私の愛する王子様

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第1章

リュンヌは周りが見えなくなりました。

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自邸に帰って、ドレスを脱ぐと用意された湯船にゆっくり浸かった。

襲ってきた人達、一体何者だろう?
ガードン様は、私が狙われたと言っていた。腕を掴んだヤツも、迎えに来たと言っていたわ。

私のせいでガードン様を危険に晒したのね。

悲しみと怒り。リュンヌは湯船から出てベッドに向かう。今は身体を休めなければ。

目覚めると、いつもの時間。軽く身支度を整え、食堂へ向かう。パンとスープで朝食を済ませ、病院へ向かった。

病室に入ると、すでに目覚めたガードン様。

「ガードン様!!」

ベッドに駆け寄り、床に膝をつきガードン様の手を両手で握りしめた。

「リュンヌ、すまなかったな。俺がもっと強ければ」

いつになく、弱気な言葉にリュンヌはワナワナと震え、ここが病室だって事も、後ろにローザとセーラがいた事も、タイミング悪く入ったセウスが『ゲッ!ローザとセーラさん』と呟いた事も、見えてなかった。

「弱気なガードン様なんて嫌いです!いつもの強気なアナタはどこへ行ったのですか!?」

立ち上がり大声で叫ぶと、瞳から涙が溢れ出し、ガードン様を見ても涙で歪みはっきり見えない。


ガードンは、いきなり叫び泣き出したリュンヌに、まだ残る傷の痛みも忘れ、ベッドから起き出しリュンヌを抱き締めた。

「泣くな、俺が悪かった。大丈夫だ、何があっても、お前だけは守る」

いきなり、ふわりと抱かれたリュンヌは、ガードン様の背中へ手をまわし、先ほどと違う涙が出てくる。

「…良かった。ガードン様が助かって本当に良かった…」

リュンヌの呟きは、ガードンの耳に届き、両手に力を入れる。

「リュンヌが助かったなら、それだけで良い」


ここが病室と絶対忘れてる。そう思う後ろに居る方々は、これってバカップルじゃないの?と、心は1つになった。

「リュンヌ、一旦、手を離せ。背中の傷に当たる」

ガードン様の言葉に、パッと離れたリュンヌは、力任せにベッドへうつむきで寝かせ、着ていたシャツをガバッとあげた。

傷に手を当てると、治癒を始めるがリュンヌの手に、ピリッと何かが反応し、治癒を邪魔している気がする。

「もしかして、この反応が毒?」

毒ごときが、私のガードン様を苦しめるなんて許さない!
体内に回っているはずのガードン様の魔力を探す。しかし、心臓付近に何かの種が魔力を吸収していた。

これか!よくも私のガードン様に!!

怒りMAXのリュンヌは、その種を傷口まで戻し、塞いだ傷口を少し開け取り出す。
もう一度、治癒をし全て終了。

怒りMAXのリュンヌは気付いてなかった。

いきなり脱がされ、真っ赤になるガードン様、身体中にリュンヌの魔力を感じ、真っ赤になるガードン様、背中に痛みが走り、ウッ!!と唸ったガードン様。

それをはっきり見ていたのは、後ろに居る方々。ニヤニヤするセーラとローザ、固まるセウスだ。

「憎き敵は排除しましたわ!」

やりきった顔に笑みが浮かぶ。

「リュンヌちゃん。私達の存在に気付いてる?」

いきなり話し掛けられ、バッと振り返るリュンヌ。

「セーラお姉様………ローザとセウスまで…」

恥ずかしさMAXになったリュンヌは、真っ赤になり両手で顔を隠す。
ガードンは、サッとシャツを直しベッドの縁に腰かけた。

「リュンヌ、傷は治せたな」

ガードン様の問いかけに、コクコク頷く。耳まで真っ赤なリュンヌは再起不能だ。

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