君と儚い恋を。

USIQUI

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叶わぬ恋と、片思い。

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~設定~
この物語に出てくる舞台はある学校の図書室。
登場人物は司書さん、少年、少女の3人です。

少年視点で進んでいきます。

少年
すこし内気でクラスに馴染めず、放課後はよく図書室に来ている。
小さいころから本が好きで、司書さんとはとても仲がいい。

少女
いつからか図書室にやってくるようになった。
性格は大人しく、優しげな雰囲気を纏っている。
どこか大人びた印象を受ける場面も。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕はまたこの図書室にやってきた。
正直なところ、自分の教室にはあまり長居したくない。
だから毎回、放課後になると決まってここに足を運ぶ。


なにより、今日は司書さんが、僕のリクエストしていた本を持ってきてくれたので、それを読むのが待ちきれなかった。


いつも通り司書さんに挨拶をして、いつも通り誰もいないテーブルを選んで席に着く。
全てがいつもと同じだった。ただ一つを除いては。


どうやら、僕と司書さん以外の人がこの図書室にいるらしい。その人は、人気のない14番の本棚を背もたれにして、床に座り読書をしていた。
不思議な人もいるんだな、なんてことを思った。


司書さんが以前、この図書室は外の人も利用できるようになっているため、たまにそういった人達がやってくると言っていた。多分、あの人もそういう人なのだろう。


僕はなぜだかその人から目が離せなくなり、気がつくと、その人の近くまで歩みを進めていた。
近づいて分かったのだが、その人は少女だったらしい。長く輝く銀髪に、ふわふわとしたドレスのような服を着ていた。
絵本の世界から飛び出してきたような、綺麗な見た目だった。


少女が手に持っていた本は、僕が昔好きだったある作者の小説だった。
それを見た途端、妙に親近感が湧きたまらず話しかけた。


「その作者の本、好きなんですか?」


我ながら急すぎたと思った。しかし、その少女は驚く様子もなく、こちらを見るやいなや嬉しそうにこう言った。


『・・・あなたもこの人の事、知ってるの?』


その後の会話で分かったのだが、彼女はどうやら僕と同い年のようだった。


人生は様々な出来事やハプニングで成り立っているなんて言うが、その通りだろう。
少女との出会いによって、僕の人生はガラッと姿を変えてしまったのだから。


この出会いをきっかけに、僕とその少女は意気投合し、それから毎日のように2人で様々な本を読み、感想を語り合った。


その日々は、友達と言える人がいなかった僕にとって、全てが新鮮な体験だったと言える。


たまには本以外の話をしたりもした。昨日の夕飯の話、前に見たテレビの内容。
くだらない話を誰かに話す事がこんなにも楽しいとは考えもしなかった。


だが、同時にひとつ気になることができた。彼女はそういった話をすると決まって、どこか悔しそうな、それでいて少し儚げな表情をするのだ。


1度その理由について尋ねてみたが、はぐらかされてしまい結局分からずじまいであった。
しかし、他にももっと聞かせてほしいと頼まれたので、それからもしばらくそういった話を持ってきては聞かせていた。


出会ってからちょうど一年を過ぎた頃、彼女との時間を積み重ねて行くうちに、僕の中の何かが変わった。


自分でもそれが何なのかはよく理解できなかったが、いずれその正体が分かってきた。


僕は彼女に恋をしたんだ。


ラブとライクの違いなんてものもよく分かっていなかった僕にとって、それはとてつもない衝撃だった。


勉強は思うように手が付けられず、なにか考える度に彼女が浮かんでくる始末だった。
どうにかしなくては。そう決心した僕は、彼女に自分の思いを伝えようと考えた。


いつものように図書室へ向かう足がとても重く感じる。
緊張と不安を飲み込み、息を整える。一、二、三。


準備を終え、扉を開くとある違和感に気づいた。いつも彼女が腰掛けていた14番の本棚が、そこだけがぽつんと消えている。


何故か嫌な予感がして、急いで司書さんの方へ駆けていった。


「あの、あそこにあった本棚はどこに行ったんですか?それと、そこにいつも座っていた女の子はどこに・・・」


そう聞くと司書さんは悲しそうな顔で静かにこういった。


「そっか。やっぱり君にもが見えてたんだね。」


最初、僕は司書さんが何を言っているのか分からなかったが、話を聞くうちに嫌でも理解することになってしまった。


この学校は昔、寺があった場所に建てられ、その名残として特別この図書室は、そういった外の世界あの世の人達がやってこれるようになっていたそうだ。


そうしてここにやってきた人達は、遅くて1年、早くて1ヶ月ほどでどこかへ行ってしまうのだそう。留まる時間が長ければ長いほど、何かこの場所に未練が残っている証拠だという。


どうやら僕は、幽霊に恋をしていたらしい。


全身から力が抜ける。その事実が怖かったからじゃない。むしろ恐怖なんてものは微塵も感じなかった。


まだ何も伝えることが出来ていないのに手の届かないところへいってしまったなんて。そう思うと彼女への憎しみがどっと溢れてきた。


その憎しみはきっと愛であり、それと同時に僕の片思いそのものだった。


この思いはきっと、僕のこれからの人生を変えていってしまうのだろう。


そう考えていたその時だった。どこかからふいに声が聞こえてきた気がした。間違いない、彼女の優しくて、どこか大人びた声。


姿は見えないが、きっとまだ彼女はここにいるのだろう。最後の最後、残った気力を振り絞るかのように彼女は言った。


「お別れを言えなくてごめんなさい。でも、後悔はしていません。こうやってあなたに会えたのも神様の気まぐれなのでしょう。それでも、どうか、私の分まで人生を楽しんでくれませんか。これからどんな苦難があなたを待ち受けていても、私が必ずそばで見守って、絶対にあなたを助けます。だから、私がいた事を忘れないで。だってあなたは私の、ずっと愛する人だから。」


それを聞いた僕は、ただ泣くことしか出来なかった。彼女の最後に見せた優しさが、帰って心に響いた。
でも何故か不思議と心は暖かく、明日への希望に満ち溢れているかのようだった。そうだ、明日はクラスの人と話してみるのも悪くないかもしれない。


ふと、僕の瞳から静かに流れた最後の涙を拭うように、優しい風が吹いた気がした。
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