97 / 183
射手の統領094 北斗号の空調設備
しおりを挟む
射手の統領
Zu-Y
№94 北斗号の空調設備
心地よい揺れにふと目覚めると、すでに昼をまわっていて、廻船はガルツを出航していた。
廻船は追い風を帆に受けつつ潮帆も展開しているが、和の国の南側の外海と比べて、北側の和国海は揺れが比較的少ない。
とは言っても、冬は和国海は荒れる季節だ。今日は穏やかでも、荒れたらこうは言っていられない。
徹夜のためか、本格的に寝入ってしまったキョウちゃんズに、両腕を枕に取られているから、身動きができん。
「アタルぅ。起きたのねぇ。」
「うん。でも動けない。」
気付いてくれたタヅナと、タヅナの横にいたアキナが寄って来て、キョウちゃんズをそーっと退けてくれたので、俺はようやく起きることができた。ふたりに腕枕をしていたせいで、両腕が鈍くしびれているのが心地よい。
「ふたりは寝かしといた方がいいですね。」
「ああ、夜通し式神を飛ばしてたからな。ところで皆はまだ昼餉を摂ってないのか?」
「そうよ。アタルが起きるのを待ってたわ。」
「そりゃすまんかった。昼餉にしよう。」
満場一致。
「船では…寝るだけ…だから…。」
サジ姉のこのひと言で、ガルツで買い込んだ鯖寿司と焼鯖寿司を肴に、お天道様の高いうちから酒盛りになった。笑
ガルツの鯖寿司はいわゆる押し寿司である。もともとは生鯖を酢に漬けて押し寿司にしていたが、最近では焼いた鯖でも押し寿司を作るようになり、焼鯖寿司として売り出している。
こうなると消費者としては、ついつい両方買って食べ比べしたくなるのである。なかなか上手い戦法だ。もっともうちは大人数だし、大食いのキョウちゃんズもいるので、ごっそり買ったけどな。
大人嫁5人は行ける口であるが、俺みたいに後先考えずに呑むことは決してない。俺ひとりで暴走することもなく~もし潰れたら嫁たちに何されるか分かんないし~、楽しい呑みが続いていた。
「そう言えばさぁ。商都ギルドのギルマスのトルシンに言われたんだけど、函府に着いたら北斗号を改造しなきゃならないんだよ。函府にはキノベ陸運の営業所はあるよな?」
「ありますけどぉ、どこを改造するんですかぁ?」
「二の島は寒さがこっちと比べ物にならないくらいきついそうなんだ。それで防寒仕様への改造が必要なんだってさ。」
「アタルぅ。北斗号は防寒仕様も耐暑仕様もぉ、最上級のものを装備してますよぉ。」
「え?そうなの?」
「もぅ。納品のときにぃ、ミーブで姉上がぁ、説明したじゃないですかぁ。」
「そうだっけ?」
「そうですよぉ。函府ではぁ、温熱石をいくつか買えばぁ、いいだけですぅ。」
「アタルのことだ、納品された北斗号を前にして乗りたくてうずうずしてたに違いない。それでろくに説明を聞いてなかったのではないか?」
ホサキの至極的確なツッコミに、
「きっとそうですね。いかにもありそうですわ。」アキナが同意する。
「面目ない。」その通りなので無駄な抵抗はしない。
その後もみんなで楽しく呑んでいると、昼寝をしていたキョウちゃんズが起きて来た。
「いつの間にか眠ってしもた。」
「ああ、ずるーい。皆で宴会やっとるやん。」
「宴会やるなら、うちらも起こしたってぇな。」
「ほんまやでー。」
「おお、起きたか。サキョウ、ウキョウ、こっち来い。」俺はご機嫌でふたりを両横に誘う。
「ふたりは…、昨日…徹夜…。だから…寝かせ…といた…。」サジ姉が説明したら、
「「おおきに。」」と、キョウちゃんズはすんなり納得した。
「ほれ、鯖寿司食え。焼鯖寿司もな。旨いぞ。」俺は食い物を勧める。
もぐもぐ×2&ぱくぱく×2。ふたりはすごい勢いで鯖寿司と焼鯖寿司を食いだした。
キョウちゃんズは、人並外れた気力量を補うため、食事で摂った栄養の大部分が気力量の補充に使われてしまう。その分、成長が遅れていたのだが、それをライに指摘されてから、成長にも栄養が回るように、一生懸命食うようになった。
そして大食いと並行して行っていた俺の頂マッサージの効果も加わり、つい最近ようやく成長モードに入ったのだ。初潮を迎えてから、ここんとこ背も伸びて来てるし、ぺったんこの幼児体形だったのが、むにょんとして来て少女体形に移行して来ている。
「うー、仰山食ったでー。」
「うちもや。お腹、はち切れそうやー。」
「おお、いい食いっぷりだったぞ。これでまた成長するな。」
「いや、まだやで。肝心なのが残うとるよ。」
「せや。アタル兄、お勤めがまだやんか。」
「お勤めって…、俺は修行僧かよ!」
「サキョウ、アタル兄がその気になっておらんようや。しゃーない。奥の手や。あれ、着よや。」
「せやな。アタル兄に買うてもろた奴、着たるわ。」
と、言ってふたりはスケスケネグリジェに着替えた。堂々と俺の眼の前で。しかもブラ外してとか言って来るし。
「お前らなー、前も言ったが少しは恥じらいとか、ないのか?」
「今更やなー。」「せやなー。マッサージで散々弄られてるしな。」
「マッサージは治療みたいなもんだろが。」
結局その後、成長を促す頂マッサージをしてやった。大人嫁公認なのだが、何とも妙な気分だ。
宴会はだらだらと日没後まで続いた。和室6人部屋はトイレも付いているので部屋からから出る必要はない。俺がトイレに立った隙に、大人嫁たち5人もスケスケネグリジェになってた。おお、眼福眼福。
ご機嫌の俺は、そのまま潰れたんだか寝入ったんだか分からないまま眠ってしまったが、無事、何もされずに翌朝を迎えた。
朝餉に昨日の残りの鯖寿司と焼鯖寿司を皆できれいに平らげ、まったりしていると廻船は昼前にワジに入港した。ここでもまた昼過ぎの出航だそうだ。
せっかくだからワジの名物料理でも食いに行くかと言うことになって、ワジに上陸した。
港近くの昼前から営業している料理屋に入り、郷土料理のおすすめを聞いたら、香箱カニ丼、ブリ丼、いしるの貝焼、ゴリの佃煮を勧められた。取り敢えず全部頼む。
香箱カニ丼は、ズワイガニの外子、内子、ほぐし身、カニみそがでんと乗っかった丼で、トリトで食べた親ガニ丼に似ている。ブリも冬が旬だから旨い。いしるの貝焼は、ホタテの貝殻を器に、いしると言うこの地方独特の魚醤で、甘エビ、イカ、キノコ、野菜を煮て食べる。ゴリはこの地方で摂れる淡水魚でハゼに似た魚を甘辛く姿煮にしたものだ。
どれもこれも旨かった。行った先で地の物を食うのは遠征の醍醐味である。まず外れることはない。地方地方の多彩な郷土料理と出会うにつれ、和の国の広さを思い知る。それなのに、この和の国が、外つ国の大陸から見たら小さな島国だと言うのだから、世界は広い。
港の売店で夕餉用に炙りノドグロの棒寿司を買い込んで乗船した。間もなく出港だ。
出航した廻船はトノ半島をまわって東に進み、ドーサの島と和の島の間を抜けて、明日の昼前にはガタニへ入港する。
船旅はのんびりしていていい。陸路の馬車の旅もいいが、馬車の旅は獣や野盗の襲撃に備え、常に警戒していなくてはならない。大きな廻船での船旅では、海賊に襲われる心配はまずないし、近海での海の獣との遭遇はめったにない。ごろりと横になって嫁たちと談笑していると、体も休まるし心も和む。
もちろん海が荒れたらそんなことは言ってられなくなるがな。笑
徹夜明けの昨日は爆睡したキョウちゃんズも、今日は元気で廻船内部の探検に付き合えとせがまれたのだが、大人嫁5人は「「「「「いってらっしゃーい。」」」」」と仲良く手を振った。
結局、俺とキョウちゃんズの3人で廻船内部を巡っている。両手はそれぞれサキョウとウキョウに掴まれているが。苦笑
人懐こいキョウちゃんズは、船員に声を掛けてすぐ仲良くなる。気の荒い船乗りも、かわいいキョウちゃんズに親しげに声を掛けられると、ごっつい顔を緩ませていろいろ船の作業について教えてくれる。アタル兄、アタル兄とまとわりつくキョウちゃんズを見て、
「兄ちゃん、付き添いかいな?」と、たまに船員が俺にも声を掛けて来ると、すかさずキョウちゃんズが、
「「付き添いちゃうでー。うちらの旦那様やねん。」」と爆弾を投下する。
あっと言う間に船員の眼はきつくなり、心の声が聞こえて来るのだ。
『子供に手ぇ出しとんのか?』とか、
『けっ、両手に花かいな!』とか、
『リア充、爆発せいや!』とか…。
キョウちゃんズは無邪気に、
「船乗りの兄さん、おおきに。」「ほな、またなー。」
と言って、両方から俺の手を引いて次の場所へと向かう。
これを廻船中でやらかしたものだから、部屋に戻る頃には、俺は廻船中の船員を敵に回すことになってしまった。泣
部屋に戻ると、大人嫁5人はすでに宴会モードに入っていた。しかもスケスケネグリジェに着替えてるし。嫁たち曰く、ゆったりしててとても軽く、部屋着としては非常に楽ちんなのだそうだ。陸路では急な襲撃に備えて、装備を緩められないが、船旅ではその分、リラックスすると言う。
まあ、分からんでもない。しかしスケスケなのだぞ。船員とかが用があって来たらどうするのだ?と問うと、そのときはセプトの外套を羽織るからいいと言う返事だった。
俺とキョウちゃんズも宴会に加わり、港の売店で買い込んだ炙りノドグロの棒寿司をつまみに、俺と大人嫁は杯を重ねた。キョウちゃんズはいつも通りガッツリ食っている。
嫁7人のスケスケネグリジェを愛でつつ、昨日に続いて楽しい宴会は深更まで続いたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/7/24
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№94 北斗号の空調設備
心地よい揺れにふと目覚めると、すでに昼をまわっていて、廻船はガルツを出航していた。
廻船は追い風を帆に受けつつ潮帆も展開しているが、和の国の南側の外海と比べて、北側の和国海は揺れが比較的少ない。
とは言っても、冬は和国海は荒れる季節だ。今日は穏やかでも、荒れたらこうは言っていられない。
徹夜のためか、本格的に寝入ってしまったキョウちゃんズに、両腕を枕に取られているから、身動きができん。
「アタルぅ。起きたのねぇ。」
「うん。でも動けない。」
気付いてくれたタヅナと、タヅナの横にいたアキナが寄って来て、キョウちゃんズをそーっと退けてくれたので、俺はようやく起きることができた。ふたりに腕枕をしていたせいで、両腕が鈍くしびれているのが心地よい。
「ふたりは寝かしといた方がいいですね。」
「ああ、夜通し式神を飛ばしてたからな。ところで皆はまだ昼餉を摂ってないのか?」
「そうよ。アタルが起きるのを待ってたわ。」
「そりゃすまんかった。昼餉にしよう。」
満場一致。
「船では…寝るだけ…だから…。」
サジ姉のこのひと言で、ガルツで買い込んだ鯖寿司と焼鯖寿司を肴に、お天道様の高いうちから酒盛りになった。笑
ガルツの鯖寿司はいわゆる押し寿司である。もともとは生鯖を酢に漬けて押し寿司にしていたが、最近では焼いた鯖でも押し寿司を作るようになり、焼鯖寿司として売り出している。
こうなると消費者としては、ついつい両方買って食べ比べしたくなるのである。なかなか上手い戦法だ。もっともうちは大人数だし、大食いのキョウちゃんズもいるので、ごっそり買ったけどな。
大人嫁5人は行ける口であるが、俺みたいに後先考えずに呑むことは決してない。俺ひとりで暴走することもなく~もし潰れたら嫁たちに何されるか分かんないし~、楽しい呑みが続いていた。
「そう言えばさぁ。商都ギルドのギルマスのトルシンに言われたんだけど、函府に着いたら北斗号を改造しなきゃならないんだよ。函府にはキノベ陸運の営業所はあるよな?」
「ありますけどぉ、どこを改造するんですかぁ?」
「二の島は寒さがこっちと比べ物にならないくらいきついそうなんだ。それで防寒仕様への改造が必要なんだってさ。」
「アタルぅ。北斗号は防寒仕様も耐暑仕様もぉ、最上級のものを装備してますよぉ。」
「え?そうなの?」
「もぅ。納品のときにぃ、ミーブで姉上がぁ、説明したじゃないですかぁ。」
「そうだっけ?」
「そうですよぉ。函府ではぁ、温熱石をいくつか買えばぁ、いいだけですぅ。」
「アタルのことだ、納品された北斗号を前にして乗りたくてうずうずしてたに違いない。それでろくに説明を聞いてなかったのではないか?」
ホサキの至極的確なツッコミに、
「きっとそうですね。いかにもありそうですわ。」アキナが同意する。
「面目ない。」その通りなので無駄な抵抗はしない。
その後もみんなで楽しく呑んでいると、昼寝をしていたキョウちゃんズが起きて来た。
「いつの間にか眠ってしもた。」
「ああ、ずるーい。皆で宴会やっとるやん。」
「宴会やるなら、うちらも起こしたってぇな。」
「ほんまやでー。」
「おお、起きたか。サキョウ、ウキョウ、こっち来い。」俺はご機嫌でふたりを両横に誘う。
「ふたりは…、昨日…徹夜…。だから…寝かせ…といた…。」サジ姉が説明したら、
「「おおきに。」」と、キョウちゃんズはすんなり納得した。
「ほれ、鯖寿司食え。焼鯖寿司もな。旨いぞ。」俺は食い物を勧める。
もぐもぐ×2&ぱくぱく×2。ふたりはすごい勢いで鯖寿司と焼鯖寿司を食いだした。
キョウちゃんズは、人並外れた気力量を補うため、食事で摂った栄養の大部分が気力量の補充に使われてしまう。その分、成長が遅れていたのだが、それをライに指摘されてから、成長にも栄養が回るように、一生懸命食うようになった。
そして大食いと並行して行っていた俺の頂マッサージの効果も加わり、つい最近ようやく成長モードに入ったのだ。初潮を迎えてから、ここんとこ背も伸びて来てるし、ぺったんこの幼児体形だったのが、むにょんとして来て少女体形に移行して来ている。
「うー、仰山食ったでー。」
「うちもや。お腹、はち切れそうやー。」
「おお、いい食いっぷりだったぞ。これでまた成長するな。」
「いや、まだやで。肝心なのが残うとるよ。」
「せや。アタル兄、お勤めがまだやんか。」
「お勤めって…、俺は修行僧かよ!」
「サキョウ、アタル兄がその気になっておらんようや。しゃーない。奥の手や。あれ、着よや。」
「せやな。アタル兄に買うてもろた奴、着たるわ。」
と、言ってふたりはスケスケネグリジェに着替えた。堂々と俺の眼の前で。しかもブラ外してとか言って来るし。
「お前らなー、前も言ったが少しは恥じらいとか、ないのか?」
「今更やなー。」「せやなー。マッサージで散々弄られてるしな。」
「マッサージは治療みたいなもんだろが。」
結局その後、成長を促す頂マッサージをしてやった。大人嫁公認なのだが、何とも妙な気分だ。
宴会はだらだらと日没後まで続いた。和室6人部屋はトイレも付いているので部屋からから出る必要はない。俺がトイレに立った隙に、大人嫁たち5人もスケスケネグリジェになってた。おお、眼福眼福。
ご機嫌の俺は、そのまま潰れたんだか寝入ったんだか分からないまま眠ってしまったが、無事、何もされずに翌朝を迎えた。
朝餉に昨日の残りの鯖寿司と焼鯖寿司を皆できれいに平らげ、まったりしていると廻船は昼前にワジに入港した。ここでもまた昼過ぎの出航だそうだ。
せっかくだからワジの名物料理でも食いに行くかと言うことになって、ワジに上陸した。
港近くの昼前から営業している料理屋に入り、郷土料理のおすすめを聞いたら、香箱カニ丼、ブリ丼、いしるの貝焼、ゴリの佃煮を勧められた。取り敢えず全部頼む。
香箱カニ丼は、ズワイガニの外子、内子、ほぐし身、カニみそがでんと乗っかった丼で、トリトで食べた親ガニ丼に似ている。ブリも冬が旬だから旨い。いしるの貝焼は、ホタテの貝殻を器に、いしると言うこの地方独特の魚醤で、甘エビ、イカ、キノコ、野菜を煮て食べる。ゴリはこの地方で摂れる淡水魚でハゼに似た魚を甘辛く姿煮にしたものだ。
どれもこれも旨かった。行った先で地の物を食うのは遠征の醍醐味である。まず外れることはない。地方地方の多彩な郷土料理と出会うにつれ、和の国の広さを思い知る。それなのに、この和の国が、外つ国の大陸から見たら小さな島国だと言うのだから、世界は広い。
港の売店で夕餉用に炙りノドグロの棒寿司を買い込んで乗船した。間もなく出港だ。
出航した廻船はトノ半島をまわって東に進み、ドーサの島と和の島の間を抜けて、明日の昼前にはガタニへ入港する。
船旅はのんびりしていていい。陸路の馬車の旅もいいが、馬車の旅は獣や野盗の襲撃に備え、常に警戒していなくてはならない。大きな廻船での船旅では、海賊に襲われる心配はまずないし、近海での海の獣との遭遇はめったにない。ごろりと横になって嫁たちと談笑していると、体も休まるし心も和む。
もちろん海が荒れたらそんなことは言ってられなくなるがな。笑
徹夜明けの昨日は爆睡したキョウちゃんズも、今日は元気で廻船内部の探検に付き合えとせがまれたのだが、大人嫁5人は「「「「「いってらっしゃーい。」」」」」と仲良く手を振った。
結局、俺とキョウちゃんズの3人で廻船内部を巡っている。両手はそれぞれサキョウとウキョウに掴まれているが。苦笑
人懐こいキョウちゃんズは、船員に声を掛けてすぐ仲良くなる。気の荒い船乗りも、かわいいキョウちゃんズに親しげに声を掛けられると、ごっつい顔を緩ませていろいろ船の作業について教えてくれる。アタル兄、アタル兄とまとわりつくキョウちゃんズを見て、
「兄ちゃん、付き添いかいな?」と、たまに船員が俺にも声を掛けて来ると、すかさずキョウちゃんズが、
「「付き添いちゃうでー。うちらの旦那様やねん。」」と爆弾を投下する。
あっと言う間に船員の眼はきつくなり、心の声が聞こえて来るのだ。
『子供に手ぇ出しとんのか?』とか、
『けっ、両手に花かいな!』とか、
『リア充、爆発せいや!』とか…。
キョウちゃんズは無邪気に、
「船乗りの兄さん、おおきに。」「ほな、またなー。」
と言って、両方から俺の手を引いて次の場所へと向かう。
これを廻船中でやらかしたものだから、部屋に戻る頃には、俺は廻船中の船員を敵に回すことになってしまった。泣
部屋に戻ると、大人嫁5人はすでに宴会モードに入っていた。しかもスケスケネグリジェに着替えてるし。嫁たち曰く、ゆったりしててとても軽く、部屋着としては非常に楽ちんなのだそうだ。陸路では急な襲撃に備えて、装備を緩められないが、船旅ではその分、リラックスすると言う。
まあ、分からんでもない。しかしスケスケなのだぞ。船員とかが用があって来たらどうするのだ?と問うと、そのときはセプトの外套を羽織るからいいと言う返事だった。
俺とキョウちゃんズも宴会に加わり、港の売店で買い込んだ炙りノドグロの棒寿司をつまみに、俺と大人嫁は杯を重ねた。キョウちゃんズはいつも通りガッツリ食っている。
嫁7人のスケスケネグリジェを愛でつつ、昨日に続いて楽しい宴会は深更まで続いたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/7/24
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる