射手の統領

Zu-Y

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射手の統領005 黄金龍攻略

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射手の統領
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№5 黄金龍攻略

 いよいよ奇襲戦だ。最初にサヤ姉とサジ姉のふたりと最終打ち合わせだ。
「黄金龍が眠ってたらそのまま封龍矢で一気に仕留める。もちろんふたりは介添だから、余程のことがない限り、手を出さないでもらいたい。
 もし黄金龍が起きてたら、速攻で逃げる。そのときはすぐ俺にしがみついてくれ。なるべく早く流邏矢を使いたいからさ。」
「逃げる…の…?」
「逃げるよ。黄金龍相手に、面と向かって挑んで、確実に倒す力は今の俺にはないね。」

「あら、冷静ね。私たちもいるのよ。」
「ふたりは介添だろ?ハナから3人で戦う選択肢はないよ。それに黄金龍と戦闘になったら全員が無事で帰還できる保証はない。俺はまだしもふたりを危険にさらすことはできないよ。あくまでも眠ってるところを奇襲するのがこの作戦の大前提だ。」
「確かにそうね。」

「サヤ…。アタルは…ちゃんと…考え…てた…。」
「そうね。」
 昨日の晩、ポチリのことをふたりに許してもらった後に、ようやく考えがまとまったんだけどな。

 奇襲戦にあたっての俺たちの装備だが、俺は操龍弓に、戻りの箙には金剛鏑を装着した封龍矢一手、流邏矢一手、通常矢多数。
 金剛鏑を装着した封龍矢を、操龍弓で黄金龍の急所の眉間に射込めば、金剛鏑に神龍を封印できる。
 防具は射手の軽鎧、鎖鉢金、正射の弽、疾風の靴。

 サヤ姉は、雷神の太刀と風神の脇差の大小に、剣士の鎖帷子、鎖鉢金、連撃の籠手、疾風の靴。雷神の太刀は雷属性で、風神の脇差は風属性だ。

 サジ姉は、医薬術を使うための薬師の杖と典医の薬嚢に、術士のローブ、鎖鉢金、オペの手袋、疾風の靴。薬師の杖は、薬嚢の中のいろいろな薬を術として放出し、対象者を回復させる。

 霊峰の8合目は、高地で酸素が薄いをことを踏まえ、あらかじめ酸素剤を服用。これで3時間は大丈夫だ。まったく、サジ姉の典医の薬嚢にはどんな薬でも入ってるな。

 流邏矢の瞬間移動用に、3人ともハーネスを装備の上から着込み、金具で固定。さらに両方から抱き付いてもらって、流邏矢を放つ。これで8合目の巣の前に瞬間移動。

 ハーネスの金具を外し、慎重に巣の中の様子をうかがい、そろそろと奥へ進むと、黄金龍はやはり眠っていた。操龍弓に封龍矢を番え、丹田に気を込めて打ち起こす。大三へ移行。と、そのとき!

「誰じゃ?」黄金龍が首をもたげる。「昨日の子ネズミがやはり来おったか。」
くっ、待ち伏せか。

「こっちよ!」サヤ姉が飛び出し、黄金龍の後ろに回り込んで注意を引いた。
 黄金龍が起きてたら撤収するって言っただろ!

 黄金龍は、サヤ姉に対して電撃のブレスを続け様に放つが、疾風の靴の効果もあって、サヤ姉は巧みなステップでブレスを躱す。
 しかし、斬撃を打ち込める程には近付けない。

 黄金龍は尻尾を振り払った。不意打ちである。雷撃ブレスを警戒していたサヤ姉は、回避行動がワンテンポ遅れ、直撃は躱したものの、尻尾で払われ転倒した。

 サジ姉がすかさず回復の術を掛けるが、サヤ姉はまだ立ち直れていない。俺は、弓の攻撃を中断し、サヤ姉の救出に向かう。

 サジ姉が、黄金龍に閃光の術を放つと、黄金龍は横からの不意打ちに怯んだ。薬嚢には薬だけじゃなく、閃光玉も入れていたようだ。ナイスだ。
 ってか、ふたりともハナから戦う気満々じゃん。

「おのれ、ちょこまかと。」
 グルルルと不気味な唸り声が黄金龍の不機嫌さを表しているようだ。
 黄金龍は気を溜め始めた。気を高めて一気に放出する気らしい。大技だ。

 俺はそのまま移動し、サヤ姉の前に立ち塞がって、改めて黄金龍に向けて操龍弓を引き絞った。神龍たる黄金龍の高まる気に、操龍弓が物凄く呼応している。封龍矢が信じられない量の気を纏った。

 黄金龍が目を見開き、固まった。操龍弓で引き絞った封龍矢を見つめる。
「まさか、封龍矢か?」

 俺は急所の眉間目掛けて封龍矢を放った。黄金龍の気に呼応した操龍弓から放たれ、大量の気を纏った封龍矢の矢勢は凄まじい。
 封龍矢に装着した金剛鏑が、見事に黄金龍の眉間にめり込むと、黄金龍は黄色く発光しだした。
「グオオオオオ。」
 凄まじい咆哮を上げると、発光していた黄金龍の全身は、無数の黄色い光の粒子となり、その粒子が渦を巻きながら金剛鏑に吸い込まれて行く。

 凄ぇ。

 サヤ姉の安否が気になり振り返ると、ちょうど立ち上がるところだったので手を貸す。
「サヤ姉、大丈夫か?」
「躱したから掠っただけなのに、結構なダメージを受けたわ。」
 そこへサジ姉も走って来る。
「サジの回復の術のお陰よ。ありがとうね。」
 こくり。

「まったく、無茶してくれるなよ。マジで心配したんだからな。
 でもふたりのおかげで黄金龍を倒すことができた。」
 俺は思わず両腕でふたりを抱き締めた。
「「ふぇっ。」」
 あ、ふたりとも、耳が真っ赤だ。こりゃ照れてるな。

 ちょうどそのとき、黄金龍に放った封龍矢が、戻りの箙に帰って来た。そのタイミングでふたりをハグから解放。
 封龍矢の先端の金剛鏑は黄色に輝いている。
 金剛鏑を封龍矢から取り外し、3人で見ていると、黄色い光は金剛鏑の中で渦を巻き出し、それからだんだん龍の形になって来た。黄金龍だ。すると黄金龍が思念で話し掛けて来た。

『まさか、操龍弓と封龍矢の遣い手がまだいたとはの。8年前のあの男が最後の遣い手だと思っておったわ。』
「俺はその息子だ。」
『そうか、奴も強かったぞ。おそらくお前より技量は上であったろうな。』
「いつかは越えてやるさ。」
『しかしな、お前の技量はまだあの男には及ばぬが、総合的にはお前の方が強いと言えような。』
「そんなことは…。」

『8年前の戦いも今回と同じようであった。お前と同じように、あの男も仲間を救おうとしたのだ。
 あの男は盾になって余に敗れた。お前は反撃して余に勝った。守りも大切ではあるが、勝ちたければまず攻めよ。』
「肝に銘じるよ。」

『ところで余をどうする?父親の仇に殺すか?』
「いや、最初から殺すつもりはなかったさ。あの親父に勝った実力者だからな、俺の眷属にするつもりで来た。」
『ふん、眷属か。…まぁしかし、余は負けたのだ。妥当であるな。』
 おっと、意外とあっさり承諾したな。
『では、ご主人、新たに名を付けてくれ。』

「んー、そうだな。…ライでいいか?雷と言う意味だ。」
『それでよい。』
「ライ、これからよろしくな。」
『こちらこそよろしく頼む。それから、ふたりの奥方もよろしくな。』
 ライの奴、いきなりぶっ込みやがった。
「お、お、お、奥方じゃないし。先の話だし。」サヤ姉がツンデレる。
「まだ…違う…。あっ…その…。」サジ姉がテンパる。
『まだでもいずれ奥方になるのなら同じことだ。』
 ライは、さらにしれっと追い討ち掛けやがった。狙ってるのか?それとも素なのか?

「あー、俺のことはアタルと呼んでくれ。」
『分かった。』
 取り敢えず話題を変えたが、ふたりは真っ赤だった。こちらをチラ見して来るのが何ともかわいい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
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