月について語ってみようか

つきとねこ

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turning point

☆溶けて……

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 アーネストのキスは指先からショーティの唇へと移動した。何度も交わる舌先のしびれに酔いながら、アーネストの手がショーティの胸から滑り落ち腰を過ぎ、ショーティ自身へと行きつくことも知る。

 一度達したはずなのに、アーネストの指先一つに反応する自分を止めることができない。しかし、もちろん、それは通過点でしかないのも知っていた。アーネストの指先がさらに奥を目指し、先ほどまで責められていた箇所に辿り着く。

「!」
「うん……ショーティ……力を抜いて」

 ほんの微かな痛みだった。秘部を割って入る指先にショーティの身が竦む。久し振りの行為に心ではなく躰が僅かな抵抗を見せるが、先ほどのアーネストの行為と、今顔中に降る優しい口付けといつの間にか潤滑油に満たされた丁寧な指がショーティの身体を開かせる。
 入り口を柔らかく刺激して、ゆっくりと入っていくのは2本目の指先………。

「っ…アーネス…ト…ん、んっ」

 増やされていく指がショーティの奥深いところを絶妙な動きで解し、かと思えば入り口まで戻る…挿入を繰り返す。たっぷりの潤滑油が静かな寝室に響き、

「あ、っ……」

 知らず震え出す腰と紅潮する目元が、アーネストの視覚を楽しませているなど知る由もなく、ただ指先の動きに一度放ったはずのそれがまた目覚めていた。

 どっちがより以上に欲しいとか、快楽を与えてあげたいとか、もうどうでもよくなり、ただ行為に耽ることに没頭してしまう。揺れる躰を止めることもままならず、

「ぁ、———あ!……そ、そこ……」

 零れる声も止まらない。

 見つめてくる視線が、切れ長の双眸が、奥の奥を捕らえているようで、落ちてくるキスに触れながらの的確な場所に、

「も、もう……っ……」

 物足りないとの思いさえ生まれ始め、そうなると口にのる言葉は決まっていた。

「………アー…ネスト」
「…うん…」

 探るようにショーティがアーネストの肩越しをつかんだ瞬間、繊細な指の動きから圧迫感のある存在へと変化した。

「ぁ…!」

 ショーティは小さく息を飲み込んだ。途端、軽く眉根を寄せるアーネストの表情を捕らえ、更に、

「…っ…」

 彼の口元から零れる声に、ぞくりと背筋が震える。アーネストが反応してくれていることが嬉しかった。深く、深く入ってくる彼自身に、こんなにも満たされる。これが、愛しいということなのだろうか、と思わず笑みがこぼれた。

「…ショーティ…?」

 少し渇いた声で名を呼ばれ、

「好き…だよ、アーネスト……ん…っ………!」

 思わずそう返してしまう。何回でも何十回でも何万回でも告げる言葉が足りない。

 ショーティの中にいるアーネスト自身が圧迫を増した。その感覚をリアルに感じてしまい、思わず力が入る。

「…ショーティ……」

 少しだけアーネストが苦笑したようだった。

 つられたようにショーティも小さく笑みをこぼす。その後はもう快楽を追いかけるだけだった。

 抜き差しされる乱れた音…とか。体重を掛けられて受ける沈み込むようなベッドの感覚……とか、アーネストの少し紅潮した…艶のある目元とか…その額の汗。揺れる金茶の髪に指を伸ばしたような気がする。

「あ!ぁ……ん、……はぁっ!……は!……もっと…」
「……ん」

 ショーティは切にねだり、アーネストを飲み込んでいった。躰が、奥の更に奥、まるで一体にならんばかりの深いところでぐちゃぐちゃに乱されて、何も考えられなくなり、ただただ満たされていく。心が震え、胸がつまり、

「アーネスト……アーネスト……!」

 いつもでは考えられないような甘える声音でアーネストを呼び、肩越しに縋りつくと、ゆっくりと抱きすくめられる感覚に、嬉しくて眉根が寄った。その瞬間にも躰の中で何かが膨れ上がり、

「や!…、だっ…だめ…」

 喘ぐような言葉のあと、奥を満たすアーネストの手が煽り立てているショーティ自身を無意識に止めた。それは絶頂を押さえようとしたためであったが、深く突いてくるアーネストの動きに、力が抜けそうになる。けれどその手を掴むことはやめない。

「っ!……」
「ショーティ…?」
「…い、一緒に……」

 問われる声に震える響きで答える。

 そんなショーティに、アーネストはやや呆れたようなそれでも愛しくてたまらないという表情を見せ、荒い息に渇きかけた唇に触れた。

「……」

 口元を塞ぎこみながら、歯列を割り、舌を吸い上げる。溢れる銀糸がショーティの顎を伝うが、それでも長いキスが終わることはなく、もちろん、アーネストの動きも止まることはなく。

「—————っ!…ん!」

 次第に息の上がってきたショーティは、堪らず両手でアーネストの肩を押した。途端、アーネストの指がショーティの絶頂を促す。

「!っあ…んっ!」

 全ての動きが速くなり、ただ翻弄されるまま揺られて、

「…会いたかったよ」

 耳朶に響くイントネーションはどこか掠れていて、ひゅっ、とショーティは息を飲んだ。それだけで熱が膨張する。
 手が何かを求めるようにシーツを滑り、握りしめた瞬間、アーネストが最奥に触れる。

「っあ!!……」
「うん…」

 跳ねたのは躰と汗と、香り。
 幾度も繰り返される刺激に、更なるその快楽に、

「アーネスト…そ、…あっ!」
「……ここ?」
「んーっ!」

 シーツから離れた手がアーネストの腕を握りしめる。きつく、爪あとさえも残すかのように強い力は既に制御不能で、頭を左右に振る。そして、

「ぁ、あ!ああっ——————っ!!」

 幾度めかのその刺激に躰中の熱が一気に溢れ出した。背が弓なりにのけぞり、—————すとん、とシーツの上に落ちる。

 心臓は早鐘のように打ち付け、弛緩した躰はただ酸素だけを求めて息を継ぎ、ふと、髪をかき分けるような感触に空ろな瞳を開けると、すぐそばで世界一きれいだと思えるアーネストの面立ちが小さく微笑を覗かせる。

 誰もを魅了するその笑顔の、けれど、誰もが見られるわけではないその笑顔に、胸が甘く痺れた。

 そして髪に、額に、頬に、軽い口付けを覚え、ゆっくりとアーネストが身を起こす。が、それを遮るようにショーティは、その両腕をつかんだ。

「…溶けて…混ざるほどに感じていたい…会いたかったんだ…すごく、会いたかった」

 他には何もない。

 ただ、目の前にある微笑みだけが、今のショーティには真実で、

「僕もだよ」

 掠れるような響きに瞬間、笑みをほころばせるのだった。

 その後のことはショーティはほとんど覚えていなかった。

 平気だからとか、大丈夫だからとか、やめないでだとか、もっと、と促すような甘えるような言葉は普段のショーティから発せられることのないもので、そもそも、欲しかったのはアーネストの方も同じであったために、頑なに言い張るショーティの言葉を利用して、思うがままに彼を—————抱いた……。
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