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射手の統領070 トリトへの行程計画
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射手の統領
Zu-Y
№70 トリトへの行程計画
ガハマの冒険者ギルドを出て、そのままユノベ副拠に直行し、アキナとタヅナに、流邏石を登録して渡した。
名府から早馬を出していたので、俺たち一行の受け入れ態勢はできていた。
北斗号を預けて曳馬たちを牧場に開放し、表座敷に向かうと副拠の代官を任せている重臣3人が出迎えてくれた。
「若、蒼碧龍攻略以来のお越し、お待ち申し上げておりました。」
「此度は、トリトの大砂丘へ橙土龍を狩りに行く途中ゆえ、今宵1泊のみ世話になる。
それと、この間、東都で迎えた山髙屋のアキナ嬢とキノベのタヅナ姫だ。すでにわが身内である。」
「今宵の夕餉は、家来どもへのおふたりの紹介と、橙土龍攻略の戦勝祈願と言うことで、宴の用意をしております。」
「手回しがいいな。」ある程度予想はしてたがな。
「「宴、うふふ。」」キョウちゃんズが不敵な微笑みを浮かべている。こいつら、またやる気だな。
ふたりは、テンバのユノベ本拠の宴で、家来どもに注いで、潰す楽しみを覚えてしまった。東都から名府への船旅では、タテベの家来衆を餌食にしていた。
「宴まで、ごゆるりとお過ごしください。」重臣3名に見送られ、表座敷から湯殿に向かった。
旅の疲れを取るには温泉が一番。旅の疲れでなくても寛ぐには温泉が一番。
副拠は、翠湯、黒湯、トロ湯がある。俺は当然、硫黄臭のする明礬泉の翠湯だ。キョウちゃんズは俺について来る。大人嫁5人は美肌の湯のトロ湯に行こうとしたが、キョウちゃんズが皆で一緒に入ろうと言い出し、結局、全員で翠湯になった。キョウちゃんズ、グッジョブ♪
当然、内湯ではなく露天だ。掛け湯をして湯に浸かる。ふぅ。疲れが抜けて行くのが分かる。大人嫁を誘った大殊勲のキョウちゃんズが寄って来た。
「アタル兄、マッサージしてんか?」
「お風呂でゆっくりは久しぶりやなー。」
そうだな、湯に浸かりながらのマッサージはテンバのユノベ本拠以来か。
北斗号の受け取り、東都での披露目、東都から名府までの廻船、そしてここまでの陸路。この間2週間弱。しばらく間が空いたな。ブラごと一緒にとかはちょくちょくやってたけどな。
キョウちゃんズが背中を預けて寄り掛かって来て、頭を俺の両胸にもたれ掛けて来た。両腕でふたり抱えるようにするとすっぽり収まる。
むにょん。…え?
ふたりともポチリのまわりがむにょんとしている。
「ふふふ。驚いたやろ?」
「もうパッドは使うてないんよ。」
え?では、むにょんは、リアルな感触の新型パッドだと感心していたが、本物だったのか?
ふたりをこちらに向けてまじまじと見る。確かに膨らんで来ている。とうとう成長が始まったのだ。もともと肌色だった頂も色付いて来ている。
「「きゃー。」」ふたりがいきなり両腕を胸の前でクロスさせ、口まで湯に潜った。
「ちょっと、アタル、何やってんのよ?」
「え?いや、むにょんてしたから膨らんで来たのかと思って…。」
「ロリ…全開…。」
「いや違う。興味、そう、純粋な興味。」
「幼子に興味を示すのをロリというのだ。」
「いやいや、成長始まったし、幼子ではないだろ。」
「では大人だと言うんですか?」
「いや、それはまだ…。」
「完全にロリ認定だわぁ。言い訳は無駄よぉ。」
大人嫁5人のジト目集中攻撃を受けてタジタジな俺を、口まで浸かった湯の中から、キョウちゃんズがニマニマしながら見上げている。くっ。まさか嵌められたのか?こうなる展開を予想して大人嫁を誘ったのか?
ふたりがスーッと浮上して、両手を腰に未熟な胸を突き出してふんぞり返った。
「アタル兄、そろそろ、うちらをきちんと認めなはれ。」ニマニマ。
「そや、子供扱いはもう終わりや。」ニマニマ。
「でないとほんまにロリ認定やー。」クリーンヒット。
「このまま変態扱いでええんかー。」ワンツーコンビネーション。
「くっ。」
「今宵の宴でご家来衆に言うてまおうかなー。」痛恨の一撃。
「ないこと、ないこと、盛ったるでー。特盛やー。」連打連打の猛ラッシュ。
「それを言うなら、あること、ないこと、だろ?」
「で、どないするん?」あ、スウェーで躱された。
「ファイナルアンサーやで。」トドメのカウンター。
「ギブ。」
「「は?よう聞こえんで?」」
「ギブアップ。参りました。」キョウちゃんズが大喜びでハイタッチしている。大人嫁たちは呆れている。
ふん、俺はギブアップと言っただけで、何がどうギブアップなのか言ってねーからな!この展開にギブアップしただけであって、大人扱いはもう少し育ってからだ!と、心の中で叫ぶ。言葉にできないのが我ながら情けない。泣
それにしても今回のキョウちゃんズの作戦は用意周到だ。先々の展開を読み切っていたとしか思えん。間違いない、キョウちゃんズには軍師の才がある。桁外れの陰の術に加えて、この緻密な先読みの能力、何と頼もしいことか。
碧湯から上がって、表座敷での宴に行く。キョウちゃんズが俺の両横に座り、明らかにうずうずしている。ここでも家来どもをしこたま呑ますつもりなのだろう。こいつら、一度徹底的に二日酔いの苦しみを教えてやらにゃいかんな。
アキナとタヅナを副拠の家来どもに紹介して、橙土龍攻略に向かうことを発表し、宴が始まった。
「若ー、またまた別嬪やのー?」
「若ー、体がもつんかいなー?」
「若ー、尻に敷かれとるんやないかーい?」
ユノベの宴は無礼講。家来どもが俺をイジって来るのは、本拠でも副拠でもお約束だ。笑
キョウちゃんズは両横で無心に料理を食べている。最初にうちに酌に来た家来たちには、笑顔だけ振りまいて、それ以外はスルーだ。で、ひたすら食う。
「腹が減っては戦ができんって言うてね。」
「まずは腹拵えからやね。」
お代わりもして、料理をきれいに平らげた。
「ふぅ。腹も膨れたし。」
「せやな、そろそろ戦闘開始や。」
その後に、俺のところに酌をしに来た家来たちに、早速キョウちゃんズが仕掛ける。
「あらあら、いい呑みっぷりやわ。」
「流石、ガハマの衆は、テンバの衆とは違ごはりますなぁ。」
「テンバの衆も、ガハマの衆には負けん言うて、それはもう、呑みはりましたけどなぁ。」言ってないから!
「さ、さ、干しとくれやす。なんやお銚子が重たいわぁ。軽くしとくなはれ。」重きゃ、置けよ。
家来どもがキョウちゃんズに乗せられた挙句に散々呑まされて、ひとりふたりと転がり出した。あらら。これ以上放置するとわが精鋭が全滅の憂き目に遭ってしまう。
仕方ない、やはりこいつらにも二日酔いの苦しみを教えよう。
「サキョウとウキョウも少し呑んでみるか?」
「「え?」」
「今までは子供だと思って控えてたんだがな。大人扱いすることになったし。でも無理ならいいぞ。」軽く挑発する。
「「ほなら、少しだけな。」」ぐい呑みを渡して、燗をつけた和酒を注いでやると、ふたりとも、ちびちび舐めた後にクイっと行った。
「ビールは苦かったけど、和酒は大丈夫やな。」
「今宵はうちらの輪番やんか。アタル兄、うちらを酔わせてどうするつもりなん?」うふふ×2。
「まぁいろいろとな。」また注いでやる。すぐに干すふたり。ちょっとペースが速くないか?ふぅ。と、息を吐くところが、妙に色っぽい。おいおい13歳だよな。
「もっとゆっくり呑めよ。急に酔いが回るぞ。」
3杯目を干したところで、ふたりともコテっとなった。ぐい呑み3杯でお寝んねか。3杯じゃ、二日酔いにはならないな。なんだかんだ言ってもまだ子供だな。そろそろ引き上げるか。
「では皆の者、明日の出立が早いゆえ、俺たちはこれで引き上げる。存分に過ごせよ。」
サキョウとウキョウを両脇に抱えて、表座敷を出て部屋に向かう。大人嫁も一緒に退出して来た。キョウちゃんズの部屋に送ると、ふたりが起きて駄々をこね始めた。
「今夜はうちらの番やー。」
「ドラちゃんと遊ぶんやー。」
なんか酒癖、悪くね?しょうがないなー。俺の部屋に連れてって、ベッドに寝かせると、サヤ姉とサジ姉が寝巻を持って来て俺は外に追い出された。しばらくして、サヤ姉とサジ姉がキョウちゃんズを着替えさせて出て来た。
「ちょっとアタル、子供に呑ませちゃダメでしょ。」
「家来どもを酔い潰して喜んでるから、一度二日酔いの苦しみを教えようかと思ったんだが…。」
「潰れるまで呑む家来衆が悪いのよ。」
「はい、その通りです。ごめんなさい。」
「ふたりは…まだ…子供…。忘れちゃ…ダメ…。」
「はい、肝に銘じます。ごめんなさい。」
部屋に戻るとふたりは爆睡していた。寝顔が何ともあどけない。やっぱやり過ぎたかなぁ。
たったのぐい呑み3杯だったが、翌朝キョウちゃんズは二日酔いになり、出発を見送ることになってしまった。俺は、大人嫁5人にはこっぴどく怒られるわ、午後にキョウちゃんズが復活するまで付きっ切りで世話することになるわで散々だった。
二日酔いの例に漏れず、午後に復活したキョウちゃんズ。
「アタル兄、お世話を掛けてしもうて、ホンマに堪忍や。」
「もう二度と、こないになるまで呑まんよって、許しとくれやす。」
三つ指ついて深々と頭を下げるキョウちゃんズ。二日酔いにして懲らしめるつもりだった俺としては、こう真正面から頭を下げられると心が痛む。
「いや、分かればもういいぞ。二日酔いは辛いからな、潰される家来たちの気持ちも分かってよかったじゃないか。これからは面白がって呑ますなよ。」
「アタル兄、それはちと違うとるよ。」
「え?」
「二日酔いになったことがあるのに呑みはるんは、家来衆の自己責任や。」
「うちらはきつかったさかい、もうよう呑まん。でもな…。」
「そやで。呑みはるんは家来衆や。うちらは楽しゅう注ぐだけや。」
「二日酔いが嫌やったら、家来衆がそこまで呑まなんだらええのや。」
「二日酔い覚悟で、男の意地を通して呑みはるか、それとも呑まんかを決めるんは家来衆や。」
こ、こいつら…。強かだ。でも言い分に筋は通ってるな。返す言葉もない。
その後、キョウちゃんズはケジメや。と言って、大人嫁の部屋を回って、ひとりひとりに、三つ指ついて頭を下げ、丁寧な詫び口上を述べて回った。
大人嫁5人の反応は、キョウちゃんズ潔し。詫びは聞き入れた。二日酔いを体験させようと仕組んだアタルがすべて悪い!となってしまった。
俺が悪いのか?
あ…!キョウちゃんズは戦闘で負けたにも拘らず、戦略で総合的な勝ちを得たということか。おれは局地戦に勝ったのに戦争全体ではいつの間にか負けていたということだ。恐るべし、キョウちゃんズ。やはり優秀な軍師だ。
しかもちゃっかりと、昨日は何もできなかったので輪番はノーカウントという言い分を、大人嫁全員に承諾させて来ていた。
今日は、二日酔い騒動で出発延期となったため、なし崩し的だが休養日。午後は時間がたっぷりあったので、全員で湯めぐりをすることになった。
昨日は碧湯だったので、今日はまず大人嫁5人の意向を聞いてトロ湯にした。炭酸水素泉なので、アルカリ性でトロトロしている美肌の湯だ。
キョウちゃんズは、昨夜の酔い潰れた輪番をノーカウントにしてくれた礼だと言って、5人の大人嫁に、俺が頂マッサージをすることになった。
なぜキョウちゃんズの礼を俺がするのかは、甚だ疑問が残るところでがあるが、俺としては満更でもないので、快く引き受けた。
もしここでグダグダ言ったら、それでなくても、キョウちゃんズを二日酔いにして、大人嫁たちに白い目で見られているというのに、余計に印象を悪くしてしまうだろう。俺は誠心誠意、真心を込めて大人嫁たちに頂マッサージのご奉仕したのだった。
次は、ヨウ素泉の黒湯だ。湯の色はオレンジ色だが、浴槽にためると黒く見える。
大人嫁5人は、火照ったから美肌の湯だけでいいということで、黒湯は俺とキョウちゃんズになった。
入って早々に頂マッサージとなった。
ぶっちゃけ、ぺったんこだった頃はずっと義務感でやってたのだが、少なからずむにょんとして来たので、それなりにやり甲斐が出て来ているのだ。そう言えば、ツルツルの方はどうなんだろ?頂マッサージのどさくさで、秘所の方にも進出してみたが、まだツルツルだった。キョウちゃんズがキャーキャー騒ぐので、これが大人扱いだ。と言って納得させた。
『大人扱い』当面はこれでいろいろゴマ化せそうだ。ちょろい。笑
夕餉の後、皆でトリトの大砂丘までの行程を計画した。行程計画では、旅慣れしたアキナとタヅナがいるから心強い。
まず明日は西都まで。西都で西都織の反物や千枚漬けなどを仕入れる。
トリトの大砂丘の最寄りのトリトの港町を目的地とし、その行程は、ノーベソの農村で野営、キノベ副拠のあるアベヤの町、ミャーツの港町、キサキの温泉街に宿泊、アマールの漁村で野営、そしてトリトの港町。野営はもちろん北斗号だ。
橙土龍攻略後、トリトの港町で何か産物を仕入れて商都に戻る。
帰りの行程の計画はトリトの港町で立てるが、トリトから南下し、セットの内海に出て、海沿いに東進し、オミョシ分家の本拠があるアーカ経由で商都まで戻る予定。
よしOK。さあ、明日に備えて寝るか。解散して各自の部屋に戻った。
昨日の輪番に二日酔で穴を開けたキョウちゃんズは、なぜが大人嫁たちをうまく言いくるめて昨日の分をノーカウントにさせていたので、やる気満々で俺の部屋について来ていた。
途中、空いた日が続いたから、もう3週間前になるが、それまで、添い寝だけで躱していたのに、キョウちゃんズの泣き落としに屈して、マイドラゴンの世話を任せてしまった。それ以降、毎回世話を任せてしまっている。もはや添い寝だけには戻ることは叶うまいな。
未成年にそう言うことを許してしまう罪悪感と、しかしまたキョウちゃんズのドラ扱いが上手なのと背徳感による高揚が重なるがゆえの期待感が、俺の中で刃を交えている。要するに、脳内悪魔対脳内天使の戦いである。
結果は分かっているのだ。俺は欲望に負ける…いや、本能に忠実なのだ。そうだ、本能に忠実なのは男として恥ずべきことではない。それに、俺からはふたりに手を出さないことで、最後の砦としよう。
脳内で屁理屈をこねくりまわして、必死に言い訳を考えるアタルなのであった。
が、しかし…。
間もなくアタルのドラゴンが歓喜の咆哮を上げて、ホワイトブレスを吐き尽くしたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/5/29
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№70 トリトへの行程計画
ガハマの冒険者ギルドを出て、そのままユノベ副拠に直行し、アキナとタヅナに、流邏石を登録して渡した。
名府から早馬を出していたので、俺たち一行の受け入れ態勢はできていた。
北斗号を預けて曳馬たちを牧場に開放し、表座敷に向かうと副拠の代官を任せている重臣3人が出迎えてくれた。
「若、蒼碧龍攻略以来のお越し、お待ち申し上げておりました。」
「此度は、トリトの大砂丘へ橙土龍を狩りに行く途中ゆえ、今宵1泊のみ世話になる。
それと、この間、東都で迎えた山髙屋のアキナ嬢とキノベのタヅナ姫だ。すでにわが身内である。」
「今宵の夕餉は、家来どもへのおふたりの紹介と、橙土龍攻略の戦勝祈願と言うことで、宴の用意をしております。」
「手回しがいいな。」ある程度予想はしてたがな。
「「宴、うふふ。」」キョウちゃんズが不敵な微笑みを浮かべている。こいつら、またやる気だな。
ふたりは、テンバのユノベ本拠の宴で、家来どもに注いで、潰す楽しみを覚えてしまった。東都から名府への船旅では、タテベの家来衆を餌食にしていた。
「宴まで、ごゆるりとお過ごしください。」重臣3名に見送られ、表座敷から湯殿に向かった。
旅の疲れを取るには温泉が一番。旅の疲れでなくても寛ぐには温泉が一番。
副拠は、翠湯、黒湯、トロ湯がある。俺は当然、硫黄臭のする明礬泉の翠湯だ。キョウちゃんズは俺について来る。大人嫁5人は美肌の湯のトロ湯に行こうとしたが、キョウちゃんズが皆で一緒に入ろうと言い出し、結局、全員で翠湯になった。キョウちゃんズ、グッジョブ♪
当然、内湯ではなく露天だ。掛け湯をして湯に浸かる。ふぅ。疲れが抜けて行くのが分かる。大人嫁を誘った大殊勲のキョウちゃんズが寄って来た。
「アタル兄、マッサージしてんか?」
「お風呂でゆっくりは久しぶりやなー。」
そうだな、湯に浸かりながらのマッサージはテンバのユノベ本拠以来か。
北斗号の受け取り、東都での披露目、東都から名府までの廻船、そしてここまでの陸路。この間2週間弱。しばらく間が空いたな。ブラごと一緒にとかはちょくちょくやってたけどな。
キョウちゃんズが背中を預けて寄り掛かって来て、頭を俺の両胸にもたれ掛けて来た。両腕でふたり抱えるようにするとすっぽり収まる。
むにょん。…え?
ふたりともポチリのまわりがむにょんとしている。
「ふふふ。驚いたやろ?」
「もうパッドは使うてないんよ。」
え?では、むにょんは、リアルな感触の新型パッドだと感心していたが、本物だったのか?
ふたりをこちらに向けてまじまじと見る。確かに膨らんで来ている。とうとう成長が始まったのだ。もともと肌色だった頂も色付いて来ている。
「「きゃー。」」ふたりがいきなり両腕を胸の前でクロスさせ、口まで湯に潜った。
「ちょっと、アタル、何やってんのよ?」
「え?いや、むにょんてしたから膨らんで来たのかと思って…。」
「ロリ…全開…。」
「いや違う。興味、そう、純粋な興味。」
「幼子に興味を示すのをロリというのだ。」
「いやいや、成長始まったし、幼子ではないだろ。」
「では大人だと言うんですか?」
「いや、それはまだ…。」
「完全にロリ認定だわぁ。言い訳は無駄よぉ。」
大人嫁5人のジト目集中攻撃を受けてタジタジな俺を、口まで浸かった湯の中から、キョウちゃんズがニマニマしながら見上げている。くっ。まさか嵌められたのか?こうなる展開を予想して大人嫁を誘ったのか?
ふたりがスーッと浮上して、両手を腰に未熟な胸を突き出してふんぞり返った。
「アタル兄、そろそろ、うちらをきちんと認めなはれ。」ニマニマ。
「そや、子供扱いはもう終わりや。」ニマニマ。
「でないとほんまにロリ認定やー。」クリーンヒット。
「このまま変態扱いでええんかー。」ワンツーコンビネーション。
「くっ。」
「今宵の宴でご家来衆に言うてまおうかなー。」痛恨の一撃。
「ないこと、ないこと、盛ったるでー。特盛やー。」連打連打の猛ラッシュ。
「それを言うなら、あること、ないこと、だろ?」
「で、どないするん?」あ、スウェーで躱された。
「ファイナルアンサーやで。」トドメのカウンター。
「ギブ。」
「「は?よう聞こえんで?」」
「ギブアップ。参りました。」キョウちゃんズが大喜びでハイタッチしている。大人嫁たちは呆れている。
ふん、俺はギブアップと言っただけで、何がどうギブアップなのか言ってねーからな!この展開にギブアップしただけであって、大人扱いはもう少し育ってからだ!と、心の中で叫ぶ。言葉にできないのが我ながら情けない。泣
それにしても今回のキョウちゃんズの作戦は用意周到だ。先々の展開を読み切っていたとしか思えん。間違いない、キョウちゃんズには軍師の才がある。桁外れの陰の術に加えて、この緻密な先読みの能力、何と頼もしいことか。
碧湯から上がって、表座敷での宴に行く。キョウちゃんズが俺の両横に座り、明らかにうずうずしている。ここでも家来どもをしこたま呑ますつもりなのだろう。こいつら、一度徹底的に二日酔いの苦しみを教えてやらにゃいかんな。
アキナとタヅナを副拠の家来どもに紹介して、橙土龍攻略に向かうことを発表し、宴が始まった。
「若ー、またまた別嬪やのー?」
「若ー、体がもつんかいなー?」
「若ー、尻に敷かれとるんやないかーい?」
ユノベの宴は無礼講。家来どもが俺をイジって来るのは、本拠でも副拠でもお約束だ。笑
キョウちゃんズは両横で無心に料理を食べている。最初にうちに酌に来た家来たちには、笑顔だけ振りまいて、それ以外はスルーだ。で、ひたすら食う。
「腹が減っては戦ができんって言うてね。」
「まずは腹拵えからやね。」
お代わりもして、料理をきれいに平らげた。
「ふぅ。腹も膨れたし。」
「せやな、そろそろ戦闘開始や。」
その後に、俺のところに酌をしに来た家来たちに、早速キョウちゃんズが仕掛ける。
「あらあら、いい呑みっぷりやわ。」
「流石、ガハマの衆は、テンバの衆とは違ごはりますなぁ。」
「テンバの衆も、ガハマの衆には負けん言うて、それはもう、呑みはりましたけどなぁ。」言ってないから!
「さ、さ、干しとくれやす。なんやお銚子が重たいわぁ。軽くしとくなはれ。」重きゃ、置けよ。
家来どもがキョウちゃんズに乗せられた挙句に散々呑まされて、ひとりふたりと転がり出した。あらら。これ以上放置するとわが精鋭が全滅の憂き目に遭ってしまう。
仕方ない、やはりこいつらにも二日酔いの苦しみを教えよう。
「サキョウとウキョウも少し呑んでみるか?」
「「え?」」
「今までは子供だと思って控えてたんだがな。大人扱いすることになったし。でも無理ならいいぞ。」軽く挑発する。
「「ほなら、少しだけな。」」ぐい呑みを渡して、燗をつけた和酒を注いでやると、ふたりとも、ちびちび舐めた後にクイっと行った。
「ビールは苦かったけど、和酒は大丈夫やな。」
「今宵はうちらの輪番やんか。アタル兄、うちらを酔わせてどうするつもりなん?」うふふ×2。
「まぁいろいろとな。」また注いでやる。すぐに干すふたり。ちょっとペースが速くないか?ふぅ。と、息を吐くところが、妙に色っぽい。おいおい13歳だよな。
「もっとゆっくり呑めよ。急に酔いが回るぞ。」
3杯目を干したところで、ふたりともコテっとなった。ぐい呑み3杯でお寝んねか。3杯じゃ、二日酔いにはならないな。なんだかんだ言ってもまだ子供だな。そろそろ引き上げるか。
「では皆の者、明日の出立が早いゆえ、俺たちはこれで引き上げる。存分に過ごせよ。」
サキョウとウキョウを両脇に抱えて、表座敷を出て部屋に向かう。大人嫁も一緒に退出して来た。キョウちゃんズの部屋に送ると、ふたりが起きて駄々をこね始めた。
「今夜はうちらの番やー。」
「ドラちゃんと遊ぶんやー。」
なんか酒癖、悪くね?しょうがないなー。俺の部屋に連れてって、ベッドに寝かせると、サヤ姉とサジ姉が寝巻を持って来て俺は外に追い出された。しばらくして、サヤ姉とサジ姉がキョウちゃんズを着替えさせて出て来た。
「ちょっとアタル、子供に呑ませちゃダメでしょ。」
「家来どもを酔い潰して喜んでるから、一度二日酔いの苦しみを教えようかと思ったんだが…。」
「潰れるまで呑む家来衆が悪いのよ。」
「はい、その通りです。ごめんなさい。」
「ふたりは…まだ…子供…。忘れちゃ…ダメ…。」
「はい、肝に銘じます。ごめんなさい。」
部屋に戻るとふたりは爆睡していた。寝顔が何ともあどけない。やっぱやり過ぎたかなぁ。
たったのぐい呑み3杯だったが、翌朝キョウちゃんズは二日酔いになり、出発を見送ることになってしまった。俺は、大人嫁5人にはこっぴどく怒られるわ、午後にキョウちゃんズが復活するまで付きっ切りで世話することになるわで散々だった。
二日酔いの例に漏れず、午後に復活したキョウちゃんズ。
「アタル兄、お世話を掛けてしもうて、ホンマに堪忍や。」
「もう二度と、こないになるまで呑まんよって、許しとくれやす。」
三つ指ついて深々と頭を下げるキョウちゃんズ。二日酔いにして懲らしめるつもりだった俺としては、こう真正面から頭を下げられると心が痛む。
「いや、分かればもういいぞ。二日酔いは辛いからな、潰される家来たちの気持ちも分かってよかったじゃないか。これからは面白がって呑ますなよ。」
「アタル兄、それはちと違うとるよ。」
「え?」
「二日酔いになったことがあるのに呑みはるんは、家来衆の自己責任や。」
「うちらはきつかったさかい、もうよう呑まん。でもな…。」
「そやで。呑みはるんは家来衆や。うちらは楽しゅう注ぐだけや。」
「二日酔いが嫌やったら、家来衆がそこまで呑まなんだらええのや。」
「二日酔い覚悟で、男の意地を通して呑みはるか、それとも呑まんかを決めるんは家来衆や。」
こ、こいつら…。強かだ。でも言い分に筋は通ってるな。返す言葉もない。
その後、キョウちゃんズはケジメや。と言って、大人嫁の部屋を回って、ひとりひとりに、三つ指ついて頭を下げ、丁寧な詫び口上を述べて回った。
大人嫁5人の反応は、キョウちゃんズ潔し。詫びは聞き入れた。二日酔いを体験させようと仕組んだアタルがすべて悪い!となってしまった。
俺が悪いのか?
あ…!キョウちゃんズは戦闘で負けたにも拘らず、戦略で総合的な勝ちを得たということか。おれは局地戦に勝ったのに戦争全体ではいつの間にか負けていたということだ。恐るべし、キョウちゃんズ。やはり優秀な軍師だ。
しかもちゃっかりと、昨日は何もできなかったので輪番はノーカウントという言い分を、大人嫁全員に承諾させて来ていた。
今日は、二日酔い騒動で出発延期となったため、なし崩し的だが休養日。午後は時間がたっぷりあったので、全員で湯めぐりをすることになった。
昨日は碧湯だったので、今日はまず大人嫁5人の意向を聞いてトロ湯にした。炭酸水素泉なので、アルカリ性でトロトロしている美肌の湯だ。
キョウちゃんズは、昨夜の酔い潰れた輪番をノーカウントにしてくれた礼だと言って、5人の大人嫁に、俺が頂マッサージをすることになった。
なぜキョウちゃんズの礼を俺がするのかは、甚だ疑問が残るところでがあるが、俺としては満更でもないので、快く引き受けた。
もしここでグダグダ言ったら、それでなくても、キョウちゃんズを二日酔いにして、大人嫁たちに白い目で見られているというのに、余計に印象を悪くしてしまうだろう。俺は誠心誠意、真心を込めて大人嫁たちに頂マッサージのご奉仕したのだった。
次は、ヨウ素泉の黒湯だ。湯の色はオレンジ色だが、浴槽にためると黒く見える。
大人嫁5人は、火照ったから美肌の湯だけでいいということで、黒湯は俺とキョウちゃんズになった。
入って早々に頂マッサージとなった。
ぶっちゃけ、ぺったんこだった頃はずっと義務感でやってたのだが、少なからずむにょんとして来たので、それなりにやり甲斐が出て来ているのだ。そう言えば、ツルツルの方はどうなんだろ?頂マッサージのどさくさで、秘所の方にも進出してみたが、まだツルツルだった。キョウちゃんズがキャーキャー騒ぐので、これが大人扱いだ。と言って納得させた。
『大人扱い』当面はこれでいろいろゴマ化せそうだ。ちょろい。笑
夕餉の後、皆でトリトの大砂丘までの行程を計画した。行程計画では、旅慣れしたアキナとタヅナがいるから心強い。
まず明日は西都まで。西都で西都織の反物や千枚漬けなどを仕入れる。
トリトの大砂丘の最寄りのトリトの港町を目的地とし、その行程は、ノーベソの農村で野営、キノベ副拠のあるアベヤの町、ミャーツの港町、キサキの温泉街に宿泊、アマールの漁村で野営、そしてトリトの港町。野営はもちろん北斗号だ。
橙土龍攻略後、トリトの港町で何か産物を仕入れて商都に戻る。
帰りの行程の計画はトリトの港町で立てるが、トリトから南下し、セットの内海に出て、海沿いに東進し、オミョシ分家の本拠があるアーカ経由で商都まで戻る予定。
よしOK。さあ、明日に備えて寝るか。解散して各自の部屋に戻った。
昨日の輪番に二日酔で穴を開けたキョウちゃんズは、なぜが大人嫁たちをうまく言いくるめて昨日の分をノーカウントにさせていたので、やる気満々で俺の部屋について来ていた。
途中、空いた日が続いたから、もう3週間前になるが、それまで、添い寝だけで躱していたのに、キョウちゃんズの泣き落としに屈して、マイドラゴンの世話を任せてしまった。それ以降、毎回世話を任せてしまっている。もはや添い寝だけには戻ることは叶うまいな。
未成年にそう言うことを許してしまう罪悪感と、しかしまたキョウちゃんズのドラ扱いが上手なのと背徳感による高揚が重なるがゆえの期待感が、俺の中で刃を交えている。要するに、脳内悪魔対脳内天使の戦いである。
結果は分かっているのだ。俺は欲望に負ける…いや、本能に忠実なのだ。そうだ、本能に忠実なのは男として恥ずべきことではない。それに、俺からはふたりに手を出さないことで、最後の砦としよう。
脳内で屁理屈をこねくりまわして、必死に言い訳を考えるアタルなのであった。
が、しかし…。
間もなくアタルのドラゴンが歓喜の咆哮を上げて、ホワイトブレスを吐き尽くしたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/5/29
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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