私の愛する王子様

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第1章

それぞれの決意。2

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~ガードンside~

留学の話を聞いてから、思考の闇から出られない。

俺は弱い。己の小さな世界の中で『自分は強い』と、いつの間にか過信していたんだ。

ギレルの為、リュンヌの為、今、考えれば全て言い訳を探していただけじゃないか?

そう思うと、情けなくなってくる。

留学は決定だ。もっと大きな世界を見て、自分の弱さと向き合わなければ、俺はずっと負け犬のままになる。

そして、俺はどこかで安心してた。
リュンヌが俺から離れないと。でも、ギレルの婚約者候補から外され、自由になったリュンヌが誰を選ぶか分からない。

本当に、それで良いのか?

俺は結婚をしてはいけない。それがギレルを守る事になると信じてきた。

それは、言い訳じゃないのか?

ぐるぐると同じ事を考えては否定する。

問題は山積してる。今まで誰かに頼る事を弱さだと思っていたが、もしかすると違うかも知れない。

なかなか闇から抜け出せない俺の所へ、ギレルが訪ねてきた。

「留学するのか?」

「あぁ、そのつもりだ」

そう言って、しばらく沈黙が続く。ふっ。と小さく息を吐いたギレルは、ゆっくりと話し出した。

「私は、この国でやれる事をするよ。その為に信頼出来る仲間を作る。

なぁ、ガードンは何がしたい?

私の為、国の為、そんな事じゃなく、お前が何をしたいか考えてみろ。

これでも、お前の兄だからな!たまには、頼れよ」

ニヤリと口角をあげ話すギレル。弱いと思いこんでいた俺は、兄の何を見てきたのだろう。

「あぁ、頼りにしております兄上」

ハハハ、と笑った顔は小さい頃、一緒に遊んでた時と同じ、溢れんばかりに輝いて見えた。

「じゃあ、私は行く」

そう言って部屋を出る後ろ姿は、王の資質をありありと俺に見せ付けた。

参った。完敗だ。

もう悩むのは止めだ!
とりあえず、リュンヌを狙い、俺を刺したヤツをぶん殴る!

****** 

~リュンヌside~

「それは決定ですか?」

父の執務室に呼ばれたリュンヌは、隣国アルブスに留学する事を聞いた。

「そうだ。お前の光魔力について学んでこい。向こうへは、ガードン様も共に行く」

「ガードン様と!?勿論行きます、いえ、今すぐ行きましょう!」

ソファから立ち、部屋を出ようとしたが、父に止められた。

「待て!話は終わっとらん!」

眉間にシワを寄せ、大きく息を吐く父。

「何ですか?お父様が留学しろと仰ったのですよ?」

ふてくされるリュンヌ。いや、ちょっと笑ってる?

「今すぐじゃない。バケーションが終わってからだ!」

「イヤですわ!ガードン様と一緒に現地視察へ行きます!」

自分で言いながら、ガードン様と二人で街を歩く姿を想像する。

『ほら、疲れたなら俺の腕につかまれ。

はい、ガードン様。

あそこにカフェがある。少し休むか?』

私はきっと、ケーキを頼みガードン様へ、あーん。をやるのよ。
少し照れながらも、『恥ずかしいだろ、早くしろ』と、言われたら!?

父、セーバスは娘リュンヌが、妄想中だと知っている。しばらくかかるな、と机に戻り、書類に目を通す。

妻は、お茶会へ行き、娘の妄想解除が出来ない。

すでに一時間。そろそろ正気に戻ってくれ………そう思う父であった。
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