50 / 50
50
しおりを挟む
「王太子殿下とリディア・グランシェール侯爵令嬢の婚約継続を、ここに正式にお祝い申し上げます」
王宮の大広間。明るい照明と華やかな装飾が会場を彩る中、王妃マリアの力添えによって盛大な祝宴が開催されていた。国の主要貴族や各国の使節が招かれ、あの婚約破棄騒動は遠い昔のように感じられるほどの賑わいだ。
「リディア、今日は最高に美しいな」
クリストファーはリディアの手を取って、ダンスフロアへエスコートする。彼女が身につけた淡いブルーのドレスは、緩やかな曲線を描きながら床をすべる。周囲から感嘆の声があがり、二人の姿はまるで絵画のように映っていた。
「殿下もとてもお似合いです。こんな晴れやかな日は、今までなかったかもしれません」
音楽が始まり、二人は優雅にステップを踏む。あの日の婚約破棄宣言、毒の脅威との闘い、国外勢力との交渉――様々な困難を乗り越えたからこそ、この瞬間がどれほど尊いか、リディアは胸にかみしめる。
「実は今日は、お前に一つ伝えたいことがあるんだ」
踊りながらクリストファーが耳元で囁く。リディアは心臓が高鳴るのを感じながら、彼を見上げた。
「……なんでしょう、殿下?」
「いずれ近いうちに、俺は正式に即位することになるだろう。父王が退位を考えていると王妃から聞いているんだ。そのとき、お前には王妃として、隣に立ってもらう」
「それは……」
あまりに大きな話だ。王妃。つまり王太子妃から一気に“王妃”へ。今まで覚悟はしていたが、改めて言葉にされると感無量である。二人のダンスは続きながら、リディアは夢見心地になりそうな感覚を必死にこらえる。
「私が、本当に王妃になっていいのでしょうか……?」
「いいんだ。お前じゃなきゃ困る。長い時間をかけて見てきたけれど、俺はお前の優しさも強さもすべて知っている。もう誰にも、この絆を壊すことはできない」
リディアは目が潤みそうになるのをこらえ、しっかりとクリストファーの肩に手を置く。音楽のリズムがゆったりと二人を包み込み、周囲の視線を感じても気にならない。
「……はい。私、殿下の隣で国を支えていきます。これ以上の幸せはありません」
ダンスが終わると、会場から拍手が湧き起こる。人々が祝福の声を惜しみなく送る中、二人は照れくさそうに微笑み合った。王妃マリアやアレクサンダー侯爵、カイル、エミリアなど、これまで支えてくれた人々も皆、笑顔で見守っている。
「リディア、ありがとう。お前がいなければ、俺は毒に倒れたまま――あるいは婚約破棄を本当に成立させてしまっていたかもしれない」
「殿下、私の方こそ感謝しています。最初は婚約破棄を宣言されて絶望しかけましたが、いま振り返ればあれが始まりだったのかも……」
そう言って笑い合う二人。あの衝撃的な宣言がなければ、お互いの本当の気持ちや強さに気づけなかったのかもしれない。困難を経て結ばれた分、これから先の人生はきっと輝きに満ちたものになる――リディアはそう確信していた。
「では、皆さまに改めてお伝えしましょう」
クリストファーが皆に聞こえるように声を張り上げる。静まり返る会場。そこに彼の凛とした声が響いた。
「私、クリストファー・エベレット・アステリアは、リディア・グランシェール侯爵令嬢を未来の王妃として深く愛し、共に国を導くことをここに誓います」
歓声と拍手が大広間を埋め尽くす。リディアも胸の奥から湧き上がる幸せを押しとどめられずに、少し涙を浮かべながら微笑んだ。
「私も……これから先、殿下をお支えすることを誓います。よろしくお願いします」
こうして、大勢の祝福の中で二人は未来を見据える。婚約破棄はもう過去の話。病欠によって中止された破談は、今では誰もが“あれは幻だったのか”と笑い話にするほどだ。
長い苦難の先に掴んだ確かな絆。困難を共に乗り越えた二人だからこそ、この国の未来を照らす希望となるだろう。リディアは涙混じりの笑顔で、拍手に応えながらクリストファーと手をつないだまま、幸せと使命感を胸に大きく息を吸う。ここが新たなる始まり――王太子と侯爵令嬢が紡ぐ、永遠に続く物語の第一歩なのだ。
かつて“病欠で婚約破棄が中止”となった奇縁が、今やかけがえのない運命を結びつけている。二人の愛はこれからも、多くの人々の前で堂々と花開いていくに違いない。
王宮の大広間。明るい照明と華やかな装飾が会場を彩る中、王妃マリアの力添えによって盛大な祝宴が開催されていた。国の主要貴族や各国の使節が招かれ、あの婚約破棄騒動は遠い昔のように感じられるほどの賑わいだ。
「リディア、今日は最高に美しいな」
クリストファーはリディアの手を取って、ダンスフロアへエスコートする。彼女が身につけた淡いブルーのドレスは、緩やかな曲線を描きながら床をすべる。周囲から感嘆の声があがり、二人の姿はまるで絵画のように映っていた。
「殿下もとてもお似合いです。こんな晴れやかな日は、今までなかったかもしれません」
音楽が始まり、二人は優雅にステップを踏む。あの日の婚約破棄宣言、毒の脅威との闘い、国外勢力との交渉――様々な困難を乗り越えたからこそ、この瞬間がどれほど尊いか、リディアは胸にかみしめる。
「実は今日は、お前に一つ伝えたいことがあるんだ」
踊りながらクリストファーが耳元で囁く。リディアは心臓が高鳴るのを感じながら、彼を見上げた。
「……なんでしょう、殿下?」
「いずれ近いうちに、俺は正式に即位することになるだろう。父王が退位を考えていると王妃から聞いているんだ。そのとき、お前には王妃として、隣に立ってもらう」
「それは……」
あまりに大きな話だ。王妃。つまり王太子妃から一気に“王妃”へ。今まで覚悟はしていたが、改めて言葉にされると感無量である。二人のダンスは続きながら、リディアは夢見心地になりそうな感覚を必死にこらえる。
「私が、本当に王妃になっていいのでしょうか……?」
「いいんだ。お前じゃなきゃ困る。長い時間をかけて見てきたけれど、俺はお前の優しさも強さもすべて知っている。もう誰にも、この絆を壊すことはできない」
リディアは目が潤みそうになるのをこらえ、しっかりとクリストファーの肩に手を置く。音楽のリズムがゆったりと二人を包み込み、周囲の視線を感じても気にならない。
「……はい。私、殿下の隣で国を支えていきます。これ以上の幸せはありません」
ダンスが終わると、会場から拍手が湧き起こる。人々が祝福の声を惜しみなく送る中、二人は照れくさそうに微笑み合った。王妃マリアやアレクサンダー侯爵、カイル、エミリアなど、これまで支えてくれた人々も皆、笑顔で見守っている。
「リディア、ありがとう。お前がいなければ、俺は毒に倒れたまま――あるいは婚約破棄を本当に成立させてしまっていたかもしれない」
「殿下、私の方こそ感謝しています。最初は婚約破棄を宣言されて絶望しかけましたが、いま振り返ればあれが始まりだったのかも……」
そう言って笑い合う二人。あの衝撃的な宣言がなければ、お互いの本当の気持ちや強さに気づけなかったのかもしれない。困難を経て結ばれた分、これから先の人生はきっと輝きに満ちたものになる――リディアはそう確信していた。
「では、皆さまに改めてお伝えしましょう」
クリストファーが皆に聞こえるように声を張り上げる。静まり返る会場。そこに彼の凛とした声が響いた。
「私、クリストファー・エベレット・アステリアは、リディア・グランシェール侯爵令嬢を未来の王妃として深く愛し、共に国を導くことをここに誓います」
歓声と拍手が大広間を埋め尽くす。リディアも胸の奥から湧き上がる幸せを押しとどめられずに、少し涙を浮かべながら微笑んだ。
「私も……これから先、殿下をお支えすることを誓います。よろしくお願いします」
こうして、大勢の祝福の中で二人は未来を見据える。婚約破棄はもう過去の話。病欠によって中止された破談は、今では誰もが“あれは幻だったのか”と笑い話にするほどだ。
長い苦難の先に掴んだ確かな絆。困難を共に乗り越えた二人だからこそ、この国の未来を照らす希望となるだろう。リディアは涙混じりの笑顔で、拍手に応えながらクリストファーと手をつないだまま、幸せと使命感を胸に大きく息を吸う。ここが新たなる始まり――王太子と侯爵令嬢が紡ぐ、永遠に続く物語の第一歩なのだ。
かつて“病欠で婚約破棄が中止”となった奇縁が、今やかけがえのない運命を結びつけている。二人の愛はこれからも、多くの人々の前で堂々と花開いていくに違いない。
100
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
私を見下していた婚約者が破滅する未来が見えましたので、静かに離縁いたします
ほーみ
恋愛
その日、私は十六歳の誕生日を迎えた。
そして目を覚ました瞬間――未来の記憶を手に入れていた。
冷たい床に倒れ込んでいる私の姿。
誰にも手を差し伸べられることなく、泥水をすするように生きる未来。
それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。
だが、彼の言葉は、決定的だった。
「――君のような役立たずが、僕の婚約者だったことが恥ずかしい」
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。
みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。
ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。
失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。
ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。
こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。
二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
何かよく分かんなかった
今度はななしさんが何か分かるように頑張ります⊂⌒~⊃。Д。)⊃