射手の統領

Zu-Y

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射手の統領101 森が動く、そしてビヒロ到着

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射手の統領
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№101 森が動く、そしてビヒロ到着

 再出発して、その後は順調に進み、カチトの河が北西から西に向きを変える頃、日が暮れて来た。
 カチトの河が北西から西に向いたら、そこら辺一帯はマクベスの原野で、オッツォからビヒロへの行程の3/4のところだ。

 俺たちは、夜の真っ暗なマクベスの原野を進むのはやめ、完全に暮れる前にマクベスの原野で野営の準備を始めた。
 馬たちをすっぽり覆う幌を出して、キラームース討伐で大活躍だった馬たちに飼葉を与え、休ませる。

 メイン車両とサブ車両を分離して直角に配置して風除けにし、雪原の上に焚火台を敷いて、火を起こして夕餉の準備に入った。
 夕餉な当然、今日の獲物のキラームースの鹿肉ステーキ、鹿肉の炙り焼、鹿肉シチューだ。夜はふたりひと組の交代で見張りをするので、当たり前だが、夕餉での酒はなし。何たって野営だからな。いつ敵が襲って来るか分からん。
 ちなみに、昼間の移動中、式神で常に辺りを警戒しているキョウちゃんズは見張り免除。子供はしっかり睡眠を取らせないとな。寝る子は育つと言うし。笑

「アタル、ちょっと来て。怪しい動きがあるわ。」
 夜中の見張りを終え、まどろんだ明け方に、見張りのサヤ姉に起こされた。異変があったようだ。
 見張台に上がるとサジ姉がカチトの河の対岸を指さして言った。
「森が…動いてる…。」
「森が?」半信半疑で対岸を見ると、確かに森が蠢いていた。森の木が風に揺れているのではなく、動いている。こちらに向かって来てる訳ではないが、警戒するに越したことはない。キラートレントの群れだろうか?
「キラートレントかしらね。」
 こくり。
「俺もその可能性を考えてた。でもまぁ、こっちに近付いて来ている訳じゃないし、緊急性は低いかな。」
「そうね。」
「…。」こくり。
「ん?サジ姉、なんか気になることでもあるのか?」ちょっと何かを考えてる風だったので聞いてみた。
「ここの…地名…。」
「そうね。マクベスの原野だったわね。」
「確かにな。偶然にしては出来過ぎだ。」ここはマクベスの原野。そこで森が動くってなんなんだよ。まるで異国の四大悲劇のひとつの、大詰めのシーンじゃないか。笑

 皆も起き出して来たので朝餉にした。
 昨日の残りの鹿肉シチューを温め直して、飯をぶち込んでかき混ぜ、炙ったチーズを乗っけてドリアっぽくしたのだが、なんか余り物での適当な料理の割には妙に美味しい。

 朝餉を終えて、チャッチャと準備し、ビヒロへ向かった。
 移動しながら、カチトの河の対岸を見ると、早朝に動いていた森は静かである。いったい何だったのであろうか?まぁ、ギルドに着いたら報告しておこう。
 そして、ビヒロに到着したのは2時間後の10時だった。

 取り敢えずそのままギルドへ向かった。ギルド前に北斗号を停めて、そのまま皆でギルドに入った。
 ギルドのロビーには飲食コーナーがあるが、この時間から呑んでいる冒険者がちらほら見受けられる。クエストを受けた奴らは出掛けている時間帯だから、今、呑んだくれてる奴らは、今日のクエストは受けていないのだろう。
「おーい、そこの姉ちゃんたち、俺たちと一緒に呑むべさ。」
「新顔だな。随分別嬪じゃないか。酌してくれるだけでもいいべさー。」
 俺たちは酔っ払いをシカトして、買取部門に行った。

「素材の買取を頼みたい。」俺は収納腕輪からキラームースの大角10本を出した。
「なまらでけぇ!」「こりゃ、キラームースの大角だべさ。」「そだねー。びっくらこいたなー。」買取部門の職員たちが魂消ている。
「したっけ、どうしたべさ?」
「ああ、オッツォから来る途中で襲って来たんでな、逆に狩ってやった。」
「それなら討伐クエストが出てた奴だべさ。」
「鹿皮と鹿肉もあるぞ。」
 3頭はライたちの食料に使ったから、鹿皮2枚と鹿肉ブロックも出した。まぁ鹿肉は昨日食ったから2頭分にはちょっと足りないけどな。
「この鹿皮も立派だべさ。並の3倍はあるんでないかい?ところで、大角は5頭分なのに、皮と肉は2頭分しかないのはなして?」
「ああ、使っちまった。」キラームース丸々3頭分を何に使った?と聞きたげだが、そこはスルーしておく。笑

「こんだけあると査定にちょっくら時間が掛かるべさ。そんでもいいかい?」
「ああ、構わんよ。ところで、藍凍龍のことを詳しく聞きたいんだが。」
「え?したら、あんたらセプトかい?」
「ああ、そうだ。」
 さっき嫁たちに声を掛けて来た酔っ払い冒険者たちは、俺と買取部門の職員たちのやり取りを聞いて、そそくさと退散して行った。笑

 で、俺たちはギルマスルームにいる。
「ビヒロまで遠路ようこそ。ここのギルマスのジッショーだべさ。」
「セプトのアタルだ。順に、サヤ、サジ、ホサキ、サキョウ、ウキョウ、アキナ、タヅナだ。」
「来掛けの駄賃にキラームース5頭の討伐とは噂通りだべさ。なまら、魂消たっしょ。」
「まぁ、仕掛けられたんで返り討ちにしたまでだ。ところで、藍凍龍は?」
「相変わらず暴れとるべさ。シカオ一帯は吹雪きっぱなしで外には出られねぇべさ。建物の1階部分は雪に埋もてれるんでないかい。」
「そりゃ大変だな。家に閉じ込められてるのか?」
「うんにゃ、大方、雪の中にトンネル掘って行き来してるべさ。」
「そりゃ逞しいな。」
「そったらことないべさ。シカオじゃ毎年のことだから、慣れとるっしょ。」いや、慣れてるにしても逞しいだろうよ。苦笑

「で、藍凍龍を狩るついでに、シカオへの物資の輸送でいいんだな。」
「うんにゃ、物資の輸送ができたら、藍凍龍は無理せんでもいいべさ。」
「俺たちの目的は、藍凍龍を狩ることなんだよ。」
「無茶せんでもいいんでないかい?」
「無茶かどうかまぁ見てろって。
 ところでさ、馬車には商品を積んでるんだが、補給物資の積み込みのために、今の積荷をギルドの前で売り捌いてもいいか?」
「構わないっしょ。で、何を積んでるべさ?」
「商都の簪や櫛、紅や白粉、西都織の反物、千枚漬、ガタニの和酒、カキタネ煎餅、ガタニ上布、ガタニ漆器、笹団子だな。」
「ほう、それは珍しい物ばかりだべさ。俺も買わせてもらうっしょ。」なんか軽いな、このギルマス。笑

「別件だがな、昨夜はマクベスの原野で野営をしたんだが、明け方に、カチトの河を挟んだ対岸の森が動いていたんだ。あれはキラートレントではないのか?」
「そだねー。」
「そだねーって、随分軽いな。ほっとていいのか?」
「あいつら、近付かない限り、悪さして来ないべさ。で、あいつらがいると、他の妖獣が寄って来ないっしょ。だから、ほっといた方がいいんでないかい?ってことになったべさ。」
「キラートレントと共存してるのか?」
「そだねー。」
 これには正直驚いた。ガタニのキラートレントは、夜な夜な田んぼを荒らしてたから討伐依頼が来たが、ここビヒロではキラートレントを、なんと他の妖獣除けに使っているのだ。
 てか、あそこでキラートレントを退治してたら、却ってまずかった訳なのな。
心配事があっさり流されて、俺たちはギルマスルームを後にした。

 受付に戻ると、キラームースの討伐査定が終わっており、討伐クエストの追加認定で金貨3枚、大角がひと組金貨5枚、鹿皮1枚が金貨1枚、鹿肉が全部で金貨1枚になった。大角は5組のうち3組だけ売ることにしてふた組は手元に残したので、大金貨2枚と金貨1枚になった。ホクホクである。

 山髙屋ビヒロ支店にもアキナが話を通し、馬たちを北斗号から外してキノベ陸運ビヒロ支店で先に休ませ、結局その日は昼前からギルド横で店開きをしたのだが、最初の客がギルマスのジッショーだったのは笑えた。ジッショーは、ガタニ和酒、カキタネ煎餅、千枚漬を買った。呑兵衛に違いない。笑

 行商となると俺の出番はほとんどない。嫁たちの天下だ。売り捌きは嫁たちに任せて、俺はひたすらサブ車両の積荷を店頭に運ぶ作業を行った。
 各種商人装備によって商人モードになったアキナは、次から次へと売り捌き、抜群の売り上げを誇っている。アキナに次ぐのが、掛け合い上手な口上で客をその気にさせるキョウちゃんズである。西の人特有のテンポのいい掛け合いが、まるで漫才のようで、客にウケまくっている。
 姐御系のサヤ姉は年下の女の子たちから、癒し系口調のタヅナはオジサン達から、口数の少ないサジ姉はマニアック系オタクから、硬い口調で凛としたホサキはドM系オタクから、それぞれ絶大な支持を集めている。

 昼前の開店であったが、口コミでどんどん客足が増え、この日の夕方には積荷のほぼ半分を売ってしまった。
 嫁たちに脱帽。俺は商品の品出しでヘトヘトだ。苦笑

 日中休養させていた馬たちに北斗号を曳かせて、キノベ陸運ビヒロ支店に行き、馬たちと北斗号を預けて、近くの宿屋を取った。そのまま、町に出て、宿屋お勧めのジンギスカンの店に行った。

 ジンギスカンは羊肉の焼肉だが、中央部が盛り上がった鉄板の、盛り上がった部分で羊肉を焼く。このため、肉汁が流れて周囲の縁に溜まるのだが、野菜はこの縁で焼くので、野菜に肉汁が浸み込んで旨くなる。と言う仕掛けだそうだ。どう見ても鉄板なのだが、なぜか鍋と言うそうで、不思議である。大体鍋なら凹凸が逆である。笑

 羊肉には、成長した羊肉のマトンと、子供の肉のラムがあり、ラムの方が癖がないが、マトンでも全然平気である。ひとりひとつずつジンギスカン鍋が置かれ、それぞれが思い思いに肉を焼く。
 タレに付けた、いわゆる漬け状態の肉を焼くのと、生肉を焼いてタレをつけて食べる方法と、両方があるそうだ。しばしばどちらの調理法が旨いかと言う論争になるそうだが、俺としてはぶっちゃけどちらでもいい。
 タレと肉が非常にマッチしており、その肉が野菜に沁みて、焼いた野菜も旨いのだ。とにかくこのジンギスカン鍋~俺は鉄板焼きだと思うのだが~は、二の島を代表する料理のひとつで、まわりにシカオなどの畜村が多数あるここビヒロの名物料理である。

 そしてジンギスカン料理の一番素晴らしい点、それはビールに合うのである。
 俺はビールと言えばヴァイツェンを好むが、ピルスナーでもスタウトでもボックでもケルシュでも、とにかく何でも合うのである。
 もちろんここでもキョウちゃんズは、ガッツリ食っていた。そう言えば、キョウちゃんズはまた最近、背が伸びたようだ。そのうち大人嫁に背丈が追いつくのではないだろうか?普段からガッツリ食っている努力の賜物である。

 宿に戻ると、今夜はツインでタヅナと同室。当然夜はタヅナを堪能する。
 今夜のタヅナは今までで一番積極的で、騎乗スタイルでマイドラゴンを攻め立てて来た。マイドラゴンが歓喜の咆哮を上げたのは言うまでもない。もちろん本番はなしだけど。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/8/14

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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