地球から追放されたけど、お土産付きで帰ってきます。

火曜日の風

文字の大きさ
62 / 80
2章 地球激闘編

11話 出発の朝に その2

しおりを挟む

 瑠偉と美憂がこちらに向かって歩いてくる、何時より足取りが軽い気がする。

「おはようございます。昨日は久しぶりの一人だったのでよく眠れました。
 最初に言っておきますが、してませんからね」
「瑠偉、何をしてないんだ?」

 天然のなのか、行為を知らないのか、煽っているのか、美憂は不思議顔で瑠偉に問いかけた。

「知らなくていいですよ…」
「そ、そうか…気になるんだが……うぁぁああ」

 会話の途中で驚きの声をあげる美憂、案の定夜巳がお尻を、丹念に触っていた。

「おはようです、今日もいい張りですね、最高の触り心地ですよ」
「だ、だから、やめろと言っているだろう」

 お尻を触っている手を素早く振りほどく美憂、それを見て瑠偉は、すかさず夜巳から距離を取り、後ずさりしながら椅子に腰かけた。

「織田さん、嫁をきちんと制御してほしいんだけど?」
「何度も言っているが、嫁じゃないし、結婚もしてない」

 何だろう、美憂の中で夜巳が、俺の嫁と認識されている。似た者同士と言いたいのか? そんな表情で俺を見ている、しばし俺を見ていたが、溜息を出しながら椅子に腰かけ、食事をとり始めた。

 テーブルを見渡しながら食べていると、俺と夜巳以外は<いまいち物足りない>と、訴えかけて様に見えた。対面に座っている美憂が、スプーンに白米をのせ、俺の方を見ながら、その手を前に突き出した。

「白米のみとか、味がしないんだけど、味付けが必要じゃないのか?」
「発想が欧米人だな、これが標準的な日本の朝食なのだが?」

 標準的なと言ったが、白米よりおかずが物足りない。最低、目玉焼きが欲しい、今日も今までと変わらない、野菜中心の朝食である。

「確かに味がしないですね」
「だよねー」

 瑠偉も麻衣も不満を言いながら食している。
 なるほど、だから朝からカレーとか、オムライスとかが出てくるのか、納得した。
 夜巳を見ると、文句も言わず美味しそうに食べている、これが普通だろう。

「おーべいかあぁっ! ソースでもかけて食ってろ!」
「ダーリン、突っ込みが古いですよ・・・50年前ほどの突っ込みです」

 俺達には46年の空白があるのだが・・・

 話が途切れ静かになったその時、俺は中条の気配を察知した。
 気配を深く探る、距離にして3Kmぐらい先のようだ、この中央浮遊都市の住宅街だな。

『お知らせします、侵入者を検知しました。排除しますか?』
「1分待て、それから攻撃を許可する。すこしは手加減はしてやれよ」
『了解しました』

 俺の右背後に立っているララさんも、気が付いたようだ。とても優秀な防御システムである。中条なら戦闘ロボットに、攻撃されても死にはしないだろう、そのまま放置しておこう。

「ダーリン、侵入者って?」
「中条だな・・・そのうちヒィヒィ言いながら、ここに逃げてくるぞ」

 俺の朝食も終える、同時に部屋の扉が開き、青髪ロボットが飲み物をワゴン乗せて入ってきた、食べ終えた食器を引き下げ、定番の青い飲み物が置かれた。

「ダーリン、その青い汁は?」
「お茶の様な物だ、見た目はともかく味はいいぞ・・・そこそこだがな。
 今後は緑茶にするぞ! ガイルアを倒したら、買い出しだ! 」

 夜巳との問答に1分以上は費やしたな、そろそろ中条がここに来るかな?
 そんなことを考えていると、テーブルの近くに中条が出現した。茶色の和服を着ていて、古風な日本の老人と言った風貌だ。ここに付いた瞬間は、焦っている表情を見せていたが、すぐに落ち着き、アゴ髭を右手で整え始めた。

「なんじゃあれは、わしの攻撃が一切効かんのじゃが?」
「戦闘用のロボットだな、一応手加減はしたぞ、次は無いと思え!
 で、何か用か?」

「次は無いとか酷いのう、ぬしと連絡がとれんのじゃ、仕方ないじゃろうに。
 で、そちらの銀髪の方は、生命反応が感じられないのだが、ロボットなのか?
 ふむ、ふむ素晴らしいのう・・・どれどれ」

 中条はララに近づき、ふむふむと言いながら、ララの全身を舐めまわす様に観察している。

「言っておくが、お前と外で戦った戦闘ロボットより高性能だぞ、俺でも破壊不可能なほど、戦闘能力が高いからな。
 で、何の用だ? これ言うの2回目だぞ」

「おお、そうじゃな。視るものが全て新鮮で忘れておったわ。
 そこの娘さんの親御さん達の調査が終わったぞ。・・・まぁ、残念じゃたな」

「詳しく聞かせて貰えますか?」

 瑠偉は食事を中断し、中条の方を向き悲しそうな表情を見せた。

「君たちの両親は、飛行機行方不明事件から数年後に実家に戻っておる。よって、核ミサイルの攻撃は回避しておったわ。全員90歳手前で、天寿を全うしておるな。詳細とお墓の場所は、ここに記してある。落ち着いたら行くとよい。

 ちなみに出雲さんには、腹違いの妹がいる。その子は、すでに40歳過ぎで、二十歳の息子がいるぞ、会いたければ手引きするが」

 そう言いながら中条は紙切れを3人に渡した。受け取った彼女達は、貰った紙を神妙に見つめている。

「離婚しているし、再婚しているし、年上の妹に年上の甥・・・予想を超えたよう」

 麻衣以外は、黙って紙を見つめている、ここはそっとしておこう。

「今後の事じゃが、儂の経営する高校がある。そこに編入するとよかろう、そこなら能力者が居ても問題ない」
「そうか、では中条、用事は済んだろ? サクッと帰れ」

「そう焦るな、主と連絡がとれんのじゃが、どうすればよい? ここに直接来ると攻撃をうけるんじゃろ?」
「仕方ないな・・・ララ、俺につけていたあれを中条に付けろ」

『了解しました』

 ララが右手を出す、今まで俺に付いていた、銀の球体が手の上に浮いて出現した。そのまま中条の後方まで進むと停止した。

「それを触れながら、喋りかければララと通信が可能だ、そこから俺に繋いでもらえ。
 ちなみに、テレポートをしてもついて来るから、心配する必要はないぞ」

「つまり、儂らを監視するという事かな?」

「連絡手段がないんだろ? こちらで新たな通信手段を、確保するまでの限定的だ。
 監視はしないから、気にするな。あくまで、俺は監視はしないと言う事だ」

「ずいぶん意味深な発言じゃな。
 ところで、ここのロボット事情を詳しく、聞きたいのじゃが?」

「教えることは無い! と言うか食事中だ。後日にしてくれ」
「しかたいのー、では後日話そうか。<死の流動体>の討伐報告も兼ねてな」

 中条は最後に「では」と言うとそのまま姿を消した、銀の球体も同時に消えた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...