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射手の統領003 親父の遺言
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射手の統領
Zu-Y
№3 親父の遺言
翌日、俺は再び叔父貴たちに表座敷に呼ばれた。
サヤ姉とサジ姉もいる。昨日と同じ配置だ。
二の叔父貴が切り出す。
「アタル、昨日遅くまでわれらは話し合ったのだがな、やはり黄金龍討伐はまだ早いと思うぞ。」
「理由は?」
「黄金龍の装甲はとても固い。確実に弾かれる。致命傷が与えられなければ屠ることはできん。反撃を受けてしまうだろう。そしたら兄貴の二の舞だ。」
「急所を射抜くには、精密狙いの技量が不可欠だ。その技量が、まだ十分ではあるまい。」三の叔父貴が続く。
「あら、叔父様、アタルは的に百発百中よ。ね?サジ。」
こくり。
「的に百発百中でもな、的心ではない。黄金龍の急所を確実に射抜くには、的心に百発百中でもまだ足りない。精密狙いを極めた兄貴でも敗れたのだ。」
「三の叔父貴どの、親父どのは技を極めたなどとは考えてなかった。さらに技を磨くつもりであったぞ。極めたと思ったらそこで終わりだ。と常日頃言っていた。俺はその言葉を親父どのの遺言と思って肝に銘じている。」
「これは一本取られたな。失言であった。許せ。」
「叔父様…アタルは…わざと…。」は?なんですと?
「そうね、私もそう思うわ。スレスレ具合がいつも一緒だもの。ね?サジ。」
こくり。
やばい、やばい、やばい、やばい…バレてる?バレてるのか?バレてるな。このふたり、只者じゃねぇぇぇ。汗
「サジ姉、サヤ姉、何のことかな?」眼が泳いでしまっている俺。バレバレである。
「あら、とぼける気?」
「隠しても…無駄…。」
「くっ。…いつから、気付いてた?」
「5年位前かしらね。的心を外さなくなってからよ。ね?サジ。」
こくり。
「最初は…的枠に…。でも…抜くの…大変…。」
「アタル、それからすぐスレスレにしたわよね。ね?サジ。」
こくり。
「それは真か?」
「それが真なら、われらの眼は節穴であったぞ。」
「たまにしか来ぬ、しかも門外のふたりが気付いていたと言うに…。」
叔父貴3人衆、露骨に凹む。
「そりゃあ、叔父貴どのたちは、目指す技が違うからな。精密狙いはそれなりに、と言う程度だったろう?
でもふたりは門外だからこそ、たまに来たときに見る弓の技が珍しかったんじゃないの?だからじっくり見てて、気付いたんだろうな。
それにふたりともユノベの血を引いてるしな。とは言っても、並大抵の眼力じゃないのは確かだ。」
「それだけ…じゃ…ない…。」
「サジ姉、他は何だ?」
「…。」視線を逸らすサジ姉。…あれ、サジ姉、何で急に赤くなってんの?
「バカ!鈍感!」
「え?サヤ姉???」ん?いきなり不機嫌になった?…あれ?サヤ姉も赤くなってら。
「うるさい!自分で考えなさい。」
俺、なんか気に障ること言った?あ、さっきの解説が、上から目線だったからか。
「ところでアタルよ、なぜそんなことをしていたのだ?」末の叔父貴、ナイス話題転換!
「親父どのの遺言…なのかな。
的心に百発百中になったら、その技量を維持しつつ、まわりにその技量を悟られないよう、稽古を工夫しろと。叔父貴どのたちにもバレないようにしろと。」
「「「兄貴らしいわ。」」」
見事にハモったな。流石だ。
「さすれば、認めぬ訳には参らぬな。」
「アタル、具体的にはこれからどうするのだ?」
「流邏矢で樹海の向こうに飛んだら霊峰に登る。適当なところで乙矢を登録し直して甲矢で館に戻る。8合目まではそれの繰り返しだな。
で、黄金龍の巣を特定したら、そこで乙矢を再登録していったん戻る。親父どのの墓前に必勝を祈願してから垢離場で身を清め、翌日には奇襲を仕掛ける。」
ここでいったん区切り、叔父貴たちを見まわしてから、
「あとは封龍矢の金剛鏑に絡めとり、わが眷属としてくれるわ。」
「待て、眷属にすると?兄貴の仇ぞ。殺らぬのか?」
「二の叔父貴どの、黄金龍は親父どのを負かした相手だぞ。相当な力量を持っている。わが眷属にしない手はない。」
「しかし…。」
「末の叔父貴どの、大局を見よ。とはこれもまた親父どのの教えだ。
親父どのなら、黄金龍を殺すより、眷属にしてこき使った方が、褒めてくれると思うぞ。」
「その通りだ。われらより読みが深い。さすがはユノベの次期統領じゃ。」
「三の叔父貴どの、ありがとう。でもそのセリフは彼奴を仕留めてきてからでいい。」
「何を言っておる。そのときはもっと褒めてやるわ。わっはっはっ…愉快じゃ。」
「ではさっそく行って来る。今日は5合目あたりまでかな。」
「サヤ…。私たちも…行く…。」
「そうね。」
「いや、俺ひとりで行って来る。」
「アタル、私たちはあなたの成人の試練の介添としてトノベとヤクシから派遣されて来たのよ。ね?サジ。」
こくり。
「でもなぁ。」
「サヤ…。アタルが…生意気…。」
「そうね。」
「そうじゃなくて、大事なふたりを危険にさらしたくないんだよ。」
「え?大事?」「え…?大事…?」
ふたりそろって赤くなってモジモジしだす。
「「「お前ら、続きは外でやれ。」」」
叔父貴たちに、表座敷から追い出された。
結局、黄金龍の巣を見付けるまでは、基本は登山だけなので俺ひとりで行くことになった。
最初は渋ってたふたりだが、8合目までは山登りだけだし、黄金龍との決戦までは英気を養って、いざと言うときに助けて欲しい。と言うと、ニコニコしながら同意してくれた。くっ、くっ、くっ。ちょろい。
今回、3年ぶりに会ったから忘れてたが、ふたりの操縦方法を思い出した。頼る。甘える。ベタ褒める。恥ずい台詞を面と向かって投げ掛ける。
「さてと、行って来るか。」俺は流邏矢を引いて、樹海の向こうへと飛んだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
Zu-Y
№3 親父の遺言
翌日、俺は再び叔父貴たちに表座敷に呼ばれた。
サヤ姉とサジ姉もいる。昨日と同じ配置だ。
二の叔父貴が切り出す。
「アタル、昨日遅くまでわれらは話し合ったのだがな、やはり黄金龍討伐はまだ早いと思うぞ。」
「理由は?」
「黄金龍の装甲はとても固い。確実に弾かれる。致命傷が与えられなければ屠ることはできん。反撃を受けてしまうだろう。そしたら兄貴の二の舞だ。」
「急所を射抜くには、精密狙いの技量が不可欠だ。その技量が、まだ十分ではあるまい。」三の叔父貴が続く。
「あら、叔父様、アタルは的に百発百中よ。ね?サジ。」
こくり。
「的に百発百中でもな、的心ではない。黄金龍の急所を確実に射抜くには、的心に百発百中でもまだ足りない。精密狙いを極めた兄貴でも敗れたのだ。」
「三の叔父貴どの、親父どのは技を極めたなどとは考えてなかった。さらに技を磨くつもりであったぞ。極めたと思ったらそこで終わりだ。と常日頃言っていた。俺はその言葉を親父どのの遺言と思って肝に銘じている。」
「これは一本取られたな。失言であった。許せ。」
「叔父様…アタルは…わざと…。」は?なんですと?
「そうね、私もそう思うわ。スレスレ具合がいつも一緒だもの。ね?サジ。」
こくり。
やばい、やばい、やばい、やばい…バレてる?バレてるのか?バレてるな。このふたり、只者じゃねぇぇぇ。汗
「サジ姉、サヤ姉、何のことかな?」眼が泳いでしまっている俺。バレバレである。
「あら、とぼける気?」
「隠しても…無駄…。」
「くっ。…いつから、気付いてた?」
「5年位前かしらね。的心を外さなくなってからよ。ね?サジ。」
こくり。
「最初は…的枠に…。でも…抜くの…大変…。」
「アタル、それからすぐスレスレにしたわよね。ね?サジ。」
こくり。
「それは真か?」
「それが真なら、われらの眼は節穴であったぞ。」
「たまにしか来ぬ、しかも門外のふたりが気付いていたと言うに…。」
叔父貴3人衆、露骨に凹む。
「そりゃあ、叔父貴どのたちは、目指す技が違うからな。精密狙いはそれなりに、と言う程度だったろう?
でもふたりは門外だからこそ、たまに来たときに見る弓の技が珍しかったんじゃないの?だからじっくり見てて、気付いたんだろうな。
それにふたりともユノベの血を引いてるしな。とは言っても、並大抵の眼力じゃないのは確かだ。」
「それだけ…じゃ…ない…。」
「サジ姉、他は何だ?」
「…。」視線を逸らすサジ姉。…あれ、サジ姉、何で急に赤くなってんの?
「バカ!鈍感!」
「え?サヤ姉???」ん?いきなり不機嫌になった?…あれ?サヤ姉も赤くなってら。
「うるさい!自分で考えなさい。」
俺、なんか気に障ること言った?あ、さっきの解説が、上から目線だったからか。
「ところでアタルよ、なぜそんなことをしていたのだ?」末の叔父貴、ナイス話題転換!
「親父どのの遺言…なのかな。
的心に百発百中になったら、その技量を維持しつつ、まわりにその技量を悟られないよう、稽古を工夫しろと。叔父貴どのたちにもバレないようにしろと。」
「「「兄貴らしいわ。」」」
見事にハモったな。流石だ。
「さすれば、認めぬ訳には参らぬな。」
「アタル、具体的にはこれからどうするのだ?」
「流邏矢で樹海の向こうに飛んだら霊峰に登る。適当なところで乙矢を登録し直して甲矢で館に戻る。8合目まではそれの繰り返しだな。
で、黄金龍の巣を特定したら、そこで乙矢を再登録していったん戻る。親父どのの墓前に必勝を祈願してから垢離場で身を清め、翌日には奇襲を仕掛ける。」
ここでいったん区切り、叔父貴たちを見まわしてから、
「あとは封龍矢の金剛鏑に絡めとり、わが眷属としてくれるわ。」
「待て、眷属にすると?兄貴の仇ぞ。殺らぬのか?」
「二の叔父貴どの、黄金龍は親父どのを負かした相手だぞ。相当な力量を持っている。わが眷属にしない手はない。」
「しかし…。」
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「サヤ…。私たちも…行く…。」
「そうね。」
「いや、俺ひとりで行って来る。」
「アタル、私たちはあなたの成人の試練の介添としてトノベとヤクシから派遣されて来たのよ。ね?サジ。」
こくり。
「でもなぁ。」
「サヤ…。アタルが…生意気…。」
「そうね。」
「そうじゃなくて、大事なふたりを危険にさらしたくないんだよ。」
「え?大事?」「え…?大事…?」
ふたりそろって赤くなってモジモジしだす。
「「「お前ら、続きは外でやれ。」」」
叔父貴たちに、表座敷から追い出された。
結局、黄金龍の巣を見付けるまでは、基本は登山だけなので俺ひとりで行くことになった。
最初は渋ってたふたりだが、8合目までは山登りだけだし、黄金龍との決戦までは英気を養って、いざと言うときに助けて欲しい。と言うと、ニコニコしながら同意してくれた。くっ、くっ、くっ。ちょろい。
今回、3年ぶりに会ったから忘れてたが、ふたりの操縦方法を思い出した。頼る。甘える。ベタ褒める。恥ずい台詞を面と向かって投げ掛ける。
「さてと、行って来るか。」俺は流邏矢を引いて、樹海の向こうへと飛んだ。
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