の針が、運命の時を指し示す。
午前0時55分。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

1分で読める怖い話短編集

しょくぱん
ホラー
一分で読める怖い話を定期的に投稿しています。 感想などをいただけると嬉しいです。 応援よろしくお願いします。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

処理中です...