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比べて見ないその瞳に
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しおりを挟む「で、誰の差し金だ? 俺を狙ったにしては小物すぎるようだが」
「は! 貴様のような得体の知れない奴にそう簡単に話すと思ってるのか? 俺をナメるんじゃねえぞ」
レーヴェに捕まった状態だと言うのに威勢だけは良いようだ、しかしそんな虚勢もレーヴェは遠慮なく叩き潰しにかかる。うつ伏せだったマントの男を仰向けに転がすと、その首もとを革のブーツで容赦なく踏みつけた、彼の体重を思いきりかけて。
「ぐ、ぅえっ!!」
苦しそうな呻き声をあげ、男は押さえられていない下半身を跳ねさせた。必死に両手を使ってレーヴェの足をどかそうとするがビクともしないようで。息がうまく出来ないのか口をハクハクさせているにも関わらず、レーヴェは表情も変えず男にのせた足を押す力を強めていく。
「すぐに話したくなるようにしてやるさ、お前のような奴が来るのは別に初めてのことじゃない」
「……か、はあっ! ぐぐぅっ」
こんな場面に遭遇したことにないロッテにはショックが大きく、オロオロと二人の様子を見ていることしか出来ない。だが、このままではいけないと彼女は唇を噛んで勇気を出した。
「ダメ! これ以上やってはこの人が死んじゃうわ!」
「……ロッテ」
ロッテに止められレーヴェは仕方無さそうに足を退かすと、近くにあった縄でマントの男の手足を拘束した。さすがに自由にするには危険すぎるし、その程度ならとロッテも手伝った。
「いいのか、ロッテ。この男は多分……君を狙って来たんだぞ?」
「え? なぜ、私を……」
少なくとも自分には刺客に狙われる理由など思いつかない。聖女ではなかったにしろファーレンハイト侯爵家の令嬢である彼女を、危険を冒してまでわざわざ暗殺する必要があるのか?
だが、レーヴェはこの刺客がロッテを狙ってきたと確信を持っているように見えた。
「この程度の暗殺者では俺は殺せない、俺を消したい奴らはそれをよく知っているからな。だとすれば、俺の存在を知らずコイツはここに送られてきたんだろう。つまり……ターゲットはロッテ、君のはずだ」
「そんな、どうして?」
レーヴェが誰かに狙われているというのも気になったが、今その話を聞こうとしても答えてはもらえないだろう。自分が狙われなければならないワケも分からず、ロッテは戸惑うしかなかった。
「それはこいつが教えてくれるだろう、これ以上痛い目も見たくないだろうからな。それとも、まだ足りないか?」
マント男を見下ろすレーヴェの瞳はゾッとするほど冷たく、これ以上の抵抗は許さないと暗に告げている。それは床に転がされた彼にも通じたようで。
「は、話す! 全部話すから、俺は……う、ぐっ⁉」
「おい、どうした!」
慌てて話始めようとした男が、喉を押さえて苦しみだす。手足を縛られたままなのに、床をのたうち回るその姿にロッテは恐怖さえ感じた。レーヴェが急いで男の身体を抑えロープを外した瞬間、男は口から大量の血を吐いた。
「ぐああああっ! がはっ、たすけて……!」
「しっかりしろ! 動かずに、ジッとしてるんだ」
止まらない吐血に男は狼狽え、必死にレーヴェの服を掴んでいる。この男を捕らえる際にレーヴェは傷一つつけてはいなかったはず。いったい何故……?
しかしのんびり考える暇も与えないという様に、刺客だった男の下にはあっという間に大きな血だまりが出来ていた。
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