副団長は愛妻家。

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ブラウト国内編

夫婦二人で。

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ガーデンパーティーは、思った以上、女性陣に好評でコルデがアズハル商会の会頭と知った後は、男性陣は放置され、男同士ゆっくり酒を酌み交わした。

夕方になり、パーティーが終わると一気に静寂が戻る。後片付けは使用人へ任せ、久しぶりに二人で街へ出掛けた。

「楽しかったですね。こんなに沢山の方とお喋りしたのは久しぶりでしたわ。

夜会などは気を張っていますが今日は、そんな事を考える間も無く皆さんと笑って過ごせましたの」

よほど楽しかったのか、リュンヌの話を聞きながらゆっくり食事を楽しむ。個室を予約しといたのは正解だ。ほろ酔いのリュンヌは、頬を染め瞳がとろんと潤み蕩ける笑みを浮かべている。

「飲み過ぎるなよ」

「あと少しだけですわ」

フニャッと笑った顔と、力が抜けた身体がかなり酒がまわっていると告げていた。

帰りの馬車では俺の肩に頭を乗せ、すやすや眠っている。起こさないように抱き上げベッドまで運ぶと、首に手を回してきた。

「起こしてしまったか?」

ゆっくり頭を撫で、髪を一房取ると口付けを落とす。

「あまり素敵にならないで…」

それだけ言うとまた眠り姫になってしまった。

サッとシャワーを浴び、リュンヌの隣へ潜り込み後ろから抱きしめて眠る。

もぞもぞと動き、向きを変えたリュンヌが俺の胸にすり寄った。片手で頭を撫で、旋毛へキスをすると甘い香りに酔いそうになったが。胸に囲った眠り姫は起きる気配が無い。

「俺だけの眠り姫、ゆっくりおやすみ」

目を閉じると、いつの間にか俺も寝てしまっていた。

目覚めると、まだ眠るリュンヌの顔を見つめ柔らかな髪を弄んでいる。すると、僅かに身動ぎをし、キレイな瞳が俺を捉えた。

「私…あのまま眠ってしまったのね」

シーツを頭まで被り、何やら言っているが可愛い眠り姫の姿はしっかりと堪能させてもらった。

「一緒に風呂でも入るか?」

「っ!旦那様のいじわる!」

小走りに浴室へ駆け込むリュンヌをベッドの上から見送った。俺も顔を洗いシャツとスラックスに着替えると、先に食堂へ向かい珈琲を飲む。

日差しが眩しく感じ、今日も暑くなりそうだ。鳥の声が聞こえ、朝のまだ涼しい風が大きく開かれた窓から流れてくる。

「リュンヌが来てから朝食をとる」

それだけ伝え、テラスへ向かうと草花の香りがふわりと鼻を掠めた。

安楽椅子へ座り、両手を腹の腕で組み瞳を閉じると、久しぶりに何もしない贅沢を感じる。

「たまには、こんな朝も良いな」

「ガードン様、こちらへ準備させますわね」

クスクス笑うリュンヌの声に起きた。俺は少し眠っていたようだ。

「眠り姫に見つかってしまったな」

俺の上へ座ると、軽く唇へリュンヌの唇が重なる。

「王子様は、私のキスで目覚めましたか?」

クスッと笑うリュンヌの後頭部へ手を当て、腰をグッと掴んだ。啄むようなキスを何度も落とし、胸に抱き寄せ耳元で囁く。

「次は俺の番だろ?今日も愛しているよ」

使用人がワゴンを押してテラスへ朝食を持ってきた。いつもより遅く起きた俺達は、軽くパンをつまみワゴンを下げさせる。

「今日はこのまま、ゆっくり過ごすか?」

「それも素敵ですわね」

二人でまったりとしていた。

同じ空間で俺は本を読み、リュンヌは趣味の屑石を使い何か作っている。たまに木々の間から風が吹き込み読んでいた本のページがパラパラとめくれ、諦めて本を閉じると、リュンヌと目が合う。

「少し散歩でもするか」

「ええ」

庭へ降りると、呼んでいないのにポチが後ろから着いてくる。

「思い切り走る事も、最近してなかったな」

うむ。そう言えば今が見頃だったか。

タロとジロに乗り、後ろからポチが追いかけ、王宮の裏手にある森の中へ。

「どうなさったの?いきなり着いて来いと仰って」

「もう少しだ。まだ秘密だからな」

奥へ入ると開けた場所へ着き。リュンヌは声を上げた。

「こんな場所にホリホックの花畑があるなんて!!知りませんでしたわ!」

色とりどりの花の中へ、リュンヌが歩いて行く。その姿は気高く気品に満ちた美であり、一枚の絵画を見ているようだった。

今度は絵師を連れてこよう。

きっと素晴らしい絵になるだろう。応接間へ飾るか?それとも副団長室にするか?

いや、別に俺だけが見えれば良い。屋敷の執務室にしよう。

「ガードン様?難しいお顔で何を考えてましたの?」

こてんと首を傾げながら、俺を覗き込む瞳に、やはり絵師にも見せる必要は無い。また連れてこようと固く心に刻む。

「何でも無い」

「そうですの?」

分かりましたわ。と、ポチを森へ放ち木陰で二人休む。

「こんなにキレイなのに、誰も知りませんのね」

「兄上と昔、一緒に城を抜け出して教えて貰ったんだ。この光景をリュンヌに見せてやりたいと思ってな」

まだ、兄上のスペアだと卑屈になっていた頃。コソッと手を引かれ連れて来られた思い出の場所。

『大切な人にガードンも教えてやれよ』

その時は、うん。と頷いただけだったが…

「あまり似てないと思っていたが、兄上と俺は似てるかも知れないな」

「今頃、お気付きになられたの?ギレル様とガードン様は、よく似てますわ。でも私には、昔からガードン様の方が何倍もステキに見えております」

フニャッと笑い、俺にすり寄るリュンヌにククッと笑いが漏れる。

「俺にも、リュンヌは誰より美しく見える」

本当に、こんな時間は久しぶりだ。

「ガードン様には、負けませんわ!!どれほど私がガードン様の事を思ってきたか、教えて差し上げます」

恥ずかしくなるから、いつも止めるがたまには聞いてみるか。

木に凭れ、隣で話すリュンヌの声がまるで子守りのように感じ……

******

「聞いてましたの?」

ガードン様の顔を覗き込むと、僅かな寝息が聞こえる。

この姿!絵に残したい!

少し伸びた髪が、サラサラと風に揺れ。切れ長の瞳を閉じると、まるで少年のよう。木漏れ日に照らされているガードン様は、誰より神々しい!

私に絵心があれば、何枚でもガードン様だけ描く事が出来ますわ!

どうしましょう?心臓がドキドキしてしまいます。

心の中にしっかり記憶しますわ!
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