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姉を探して…… その2

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 フェリシアは背中の槍を引き抜き、構える。

 わかなは三段折り畳み式の両槍仕込みの棒を展開……、もとい出来ていなかった。

 一生懸命ガチャガチャやっているが、うまい事いっていない。

「わかなさん、何してるんですの!」

 自分の持っている槍の穂先部分を地面に刺すとフェリシアはわかなの棒を奪い取り、素早く展開した。

 そこへ後ろから若者Aが飛びかかってくる。

「キャー!」

「うわっ!」

 二人の少女が叫ぶ中、若者Aの目の前に棒を突き出すフェリシア。

「なんだこれは! こんな棒……」

 威勢の良い声は先まで続かなかった。

 カチャっという音と共に、槍の穂先が棒から現れ、それが若者Aの喉元にまで迫ったからだ。

「なにか言ったんですの?」

「い、いや、何も」

 身の危険を感じた若者Aは両手を挙げた。

 ホールドアップ、つまりそれは降参を意味する。

 それを見た若者B、C、Dも流石に動きが止まった。

「諦めますの?」

「あっ、ああ」

「じゃ、さっさと立ち去るんですの」

 フェリシアの行動に恐れをなしたのか、若者四人が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 遠巻きに見ていた人々からは歓声が上がった。


「あっ、ありがとうございました!」

 少女は棒を片付けていたフェリシアにお礼を言いに来たのだ。

「ん?」

(まさか……、そんなはずはないのですわ)

 なぜだか聞き覚えのある声にフェリシアは後ずさりする。

「フェリシアー、どうしたー?」

 わかながフェリシアの謎の行動に疑問を呈する。

「あっ、いや、別に。何ともないですわ」

 フェリシアは明らかに動揺しているが、本人は平静を装うと必死だ。

「私はソラハです。名前を教えて下さい」

(そ、ソラハ……、やっぱりですわ)

 フェリシアの中で何かが合致した。

「わかなはー、城ヶ原わかなだよー」

「ふ、フェリシア、ですわ」

「城ヶ原わかなさんとフェリシアさんですね。宜しくお願いします」

「レンファ、自己紹介をして」

「はい、ソラハ様。初めまして、レンファです」

(やっぱりですわ)

 フェリシアには言われなくても分かったようだ。

「申し訳ないですの、用事があるので……」

 一刻も早く離れないと、という焦りを隠す為に先に自分から断りを入れるフェリシア。

「あっ、そうですね。この度は助けて頂いてありがとうございました」

 ソラハも素直に頷く。



「ソラハ……」

「どうしたー?」

 わかなが抱きついてくる。

「なんでもないですわ。さぁ、マーケット行くんですの」

「行こうー!」

 ソラハ達と別れたわかなとフェリシアはマーケットに向かっていく。


「お姉ちゃん……」

「ソラハ様、どうされました?」

「いや何でもありません。行きましょう」

 一方フェリシア達と別れたソラハとレンファも違う方向へ歩いていく。


「あの二人……」

 女性が一人、そのやり取りを見ていた。

「トンバル様にお伝えしなければ」

 女性はその場から姿を消す。


「ふぅーですわ」

「いっぱい買いましたー」

 マーケットで色々買ったフェリシアとわかなは、大量の荷物を持って歩いていた。

「おかえり」

「おかえり、すごい荷物だぜ」

「け、結構色々ありますね」

 待ち受けていた紗哉加達にも荷物の多さを驚かれていたが、これからの事を考えたら必要な物ばかりだ。


「もし」

 道を歩いていたソラハとレンファは怪しげな占い師に引き留められていた。

「あなた、何か悩んでいませんか?」

「な、何かって?」

 ソラハがそれに食いついた。

「ソラハ様……」

 レンファは呆れてしまう。

「悩みはあるけど……」

「もしかして誰かを探していて、それに近い人と出会ったとか?」

「当てられた」

「そ、ソラハ様」

「話は奥で聞きましょう、どうぞ!」

「ソラハ様……」

「レンファ、ちょっと待ってて。はーい」

 レンファを残して、占い師と共に店の中に入っていくソラハ。

 レンファもソラハに命令されては勝手に動くことはできない。

「そ、ソラハ様……」

 今のレンファにはただ無事を祈るしかなかった。


「!!」

 店の奥に入るなり、店の雰囲気が一変する。

「フフフッ」

 不敵な笑いを浮かべる占い師。

「誰なんですか、あなたは」

 ソラハは思わず身構える。

「フフフッ、知らないでいいこともある」

 占い師はソラハに向かって何かを発射した。

「えっ……」

 ソラハの体が床に崩れ落ちる。

「トンバル様」

「ホーリムか」

「はい。あとは呼び寄せるだけです」

「よし、誘い出せ」

 ホーリムが消えた後、トンバル様と呼ばれた青年は自らも姿を消す。

「ソラハ様……」

 外で待つレンファだったが、突然何かをかけられ、その場に崩れ落ちた。

「さぁ、楽しいショーの始まりだ」

 トンバルは笑みを浮かべる。

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