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この旅の始まり

答えられない質問

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(いきなり本題から聞くと変だろうか?とりあえず気になったことから聞こう…)
「まず、君の歳はいくつなんだ?」
「1 2」
思ったよりも上だった。体型はやせ細っているため、ロクなものしか食べてないのは一目でわかったが、その場合は老けて見えるはず…この子は逆に幼く見える。カゲルは不思議に思った。
(その歳でよく平気で裸見せたなぁ…っと、次はこれ聞こうか)

「なんで俺を助けてくれたんだい?」
「か わ い そ う だ っ た か ら」
(本気で助けられちゃってたな…あの匂いを自分から逆用してたのか。)
「あ そ こ で ね て た ら か ぜ ひ く よ」
「そのときからいたの?」
「…(こくり)」
よく考えたら起きてすぐはなんで無臭だったのか…まあ変に考えても無駄だろう。

「今まで一度も身体を洗ってなかったのか?」
「…(ふるふる)
か わ と か み ず た ま り で か ら だ を あ ら っ て い た」
そんなので身体が清潔を保てる訳がない…とはいえ、身体を洗うという概念があっただけでも少し安心した。

「じゃあ、一番気になってたんだけど、親御さんはもう死んじゃったんだんだよね?」
「…(こくり)」
「理由は何だい?」
「……」
…急にうつむいて動かなくなってしまった。と、彼女の目から涙が溢れ落ちるのがわかった。
(何か辛い過去を抱えてそうだな…)
「すまん、無理に答えなくていいよ。」
「じ つ は」
(ん?答えるのか?)
しかし、この3文字で手が止まった。書いていたメモ帳も、少女の涙でビチョビチョになっていた。
「だ め」
「やっぱりダメかい?」
「む か し す て た」
「捨てた?」
昔というのは過去のことだろう。過去を捨てた…要するに、過去に何か辛いことがあってそれを思い出さないようにしてるということだろうか?
(気になるけど、答えられそうにないなら諦めるか…ん?)
何か書いていた。

「ね む た い」
カゲル自身はさっき爆睡していたため眠気は無くなっていたが、12歳の子供にとっては厳しい時間になっていた。
(どちらにせよ部屋用の服じゃあ外に出られないな。部屋で寝かせておいて、服を買って来てやるとするか…)
「じゃあベットで寝ていいよ。2台あるから好きな方を使ってくれ。」
「…(こくり)」
そして少女はベットのある部屋へ向かっていった。

「さて…」
カゲルは店に行くために荷物を手に取った。ところが…
(あれ?剣がない…)
来る途中に落としたのだろうか?いや、部屋に来た時はまだあったはずだ…。俺達が風呂にいた時に誰かが侵入して盗んでいった…?折れているとはいえ、狩り用に数年前に初めて買ってからずっと使っていることもあり、思い入れ深い剣である。流石にこのまま手放すわけにはいかなかった。一応他の荷物も確認したが、お金を含め他の物は盗まれた痕跡はない。少女からは目を離していないので彼女ではないのは確かだ。
(あ…よく考えたら鍵を閉め忘れてた。誰かが侵入して盗んだということで間違いなさそうだな。店に行くついでに犯人探しするとするか…おっと、今度こそ鍵を閉めないと…)

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