1 / 1
叶わぬ恋と、片思い。
しおりを挟む
~設定~
この物語に出てくる舞台はある学校の図書室。
登場人物は司書さん、少年、少女の3人です。
少年視点で進んでいきます。
少年
すこし内気でクラスに馴染めず、放課後はよく図書室に来ている。
小さいころから本が好きで、司書さんとはとても仲がいい。
少女
いつからか図書室にやってくるようになった。
性格は大人しく、優しげな雰囲気を纏っている。
どこか大人びた印象を受ける場面も。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕はまたこの図書室にやってきた。
正直なところ、自分の教室にはあまり長居したくない。
だから毎回、放課後になると決まってここに足を運ぶ。
なにより、今日は司書さんが、僕のリクエストしていた本を持ってきてくれたので、それを読むのが待ちきれなかった。
いつも通り司書さんに挨拶をして、いつも通り誰もいないテーブルを選んで席に着く。
全てがいつもと同じだった。ただ一つを除いては。
どうやら、僕と司書さん以外の人がこの図書室にいるらしい。その人は、人気のない14番の本棚を背もたれにして、床に座り読書をしていた。
不思議な人もいるんだな、なんてことを思った。
司書さんが以前、この図書室は外の人も利用できるようになっているため、たまにそういった人達がやってくると言っていた。多分、あの人もそういう人なのだろう。
僕はなぜだかその人から目が離せなくなり、気がつくと、その人の近くまで歩みを進めていた。
近づいて分かったのだが、その人は少女だったらしい。長く輝く銀髪に、ふわふわとしたドレスのような服を着ていた。
絵本の世界から飛び出してきたような、綺麗な見た目だった。
少女が手に持っていた本は、僕が昔好きだったある作者の小説だった。
それを見た途端、妙に親近感が湧きたまらず話しかけた。
「その作者の本、好きなんですか?」
我ながら急すぎたと思った。しかし、その少女は驚く様子もなく、こちらを見るやいなや嬉しそうにこう言った。
『・・・あなたもこの人の事、知ってるの?』
その後の会話で分かったのだが、彼女はどうやら僕と同い年のようだった。
人生は様々な出来事やハプニングで成り立っているなんて言うが、その通りだろう。
少女との出会いによって、僕の人生はガラッと姿を変えてしまったのだから。
この出会いをきっかけに、僕とその少女は意気投合し、それから毎日のように2人で様々な本を読み、感想を語り合った。
その日々は、友達と言える人がいなかった僕にとって、全てが新鮮な体験だったと言える。
たまには本以外の話をしたりもした。昨日の夕飯の話、前に見たテレビの内容。
くだらない話を誰かに話す事がこんなにも楽しいとは考えもしなかった。
だが、同時にひとつ気になることができた。彼女はそういった話をすると決まって、どこか悔しそうな、それでいて少し儚げな表情をするのだ。
1度その理由について尋ねてみたが、はぐらかされてしまい結局分からずじまいであった。
しかし、他にももっと聞かせてほしいと頼まれたので、それからもしばらくそういった話を持ってきては聞かせていた。
出会ってからちょうど一年を過ぎた頃、彼女との時間を積み重ねて行くうちに、僕の中の何かが変わった。
自分でもそれが何なのかはよく理解できなかったが、いずれその正体が分かってきた。
僕は彼女に恋をしたんだ。
ラブとライクの違いなんてものもよく分かっていなかった僕にとって、それはとてつもない衝撃だった。
勉強は思うように手が付けられず、なにか考える度に彼女が浮かんでくる始末だった。
どうにかしなくては。そう決心した僕は、彼女に自分の思いを伝えようと考えた。
いつものように図書室へ向かう足がとても重く感じる。
緊張と不安を飲み込み、息を整える。一、二、三。
準備を終え、扉を開くとある違和感に気づいた。いつも彼女が腰掛けていた14番の本棚が、そこだけがぽつんと消えている。
何故か嫌な予感がして、急いで司書さんの方へ駆けていった。
「あの、あそこにあった本棚はどこに行ったんですか?それと、そこにいつも座っていた女の子はどこに・・・」
そう聞くと司書さんは悲しそうな顔で静かにこういった。
「そっか。やっぱり君にも外の人が見えてたんだね。」
最初、僕は司書さんが何を言っているのか分からなかったが、話を聞くうちに嫌でも理解することになってしまった。
この学校は昔、寺があった場所に建てられ、その名残として特別この図書室は、そういった外の世界の人達がやってこれるようになっていたそうだ。
そうしてここにやってきた人達は、遅くて1年、早くて1ヶ月ほどでどこかへ行ってしまうのだそう。留まる時間が長ければ長いほど、何かこの場所に未練が残っている証拠だという。
どうやら僕は、幽霊に恋をしていたらしい。
全身から力が抜ける。その事実が怖かったからじゃない。むしろ恐怖なんてものは微塵も感じなかった。
まだ何も伝えることが出来ていないのに手の届かないところへいってしまったなんて。そう思うと彼女への憎しみがどっと溢れてきた。
その憎しみはきっと愛であり、それと同時に僕の片思いそのものだった。
この思いはきっと、僕のこれからの人生を変えていってしまうのだろう。
そう考えていたその時だった。どこかからふいに声が聞こえてきた気がした。間違いない、彼女の優しくて、どこか大人びた声。
姿は見えないが、きっとまだ彼女はここにいるのだろう。最後の最後、残った気力を振り絞るかのように彼女は言った。
「お別れを言えなくてごめんなさい。でも、後悔はしていません。こうやってあなたに会えたのも神様の気まぐれなのでしょう。それでも、どうか、私の分まで人生を楽しんでくれませんか。これからどんな苦難があなたを待ち受けていても、私が必ずそばで見守って、絶対にあなたを助けます。だから、私がいた事を忘れないで。だってあなたは私の、ずっと愛する人だから。」
それを聞いた僕は、ただ泣くことしか出来なかった。彼女の最後に見せた優しさが、帰って心に響いた。
でも何故か不思議と心は暖かく、明日への希望に満ち溢れているかのようだった。そうだ、明日はクラスの人と話してみるのも悪くないかもしれない。
ふと、僕の瞳から静かに流れた最後の涙を拭うように、優しい風が吹いた気がした。
この物語に出てくる舞台はある学校の図書室。
登場人物は司書さん、少年、少女の3人です。
少年視点で進んでいきます。
少年
すこし内気でクラスに馴染めず、放課後はよく図書室に来ている。
小さいころから本が好きで、司書さんとはとても仲がいい。
少女
いつからか図書室にやってくるようになった。
性格は大人しく、優しげな雰囲気を纏っている。
どこか大人びた印象を受ける場面も。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕はまたこの図書室にやってきた。
正直なところ、自分の教室にはあまり長居したくない。
だから毎回、放課後になると決まってここに足を運ぶ。
なにより、今日は司書さんが、僕のリクエストしていた本を持ってきてくれたので、それを読むのが待ちきれなかった。
いつも通り司書さんに挨拶をして、いつも通り誰もいないテーブルを選んで席に着く。
全てがいつもと同じだった。ただ一つを除いては。
どうやら、僕と司書さん以外の人がこの図書室にいるらしい。その人は、人気のない14番の本棚を背もたれにして、床に座り読書をしていた。
不思議な人もいるんだな、なんてことを思った。
司書さんが以前、この図書室は外の人も利用できるようになっているため、たまにそういった人達がやってくると言っていた。多分、あの人もそういう人なのだろう。
僕はなぜだかその人から目が離せなくなり、気がつくと、その人の近くまで歩みを進めていた。
近づいて分かったのだが、その人は少女だったらしい。長く輝く銀髪に、ふわふわとしたドレスのような服を着ていた。
絵本の世界から飛び出してきたような、綺麗な見た目だった。
少女が手に持っていた本は、僕が昔好きだったある作者の小説だった。
それを見た途端、妙に親近感が湧きたまらず話しかけた。
「その作者の本、好きなんですか?」
我ながら急すぎたと思った。しかし、その少女は驚く様子もなく、こちらを見るやいなや嬉しそうにこう言った。
『・・・あなたもこの人の事、知ってるの?』
その後の会話で分かったのだが、彼女はどうやら僕と同い年のようだった。
人生は様々な出来事やハプニングで成り立っているなんて言うが、その通りだろう。
少女との出会いによって、僕の人生はガラッと姿を変えてしまったのだから。
この出会いをきっかけに、僕とその少女は意気投合し、それから毎日のように2人で様々な本を読み、感想を語り合った。
その日々は、友達と言える人がいなかった僕にとって、全てが新鮮な体験だったと言える。
たまには本以外の話をしたりもした。昨日の夕飯の話、前に見たテレビの内容。
くだらない話を誰かに話す事がこんなにも楽しいとは考えもしなかった。
だが、同時にひとつ気になることができた。彼女はそういった話をすると決まって、どこか悔しそうな、それでいて少し儚げな表情をするのだ。
1度その理由について尋ねてみたが、はぐらかされてしまい結局分からずじまいであった。
しかし、他にももっと聞かせてほしいと頼まれたので、それからもしばらくそういった話を持ってきては聞かせていた。
出会ってからちょうど一年を過ぎた頃、彼女との時間を積み重ねて行くうちに、僕の中の何かが変わった。
自分でもそれが何なのかはよく理解できなかったが、いずれその正体が分かってきた。
僕は彼女に恋をしたんだ。
ラブとライクの違いなんてものもよく分かっていなかった僕にとって、それはとてつもない衝撃だった。
勉強は思うように手が付けられず、なにか考える度に彼女が浮かんでくる始末だった。
どうにかしなくては。そう決心した僕は、彼女に自分の思いを伝えようと考えた。
いつものように図書室へ向かう足がとても重く感じる。
緊張と不安を飲み込み、息を整える。一、二、三。
準備を終え、扉を開くとある違和感に気づいた。いつも彼女が腰掛けていた14番の本棚が、そこだけがぽつんと消えている。
何故か嫌な予感がして、急いで司書さんの方へ駆けていった。
「あの、あそこにあった本棚はどこに行ったんですか?それと、そこにいつも座っていた女の子はどこに・・・」
そう聞くと司書さんは悲しそうな顔で静かにこういった。
「そっか。やっぱり君にも外の人が見えてたんだね。」
最初、僕は司書さんが何を言っているのか分からなかったが、話を聞くうちに嫌でも理解することになってしまった。
この学校は昔、寺があった場所に建てられ、その名残として特別この図書室は、そういった外の世界の人達がやってこれるようになっていたそうだ。
そうしてここにやってきた人達は、遅くて1年、早くて1ヶ月ほどでどこかへ行ってしまうのだそう。留まる時間が長ければ長いほど、何かこの場所に未練が残っている証拠だという。
どうやら僕は、幽霊に恋をしていたらしい。
全身から力が抜ける。その事実が怖かったからじゃない。むしろ恐怖なんてものは微塵も感じなかった。
まだ何も伝えることが出来ていないのに手の届かないところへいってしまったなんて。そう思うと彼女への憎しみがどっと溢れてきた。
その憎しみはきっと愛であり、それと同時に僕の片思いそのものだった。
この思いはきっと、僕のこれからの人生を変えていってしまうのだろう。
そう考えていたその時だった。どこかからふいに声が聞こえてきた気がした。間違いない、彼女の優しくて、どこか大人びた声。
姿は見えないが、きっとまだ彼女はここにいるのだろう。最後の最後、残った気力を振り絞るかのように彼女は言った。
「お別れを言えなくてごめんなさい。でも、後悔はしていません。こうやってあなたに会えたのも神様の気まぐれなのでしょう。それでも、どうか、私の分まで人生を楽しんでくれませんか。これからどんな苦難があなたを待ち受けていても、私が必ずそばで見守って、絶対にあなたを助けます。だから、私がいた事を忘れないで。だってあなたは私の、ずっと愛する人だから。」
それを聞いた僕は、ただ泣くことしか出来なかった。彼女の最後に見せた優しさが、帰って心に響いた。
でも何故か不思議と心は暖かく、明日への希望に満ち溢れているかのようだった。そうだ、明日はクラスの人と話してみるのも悪くないかもしれない。
ふと、僕の瞳から静かに流れた最後の涙を拭うように、優しい風が吹いた気がした。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
片思い台本作品集(二人用声劇台本)
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
今まで投稿した事のある一人用の声劇台本を二人用に書き直してみました。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。タイトル変更も禁止です。
※こちらの作品は男女入れ替えNGとなりますのでご注意ください。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい
【ショートショート】恋愛系 笑顔
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半〜5分ほど、黙読だと1分〜3分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
👨一人用声劇台本「寝落ち通話」
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。
続編「遊園地デート」もあり。
ジャンル:恋愛
所要時間:5分以内
男性一人用の声劇台本になります。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
👨一人声劇台本【日替わり彼氏シリーズ】(全7作)
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
月曜~日曜まで曜日のイメージから一話1分半ほどで読める短いシチュエーション台本を書いてみました。
あなたが付き合うならどんな男性がお好みですか?
月曜:人懐っこい
火曜:積極的
水曜:年上
木曜:優しい
金曜:俺様
土曜:年下、可愛い、あざとい
日曜:セクシー
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
【ショートショート】ほのぼの・ほっこり系
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半〜5分ほど、黙読だと1分〜3分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選
上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。
一人用の短い恋愛系中心。
【利用規約】
・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。
・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。
・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。
👨一人用声劇台本「おもてなし彼氏」
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
同棲している二人。毎日疲れて帰ってくる彼女を彼氏がおもてなしをする。
ジャンル:恋愛
◆こちらは声劇用台本になります。
所要時間:10分以内
男性一人
※効果音多め
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる