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射手の統領048 キノベの事情
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射手の統領
Zu-Y
№48 キノベの事情
俺たち3人はアキナの部屋で、タヅナからキノベの状況を聞いているのだが、いろいろな要素が結構ややこしく絡み合っていた。
かいつまんで言うとこうだ。
キノベは強力な騎馬隊を持つと同時に陸運業も営むという、武家と商家の二面性を持っている。
タヅナの姉で長女のハミは陸運部門の責任者、タヅナの兄で嫡男のトウラクは騎馬隊部門の責任者。普通に考えれば、嫡男のトウラクが世継な訳だが、トウラクは陸運部門を蔑ろにする傾向があるので、キノベの統領はトウラクを世継候補に留め置いていた。
大規模な戦乱がないこのご時世、世間の需要は騎馬隊よりも陸運業にある。ハミは積極的に陸運業を広げており、タヅナがその一端を担っていることもあって、キノベの陸運部門の成果は確実に上がっている。キノベの統領は、陸運部門を統括するハミの手腕を高く評価し、つい最近、ハミを世継候補に引き上げた。
これが面白くないのは、騎馬部門を統括する嫡男のトウラクである。まぁ当然だわな。
ハミは世継候補にされて困惑した。
ハミは自分が姉とは言え、トウラクが嫡男なのだから、トウラクこそがキノベを継ぐべきで、そのためにはトウラクに陸運部門をもっと見直して欲しいと思っている。タヅナもハミと同意見だ。
しかし、ハミが世継候補にされたことで、トウラクは意固地になり、元から軽んじていた陸運部門に対し、完全にそっぽを向いてしまったのである。
トウラクにして見れば、ハミもだが、ハミの右腕として実績を上げているタヅナも面白くない。タヅナが持って来たと言うだけで、ユノベ一派との同盟話など、ハナから気に入らない。
「なるほど、拗れてるなぁ。」
「父上は同盟に乗り気だと思うわぁ。でも、兄上が反対したのでぇ、ここでまた姉上と同じ意見にするとぉ、兄上の立場がなくなってしまうのでぇ、保留にせざるを得ないんじゃないかしらぁ。」
~~タヅナ目線・5日前~~
廻船が東都に着いた昨日は、タヅナ隊は馬の世話と馬車のメンテをして、東都営業所に泊まった。
明けて今日、タヅナは流邏石でミーブに帰還した。すぐにキノベの統領に、商隊陸運任務の完了報告に行った。そこには、陸運部門の責任者のハミと、騎馬隊部門の責任者のトウラクもいた。
任務についての報告を終え、タヅナは切り出した。
「父上ぇ、もうひとつ、大事なご報告がありますぅ。」
「ほう。なんだ?」
タヅナは、父上のキノベ統領、姉上のハミ、嫡男で兄上のトウラクに、
商隊護衛のセプトのリーダーのアタルが、ユノベの次期統領だったこと。
ユノベは、従来のトノベ、ヤクシとの同盟に、タテベを加えたこと。
そこへキノベも加わって欲しいと、アタルから直接打診があったこと。
を伝えた。
「そなたら、どう思う?どちらが継ぐにしろ、統領は決断せねばならん。ハミ、トウラクの順で存念を述べよ。」
この順にトウラクは不満気だ。
「同盟の条件を聞いてからではないと何とも言えませんが、対等な同盟ならいいお話だと思います。」
「対等なものか。キノベが吸収されるようなものだぞ。」
「違いますぅ。アタルは、対等な同盟を望んでますぅ。」
それからタヅナは、
アタルがフジの霊山の黄金龍を眷属としたこと。
その結果、アタルが属性攻撃を得たこと。
黄金龍のような神龍が和の国のあちこちにいて、黄金龍を含めて7体いるので七神龍と言うこと。
アタルはそれらすべてを攻略する旅に出ること。
山髙屋の商隊護衛で商都に赴いたのは、ビワの聖湖の蒼碧龍を攻略するのが目的であること。
アキナとタヅナの話を聞いて、今後の七神龍攻略の旅に、交易の要素を入れることにしたこと。
その交易用の馬車の工夫が、素人が考えたとは思えないほど理に適ったものだったこと。
商都への道中で、御者の技をすぐに会得したこと。
その流れで、キノベとの同盟と山髙屋との提携にもアタルが意欲的であること。
これらを父上に、そして姉上と兄上に伝えた。
「父上ぇ、私はセプトに加わってぇ、アタルの七神龍攻略の旅をぉ、機動と輸送の面でぇ、助けたいと思いますぅ。その方が同盟にも貢献できますぅ。」
「ちょっと待って。タヅナ隊はどうするの?」ハミが尋ねた。
「アオゲに任せますぅ。」
「タヅナ、本気なの?」
「本気ですぅ。」
「まったく姉を差し置いて先に嫁く気満々だなんて。」苦笑するハミ。
「ちょっと待て。なぜ同盟前提で話が進むんだ?タヅナがユノベに取られるのなら、それこそユノベに従属するようなものだ。」
「ユノベへの従属ではないですぅ。アタルはキノベにぃ、馬の技を習いに来ると言ってますぅ。」
「なんだと?」トウラクは口走ったが、ハミは眼を見開いただけ。
どちらも驚いたが、感情を顕わにしたトウラクの負けだ。キノベの統領は、冷静にふたりを見比べ、本心では期待を掛けている嫡男のトウラクの反応に嘆息した。
「アタルはキノベを語る流れ者にぃ、いい加減な馬の技を教えられたせいでぇ、馬の技が苦手でしたぁ。でも商都までの旅でぇ、タヅナ隊で御者の技を教えたらぁ、すぐに上達しましたぁ。天賦の才がありますぅ。アオゲたちがぁ、キノベに学び直しに来いと勧めてぇ、アタルがその気になったのですぅ。」
「まさか、あのアオゲたちが認めたということなの?」ハミが乗り出して聞いて来た。
「上達ぶりとぉ、馬車の工夫にぃ、すっかり惚れ込んでますぅ。」
「そう言えば、ユノベの次期統領は、最近立て続けにトノベ、ヤクシ、タテベの姫を迎えているな。ハーレム野郎にタヅナをやれるか!」
「兄上ぇ、アタルは人物的に好ましい人ですぅ。ハーレムとかぁ、そんな色狂いではないですぅ。」
何とかご破算にしようとするトウラクと、必死に認めさせようとするタヅナの攻防である。
「ふむ。ハミの言い分もトウラクの言い分も一理あるな。同盟についてはしばらく保留だ。その代わり、アタルどのがキノベに来ると言うなら受け入れよう。アタルどのの人となりを皆で見極めようではないか。
トウラク、アタルどのが来たらお前が面倒を見てやれ。ゆめゆめ、ユノベの次期統領と言うことを忘れるなよ。」
「父上、ちょっと待ってください。アタルとやらは交易に興味があるのですよ。騎馬の技ではなくて御者の技でしょう?ならば、姉上かタヅナが適任ではありませんか?」
「愚か者!アタルどのと言わんか。次期統領だと言うことを忘れるなと、たった今、申したではないか。」
「申し訳ありません。」
「タヅナによると、御者の技はすでにひと通り身に付けたと言うではないか。それでも学びに来るのだから、学びたいのは騎馬の技であろう?」
「しかし…。」
「トウラクよ、お前もキノベの世継候補のひとりなのだぞ。まさか世継を諦めた訳ではあるまい?」
「なんで世継の話に飛ぶのですか?」
「分からんのか?このうつけ者が!世継を目指すなら統領になったときのことを考えよと言っておるのだ!」
「?」トウラクはそれでもピンと来ない。その様子を見て、キノベ統領は落胆した。
「将来の統領同士で親交を深めるんですよぉ。しかも兄上がアタルを教える立場なのですぅ。」
~~アタル目線・現在~~
「要するに俺がトウラクどのと、信頼関係を築けばいい訳だな?」
「そうなのよぉ。大変なお役目をお願いすることになってしまってぇ、ごめんなさいねぇ。」
「大したことではない。トウラクどのをキノベの次期統領として遇するだけだ。」
「えぇ?」
「ハミどのもタヅナもそれを望んでいるのだろう?」
「そうだけどぉ。」
「まぁ任せておけ。早速明日から伺おう。ところでキノベは、本拠に流邏石を登録させてくれるだろうか?」
「学びに来るのだからぁ、大丈夫だと思うわぁ。」
「ではこれを。もしダメなら2~3日掛けて歩いて行くさ。」俺は新品の流邏石を1つタヅナに渡した。
アキナの部屋を出て、俺たちは道具屋へ行った。新しい流邏石が残り少ないので20個買い足した。それと身代わりのペンダントが3つあったのですべて買った。定価だと、大金貨3枚と金貨5枚だが、タケクラさんの紹介で一割引だ。大金貨3枚、金貨1枚、大銀貨5枚を支払った。
今夜は、俺はユノベ本拠に戻り、タヅナはミーブのキノベ本拠へ行って俺の来訪を告げる。アキナは東都総本店に帰り、明日以降も業務の引継ぎだ。
明日、俺とタヅナは再び東都で合流するのだが、俺の流邏石は東都ギルド、タヅナの流邏石は東都営業所、明日は合流しないが、アキナの流邏石は東都総本店。登録先がバラバラだ。
そこで今後のことも考えて、東都ギルドで新品の流邏石2個を登録し、アキナとタヅナにそれぞれ渡して、解散した。
ふたりと別れ、流邏石でテンバのユノベ本拠館に帰る。
「「アタル兄、お帰り~。」」キョウちゃんズが飛びついて来た。あれ、胸がやや膨らんでるぞ?パッド入りか!ふたりが胸を突き出すポーズを取る。
「どや?」「どない?」
「パッド入りブラか?」
「それ言うたら元も子もないやん。」「気付かん振りしてぇな。」
「ごめん、ごめん。今朝までの幼児体型より、断然女の子っぽいぞ。」
「「いけずー!」」キョウちゃんズがむくれた。
「アタル、あんたねぇ、少しは気を遣った言い方をしなさいよ。」
「幼児…体型は…さすがに…ひどい…。」
「デリカシーの欠片もないな。」
「え?え?いや、そういう意味じゃなくて。あ、そうだ!ブラ見せてよ。」
「きゃー、へんたーい!」「きゃー、ロリコーン!」
「今日初めてブラを付けた女の子に、ブラを見せろとは何たる暴言。」
「どんどん…墓穴を…掘ってく…。」
「アタル、あんたはもう、お黙りなさいな。」
「はい。」キョウちゃんズがニマニマと笑っている。
「「アタル兄、あとでね。」」ふたりが耳元で囁いた。
不覚にもドキッとしてしまったではないか。不甲斐ないぞ、俺!それにしても何と言う小悪魔どもだ!
白湯に行くと、キョウちゃんズがついて来ようとしたが、嫁3人に止められていた。
「今日は、見せちゃだめよ。」
「じらす…方が…効果的…。」
「すぐ見せてはもったいないぞ。」
嫁3人はキョウちゃんズに、いったい何を吹き込んでんだか。苦笑
5人はそのまま赤湯に行ったので、その分、俺は白湯でゆっくりできた。
皆で夕餉を摂った後、俺は部屋に戻った。この夜はキョウちゃんズは来なかった。あとで聞いたのだが、ブラを付けたらもう子供ではないということで、サヤ姉の部屋で、淑女の心得とやらを、嫁3人からレクチャーされていたそうだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/4/10
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№48 キノベの事情
俺たち3人はアキナの部屋で、タヅナからキノベの状況を聞いているのだが、いろいろな要素が結構ややこしく絡み合っていた。
かいつまんで言うとこうだ。
キノベは強力な騎馬隊を持つと同時に陸運業も営むという、武家と商家の二面性を持っている。
タヅナの姉で長女のハミは陸運部門の責任者、タヅナの兄で嫡男のトウラクは騎馬隊部門の責任者。普通に考えれば、嫡男のトウラクが世継な訳だが、トウラクは陸運部門を蔑ろにする傾向があるので、キノベの統領はトウラクを世継候補に留め置いていた。
大規模な戦乱がないこのご時世、世間の需要は騎馬隊よりも陸運業にある。ハミは積極的に陸運業を広げており、タヅナがその一端を担っていることもあって、キノベの陸運部門の成果は確実に上がっている。キノベの統領は、陸運部門を統括するハミの手腕を高く評価し、つい最近、ハミを世継候補に引き上げた。
これが面白くないのは、騎馬部門を統括する嫡男のトウラクである。まぁ当然だわな。
ハミは世継候補にされて困惑した。
ハミは自分が姉とは言え、トウラクが嫡男なのだから、トウラクこそがキノベを継ぐべきで、そのためにはトウラクに陸運部門をもっと見直して欲しいと思っている。タヅナもハミと同意見だ。
しかし、ハミが世継候補にされたことで、トウラクは意固地になり、元から軽んじていた陸運部門に対し、完全にそっぽを向いてしまったのである。
トウラクにして見れば、ハミもだが、ハミの右腕として実績を上げているタヅナも面白くない。タヅナが持って来たと言うだけで、ユノベ一派との同盟話など、ハナから気に入らない。
「なるほど、拗れてるなぁ。」
「父上は同盟に乗り気だと思うわぁ。でも、兄上が反対したのでぇ、ここでまた姉上と同じ意見にするとぉ、兄上の立場がなくなってしまうのでぇ、保留にせざるを得ないんじゃないかしらぁ。」
~~タヅナ目線・5日前~~
廻船が東都に着いた昨日は、タヅナ隊は馬の世話と馬車のメンテをして、東都営業所に泊まった。
明けて今日、タヅナは流邏石でミーブに帰還した。すぐにキノベの統領に、商隊陸運任務の完了報告に行った。そこには、陸運部門の責任者のハミと、騎馬隊部門の責任者のトウラクもいた。
任務についての報告を終え、タヅナは切り出した。
「父上ぇ、もうひとつ、大事なご報告がありますぅ。」
「ほう。なんだ?」
タヅナは、父上のキノベ統領、姉上のハミ、嫡男で兄上のトウラクに、
商隊護衛のセプトのリーダーのアタルが、ユノベの次期統領だったこと。
ユノベは、従来のトノベ、ヤクシとの同盟に、タテベを加えたこと。
そこへキノベも加わって欲しいと、アタルから直接打診があったこと。
を伝えた。
「そなたら、どう思う?どちらが継ぐにしろ、統領は決断せねばならん。ハミ、トウラクの順で存念を述べよ。」
この順にトウラクは不満気だ。
「同盟の条件を聞いてからではないと何とも言えませんが、対等な同盟ならいいお話だと思います。」
「対等なものか。キノベが吸収されるようなものだぞ。」
「違いますぅ。アタルは、対等な同盟を望んでますぅ。」
それからタヅナは、
アタルがフジの霊山の黄金龍を眷属としたこと。
その結果、アタルが属性攻撃を得たこと。
黄金龍のような神龍が和の国のあちこちにいて、黄金龍を含めて7体いるので七神龍と言うこと。
アタルはそれらすべてを攻略する旅に出ること。
山髙屋の商隊護衛で商都に赴いたのは、ビワの聖湖の蒼碧龍を攻略するのが目的であること。
アキナとタヅナの話を聞いて、今後の七神龍攻略の旅に、交易の要素を入れることにしたこと。
その交易用の馬車の工夫が、素人が考えたとは思えないほど理に適ったものだったこと。
商都への道中で、御者の技をすぐに会得したこと。
その流れで、キノベとの同盟と山髙屋との提携にもアタルが意欲的であること。
これらを父上に、そして姉上と兄上に伝えた。
「父上ぇ、私はセプトに加わってぇ、アタルの七神龍攻略の旅をぉ、機動と輸送の面でぇ、助けたいと思いますぅ。その方が同盟にも貢献できますぅ。」
「ちょっと待って。タヅナ隊はどうするの?」ハミが尋ねた。
「アオゲに任せますぅ。」
「タヅナ、本気なの?」
「本気ですぅ。」
「まったく姉を差し置いて先に嫁く気満々だなんて。」苦笑するハミ。
「ちょっと待て。なぜ同盟前提で話が進むんだ?タヅナがユノベに取られるのなら、それこそユノベに従属するようなものだ。」
「ユノベへの従属ではないですぅ。アタルはキノベにぃ、馬の技を習いに来ると言ってますぅ。」
「なんだと?」トウラクは口走ったが、ハミは眼を見開いただけ。
どちらも驚いたが、感情を顕わにしたトウラクの負けだ。キノベの統領は、冷静にふたりを見比べ、本心では期待を掛けている嫡男のトウラクの反応に嘆息した。
「アタルはキノベを語る流れ者にぃ、いい加減な馬の技を教えられたせいでぇ、馬の技が苦手でしたぁ。でも商都までの旅でぇ、タヅナ隊で御者の技を教えたらぁ、すぐに上達しましたぁ。天賦の才がありますぅ。アオゲたちがぁ、キノベに学び直しに来いと勧めてぇ、アタルがその気になったのですぅ。」
「まさか、あのアオゲたちが認めたということなの?」ハミが乗り出して聞いて来た。
「上達ぶりとぉ、馬車の工夫にぃ、すっかり惚れ込んでますぅ。」
「そう言えば、ユノベの次期統領は、最近立て続けにトノベ、ヤクシ、タテベの姫を迎えているな。ハーレム野郎にタヅナをやれるか!」
「兄上ぇ、アタルは人物的に好ましい人ですぅ。ハーレムとかぁ、そんな色狂いではないですぅ。」
何とかご破算にしようとするトウラクと、必死に認めさせようとするタヅナの攻防である。
「ふむ。ハミの言い分もトウラクの言い分も一理あるな。同盟についてはしばらく保留だ。その代わり、アタルどのがキノベに来ると言うなら受け入れよう。アタルどのの人となりを皆で見極めようではないか。
トウラク、アタルどのが来たらお前が面倒を見てやれ。ゆめゆめ、ユノベの次期統領と言うことを忘れるなよ。」
「父上、ちょっと待ってください。アタルとやらは交易に興味があるのですよ。騎馬の技ではなくて御者の技でしょう?ならば、姉上かタヅナが適任ではありませんか?」
「愚か者!アタルどのと言わんか。次期統領だと言うことを忘れるなと、たった今、申したではないか。」
「申し訳ありません。」
「タヅナによると、御者の技はすでにひと通り身に付けたと言うではないか。それでも学びに来るのだから、学びたいのは騎馬の技であろう?」
「しかし…。」
「トウラクよ、お前もキノベの世継候補のひとりなのだぞ。まさか世継を諦めた訳ではあるまい?」
「なんで世継の話に飛ぶのですか?」
「分からんのか?このうつけ者が!世継を目指すなら統領になったときのことを考えよと言っておるのだ!」
「?」トウラクはそれでもピンと来ない。その様子を見て、キノベ統領は落胆した。
「将来の統領同士で親交を深めるんですよぉ。しかも兄上がアタルを教える立場なのですぅ。」
~~アタル目線・現在~~
「要するに俺がトウラクどのと、信頼関係を築けばいい訳だな?」
「そうなのよぉ。大変なお役目をお願いすることになってしまってぇ、ごめんなさいねぇ。」
「大したことではない。トウラクどのをキノベの次期統領として遇するだけだ。」
「えぇ?」
「ハミどのもタヅナもそれを望んでいるのだろう?」
「そうだけどぉ。」
「まぁ任せておけ。早速明日から伺おう。ところでキノベは、本拠に流邏石を登録させてくれるだろうか?」
「学びに来るのだからぁ、大丈夫だと思うわぁ。」
「ではこれを。もしダメなら2~3日掛けて歩いて行くさ。」俺は新品の流邏石を1つタヅナに渡した。
アキナの部屋を出て、俺たちは道具屋へ行った。新しい流邏石が残り少ないので20個買い足した。それと身代わりのペンダントが3つあったのですべて買った。定価だと、大金貨3枚と金貨5枚だが、タケクラさんの紹介で一割引だ。大金貨3枚、金貨1枚、大銀貨5枚を支払った。
今夜は、俺はユノベ本拠に戻り、タヅナはミーブのキノベ本拠へ行って俺の来訪を告げる。アキナは東都総本店に帰り、明日以降も業務の引継ぎだ。
明日、俺とタヅナは再び東都で合流するのだが、俺の流邏石は東都ギルド、タヅナの流邏石は東都営業所、明日は合流しないが、アキナの流邏石は東都総本店。登録先がバラバラだ。
そこで今後のことも考えて、東都ギルドで新品の流邏石2個を登録し、アキナとタヅナにそれぞれ渡して、解散した。
ふたりと別れ、流邏石でテンバのユノベ本拠館に帰る。
「「アタル兄、お帰り~。」」キョウちゃんズが飛びついて来た。あれ、胸がやや膨らんでるぞ?パッド入りか!ふたりが胸を突き出すポーズを取る。
「どや?」「どない?」
「パッド入りブラか?」
「それ言うたら元も子もないやん。」「気付かん振りしてぇな。」
「ごめん、ごめん。今朝までの幼児体型より、断然女の子っぽいぞ。」
「「いけずー!」」キョウちゃんズがむくれた。
「アタル、あんたねぇ、少しは気を遣った言い方をしなさいよ。」
「幼児…体型は…さすがに…ひどい…。」
「デリカシーの欠片もないな。」
「え?え?いや、そういう意味じゃなくて。あ、そうだ!ブラ見せてよ。」
「きゃー、へんたーい!」「きゃー、ロリコーン!」
「今日初めてブラを付けた女の子に、ブラを見せろとは何たる暴言。」
「どんどん…墓穴を…掘ってく…。」
「アタル、あんたはもう、お黙りなさいな。」
「はい。」キョウちゃんズがニマニマと笑っている。
「「アタル兄、あとでね。」」ふたりが耳元で囁いた。
不覚にもドキッとしてしまったではないか。不甲斐ないぞ、俺!それにしても何と言う小悪魔どもだ!
白湯に行くと、キョウちゃんズがついて来ようとしたが、嫁3人に止められていた。
「今日は、見せちゃだめよ。」
「じらす…方が…効果的…。」
「すぐ見せてはもったいないぞ。」
嫁3人はキョウちゃんズに、いったい何を吹き込んでんだか。苦笑
5人はそのまま赤湯に行ったので、その分、俺は白湯でゆっくりできた。
皆で夕餉を摂った後、俺は部屋に戻った。この夜はキョウちゃんズは来なかった。あとで聞いたのだが、ブラを付けたらもう子供ではないということで、サヤ姉の部屋で、淑女の心得とやらを、嫁3人からレクチャーされていたそうだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/4/10
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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