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精霊の加護053 鉱山町ブレナへ
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精霊の加護
Zu-Y
№53 鉱山町ブレナへ
雪崩に起因する土砂崩れで塞がれた街道は、当分通行止めかと思われたが、俺と精霊たちが精霊魔法であっさりと片付けた。
その日の宿屋では、俺と精霊たちには、露天風呂付きの特別室があてがわれ、商人たちから夕餉に招かれた。行ってみると上等な料理が精霊たちの分も準備されているではないか。
「すまん、精霊たちは食べないんだ。俺から魔力を補給するだけなんだよ。」
頼んだ料理が勿体ないってんで、他の護衛たちも急遽呼ばれて、ちょっこら宴会の様相を帯びたのだった。
「しかし驚きましたなー。まさかあの精霊魔術師がゲオルクさんだったとは。」
「そうは言うけど、ジャックさんには冒険者カードを見せたよね?」
「Bランクのシルバーカードとしか確認しませんでした。いやぁ迂闊でしたなぁ。あっはっは。」確かにあのときは一瞬のチラ見だったしな。笑
「それにしても精霊魔法の威力は、桁違いですねー。」武器商人が話の後を継ぐ。
「そうだね。精霊魔法は普通の魔法とは別物だからね。」
「魔力の補給がキスと言うのも初めて知りましたよ。」
「体液には魔力が含まれてるからね。キスが手っ取り早いね。もっともこのことが公になったのはついこの前だけどね。」
「東府魔法学院の発表ですな。あれは大ニュースでしたからな。もっとも我々庶民の興味は、そういう細かいところではなくて、伝説の精霊魔術師が現れ、さらに前代未聞のマルチの精霊魔術師と言うことでしたからね。」
こんな話をしながら商人たちが次々に酌をしに来るのだ。
急遽誘われて同席した他の護衛の冒険者たちも、
「なぁ、ゲオルクさんって、増長していた北府騎士団の詰所をぶっ潰して、ワイバーン3体を瞬時に狩って、オーク30体を一瞬で殲滅したんだよな?」
「そりゃ、話が大袈裟になってるよ。詰所は半壊だし、ワイバーン3体もオーク30体も一瞬じゃないよ。」
「いやいや、それでも凄いっしょ。」冒険者たちが半ば呆れている。
「そう言えばゲオルクさんは、今回ソロだけど、スピリタスってパーティだったんじゃないの?」
「今、他の仲間は南府にいるんだよ。」
「凄ぇ、トレホス王国を股に掛けてるじゃん。まじ、カッケー。」
尊敬の眼差しの冒険者たちは、俺のことを「さん」付けで呼んでるし。苦笑
ここでまた、冒険者たちの話にうんうんと頷いていたジャックさんが話し掛けて来た。
「そう言えば、今回のカデフィ行は、ひょっとすると金属の精霊ですか?」
「そうなんだよ。古の金属の精霊魔術師が鉱山エリアの出だという話を聞いてね。」
「私の故郷の町が古の金属の精霊魔術師の出身地だと言う言い伝えがありますよ。」
「まじ?ジャックさんの故郷ってどこ?」
「カデフィのさらに奥のしがない鉱山町ですよ。ブレナって言うんですがね。」
「金属鉱山ブレナか。有名じゃん。そこに精霊と話せる人っている?」
「あー、精霊爺さんですか?私が子供の頃に近所にいましたよ。もう随分前に亡くなってますけどね。」
「それは残念。」
「私は、精霊爺さんの孫と幼馴染で仲良かったんで、精霊爺さんには結構かわいがってもらいましたがねぇ、でも近所では変人扱いでしたよ。何たって精霊爺さんしか精霊を見られないんですからね。こうして精霊たちが見えるところを見ると、やっぱり精霊爺さんの話は与太話だったんでしょうねぇ。」
「それは違うよ。精霊は普通の人には見えないんだ。この子たちが見えるのは俺と契約してるからなんだよ。精霊爺さんは、精霊ってどんな感じだって言ってた?」
「そうですねぇ。『小っちゃくて黄色くて丸いのがそこら中にふわふわしとるじゃろ?見えんのか?』ってよく言ってましたねぇ。それと『大きめの丸いのは話せるがの、幼い童のような話し方じゃ。』とも言ってましたよ。」
「やっぱり見えてたよ。普通の精霊は精霊爺さんの言う通りなんだ。なぁ、ジャックさん、カデフィからブレナへの交通機関ってあるかな?」
「え?私の馬車が行きますよ。」
「あれ、カデフィ行じゃないの?」
「カデフィで商品の8割を卸して、残りの2割はブレナの実家に持ってくんですよ。実家が町の万屋をやってますんでね。で、ブレナで金属鉱石を積んでカデフィに納め、カデフィで宝石の商品を積んで北府に戻るんです。
そのままブレナに行くなら乗って行きませんか?」
「そいつはありがたい。」なんかツイてるぞ。
「じゃぁ帰りも乗りますか?」
「うーん、でも金属の精霊と契約するのがすんなり行くか分からないからなぁ。」
「そうですか。では次の便もありますから、タイミングが合えばってことで。」
「そうだね。そんときはよろしく。」
夕餉を終えて部屋に戻り、部屋付きの露天風呂に精霊たちと浸かった。ここの風呂は鉱泉で、鉱泉水を沸かしているそうだ。外の冷気で露天風呂から湯気が上がる雪見風呂は何とも風情がある。
水浴びが大好きな精霊たちは、風呂も当然大好きで、外気に触れながら入浴できる露天風呂は特に喜ぶ。部屋付きの露天風呂だから決して広くはないが、十分過ぎるご褒美である。
あー、気持ちいい。これも精霊魔法のお陰だ。精霊たちに感謝、感謝♪
カデフィまでの行程の最終日は順調に進んだ。カデフィが近付くにつれ、まわりにいる小さな精霊たちの中で黄色い精霊の割合が増えて来た。黄色い精霊は金属の精霊である。
カデフィに着くと、ジャックさんは、北府で仕入れた生活用品を町の商店に卸し、そのまま仕入先の宝石工房に案内してくれた。
俺はそこで、自分も含めて皆の分のダイヤの指輪を買った。それぞれ能力上昇補正の付与が付いている。リーゼさんが攻魔、ジュヌさんが回復、カルメンさんが支援、ベスさんが防御、ビーチェさんが疾風、そして俺が集中。
ひとつ大金貨1枚の全部で大金貨6枚だったが、まとめ買いと言うことで大金貨5枚に負けてもらった。これで東部公爵様からの契約金が根こそぎぶっ飛んだが、まぁよしとする。
ちなみにこれはあくまでも卸値で、これが北府の宝石商で売られるときには、小売値が倍以上に跳ね上がるそうだ。
お姉様方にいい土産ができた。
その後、カデフィの冒険者ギルドで街道復旧の報告をすると、ギルマスルームに呼ばれ、ギルマスから、
「あの規模の土砂崩れをどうやって復旧したのか?」
と、根掘り葉掘り散々聞かれた。
そこで、証人として付いて来てくれていたジャックさんがギルマスに詳細に様子を語ってくれた。
「いや、私もゲオルクさんから申し出があったときは、まず無理だろうと思ったんですよ。それがですよ、このゲオルクさんが精霊魔法を使って馬車程の大きさの岩を小石サイズに粉砕しましてね、それから竜巻を起こして礫をすべて舞い上げて、除取り除いてしまったんですわ。」
ここでジャックさんは出されたお茶をずずーっとすする。話を聞いてるうちに体が乗り出して来ていたギルマスの表情から、早く続きを話せと考えているのが丸分かりだ。なんとも絶妙の間の取り方じゃないか。笑
「それから地獄の業火のような火で、何十本もあった倒木を燃やして消し炭に変えてしまいました。これで雪も解けて一帯は水浸しなったんですが、その水を操って街道を塞いでいた土砂をきれいさっぱり流してしまいました。それからぬかるんでいた地面を凍らせ、その上にいったん退けた礫と土砂を敷き詰めまして道路は完成です。
普通はここで終わりでしょ。しかしね、私が魂消たのはこれからなんですよ。」
と、ここでまた、茶をずずーっとやって、ギルマスを焦らす。ギルマスはとうとうしびれを切らした。笑
「で、何に魂消たんだ?」
「それですよ。いやぁ、魂消ましたなぁ。雪崩から土砂崩れを起こした山の斜面は、山肌がむき出しの状態だったんですが、何とその斜面に精霊魔法で木を生やして森に戻してしまったんですよ。」
「なんだと?森を再生?木を芽吹かせて短時間で成長させたと言うのか?」
「この冬の最中にですよ。夏だとしても、木々が目に見える速さですくすく伸びて行くなんてあり得ませんからね。まったく信じられない光景でしたよ。」
ギルマスは唖然としながら俺の方を見た。その顔は半信半疑のようだ。しかしハナからまったく信じないよりはましだな。
「ツリ。」
『はーい。』ギルマスルームの鉢植えの植物がぐんぐん伸びて天井に届いた。
ギルマスの顔が蒼白になり、絶句して言葉が出ない。なぜかジャックさんがドヤ顔で、
「こんなもんじゃなかったですよ。」と言うと、ようやく我に返ったギルマスがひと言。
「すまんがすぐに査定できないので明日もう一度来てくれ。それと疑う訳じゃないが、あまりにも突拍子もない話なんでな、同行していた商人ふたりと冒険者たちにも事情を聴いてみることにする。」
人の話を鵜呑みにしない、なかなか慎重なギルマスだな。
「明日ブレナに向かって発つから、数日後のブレナの帰りにもう一度寄るよ。」
「分かった。」
その後ジャックさんは、今回商隊を組んで来た商人ふたりと、その商人たちに護衛として雇われていた冒険者たちの名前を告げて、一緒にギルマスルームを出た。
今夜の宿泊だが、宿屋はどこでもよかったんで、ジャックさんの泊まる宿屋を紹介してもらい、その宿で俺と精霊たちの部屋を取った。
翌朝、ジャックさんの馬車でカデフィを出発。1日馬車に揺られ、ブレナが近付くと、辺りの小さな精霊は黄色一色となって来た。しかも精霊の密度が上がっている。
夕方になって、ブレナに着いた。
ブレナでは、ジャックさんの実家の近くの宿屋を紹介してもらい、ジャックさんが実家の万屋に商品を納めてる間に、紹介された宿屋で部屋を確保、実家への納品を終えたジャックさんと合流して、亡くなった精霊爺さん家に案内してもらった。
精霊爺さんの孫とジャックさんが幼馴染で、近所と言うこともあり、子どもの頃は毎日一緒だったそうだ。その幼馴染はここブレナの鉱山で鉱夫をしているのだとか。
「よう、ベン。いるか?」
「おう、ジャックか。上がれ。」
「客人を連れて来た。ゲオルクさんだ。あとゲオルクさんの子どもたち。
ゲオルクさん、こいつはベンジャミン。私の幼馴染で精霊爺さんの孫です。」
「いらっしゃい。ベンと呼んでくれ。よろしくな。おう、嬢ちゃんたちもかわいいな。」
あれ、精霊たちがニコニコしている。俺の後ろに隠れない。と言うことは、ベンさんはもともと精霊が見えるんだな。
「ゲオルクです。お忙しいところをすみません。」
「なんの、今日の仕事が終わって一杯やってるとこだ。ささ、遠慮せず上がれよ。エールしかないけどな。」
その後、俺とジャックさんとベンさんはエールで乾杯した。
「で、ゲオルクさんが俺に用って何よ?」
「実は俺は精霊魔術師でして、金属の特大精霊を探してるんです。その手掛かりに、亡くなった精霊爺さんに所縁の方のお話を聞ければと思いまして。」
「ふーん、じゃぁこの子たちが精霊?」
「そうなんですよ。普通の精霊は見えないんですが、この子たちは俺と契約してるんで普通の人でも見えるんです。」
「そうなんだ。でも人型の精霊は初めて見るよ。」やはりな。球形の精霊は見えてる訳だ。
「やっぱりベンさんは、普段から精霊を見ることができますよね?」
「え?何で分かるの?」
「ちょっと待て、ベン。お前、精霊が見えるのか?」ジャックさんが食い付いて来た。
「すまん。亡くなった爺さんから、『変人扱いされるから見えない人には見えることを言っちゃだめだ。』ってきつく言われててな。実際、爺さんは変人扱いされてたしよ。」
「俺には言ってくれてもよかっただろうに。」
「いや、爺さんが『ジャックとずっと友達でいたかったら絶対に言うな。』って言うからよ。それに、親父やお袋も、爺さんを変人扱いしてたしな。だから親父にもお袋にも言ってねぇ。つーか今まで誰にも言ってねぇよ。
で、ゲオルクさんは何で分かったの?」
「まず精霊たちがベンさんから逃げなかったことですね。精霊たちは、精霊を見ることができない人たちとは関わりたがりません。
それと、さっきこの子たちを見て『人型の精霊は初めて見る。』って言ったので、普段から球形の精霊が見えてるんだろうなと。」
「なるほどねー。」
「ゲオルクさん、私は全然気付きませんでしたよ。」ジャックさんが言った。やや凹んでいるようだ。
「で、本題に戻しますが、亡くなった精霊爺さんは人型の精霊か特大サイズの精霊の話をしていませんでしたか?」
「してたよ。実は爺さんからは『精霊を見ることができる奴以外には言うな。』って言われてたけど、ゲオルクさんは精霊が見えるからな。」
「ベンさんは、その特大サイズの精霊とは会ったんですか?」
「爺さんから『今度会わせてやる。』って言われてたけどさ、連れてってもらう前に爺さんが病でぽっくりと逝っちまったんだよな。」
「その精霊がいる場所とか分かります?」
「廃坑になった金坑道の奥だよ。」
「あそこか、あそこはしょっちゅう崩れるから危ないだろ?立入禁止になってたよな。」ジャックさんが反応した。
「あれは精霊の仕業だぜ。精霊が縄張りを荒らされたくなくて、人が入って来ると威嚇してるんだ。実際に、崩れても数日閉じ込められるだけで、犠牲者は出てないだろ?」
「そう言えばそうだな。でもなんでベンがそのことを知ってるんだ?」
「爺さんから聞いた。」
「明日行ってみますんで場所を教えて下さい。」
「いいけど、条件がある。」
「なんですか?」
「仲間にしたら俺にも会わせてくれ。」
「そんなのお安い御用ですよ。」
ブレナから金坑道への行き方と、金坑道内の詳しい場所は分からないそうだが、ざっくりこの辺と言う場所を、ベンさんに教えてもらった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/4/24
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№53 鉱山町ブレナへ
雪崩に起因する土砂崩れで塞がれた街道は、当分通行止めかと思われたが、俺と精霊たちが精霊魔法であっさりと片付けた。
その日の宿屋では、俺と精霊たちには、露天風呂付きの特別室があてがわれ、商人たちから夕餉に招かれた。行ってみると上等な料理が精霊たちの分も準備されているではないか。
「すまん、精霊たちは食べないんだ。俺から魔力を補給するだけなんだよ。」
頼んだ料理が勿体ないってんで、他の護衛たちも急遽呼ばれて、ちょっこら宴会の様相を帯びたのだった。
「しかし驚きましたなー。まさかあの精霊魔術師がゲオルクさんだったとは。」
「そうは言うけど、ジャックさんには冒険者カードを見せたよね?」
「Bランクのシルバーカードとしか確認しませんでした。いやぁ迂闊でしたなぁ。あっはっは。」確かにあのときは一瞬のチラ見だったしな。笑
「それにしても精霊魔法の威力は、桁違いですねー。」武器商人が話の後を継ぐ。
「そうだね。精霊魔法は普通の魔法とは別物だからね。」
「魔力の補給がキスと言うのも初めて知りましたよ。」
「体液には魔力が含まれてるからね。キスが手っ取り早いね。もっともこのことが公になったのはついこの前だけどね。」
「東府魔法学院の発表ですな。あれは大ニュースでしたからな。もっとも我々庶民の興味は、そういう細かいところではなくて、伝説の精霊魔術師が現れ、さらに前代未聞のマルチの精霊魔術師と言うことでしたからね。」
こんな話をしながら商人たちが次々に酌をしに来るのだ。
急遽誘われて同席した他の護衛の冒険者たちも、
「なぁ、ゲオルクさんって、増長していた北府騎士団の詰所をぶっ潰して、ワイバーン3体を瞬時に狩って、オーク30体を一瞬で殲滅したんだよな?」
「そりゃ、話が大袈裟になってるよ。詰所は半壊だし、ワイバーン3体もオーク30体も一瞬じゃないよ。」
「いやいや、それでも凄いっしょ。」冒険者たちが半ば呆れている。
「そう言えばゲオルクさんは、今回ソロだけど、スピリタスってパーティだったんじゃないの?」
「今、他の仲間は南府にいるんだよ。」
「凄ぇ、トレホス王国を股に掛けてるじゃん。まじ、カッケー。」
尊敬の眼差しの冒険者たちは、俺のことを「さん」付けで呼んでるし。苦笑
ここでまた、冒険者たちの話にうんうんと頷いていたジャックさんが話し掛けて来た。
「そう言えば、今回のカデフィ行は、ひょっとすると金属の精霊ですか?」
「そうなんだよ。古の金属の精霊魔術師が鉱山エリアの出だという話を聞いてね。」
「私の故郷の町が古の金属の精霊魔術師の出身地だと言う言い伝えがありますよ。」
「まじ?ジャックさんの故郷ってどこ?」
「カデフィのさらに奥のしがない鉱山町ですよ。ブレナって言うんですがね。」
「金属鉱山ブレナか。有名じゃん。そこに精霊と話せる人っている?」
「あー、精霊爺さんですか?私が子供の頃に近所にいましたよ。もう随分前に亡くなってますけどね。」
「それは残念。」
「私は、精霊爺さんの孫と幼馴染で仲良かったんで、精霊爺さんには結構かわいがってもらいましたがねぇ、でも近所では変人扱いでしたよ。何たって精霊爺さんしか精霊を見られないんですからね。こうして精霊たちが見えるところを見ると、やっぱり精霊爺さんの話は与太話だったんでしょうねぇ。」
「それは違うよ。精霊は普通の人には見えないんだ。この子たちが見えるのは俺と契約してるからなんだよ。精霊爺さんは、精霊ってどんな感じだって言ってた?」
「そうですねぇ。『小っちゃくて黄色くて丸いのがそこら中にふわふわしとるじゃろ?見えんのか?』ってよく言ってましたねぇ。それと『大きめの丸いのは話せるがの、幼い童のような話し方じゃ。』とも言ってましたよ。」
「やっぱり見えてたよ。普通の精霊は精霊爺さんの言う通りなんだ。なぁ、ジャックさん、カデフィからブレナへの交通機関ってあるかな?」
「え?私の馬車が行きますよ。」
「あれ、カデフィ行じゃないの?」
「カデフィで商品の8割を卸して、残りの2割はブレナの実家に持ってくんですよ。実家が町の万屋をやってますんでね。で、ブレナで金属鉱石を積んでカデフィに納め、カデフィで宝石の商品を積んで北府に戻るんです。
そのままブレナに行くなら乗って行きませんか?」
「そいつはありがたい。」なんかツイてるぞ。
「じゃぁ帰りも乗りますか?」
「うーん、でも金属の精霊と契約するのがすんなり行くか分からないからなぁ。」
「そうですか。では次の便もありますから、タイミングが合えばってことで。」
「そうだね。そんときはよろしく。」
夕餉を終えて部屋に戻り、部屋付きの露天風呂に精霊たちと浸かった。ここの風呂は鉱泉で、鉱泉水を沸かしているそうだ。外の冷気で露天風呂から湯気が上がる雪見風呂は何とも風情がある。
水浴びが大好きな精霊たちは、風呂も当然大好きで、外気に触れながら入浴できる露天風呂は特に喜ぶ。部屋付きの露天風呂だから決して広くはないが、十分過ぎるご褒美である。
あー、気持ちいい。これも精霊魔法のお陰だ。精霊たちに感謝、感謝♪
カデフィまでの行程の最終日は順調に進んだ。カデフィが近付くにつれ、まわりにいる小さな精霊たちの中で黄色い精霊の割合が増えて来た。黄色い精霊は金属の精霊である。
カデフィに着くと、ジャックさんは、北府で仕入れた生活用品を町の商店に卸し、そのまま仕入先の宝石工房に案内してくれた。
俺はそこで、自分も含めて皆の分のダイヤの指輪を買った。それぞれ能力上昇補正の付与が付いている。リーゼさんが攻魔、ジュヌさんが回復、カルメンさんが支援、ベスさんが防御、ビーチェさんが疾風、そして俺が集中。
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ちなみにこれはあくまでも卸値で、これが北府の宝石商で売られるときには、小売値が倍以上に跳ね上がるそうだ。
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その後、カデフィの冒険者ギルドで街道復旧の報告をすると、ギルマスルームに呼ばれ、ギルマスから、
「あの規模の土砂崩れをどうやって復旧したのか?」
と、根掘り葉掘り散々聞かれた。
そこで、証人として付いて来てくれていたジャックさんがギルマスに詳細に様子を語ってくれた。
「いや、私もゲオルクさんから申し出があったときは、まず無理だろうと思ったんですよ。それがですよ、このゲオルクさんが精霊魔法を使って馬車程の大きさの岩を小石サイズに粉砕しましてね、それから竜巻を起こして礫をすべて舞い上げて、除取り除いてしまったんですわ。」
ここでジャックさんは出されたお茶をずずーっとすする。話を聞いてるうちに体が乗り出して来ていたギルマスの表情から、早く続きを話せと考えているのが丸分かりだ。なんとも絶妙の間の取り方じゃないか。笑
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普通はここで終わりでしょ。しかしね、私が魂消たのはこれからなんですよ。」
と、ここでまた、茶をずずーっとやって、ギルマスを焦らす。ギルマスはとうとうしびれを切らした。笑
「で、何に魂消たんだ?」
「それですよ。いやぁ、魂消ましたなぁ。雪崩から土砂崩れを起こした山の斜面は、山肌がむき出しの状態だったんですが、何とその斜面に精霊魔法で木を生やして森に戻してしまったんですよ。」
「なんだと?森を再生?木を芽吹かせて短時間で成長させたと言うのか?」
「この冬の最中にですよ。夏だとしても、木々が目に見える速さですくすく伸びて行くなんてあり得ませんからね。まったく信じられない光景でしたよ。」
ギルマスは唖然としながら俺の方を見た。その顔は半信半疑のようだ。しかしハナからまったく信じないよりはましだな。
「ツリ。」
『はーい。』ギルマスルームの鉢植えの植物がぐんぐん伸びて天井に届いた。
ギルマスの顔が蒼白になり、絶句して言葉が出ない。なぜかジャックさんがドヤ顔で、
「こんなもんじゃなかったですよ。」と言うと、ようやく我に返ったギルマスがひと言。
「すまんがすぐに査定できないので明日もう一度来てくれ。それと疑う訳じゃないが、あまりにも突拍子もない話なんでな、同行していた商人ふたりと冒険者たちにも事情を聴いてみることにする。」
人の話を鵜呑みにしない、なかなか慎重なギルマスだな。
「明日ブレナに向かって発つから、数日後のブレナの帰りにもう一度寄るよ。」
「分かった。」
その後ジャックさんは、今回商隊を組んで来た商人ふたりと、その商人たちに護衛として雇われていた冒険者たちの名前を告げて、一緒にギルマスルームを出た。
今夜の宿泊だが、宿屋はどこでもよかったんで、ジャックさんの泊まる宿屋を紹介してもらい、その宿で俺と精霊たちの部屋を取った。
翌朝、ジャックさんの馬車でカデフィを出発。1日馬車に揺られ、ブレナが近付くと、辺りの小さな精霊は黄色一色となって来た。しかも精霊の密度が上がっている。
夕方になって、ブレナに着いた。
ブレナでは、ジャックさんの実家の近くの宿屋を紹介してもらい、ジャックさんが実家の万屋に商品を納めてる間に、紹介された宿屋で部屋を確保、実家への納品を終えたジャックさんと合流して、亡くなった精霊爺さん家に案内してもらった。
精霊爺さんの孫とジャックさんが幼馴染で、近所と言うこともあり、子どもの頃は毎日一緒だったそうだ。その幼馴染はここブレナの鉱山で鉱夫をしているのだとか。
「よう、ベン。いるか?」
「おう、ジャックか。上がれ。」
「客人を連れて来た。ゲオルクさんだ。あとゲオルクさんの子どもたち。
ゲオルクさん、こいつはベンジャミン。私の幼馴染で精霊爺さんの孫です。」
「いらっしゃい。ベンと呼んでくれ。よろしくな。おう、嬢ちゃんたちもかわいいな。」
あれ、精霊たちがニコニコしている。俺の後ろに隠れない。と言うことは、ベンさんはもともと精霊が見えるんだな。
「ゲオルクです。お忙しいところをすみません。」
「なんの、今日の仕事が終わって一杯やってるとこだ。ささ、遠慮せず上がれよ。エールしかないけどな。」
その後、俺とジャックさんとベンさんはエールで乾杯した。
「で、ゲオルクさんが俺に用って何よ?」
「実は俺は精霊魔術師でして、金属の特大精霊を探してるんです。その手掛かりに、亡くなった精霊爺さんに所縁の方のお話を聞ければと思いまして。」
「ふーん、じゃぁこの子たちが精霊?」
「そうなんですよ。普通の精霊は見えないんですが、この子たちは俺と契約してるんで普通の人でも見えるんです。」
「そうなんだ。でも人型の精霊は初めて見るよ。」やはりな。球形の精霊は見えてる訳だ。
「やっぱりベンさんは、普段から精霊を見ることができますよね?」
「え?何で分かるの?」
「ちょっと待て、ベン。お前、精霊が見えるのか?」ジャックさんが食い付いて来た。
「すまん。亡くなった爺さんから、『変人扱いされるから見えない人には見えることを言っちゃだめだ。』ってきつく言われててな。実際、爺さんは変人扱いされてたしよ。」
「俺には言ってくれてもよかっただろうに。」
「いや、爺さんが『ジャックとずっと友達でいたかったら絶対に言うな。』って言うからよ。それに、親父やお袋も、爺さんを変人扱いしてたしな。だから親父にもお袋にも言ってねぇ。つーか今まで誰にも言ってねぇよ。
で、ゲオルクさんは何で分かったの?」
「まず精霊たちがベンさんから逃げなかったことですね。精霊たちは、精霊を見ることができない人たちとは関わりたがりません。
それと、さっきこの子たちを見て『人型の精霊は初めて見る。』って言ったので、普段から球形の精霊が見えてるんだろうなと。」
「なるほどねー。」
「ゲオルクさん、私は全然気付きませんでしたよ。」ジャックさんが言った。やや凹んでいるようだ。
「で、本題に戻しますが、亡くなった精霊爺さんは人型の精霊か特大サイズの精霊の話をしていませんでしたか?」
「してたよ。実は爺さんからは『精霊を見ることができる奴以外には言うな。』って言われてたけど、ゲオルクさんは精霊が見えるからな。」
「ベンさんは、その特大サイズの精霊とは会ったんですか?」
「爺さんから『今度会わせてやる。』って言われてたけどさ、連れてってもらう前に爺さんが病でぽっくりと逝っちまったんだよな。」
「その精霊がいる場所とか分かります?」
「廃坑になった金坑道の奥だよ。」
「あそこか、あそこはしょっちゅう崩れるから危ないだろ?立入禁止になってたよな。」ジャックさんが反応した。
「あれは精霊の仕業だぜ。精霊が縄張りを荒らされたくなくて、人が入って来ると威嚇してるんだ。実際に、崩れても数日閉じ込められるだけで、犠牲者は出てないだろ?」
「そう言えばそうだな。でもなんでベンがそのことを知ってるんだ?」
「爺さんから聞いた。」
「明日行ってみますんで場所を教えて下さい。」
「いいけど、条件がある。」
「なんですか?」
「仲間にしたら俺にも会わせてくれ。」
「そんなのお安い御用ですよ。」
ブレナから金坑道への行き方と、金坑道内の詳しい場所は分からないそうだが、ざっくりこの辺と言う場所を、ベンさんに教えてもらった。
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設定を更新しました。R4/4/24
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
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エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
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