私の愛する王子様

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第2章

ガードンはリュンヌが心配です。

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「ガードン様!私は先に行ってます」

立ち上がり、名残惜しそうに俺の腕から離れると、走り去るリュンヌ。

「本当に面白いね~、あ~んなに綺麗なら、わざわざガードンを選ばなくても、良さそうなのにな~」

「ケッ。知るか」

ハハ、と笑うくそジジイを無視して、屋敷へ帰り、自室でサッと汗を流す。

客室だと案内された部屋は、まずまずの広さがある。小さいが浴槽等もあり、多分、学園の寮と遜色は無いだろう。

リュバンに仕込まれていなければ、使用人を連れてくるが、あの脳筋は、

『バカでも分かる夜営の過ごし方』

そう、変な小冊子と共に、留学する前ガッツリ1人で何でも出来るよう仕込まれた。

あ~、リュバンと俺の料理は最悪だったのは秘密だ。肉を焼けば炭になり、魚を焼けば炭になり、スープを作れば泥水…

思わず遠い目になったが、二度と料理はやらないと固く誓ったのは言うまでもない。

新しい服に着替え、階下の食堂へ行けば、うまそうな匂いがしている。

「ガードン様!お待ちしておりました!」

満面の笑みで駆け寄るリュンヌに、ガシッと腕を掴まれ、席に誘導される。

隣に座ったリュンヌは、ニコニコしながら皿に料理を取り、次々と俺の前に並べた。

「早起きして作ってきました。勿論あたためたり、少し手を加えたり、厨房をお借りしましたけど、ガードン様の好きな物ばかりですわ」

チラリとシェフを見ると、何やらニヤニヤしてる。目の前に座ったくそジジイは、何故か、ふて腐れているが?

「リュンヌ嬢、私には取ってくれないの?」

そう言って、俺をニヤリと見る。

「スカドウェイ様、申し訳ございません。私は今からガードン様を、見つめる時間になりますので、
スカドウェイ様のお世話が出来ないのです」

リュンヌ、せめてくそジジイの方を向いて言えよ。ニコニコと俺を見ながら言うな!

「リュンヌも食べろ、俺は自分で取れる」

視線を料理へ向けると、なるほどな。王宮で俺が好んで食べていた料理が並ぶ。

ククっと笑うと、スッと椅子を動かしてリュンヌがペタッとくっつく。

「バカ!何やってんだ」

思わず椅子から逃げようとしたが、悲しそうに見るリュンヌに、グッと我慢をして座り直した。

「ガードン様を充電中です。お食事の邪魔はしませんわ!」

はぁ、と息を吐き諦めた俺は、食事を始める。隣にリュンヌは居ない!うん、そう思うしかないな…

結果から言えば、料理はうまかった。だが、あまり食べた気がしない。下手な修行より余程、精神的にグッタリした。

食後のお茶を飲んで、思い出した。

「そう言えば、何故、師匠と呼ばれてるんだ?」

このバカを師匠と呼ぶ人間が、本当に居るのか?

「えぇ、ルルって名前の小動物みたいな可愛らしいお友達なんですが…」

話を聞いて…そう、詳細は分からないが、きっと何かが違う事は分かった。

「それで、リュンヌが師匠になったのか」

やはり、野放しにするんじゃなかった。こっちには、ローザもヴィオレットも居ないからな。これは早めにブルーノ殿に連絡しなければ。

「そう、後からエリザベスさんに怒られましたの。教室を凍らせてはダメって」

えへへ、と笑っているが、俺はリュンヌの肩に手を置き、

「お前は大丈夫だったのか?あまり無茶するな、分かったか?」

前にも、教室を凍らせてしまった事があり、全身が冷たくなったリュンヌを思い出してしまった。あの時みたいに俺が近くに居れば良いが、今は離れている。

何も反応が無いリュンヌ。どうした?と、顔を覗きこむと、目を見開き、顔が真っ赤に染まる。

「ガ、ガードン様!恥ずかしい!」

バン!と、俺をぶっ飛ばしたリュンヌ。俺の身体が床に着いた時、天井を見ながら。

やはり、もう少し鍛えなければ、俺の命はヤバい。

そう強く感じた。
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