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射手の統領103 シカオの畜村へ補給
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射手の統領
Zu-Y
№103 シカオの畜村へ補給
藍凍龍の攻略に成功して、レイを眷属にできたので、新たに得た冷属性攻撃の氷撃矢を、シカオの大雪原で試してみた。
レイ鏑に通常矢で触れて冷属性を纏わせた氷撃矢を放つと、冷気が大気中の水蒸気を一気に凍らせ、キラキラ輝くダイヤモンドダストとなった。さらに、3倍氷撃矢を放つと、大雪原に積もっていた雪すらも凍る。凄い威力だ。
ひと通り氷撃矢を試し、流邏石でビヒロに戻った。ちょうど昼時で、昼餉を先にするか迷ったが、ギルドへの藍凍龍攻略の報告を優先することにした。
受付で、藍凍龍を攻略して来たことを報告すると、すぐにギルマスルームに通され、ギルマスのジッショーが怪訝な顔で尋ねて来た。
「もう藍凍龍を攻略したんかい?なまら早くね?」お、疑ってるな。まぁ、それも仕方ないか。
「まあな。」俺はレイ鏑を見せた。藍色に輝くレイ鏑の中で、藍色の光が徐々に藍凍龍の形を取った。
「これは…。」ジッショーの言葉が続かない。笑
『余がレイだ。しばらくアタルとともに行動する。』レイが念話を飛ばしたので、ジッショーはさらに驚いた。ジッショー、お口パクパク酸欠金魚。笑
「という訳で、これから物資の輸送に、シカオの畜村まで行って来る。」
「明日にした方がいいっしょ。今から出たらビヒロに帰って来るのは夜中になるべさ。」
「そうか。じゃぁそうするかな。」
「全部終わったらまとめて報酬を渡すべさ。
ところでさっきの藍凍龍を封印した鏑だがよう、ありゃ、金剛鏑でないかい?」
「おう、そうだぞ。」
「つーことは、ソヤの北限岬で手に入れて来たんかい?」
「いや、俺たちが持ってたものだ。この後、ソヤの北限岬に行ってその金剛鏑を手に入れたいと思ってる。」
「金剛鏑は、神龍様の宿る鏑なもんでよ、ワカナのギルドがソヤの北限岬になまら大事に祀っとるべさ。おいそれとは出してくれないっしょ。」
「そりゃ困ったな。」
「でもあんたら、シカオの難儀を救ったからなー。実は、シカオの村長とワカナのギルマスが同族で懇意なんだべさ。シカオの村長のから口添えしてもらうといいんでないかい?」これはいい情報を得た。
俺たちはギルマスルームから出て、ギルドのロビーで昼餉を摂ることにした。昼餉を摂りながら、今後の方針について皆で話した。
レイを眷属にしたので、明日、シカオの畜村に補給物資を輸送したら、ビヒロでの一連のクエストは終了だ。
「金剛鏑があとひとつしかないからさ、ガタニで噂を聞いた二の島の金剛鏑はぜひとも手に入れたいよな。」
「そうね。シカオの村長が上手く口を利いてくれるかしら?」
「吹雪…やめば…脈あり…?」
「そうよねぇ。それとぉ、シカオにぃ、都合がいいこととかぁ、あればねぇ。」
「特産品とか、交易のタネになるものがあるといいんですけど…。」
「畜村、言うくらいやから、畜産物とかあるんやないの?」
「牛乳とか、乳製品なんかでもええんちゃう?」
「まぁ、実際に行ってみないと何とも言えぬな。」
ギルドのロビーで遅めの昼餉を終えると、外は寒いし、レイ攻略の疲れを癒すために、午後は例の湯屋で温泉三昧にしようと言うことになった。
ふふふ。貸切浴室をひとつ押さえて、皆で混浴だ!
「これから湯屋に行って、貸切浴室ゆっくりしようぜ。」
「いいですねぇ。でもぉ、朝の禊のときも思ったのですがぁ、この人数で貸切浴室は狭いんじゃないですかぁ?」
「え?」狭いから密着できていいんじゃないの?
「そうだな、昨日皆で入った大浴場の方が広々としていていいな。」
「え?じゃあ俺は?」
「男湯ですね。流石に女湯には入れませんもの。」
ずんと凹む俺。
「しゃーないな、うちらが一緒に行ったるわ。」
「せやな。3人ならちょうどいい広さやろ。」
「ガキンチョはいい。」
「「なんやて!」」しまった!つい本音が出てしまった。汗
「あ、いや、何でもない。」
「アタル…今のは…ない…。」
「ちょっとアタル、キョウちゃんズに謝んなさい。」
「ごめんなさい。」素直に謝る俺。
「「ふん。」」あー、怒らせてしまった。汗
しかし「ふん。」の動作が両腕組んで左右対称に顔を背けてシンクロしてたのがちょっと笑えた。
さてさて、むくれたふたりをを懐柔せねば。
「あの、サキョウ、ウキョウ、さっきおちょくってくれた仕返しだったんだが、間に受けちゃ困るな。」
「なんのし返しやねん?」「うちら、なんかしたかいな?」
「おい、レイを攻略した後に、おちょくってくれただろーが!」
「あ、あれかいな。アタル兄、男は細かいことを根に持ったらあかん。」
「せや。株が下がってまうでー。」
まったくこのふたりには敵わんな。
結局大人嫁たちは大浴場で、俺とキョウちゃんズが貸切浴場になった。許してもらう代わりに、いつものマッサージを念入りにする羽目になってしまったが。苦笑
湯屋を出てそのまま夕餉に行く。ジンギスカン、豚丼と続いたので、今夜は軽めに行こうかと思っていたのだが、嫁たちが満場一致で、焼き肉になった。やはりうちの女性陣は肉食系である。苦笑
で、今夜はサジ姉と同室。湯屋で混浴してくれなかった分、猛攻で攻め立ててやった。今夜の勝負は俺の方が優勢で、指と舌で何度も落城させてやったのだった。本番抜きで。
翌日は、キノベ陸運のビヒロ営業所で、預けていた北斗号を受け取り、シカオの畜村への補給物資を北斗号に満載して、9時にはシカオの畜村に向けてビヒロを発った。
ビヒロからシカオの畜村までは、大体半日の行程だ。シカオの大雪原は積雪は凄い状態で、シカオの畜村では建物の1階が埋もれてるそうだ。馬たちには馬用のかんじきを履かせていた。
レイを攻略した影響なのか、シカオの大雪原の降雪は止んでいた。
順調に行程は進み、昼前にはシカオの畜村がある辺りに来た。思いっきり雪を被った平屋の建物が点在するが、1階部分が雪に埋もれていると言う話だったので、おそらく2階だと思われる。ひときわ高い建物の屋根のてっぺんから上に伸びている潜望鏡がこちらに向いた。
するとその建物の窓が開いて、中から人が顔を出した。
「あんたらは物資の補給に来てくれたんかい?」
「そうだ。俺はセプトのアタルだ。ビヒロのギルドから頼まれて物資を運んで来た。村長はいるか?」
「俺が村長だぁ。いんやー、ありがとなー。今年は特に藍凍龍様が元気でよう、ずっと雪が降り続いとったっけよう、昨日の午後にようやく何十日かぶりに晴れたんだべさ。」
「そりゃよかったな。」
「まぁ、今年は特にしんどかったっけよ、ほんでもこのおかげで夏に水の心配はいらないべさ。ただよう、お休みになるには、ちょっと早い気もするべさ。もうひと暴れしなさるかもしんねぇから、物資の補給はありがたいっしょ。」
「いや、もう落ち着くと思うぞ。」
俺は村長にレイ鏑を見せた。レイが鏑の中で藍凍龍の形態を取ると、
「キナスツカムイ!イヤィラィケレ。」村長はレイ鏑に向かって跪いた。
え?村長はなんて言ったんだろ?仕草から見て、レイを敬ったのだろうな。
『ふむ。余はアタルとともにしばしシカオを離れるゆえ、今年の吹雪はもう終わりだ。』
「アタルさん、あんた、神龍の遣いかい?」
「神龍の遣い?いや、俺は射手だよ。それに、レイは俺の師匠で仲間だな。」村長がレイを敬っているようなので、眷属と言うのはやめておいた。
「それは神龍の宿る鏑石だべさ。ソヤの北限岬から取って来たんかい?」
「いや、これはもともと俺の持ち物だ。俺たちは金剛鏑と呼んでいる。
ところで村長、ビヒロのギルマスから、村長とワカナのギルマスが懇意だと聞いたんだがそうなのか?」
「そだなー。俺と、ワカナのギルマスのムネコクとは幼馴染だべさ。」
「御覧の通り、レイを封印するのに手持ちの金剛鏑を使ってしまってな。ワカナのギルドで管理するソヤの北限岬の金剛鏑を譲り受けたいんだが、ギルマスのムネコクさんに仲介してくれないか?」
「そだなー、アタルさんは猛吹雪を止めてくれたし、藍凍龍様の仲間になったんだから、金剛鏑を譲り受ける資格はあるべさ。うん、ムネコクに紹介状を書くっしょ。」
「おお、それは助かる。あ、そう言えば、物資はどこに搬入すればいい?」
「ここでいいべさ。村の衆を呼んで来るんで、ちょっと待っててくんない?」
しばらくして、わらわらと村人が出て来た。2階にもドアが付いてるのな。
「随分いるんだな。この建物にこんなにいたのか?」
「いんや、皆の衆は自宅から駆け付けて来たんだべさ。積もった雪の下にトンネル通路を張り巡らせとるんだわ。」
「マジか?トンネルは潰れたりしないのか?」
「下はカチコチに凍っとるから大丈夫だべさ。」何とも逞しい。
ちなみに藍凍龍が活動を終えて暖かくなって来ると、トンネルは使わなくなるそうだ。崩れる危険もあるが、晴れれば2階のドアから出入りするんだとか。なんか、凄い。
しばらくして村人総出での物資の搬入が終わった。
「ほんとに助かったべさ。大したもんじゃねぇけど、土産に持ってくんない?」
村長がワカナのギルマスのムネコクへの紹介状と一緒に、手土産としてシカオ産の燻製チーズをくれた。何の気なしにひとつ摘まんでみると…なんだこれ!めっちゃ旨ぇぇ!
「ちょっと村長、これめっちゃ旨いんだけど…。」皆にも勧めた。
「「「「「「「美味しい♪」」」」」」」むちゃくちゃ好評だ。
「なぁ、村長。まとまった量があったらぜひ仕入れたい。」
「ん?チーズか?したっけ、いろんな種類があるから気に入ったんなら見て行けばいいべさ。」
それから、土産にもらった燻製チーズ以外の、チーズも皆で試した。流石、シカオは畜村と言うだけあって、乳製品が豊富だ。いろんな種類のチーズを試食させてもらったがどれも物凄く旨い。これは掘り出し物だ。何種類ものチーズとバターをごっそり買い込んだ。
「いやー、物資を補給してもらっただけでもありがたいのに、村の特産品をごっそり買ってもらって、ありがとなー。」
「いや、村長。ほんとに旨いし、これだけ質がいいのに飛び切り安い。この辺だけで消費するのはもったいないぞ。」
「村長さん、ほんとにそうですわ。山髙屋で取り扱わせて頂けませんか?東都で販売しますので、シカオブランドを立ち上げましょう。」
「なまら魂消たべさ。あんたら山髙屋さんかね?」
「山髙屋の移動店舗なんだよ。」
「ありがてぇ話だが、こんなんで売れるんかい?」
「大丈夫です。ビヒロ支店の店長に話を通します。」
アキナと村長の商談はとんとん拍子で進んだ。
物資の補給を終えた俺たちは、そのままUターンでビヒロに戻り、着いたのは夕方だった。
アキナは俺たちと別れて、そのまま山髙屋ビヒロ支店に出向いて行った。シカオの畜村の乳製品の独占販売と、シカオブランドの立ち上げを指示しに行ったのだ。アキナの御父上で山髙屋社長のたっての願いで、アキナは山髙屋東都総本店に、相談役として籍を残しているので、支店長に指示を出せる立場にある。
ここで俺たちが発掘した、シカオの畜村の手作り乳製品は、その後、山髙屋の廻船で東都に直接搬入され、超人気ブランドとして東都を中心に大ブレイクすることになる。
一方、俺たちは、ギルドで藍凍龍攻略とシカオの畜村への物資の補給の報酬の大金貨3枚と金貨1枚を貰って一連のクエストを終えた。なお、俺は最高位のSランクになってプラチナカードとなり、キョウちゃんズとアキナとタヅナはAランクに上がってゴールドカードになった。
この後は、東都に帰って必要経費の精算だ。まあ、その前に金剛鏑の探索があるが。
ギルドで、山髙屋ビヒロ支店に行っていたアキナと合流し、夕餉の前にいつもの湯屋でひと風呂浴びる。ビヒロでは毎日通ったが、明日ビヒロを発つから今日で最後だ。
最後と言うことで嫁たちにお願いして、貸切浴室にしてもらった。8人で入るには狭かったのだが、あちこちがアクシデントで当たるのが嬉しい。ラッキースケベと言う奴だ。
調子に乗って、ラッキースケベを連発していたら、7人掛りで解剖された。もう、お婿に行けない。泣
夕餉はまたジンギスカンで、結局ビヒロでは肉しか食わなかった。まぁいいけど。キョウちゃんズの食欲に隠れているが、大人嫁たちのガッツリ具合もなかなかなものだ。サヤ姉とサジ姉が17、ホサキとアキナとタヅナが16だから、皆まだ成長期だしな。もちろん15の俺も成長期だ。
そして今夜は、サヤ姉と同室。湯屋で解剖された分の仕返しで、猛攻で攻め立ててやった。今夜の勝負も俺の方が優勢で、指と舌で何度も落城させてやったのだった。本番抜きで。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/8/14
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№103 シカオの畜村へ補給
藍凍龍の攻略に成功して、レイを眷属にできたので、新たに得た冷属性攻撃の氷撃矢を、シカオの大雪原で試してみた。
レイ鏑に通常矢で触れて冷属性を纏わせた氷撃矢を放つと、冷気が大気中の水蒸気を一気に凍らせ、キラキラ輝くダイヤモンドダストとなった。さらに、3倍氷撃矢を放つと、大雪原に積もっていた雪すらも凍る。凄い威力だ。
ひと通り氷撃矢を試し、流邏石でビヒロに戻った。ちょうど昼時で、昼餉を先にするか迷ったが、ギルドへの藍凍龍攻略の報告を優先することにした。
受付で、藍凍龍を攻略して来たことを報告すると、すぐにギルマスルームに通され、ギルマスのジッショーが怪訝な顔で尋ねて来た。
「もう藍凍龍を攻略したんかい?なまら早くね?」お、疑ってるな。まぁ、それも仕方ないか。
「まあな。」俺はレイ鏑を見せた。藍色に輝くレイ鏑の中で、藍色の光が徐々に藍凍龍の形を取った。
「これは…。」ジッショーの言葉が続かない。笑
『余がレイだ。しばらくアタルとともに行動する。』レイが念話を飛ばしたので、ジッショーはさらに驚いた。ジッショー、お口パクパク酸欠金魚。笑
「という訳で、これから物資の輸送に、シカオの畜村まで行って来る。」
「明日にした方がいいっしょ。今から出たらビヒロに帰って来るのは夜中になるべさ。」
「そうか。じゃぁそうするかな。」
「全部終わったらまとめて報酬を渡すべさ。
ところでさっきの藍凍龍を封印した鏑だがよう、ありゃ、金剛鏑でないかい?」
「おう、そうだぞ。」
「つーことは、ソヤの北限岬で手に入れて来たんかい?」
「いや、俺たちが持ってたものだ。この後、ソヤの北限岬に行ってその金剛鏑を手に入れたいと思ってる。」
「金剛鏑は、神龍様の宿る鏑なもんでよ、ワカナのギルドがソヤの北限岬になまら大事に祀っとるべさ。おいそれとは出してくれないっしょ。」
「そりゃ困ったな。」
「でもあんたら、シカオの難儀を救ったからなー。実は、シカオの村長とワカナのギルマスが同族で懇意なんだべさ。シカオの村長のから口添えしてもらうといいんでないかい?」これはいい情報を得た。
俺たちはギルマスルームから出て、ギルドのロビーで昼餉を摂ることにした。昼餉を摂りながら、今後の方針について皆で話した。
レイを眷属にしたので、明日、シカオの畜村に補給物資を輸送したら、ビヒロでの一連のクエストは終了だ。
「金剛鏑があとひとつしかないからさ、ガタニで噂を聞いた二の島の金剛鏑はぜひとも手に入れたいよな。」
「そうね。シカオの村長が上手く口を利いてくれるかしら?」
「吹雪…やめば…脈あり…?」
「そうよねぇ。それとぉ、シカオにぃ、都合がいいこととかぁ、あればねぇ。」
「特産品とか、交易のタネになるものがあるといいんですけど…。」
「畜村、言うくらいやから、畜産物とかあるんやないの?」
「牛乳とか、乳製品なんかでもええんちゃう?」
「まぁ、実際に行ってみないと何とも言えぬな。」
ギルドのロビーで遅めの昼餉を終えると、外は寒いし、レイ攻略の疲れを癒すために、午後は例の湯屋で温泉三昧にしようと言うことになった。
ふふふ。貸切浴室をひとつ押さえて、皆で混浴だ!
「これから湯屋に行って、貸切浴室ゆっくりしようぜ。」
「いいですねぇ。でもぉ、朝の禊のときも思ったのですがぁ、この人数で貸切浴室は狭いんじゃないですかぁ?」
「え?」狭いから密着できていいんじゃないの?
「そうだな、昨日皆で入った大浴場の方が広々としていていいな。」
「え?じゃあ俺は?」
「男湯ですね。流石に女湯には入れませんもの。」
ずんと凹む俺。
「しゃーないな、うちらが一緒に行ったるわ。」
「せやな。3人ならちょうどいい広さやろ。」
「ガキンチョはいい。」
「「なんやて!」」しまった!つい本音が出てしまった。汗
「あ、いや、何でもない。」
「アタル…今のは…ない…。」
「ちょっとアタル、キョウちゃんズに謝んなさい。」
「ごめんなさい。」素直に謝る俺。
「「ふん。」」あー、怒らせてしまった。汗
しかし「ふん。」の動作が両腕組んで左右対称に顔を背けてシンクロしてたのがちょっと笑えた。
さてさて、むくれたふたりをを懐柔せねば。
「あの、サキョウ、ウキョウ、さっきおちょくってくれた仕返しだったんだが、間に受けちゃ困るな。」
「なんのし返しやねん?」「うちら、なんかしたかいな?」
「おい、レイを攻略した後に、おちょくってくれただろーが!」
「あ、あれかいな。アタル兄、男は細かいことを根に持ったらあかん。」
「せや。株が下がってまうでー。」
まったくこのふたりには敵わんな。
結局大人嫁たちは大浴場で、俺とキョウちゃんズが貸切浴場になった。許してもらう代わりに、いつものマッサージを念入りにする羽目になってしまったが。苦笑
湯屋を出てそのまま夕餉に行く。ジンギスカン、豚丼と続いたので、今夜は軽めに行こうかと思っていたのだが、嫁たちが満場一致で、焼き肉になった。やはりうちの女性陣は肉食系である。苦笑
で、今夜はサジ姉と同室。湯屋で混浴してくれなかった分、猛攻で攻め立ててやった。今夜の勝負は俺の方が優勢で、指と舌で何度も落城させてやったのだった。本番抜きで。
翌日は、キノベ陸運のビヒロ営業所で、預けていた北斗号を受け取り、シカオの畜村への補給物資を北斗号に満載して、9時にはシカオの畜村に向けてビヒロを発った。
ビヒロからシカオの畜村までは、大体半日の行程だ。シカオの大雪原は積雪は凄い状態で、シカオの畜村では建物の1階が埋もれてるそうだ。馬たちには馬用のかんじきを履かせていた。
レイを攻略した影響なのか、シカオの大雪原の降雪は止んでいた。
順調に行程は進み、昼前にはシカオの畜村がある辺りに来た。思いっきり雪を被った平屋の建物が点在するが、1階部分が雪に埋もれていると言う話だったので、おそらく2階だと思われる。ひときわ高い建物の屋根のてっぺんから上に伸びている潜望鏡がこちらに向いた。
するとその建物の窓が開いて、中から人が顔を出した。
「あんたらは物資の補給に来てくれたんかい?」
「そうだ。俺はセプトのアタルだ。ビヒロのギルドから頼まれて物資を運んで来た。村長はいるか?」
「俺が村長だぁ。いんやー、ありがとなー。今年は特に藍凍龍様が元気でよう、ずっと雪が降り続いとったっけよう、昨日の午後にようやく何十日かぶりに晴れたんだべさ。」
「そりゃよかったな。」
「まぁ、今年は特にしんどかったっけよ、ほんでもこのおかげで夏に水の心配はいらないべさ。ただよう、お休みになるには、ちょっと早い気もするべさ。もうひと暴れしなさるかもしんねぇから、物資の補給はありがたいっしょ。」
「いや、もう落ち着くと思うぞ。」
俺は村長にレイ鏑を見せた。レイが鏑の中で藍凍龍の形態を取ると、
「キナスツカムイ!イヤィラィケレ。」村長はレイ鏑に向かって跪いた。
え?村長はなんて言ったんだろ?仕草から見て、レイを敬ったのだろうな。
『ふむ。余はアタルとともにしばしシカオを離れるゆえ、今年の吹雪はもう終わりだ。』
「アタルさん、あんた、神龍の遣いかい?」
「神龍の遣い?いや、俺は射手だよ。それに、レイは俺の師匠で仲間だな。」村長がレイを敬っているようなので、眷属と言うのはやめておいた。
「それは神龍の宿る鏑石だべさ。ソヤの北限岬から取って来たんかい?」
「いや、これはもともと俺の持ち物だ。俺たちは金剛鏑と呼んでいる。
ところで村長、ビヒロのギルマスから、村長とワカナのギルマスが懇意だと聞いたんだがそうなのか?」
「そだなー。俺と、ワカナのギルマスのムネコクとは幼馴染だべさ。」
「御覧の通り、レイを封印するのに手持ちの金剛鏑を使ってしまってな。ワカナのギルドで管理するソヤの北限岬の金剛鏑を譲り受けたいんだが、ギルマスのムネコクさんに仲介してくれないか?」
「そだなー、アタルさんは猛吹雪を止めてくれたし、藍凍龍様の仲間になったんだから、金剛鏑を譲り受ける資格はあるべさ。うん、ムネコクに紹介状を書くっしょ。」
「おお、それは助かる。あ、そう言えば、物資はどこに搬入すればいい?」
「ここでいいべさ。村の衆を呼んで来るんで、ちょっと待っててくんない?」
しばらくして、わらわらと村人が出て来た。2階にもドアが付いてるのな。
「随分いるんだな。この建物にこんなにいたのか?」
「いんや、皆の衆は自宅から駆け付けて来たんだべさ。積もった雪の下にトンネル通路を張り巡らせとるんだわ。」
「マジか?トンネルは潰れたりしないのか?」
「下はカチコチに凍っとるから大丈夫だべさ。」何とも逞しい。
ちなみに藍凍龍が活動を終えて暖かくなって来ると、トンネルは使わなくなるそうだ。崩れる危険もあるが、晴れれば2階のドアから出入りするんだとか。なんか、凄い。
しばらくして村人総出での物資の搬入が終わった。
「ほんとに助かったべさ。大したもんじゃねぇけど、土産に持ってくんない?」
村長がワカナのギルマスのムネコクへの紹介状と一緒に、手土産としてシカオ産の燻製チーズをくれた。何の気なしにひとつ摘まんでみると…なんだこれ!めっちゃ旨ぇぇ!
「ちょっと村長、これめっちゃ旨いんだけど…。」皆にも勧めた。
「「「「「「「美味しい♪」」」」」」」むちゃくちゃ好評だ。
「なぁ、村長。まとまった量があったらぜひ仕入れたい。」
「ん?チーズか?したっけ、いろんな種類があるから気に入ったんなら見て行けばいいべさ。」
それから、土産にもらった燻製チーズ以外の、チーズも皆で試した。流石、シカオは畜村と言うだけあって、乳製品が豊富だ。いろんな種類のチーズを試食させてもらったがどれも物凄く旨い。これは掘り出し物だ。何種類ものチーズとバターをごっそり買い込んだ。
「いやー、物資を補給してもらっただけでもありがたいのに、村の特産品をごっそり買ってもらって、ありがとなー。」
「いや、村長。ほんとに旨いし、これだけ質がいいのに飛び切り安い。この辺だけで消費するのはもったいないぞ。」
「村長さん、ほんとにそうですわ。山髙屋で取り扱わせて頂けませんか?東都で販売しますので、シカオブランドを立ち上げましょう。」
「なまら魂消たべさ。あんたら山髙屋さんかね?」
「山髙屋の移動店舗なんだよ。」
「ありがてぇ話だが、こんなんで売れるんかい?」
「大丈夫です。ビヒロ支店の店長に話を通します。」
アキナと村長の商談はとんとん拍子で進んだ。
物資の補給を終えた俺たちは、そのままUターンでビヒロに戻り、着いたのは夕方だった。
アキナは俺たちと別れて、そのまま山髙屋ビヒロ支店に出向いて行った。シカオの畜村の乳製品の独占販売と、シカオブランドの立ち上げを指示しに行ったのだ。アキナの御父上で山髙屋社長のたっての願いで、アキナは山髙屋東都総本店に、相談役として籍を残しているので、支店長に指示を出せる立場にある。
ここで俺たちが発掘した、シカオの畜村の手作り乳製品は、その後、山髙屋の廻船で東都に直接搬入され、超人気ブランドとして東都を中心に大ブレイクすることになる。
一方、俺たちは、ギルドで藍凍龍攻略とシカオの畜村への物資の補給の報酬の大金貨3枚と金貨1枚を貰って一連のクエストを終えた。なお、俺は最高位のSランクになってプラチナカードとなり、キョウちゃんズとアキナとタヅナはAランクに上がってゴールドカードになった。
この後は、東都に帰って必要経費の精算だ。まあ、その前に金剛鏑の探索があるが。
ギルドで、山髙屋ビヒロ支店に行っていたアキナと合流し、夕餉の前にいつもの湯屋でひと風呂浴びる。ビヒロでは毎日通ったが、明日ビヒロを発つから今日で最後だ。
最後と言うことで嫁たちにお願いして、貸切浴室にしてもらった。8人で入るには狭かったのだが、あちこちがアクシデントで当たるのが嬉しい。ラッキースケベと言う奴だ。
調子に乗って、ラッキースケベを連発していたら、7人掛りで解剖された。もう、お婿に行けない。泣
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そして今夜は、サヤ姉と同室。湯屋で解剖された分の仕返しで、猛攻で攻め立ててやった。今夜の勝負も俺の方が優勢で、指と舌で何度も落城させてやったのだった。本番抜きで。
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設定を更新しました。R4/8/14
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
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が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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