射手の統領

Zu-Y

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射手の統領153 シノベとの婚姻同盟

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射手の統領
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№153 シノベとの婚姻同盟

 翌朝、朝餉を終えるとシノブがやって来た。
「アタル、父上がお昼にお待ちしているとのことでござる。」
「分かった。」
「ではこれにて。後程、館でお会いするでござる。」
「おい待てよ、シノブ。この後、何か用事でもあるのか?」
「いや、ないでござるが。」
「ならゆっくりして行けよ。午前中はこっちにいて、昼に一緒に行こうぜ。」
「いや、しかしでござるな…。」

「シーちゃん、ええやん。」
「せや。アタル兄から聞いたけど、シーちゃん、Aランクやってんな。」
「そうよぉ。しかもぉ、ソロなんでしょう?びっくりしたわぁ。」
「シーちゃん、ソロでの話、聞かせてくれないか?私たちは、ソロでクエストを受けたことがないのだ。」
「私も…聞きたい…。サヤ?」
「そうね、私も聞きたいかな。」
「その代わり、私たちの話もしますわ。」

 結局シノブは、午前中は湯宿の俺たちの部屋にいて、冒険者でのソロ活動や、探索クエスト、潜入しての調査クエスト、断崖絶壁などでの採集クエストなど、忍の者が好んで行う、特殊なクエストの話をしてくれた。
 俺たちは、討伐クエストや、普通の採集クエストしかやったことがなかったから、非常に新鮮だった。

 ところで嫁たちの互いの呼び方だが、シノブは今までの流れで、サキョウはサーちゃん、ウキョウはウーちゃん、それ以外の嫁は名前に「どの」を付けて読んでいた。
「なんか余所余所しくね?」の俺のひと言で、サキョウやウキョウが呼んでいるように、○○姉と呼ぶことになった。サヤ姉、サジ姉、サキ姉、アキ姉、タヅ姉である。
 一方、嫁たちは今まで通り、シーちゃん呼びである。
 シノブはすっかり打ち解け、嫁たちの輪の中にいても違和感がなくなった。

 さて、ぼちぼち昼である。
「じゃあ、そろそろ行くか?」
「承知でござる。」
 俺とシノブは、他の嫁たちに見送られてシノベ館へと出向いた。そして表座敷に通され、左右に重臣を従えたシノベどのと対面した。
 俺は客座。シノブはシノベどのの隣に座っている。

「シノベどの、一昨日に続いてお時間を頂き忝い。」
「いや、構わぬ。」
「今日の用向きであるが、ユノベ家とシノベ家の同盟のお願いに参った。ついては、両家の絆をさらに深めるため、シノベどのの一の姫、シノブどのをわが嫁のひとりとしてお迎えし、婚姻同盟としたいいかが?」
「うーむ。」あれ?すんなりOKじゃねぇの?ここに来て渋る要素って何よ。

「父上?」シノブがシノベどのを促したが…。
「シノブ、本当によいのか?」
「もちろんでござりまするが?」
「こやつは、そなたを所望しに来ているにも拘らず、他の女子おなごどもを侍らせておるのだぞ。」今更そこかよ。
「父上、こやつ呼ばわりは失礼でござりましょう。そもそも、皆様はアタルの奥方様でござりまするぞ。浮気や女遊びとは訳が違うでござる。」シノブの口調は明らかに不満気だ。ここへ来て逡巡するシノベのお頭にイラっと来ている。
「いや、しかしだな。」
「ここへ来て何を躊躇っているのでござる?もしや、ユノベとの婚姻同盟は、シノベにとって利がないとのお考えでござるか?」
「いや、それは違うのだが…。」煮え切らねぇなぁ。

 ふぅ、とひと息ついたシノブは、シノベどのに最終決断を促した。
「私は嫁ぎまするぞ。そして、シノベとユノベの婚姻同盟の礎となるでござる。よろしいでござるな?」
「ああ、分かっ…。」
「「ちょっと待ったぁ!」」今度は何だよ?苦笑
 振り返ると、表座敷にふたりの少年がドカドカと入って来た。憤怒の表情である。
「クナイ、マキビシ、控えよ。そなたらはまだ中忍ゆえ、この場にいる資格はない。」

 次の瞬間、シノブがサッと俺の脇に来ていた。おお、流石忍び。動きが速い。
「姉上、姉上はマキビシの嫁となって、マキビシとともに、将来、俺の片腕になって頂きたい。ゆえに、この婚姻同盟は断って頂く。」
「シノブ、わが妻となれ。ともに、次期お頭のクナイを支えようぞ。」こっ、これはひょっとすると、BSSってやつ?面白くなって来やがったぁ。笑
「マキビシ、私を呼び捨てにするなど10年早いでござる。」シノブが殺気を放つと、
「う…、すまぬ。シノブ姉。つい、勢いで…。」マキビシと呼ばれた少年がソッコーでシノブに詫びた。なんなんだよこいつ、弱ぇなぁ。苦笑

 すると、クナイと呼ばれた少年がシノベどの向かって、
「父上、ユノベとの婚姻同盟を断ってください。」と言ったのだが…、
「おのれ。」えっ?シノブ?
 次の瞬間、マキビシが表座敷の入口まで吹っ飛んで、クナイはシノブに組み伏せられていた。今の今までふたりとも立ってたのに、何という早業。凄ぇな、忍の技は。流石、上忍。キレッキレである。
 マキビシを蹴り飛ばしたシノブは、クナイを巻き込みで引き倒し、そのまま締め落としていたのだ。

 蹴転がされたマキビシはその場に蹲って呻いており、締め落とされたクナイは気を失ってピクリとも動かない。
「修行が足りぬでござる。だからいつまで経っても上忍に上がれぬのでござる。」シノブがピシャリと言い切った。

「ふたりを介抱せよ。」シノベどのの言葉に、重臣たちがふたりの元へ駆け付け、ふたりを助け起こした。締め落とされたクナイに喝を入れて意識を取り戻させ、マキビシの腹筋を伸ばしている。マキビシは、腹にまともに蹴りを食らって、横隔膜が痙攣し、息が詰まってたようだ。

 一段落ついて、主の座にシノベどの、その両脇に重臣たち、客の座の俺。シノベどのの隣にいたシノブは俺の隣に座を移していた。
 俺たちの左の少し離れたところで、クナイとマキビシは、俺たちに平伏したままである。

「クナイは弟、マキビシは従弟でござる。ふたりとも私のひとつ下でござるが、この通り甘ちゃんゆえ、いつまで経っても中忍のままでござる。」
「いや、14歳で中忍ってのも結構凄いんじゃないか?シノブが14歳目前で上忍に上がったのが規格外なんだろ。」
「年は関係ござらん。何ごとも修行でござる。私も規格外と言う程の手練れではござらんよ。」俺に対するシノブのこの返答に、重臣一同、揃って首を横に振っている。うん、重臣たちはシノブを規格外と思ってるようだ。笑

『ふむ。アタルよ、余たちで少々おせっかいを焼いてやろうではないか。』ライからの念話が頭の中に響いて来た。
 隣に座っているシノブも含め、まわりの連中には、ライの念話は聞こえてないな。俺だけに念話を飛ばして来たようだな。
 すると鏑シャツに仕込んだライ鏑、ウズ鏑、シン鏑、レイ鏑、エン鏑、ノワ鏑から、じわじわと気力が放出されて来た。
 最初に隣のシノブが震え出し、次いで平伏したままのクナイとマキビシがガクブル状態となった。
 いったいどうした?
 そして手前にいる重臣たちから次々にウッと反応して、最後に一番奥にいた主の座のシノベどのが蒼白になった。
 あ、さてはライたちが、気力で圧を掛けてるのだな。

 少し間があってから、ライたちからの気力の放出がやむと、その場の全員が、はぁ、とひと息着いた。
「アタル様、凄い。」え?アタル様?横でシノブが涙目になっている。俺の仕業じゃないけどね。苦笑

「アタルどの、身内が失礼仕った。」シノベどのが持ち直して、クナイとマキビシの非礼を詫びて来た。
「なんの。義弟、義従弟となるふたりゆえ、水に流そうと思う。」暗に、シノブとの婚姻を認めねば許さんぞ、とのニュアンスを含ませてやった。
「うむ。もちろんシノベとの婚姻同盟に、もとより否やはない。」嘘付け、渋ったじゃねぇかよ。と思ったが、それを言う程、馬鹿な俺ではない。
「それは重畳。」
「見ての通りじゃじゃ馬だが、シノブをよろしく頼む。」
「父上っ。」

 それから、同盟の詳細を詰めた。
 此度、ユノベはシノベと婚姻同盟を結ぶ。このため、シノベは、ユノベを介して、トノベ、ヤクシ、タテベ、キノベ、オミョシ西家、さらにはオミョシ分家を介してエノベとも同盟を結び、山髙屋とは提携することになる。

 話が終わったところで、重臣たちの中にいた、ユノベ付きシノベ衆の前のまとめ役と言葉を交わし、永年の貢献に対しての礼を言った。名も聞いた。サスケと言うそうだ。
「ところで主様、俺は再びユノベ様付き部隊のまとめ役に戻るかもしれませぬ。」
「え?シノブは?」
「主様に嫁ぐではありませんか。ゆえに、シノベからは除籍となります。」
「あ、なるほど。では今後もよろしくな。サスケどの。」
「はい。」

 その後、シノベのお頭である舅どのと固めの杯を交わし、シノブを連れて湯宿への帰路に就いた。帰路の最中、俺は今日の種明かしをしたのだ。
「アタル様、今日は上には上がいると感服致しましてござりまする。」やっぱりアタル様に敬語じゃんよ。
「シノブ、どうした?様も敬語もやめてくれよ。」
「されど、気力であの場の者全員を威圧するなど、並の実力ではござりませぬ。」
「いやぁ、騙すつもりはなかったんだけどさ、あの気力の放出は、俺じゃなくてライたちなんだよ。」
「え?」
「まだ詳しく話してなかったけどさ、仲間にした神龍たちは金剛鏑に封印してるのな。で、その金剛鏑を、次ノ宮殿下から拝領した鏑シャツに仕込んでるんだよ。」
 俺は軽鎧の胸元を開き、鏑シャツをシノブに見せた。
「この鏑に矢を近付けると、それぞれの属性を矢に纏わせられるのな。これが、属性矢の仕組みなんだ。」
「されば先程の気力は…。」
「そう、俺じゃなくてライたち。だから必要以上に畏まらないでくれな。今まで通り、敬称略のタメ口で頼むわ。」

『小娘、われらの力はアタルの力ぞ。』「え?」
「あ、今の、ライからの念話な。」
『われらはアタルに負けたゆえ、アタルの眷属となっておるのだ。』「ウズな。」
『名もアタルからもらっておる。』「シンな。」
『名をもらうは、眷属となった証よ。』「レイな。」
「え、え、えぇー!」
『アタルを畏れる必要はない。しかし侮ってはならぬ。よいか?』「エンな。」
「はい。」
『分かればよい。』「ノワな。」

『『『『『『では新たな奥方よ。よろしく頼む。』』』』』』
「こちらこそよろしくお願い致すでござる。」

 で、湯宿にシノブを連れて帰って、女将に今宵から宿泊がひとり増えることを伝え、残りの泊数分の食事代を支払った。

 特別室に帰ると、嫁たちが寛いでいたので、ざっと今日の首尾を報告した。クナイとマキビシを一瞬で無力化したシノブの技の切れを話すと、
「シーちゃん凄いやん。」「流石やなぁ。」とキョウちゃんズを始め、嫁たちが感嘆した。シノブは赤くなって照れている。かわいい♪

 それから、露天風呂での混浴となった。シノブとは初めての混浴である。真っ赤になって恥ずかしがるのが何とも初々しい。
 白濁硫黄泉なので、どっぷり浸かると頂は見えない。混浴に慣れていないシノブだけ、どっぷり浸かって縮こまっていたが、他の嫁たちは、肩出し入浴なので、頂がうっすら見えて非常にそそる♪
 そんなに縮こまってたらゆったりできなかろうに。
 しかし、湯船に入る一瞬の隙を突いて、得意技の頂チェックを発動させていたアタルは、シノブの頂が茶色なのを確認していたのだった。

 切り込み隊長キョウちゃんズから恒例の頂マッサージが始まり、順に嫁たちを巡って、いよいよ最後のシノブの番になった。
 しかしシノブは、どうしても踏ん切りがつかず、お預けとなってしまった。まぁ恥ずかしがるものを無理やりやってもね。

 夕餉でもシノブは上の空。おそらく今宵の初陣で頭がいっぱいなのだろう。旨いんだけどな、味、分かってんのかな。笑
 キョウちゃんズが気を遣ってシノブを散々笑わせ、シノブの緊張をほぐしてくれたのがありがたかった。

 夕餉後、再び混浴チャレンジ。夕方のさっきとは違って夜だから露天は暗い。さらに2度目と言うこともあり、シノブの緊張は随分和らいでいた。
 さらに星空がいいムードを醸し出すのにひと役買っている。自然な流れからさり気なくキスに持ち込み、頂マッサージへ移行。
 頂マッサージを続けていると、ガチガチだったシノブから、徐々に硬さが解れ、いい感じに反応し出した。

 脱衣所ではマイドラゴンをチラ見する余裕も出て来た。もっともマイドラゴンとご対面したらすぐに眼を逸らして耳まで赤くなってたけどな。
 バスタオルを巻いただけで、お姫様抱っこをし、脱衣所から直接むふふ部屋に連れ込んだときには、シノブも覚悟を決めていた。
 ベッドでバスタオルを剥ぐと、両手で顔を隠す仕草が何ともかわいい。そのままたっぷり時間を掛けてりリラックスさせた。そして、とうとうシノブに初陣を遂げさせ、マイドラゴンは返り血を浴びたのだった。

 初陣を済ませたシノブは、すっかり緊張が解けて積極的になった。
「アタル、くノ一に伝わる閨房術を試してみたいでござる。」
「いいけど…。」
 閨房術とは、気力を使って男を気持ちよくさせる、くノ一の秘術だそうだ。忍の者や影の者は、力を用いる技と、気力を用いる術の両方を使う。技を追求するユノベ、トノベ、タテベ、キノベと、術を追求するヤクシ、オミョシとの、中間的な立位置だ。

 シノブの閨房術は、たどたどしくはあったが、それでもくノ一の閨房術はかなりのものだと言うのを実感させられた。シノブが使った閨房術は、初級編だと言うのに、俺は散々弄ばれて、本当に気持ちよく昇天させられてしまった。
 ちなみに閨房術の初級編は気持ちよく昇天させ、中級編は快感で骨抜きにして依存させ、上級編は生気を奪って寿命を縮めるのだとか。
 くノ一の閨房術、恐るべし。中級と上級はもちろんパスな。冷汗

 結局その夜は、シノブと3回戦をこなした。

 そう言えば初陣だから生だったけど、生はホントに久しぶりだなー。初級の閨房術のお陰もあって、本当に気持ちよかったのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/12/11

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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