射手の統領

Zu-Y

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射手の統領092 次ノ宮殿下からの緊急指名クエスト

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射手の統領
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№92 次ノ宮殿下からの緊急指名クエスト

 昨日、ガハマを出発し、湖船でオツに渡って、オツで北斗号に乗り、西都で1泊した。
 ガハマ出発の際、隠居は家来どもがいないことを気にすら掛けなかった。ただひと言、「先発しよったんかの。」と言っただけだった。拍子抜けだ。

 今朝は西都を朝イチで出て、夕刻前には商都に着いた。
 商都のオミョシ分家御用宿でオミョシ分家一行と合流し、隠居の奥方とシエンの爺に、隠居と側室を届け、俺たちもオミョシ分家御用宿に4人部屋を2部屋取った。
 そして、俺たちは商都西本店に向かった。

 この後、俺たちセプトの予定は、隠居の一行とともに廻船で東都に戻る。
 東都で、次ノ宮殿下にシン鏑を見せに行き、その後はテンバに戻ってしばらく休養だ。休養したら、東都でクエストをこなしてもいいな。
 このため、商都西本店で諸々仕入れるつもりだ。
 あと、この間頑張ってくれた嫁たちに服のひとつもプレゼントしたい。ついでにスケスケのネグリジェやむふふなランジェリーもいいな♪こっちは俺へのご褒美か。笑

 西本店で買い物をしてると、専務で西本店店長が駆け付けて来た。
「アタルくん、セプトに商都ギルドのギルマスから緊急の呼び出しが掛かってるわよ。」
「え?商都ギルド?ギルマスは面識ないし、接点は山髙屋の荷の護衛クエストの達成報告をしたくらいだぞ。」
「まぁ、セプトは目立つからかしらね。なんたって濃紺の規格外なんでしょ?」
「俺たちが名乗った訳ではないからな!」妙にこっ恥ずかしいから弁明したが、
「早く行った方がいいわよ。」と、俺の弁明は、専務に見事にスルーされた。
「分かったよ。知らせてくれてありがとな。」

 ホサキとアキナとタヅナに商都西本店での交易品の仕入れを任せ、俺とサヤ姉、サジ姉、キョウちゃんズで商都ギルドに来た。
「え?濃紺の外套?」「あいつらがセプトかいな?」あちこちでコソコソ声が聞こえて来た。皆も苦笑いしている。
 受付には、山髙屋の荷の護衛クエストを報告したときに対応してくれた真面目系巨乳お姉さんがいた。
「あのー。チハルさんだったよな。」
「あ、アタルさん!私のこと、覚えててくれたんですか?」
「前回真面目で丁寧な対応だったからな。対応のいい受付嬢は覚えるさ。」
「それはありがとうございます。ちょっと待っててくださいね。ギルマスを呼んで来ます。」
 しばらくしてチハルと中年の男~おそらくギルマス~が、出迎えに来た。
「呼び出してすまんの。わしがギルマスのトルシンや。早速やがギルマスルームに来てくれるか?」やっぱりギルマスだったか。
「ギルマス自ら出迎えに来たで。」「やっぱり噂のセプトやな。」再びあちこちでコソコソ声が聞こえて来た。苦笑

 俺たちはギルマスルームに案内され、トルシンに勧められるまま、ソファーに座った。ふかふかだ。
「俺がアタルだ。それから、セプトのメンバーのサヤ、サジ、サキョウ、ウキョウだ。早速だが、緊急の呼び出しってなんだ?」
「次ノ宮殿下からセプトに、緊急指名依頼が来てるんや。」
「次ノ宮殿下から?」正直意外だった。
「二の島のシカオの大雪原でな、藍凍龍が暴れとるんや。冬という季節柄、猛威を振るうとる。このままではシカオの大雪原周辺の町や村はとんでもないことになってまう。
 シカオの大雪原の南にあるビヒロの町から救助要請が函府に来てな、函府から朝廷に、緊急事態として伝わったんやが『七神龍ならセプトに任せよ。』と次ノ宮殿下が仰せでな、朝廷を代表して次ノ宮殿下から、セプトへの緊急指名クエストや。」
 なるほど、そう言う訳か。次ノ宮殿下に感謝だな。いい後ろ盾ができたもんだ。

「藍凍龍がシカオの大雪原を根城にしてるのは知ってるんだがな、そもそもシカオの大雪原って、二の島のどの辺だ?」
 トルシンが和の国の地図を出して来た。
 二の島は北の島とも言い、和の島の北に位置する。和の国では和の島に次ぐ2番目の大きさのため、二の島とも呼ぶ。
 北の島は、握りが短い片刃の手斧のような形をしている。和の島の北端から、海峡を挟んで手斧の把手の部分があり、把手の先にでっかい刃が東に向かって菱形に伸びているイメージだ。

「函府はここやな。」トルシンが手斧の把手の底辺を示す。いくらなんでもそりゃ知ってるよ。笑
「そんでビヒロの町はここや。」二の島の中心から南寄りの内陸か。
「ここから函府までも遠いが、函府からビヒロまでも結構遠いんだな。」
「せやな。函府までは北航路の廻船や。ガハマの北北西のガルツから出航して、ワジ、ガタニ、アタキに寄って、最後に函府や。
 その後は陸路と海路があるが、この季節の陸路は、雪で難儀するからやめた方がええ。二の島を巡る北の島航路の廻船を使うて、函府から、トマコ、リモ、オッツォと行って、そこで下船やな。
 オッツォからカチトの河に沿って北西に進み、カチトの河が北西から西に転じたら、そこはマクベスの原野で、オッツォからビヒロへの行程の大体3/4やな。オッツォからビヒロへは1日の行程やが、雪道やったらもそっと掛かりよるで。
 ビヒロは比較的大きい町やからここを拠点にするとええ。そんで、ビヒロの北一帯がシカオの大雪原や。」
「随分広域だな。」

「ビヒロから北西に半日でシカオの畜村やが、ビヒロからの報告やと、シカオの畜村とは連絡が途絶えとるそうや。」
「畜村?家畜の村ってことか?」
「家畜の村っちゅうか、畜産の村やな。
 シカオの畜村が藍凍龍のせいでおそらく雪に埋もれとる。あの辺の民は、冬籠り言うて雪に埋もれるのは慣れとるさかい、食いもんの備蓄は仰山あるやろが、ずっと藍凍龍が暴れ続けたら、終いにゃ食いもんの備蓄が尽きよるで。」
「今日明日と言うレベルではないが、かなり深刻な状況ではあるのだな。」
「せや。ところで、セプトの馬車は、防寒仕様は大丈夫かいな?」

「いや、そういうのは特にはしてないな。」
「そらあかんな。函府で改造するとええわ。」
「こっちじゃダメか?」
「あかんな。二の島でした方がええで。二の島の寒さは、こっちの寒さとは全然違うよって、現地の防寒仕様の方がええに決もうとる。防寒仕様への改造費も半額は補助が出るしな。」
「そりゃありがたい。」
 実は後から知ることになるのだが、北斗号には、防寒仕様も耐暑仕様も非常にハイスペックなものが備わっており、単に俺が知らなかっただけであった。苦笑

「それから、交通費と宿泊費は立替やが、依頼主の朝廷持ちや。宿泊費は1ヶ月までで、それ以降は自弁や。食費は全部自弁やが、成功報酬は大金貨3枚や。そのうち2枚は藍凍龍攻略報酬やな。」
「随分好条件なんだな。」
「それだけ深刻な状況なんや。雪に閉じ込められてる民を一刻も早う救けなならんしな。救ける言うても連れ出すんやのうて、物資の補給でええけどな。」
「なるほどな。」

「それとな、この依頼は次ノ宮殿下の指名依頼やが、これは帝家からではのうて、朝廷からやから、嫌や言うたら冒険者ランクがダウンするで。」
「受けるに決まってるだろ。
 ところで朝廷の依頼と帝家の依頼は違うのか?」
「よく混同されるが違うな。朝廷からの依頼は公的な依頼で、帝家からの依頼は私的な依頼や。」
「ふうん。」

 それからトルシンにいろいろな情報を貰った。トルシンは、ギルマスにしては気さくで話しやすかった。
 受付で緊急依頼を受ける手続きをして、サヤ姉、サジ姉、キョウちゃんズは商都西本店に戻って、ホサキ、アキナ、タヅナと合流し、買い物の続き。
 俺は、次ノ宮殿下からの緊急指名クエストを受けることになったため、東都まで一緒に行けなくなったことをシエンに伝えるためにアーカに飛んだ。
 シエンに事情を話すと、
「アタル、気にせんでええ。次ノ宮殿下からの指名依頼ならしゃーないやん。それに、こちらからも護衛は付けてるよって、心配はいらんで。」
「すまんな。」
 それから商都のオミョシ分家御用宿に飛んで、隠居の奥方と、シエンの重臣の爺にも事情を伝えて、承諾してもらった。

 商都西本店に戻って嫁たちと合流すると、ホサキたちにはサヤ姉から、次ノ宮殿下からの緊急依頼について伝えられており、廻船で二の島へ行くことを踏まえて、地方でよく売れそうな交易品として、簪や櫛などの装飾品、紅や白粉の化粧品を購入していた。
「ひと通り仕入は終わったみたいだから、皆の服を買いに行こう!」
「え?服?」
「うん、みんな頑張ってくれてるから俺からのプレゼント。」
「いいの?」
「もちろん!」
 嫁軍団のテンションが上がった。俺、グッジョブ。
 嫁たちはキャーキャー言いながら思い思いの服を選ぶ。

「よし、皆、十分選んだかな?じゃぁ、最後にアレを買おう!」
「アレ?」
「ほら、スケスケとむふふなやつだよ。」
 ???×7
「だから、シースルーのネグリジェと、エッチなランジェリーだってば。」
「アタル、あんたねぇ。これから遠征に出るのに、そんなの着られる訳ないでしょ。」そんなことないでしょ!
「船室で…生殺し…。」むしろ望むところだ。
「いや、でも宿に泊まることもあるしさ。」必死に食らい付く俺。
「アタル、遊びに行くのではないのだぞ。」息抜きがいるんだよ。
「そうですよぉ。」いや違うって。
「流石に賛成できません。」マジか?
「えー、そんな。」と、諦めかけたところで救世主現る!
「うちは着てみたいなぁ。」「うちもや。」キョウちゃんズ、グッジョブ!
 これで流れは変わり、交渉の結果、今回はむふふなランジェリーはなしで、スケスケのネグリジェだけになった。むふふなランジェリーは、それぞれの誕生日プレゼントでいいか。笑

 意気揚々と婦人用下着コーナーに行き、俺好みなのを探す。キョウちゃんズは乗り気で、大人嫁5人は若干引き気味である。
 ちなみに店員は、熱心にネグリジェを漁る俺に、一瞬ドン引きしたようだが、そこはプロ。ちゃっかりと、あれこれ勧めて来た。

「俺のイメージだと、サヤ姉は赤、サジ姉は白、ホサキは黄色、アキナは青、タヅナは緑、サキョウは紫、ウキョウは橙だな。このシルク素材の薄織はいいな。どう?」
 皆が頷くので購入した。早速今宵から…、あ、今夜は嫁会議か。

 宿に戻り、オミョシ分家の一行と合流して、最後になったので一緒に夕餉を摂る。オミョシからは、隠居、奥方、側室、シエンの重臣の爺の4人が主だったメンバーで、隠居の重臣たちは来ていない。

 奥方と爺にはあらかじめ伝えて承諾を得ていたが、ここで隠居にも伝えた。
「隠居どの、次ノ宮殿下からの指名依頼で、二の島へ行くことになった。残念だが、ここでお別れだ。」
「そうか。アタルどの、世話になったな。」
「いや、隠居どのが元気になってよかった。シエンのために、お使者の任をよろしく頼むぞ。」
「うむ。任せておけ。」
 奥方は側室に話し掛けているが、側室はビクビクしている。アーカからガハマに来る途中で怒らせたのが堪えているようだ。もっともあれは、隠居をガハマに追い込む策略だったのだが…。
 それに、この間、隠居を独占していたのが後ろめたいのかもしれない。奥方はとうに隠居を見放しているのにな。

 側室がビクビクしているので、見かねたキョウちゃんズが奥方に話し掛け、それからずっと奥方はキョウちゃんズと話していた。
 側室は奥方に遠慮してか終始俯いていた。
 結局、側室はこの後、奥方の実家であるオミョシ本家への同行は辞退して、数名の護衛とともにアーカへ帰って行ったそうだ。

 そして1年後、アーカでシエンやキョウちゃんズの腹違いの妹を産むことになる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/7/24

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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