平凡な村人だと思われていた俺、実は神々が恐れる最強存在でした〜追放されたけど、無自覚チートで気づけば世界の頂点〜

uzura

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第12話 共に旅する約束

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村を包んでいた煙がやっと晴れたころ、ルグナの空には再び穏やかな青が戻っていた。  
燃え落ちた木々の残骸、折れた柵、焦げた地面――その全てに、柔らかな風が吹き抜けていく。  
だが、破壊の跡の中で、村人たちは泣いていなかった。  
誰もが互いに支え合い、笑っていたのだ。  

「レオンさんが光を放った瞬間、あれほどの魔物が消えたんだ。もう恐れるものなんてない!」  
「神の加護がある限り、きっと村は守られる!」  
そんな声があちこちから上がり、まるで祝祭のような空気があった。  

けれど、当のレオンはというと、村の片隅の荷小屋で頭をかいていた。  
「……どうしよう。これ以上は神扱いされそう……」  
「いやもう手遅れだと思うわ」  
リリアが呆れ顔で返す。包帯を巻いた左腕を揉みながら、微妙に頬を染めている。  

「リリアさん、ほんとに平気なんですか? 無茶しましたよね」  
「へいきよ。あんたが治してくれたおかげで、傷跡も残らなかったし」  
「よかった。でも、できればもう無理はしないでください」  
「そう言う自分が一番無茶してるんだから説得力ゼロよ」  

いつもの軽口が戻ってきて、村の空気も少しだけ落ち着きを取り戻した。  
だが、その裏でレオンたちは気づいていた。  
あの夜、空から降り注いだ光――あれがただの現象ではないことを。  

フィオナが小屋の外から姿を現し、静かな声で言う。  
「主よ。神界の干渉が確実に強まっています」  
レオンが振り返る。  
「干渉?」  
「はい。先の戦いで、あなたが放った“癒しの光”は世界の理に直結する“創世波”です。それを感知した神々が動きはじめました」  
「動くって、つまり……?」  
「あなたと接触を試みる者が現れるでしょう。善意か敵意かはわかりません」  

リリアがすぐに身構える。  
「来るってことね。神か、それに仕える存在か……」  
レオンは少し考え、そして小さく笑った。  
「まあ、会ってから考えよう。どんな存在でも、話せばわかるかもしれないですし」  
「相変わらず楽観的ね。……でも、そこが好きよ」  
リリアは気づいた瞬間、自分の言葉に顔を赤くして、「い、いまのは違う!」と慌てて付け加えた。  
レオンは困ったように笑う。  
「ありがとうございます?」  
「っ……何その反応!」  

フィオナが苦笑しながら二人を見つめる。  
「主。もしこの地が神々の眼に映るなら、村ごと危険に晒されます。早めに動くべきです」  
レオンが真顔に戻った。  
「移動……か」  
「一度この村を離れ、各地の神域を調べましょう。あなたの力が影響を及ぼしている場所を探るのです」  
「旅に出るってことだね」  
「ええ。それが“均衡”を保つ最善の道」  

レオンは静かに頷いた。  
そしてしばらく考えてから口を開く。  
「俺、旅は久しぶりです。でも……」  

彼の視線が村の中央へ向いた。  
そこには、避難から戻ってきた子供たちが嬉しそうに笑い合っていた。  
かつて自分を追放した勇者の町から遠く離れ、ようやく見つけた安らぎの場所。  
それを自分のせいでまた危険にするのは、心が痛んだ。  

「村のみんなが心配だな……」  
そう呟いたレオンに、リリアが軽く肩を叩く。  
「あんたがいなくても、この村は大丈夫。みんな、もう自分で立っていける。だって、“聖者レオン”に教わったんだから」  
「……そんな立派なことはしてないですよ」  
「いいのよ、あんたが気づいてなくても。人は勝手に信じるの、誰かの優しさを」  

その言葉にレオンは短く笑って頷いた。  

***

夕暮れ。  
村人たちが焚き火を囲み、再建の相談をしている中で、レオンは村長の家を訪ねた。  
年老いた村長は椅子に座ったまま微笑む。  
「行くのかい、レオン」  
「はい。しばらく村を離れようと思います」  
「そうか……お前のことだ、きっとそうなると思っていたよ。だが、この村はお前が残してくれた加護で守られている。何も心配いらん」  

村長は立ち上がり、ゆっくりと歩み寄った。  
「レオン。わしらはお前に救われた。お前がいる限り、神でも魔でも恐れることはない。  
だがな、たとえお前が行かなくなっても、この村は笑ってお前の帰りを待つ。  
だから、胸を張って行け。お前の旅が、お前自身の心を救うものになるようにな」  

その言葉に、レオンの胸の内に温かなものが広がった。  
「……ありがとうございます。必ずまた帰ってきます」  
「うむ、帰ってきたときは、また村の宴で迎えてやろう」  

***

翌朝――。  
澄んだ青空の下。  
村の外れに三つの影が立っていた。  

レオン、リリア、そしてフィオナ。  
それぞれ簡素な旅支度を整え、風に髪をそよがせながら笑い合っている。  

「まさか私が竜の姿で旅するとは思わなかった」  
フィオナが人間の姿のまま翼を光に変えて笑う。  
「歩けるのにわざわざ飛ばなくてもいいんですよ。ゆっくり行きましょう」  
「了解しました、主」  

リリアが地図を広げる。  
「まずは南の“聖水の都・エウラ”ね。あそこには神官の本部と、神界の門と呼ばれる場所がある」  
「門……?」  
「霊的な境界を越えて神々と直接交信できるって噂の場所。神様が本格的に干渉してるなら、手がかりがあるはず」  

「なるほど、それなら行ってみる価値ありですね」  
レオンが笑う。  
リリアは一瞬だけためらい、そして言葉を絞り出した。  
「ねえ……レオン」  
「はい?」  
「この旅、簡単な道じゃないわよ。神の試練、魔王の残滓、人の嫉妬。何が待ってるかもわからない」  
「そうですね」  
「それでも、あたしと一緒に来る?」  

レオンはその問いに即座に笑みを返した。  
「もちろん。最初から一緒に行くつもりですよ。俺一人だったら、たぶん途中で迷いますし」  

その答えにリリアは目を瞬かせたのち、静かに頷いた。  
「……なら決まりね。共に旅するわ。あんたがどんな化け物だろうと、どんな神になろうと」  
「うん。ありがとう、リリアさん」  

ふと、朝の光が差し込み、彼らの影が長く伸びた。  
村人たちが畑から手を振る。  
子どもたちが叫ぶ。  
「レオンさーん!」「気をつけてねー!」  

「行こう」  
「ええ、行きましょう」  
「承知しました、主」  

こうして、神々さえ注視する創世の旅が、静かに幕を開けた。  
その背を追う風がやさしく吹く。  
微かな光の粒が三人の後ろに残り、それが道のように地上へ続いていた。  

だが、その遥か上――天界の玉座では、一人の女神が瞼を開いていた。  
「ようやく動いたか、創世の子……」  
その瞳の奥には、慈悲と哀しみ、そして試すような光が宿る。  

「この運命が誰を救うのか、見せてもらいましょう」  

地上と天界、運命の糸が静かに結ばれたその朝。  
彼らの新たな物語が、確かに動き出した。  

続く
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