晴天の空

ハナズオウ

文字の大きさ
1 / 1

晴天の空

しおりを挟む
「一緒にいこう。」
そう言われた9月1日。
僕は屋上にいた。

入学してすぐに彼女に出会った。
いつもクラスの中心にいるとても明るい女の子だった。
そんな彼女がいきなり僕に
「友達になろう。」
と笑顔で言ってくるものだから腰を抜かした。
僕は、どこにでもいる極一般の学生だ。
彼女とは真反対の平凡で地味な生き方をしている。
そんな僕と彼女は到底合わないと思った。
しかし、彼女はそんなことないと真っ向に否定してきた。
これが陽キャだ。
誰とでも仲良くなれると思い、本当にそれを実行してしまう。
そういう人達のことが僕は心底嫌いだ。
自分を高く見ているに違いない。
でなければ有り得ない。
どこからそんな自信が湧いてくるのだろうか。
だから、僕はハッキリと言ってやった。
「僕と君では到底合いそうにない。だから、友達にはならない。」
その日から彼女は僕に付きまとうようになった。
正直、鬱陶しかった。
何故僕なのかと思えば思うほど謎だった。
しかし、そこから見えてくるものがあった。
ある日の授業中。
ふと彼女へ視線をやると、窓の外の遠くを眺めていた。
その顔が何処と無く悲しそうな顔だった。
その顔が気になり、放課後聞いてみることにした。
「授業中、外を眺めるんだね。意外だったよ。君があんな顔をするなんて。」
そしたら、彼女は言った。
「あんな顔ってどんな顔ー?変な顔じゃないよねー!?ていうか、私の事見てたの!?へんたーい!」
あれは不可抗力だったんだ。と思いながら黙り、視線を真っ直ぐ彼女へ向けた。
すると、
「実はさ…」
と話し始めた。
彼女は、友達もいる。家族にも恵まれている。
しかし、今の現状に満足が出来ないという話を聞かせてくれた。
僕は、正直羨ましいと思った。
あんなに恵まれているのにそれでも尚、満足ができないのか。と。
その瞬間、彼女が耳を疑うようなことを聞いてきた。
「“死にたい”って思ったことある?」
は?この人は何を言っているんだ。頭でも打ったのでは無いかと僕は思った。
しかし、柄にもなく真剣に聞いてくるものだから答えた。
「あるよ。毎日死にたいと思うさ。こんな僕の存在価値はあるのかって。」
すると、彼女はやっぱりと言わんばかりの顔で言った。
「それだよ。そんな君だったから友達になろうと思ったんだ。」
よく分からない。
突拍子もない事を言われ驚いた。
自分ではそのような雰囲気を出していないと思っていたのに溢れていたらしい。
すると、また彼女は爆弾を持ち込んだ。
「ねぇ、一緒に死なない?」
とうとう彼女がおかしくなったのだと思った。
僕は反対した。
そんなことは誰も望んでいないと。
それでその場はお開きとなった。
しかし、帰路に就いている間、頭に彼女の顔がずっと張り付いていた。
どうしたものかと考えて、ふと上を見ると今にも雨が降り出しそうな天気だったものだから早々に帰宅した。
その日から彼女とはもう話していない。
気がついたら夏休み最終日になっていた。
明日から学校ということに憂鬱になりながら眠りについた。
次の日、学校へ行き始業式を終えた。
早々に帰宅しようとした時だ。
彼女に
「久しぶり。一緒に屋上へ行かない?」
と、突然言われた。
しかし、この後の予定は何も無かったから別にいいかと思い一緒に屋上へ向かった。
屋上は施錠されているが、ボロボロの扉を開けることはいとも簡単なため屋上へ行く事が出来た。
そこで彼女はいきなり両手を広げ、
「最高に綺麗な空だね!」
と今にも泣きそうな笑顔で言ってきた。
彼女に何があったのか気になり聞いてみた。
「何かあった?」
すると、彼女は笑顔で言ってきた。
「実はさ、友達に悪口言われてて、気づいたら一人ぼっちだったんだ!」
なんて笑いながら言うものだから理解が追いつかなかった。
なんて声をかけようかと考えていた時、彼女から言われた。
「君は1人で寂しくないの?」
そう言われた。
確かに、1人で寂しいと思うことはある。
しかし、1人僕に付きまとってくる人が居たから寂しいとはあまり思わなかった。
それをそのまま彼女へ伝えた。
嘘偽りなく素直にそのままのことを。
すると、彼女は泣いた。
僕は訳が分からなかった。
なぜ泣く必要があるのか。
すると彼女は
「君にくっついていて迷惑だと思われていると思っていたよ」
と笑いながら言った。
確かに迷惑ではあったが、誰かと話す事の楽しさを教えてくれたのは君だったからいざ居なくなると寂しかった。
だから、僕は言った。
「君がいてくれて僕は助かったよ。」
すると、彼女は笑って
「初めの時とは大違いだね」
なんて言ってきた。
そうだ。僕はあの時から救われてきたのだと気づいた。
すると彼女は、
「ねぇ、一緒にいかない?」
と言ってきた。
どこにも行く場所はない。
よく分からなかった。
だから聞いてみた。
「どこへ?」
すると返ってきた応えは
「天国だよ」
だった。
耳を君を疑った。
有り得ない。
なぜ今?
僕は全否定した。
「今君はそこへいってはいけない。いくのなら遠いどこかへ一緒に行こう。」
そう提案した。
しかし、彼女はもう無理だと言わんばかりの顔で1歩ずつ僕から離れていった。
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。いかないでくれ。頼む。
そう強く思った。
しかし、いざという時に足は思うように動かない。
自分を強く恨んだ。
しかし、そうこうしているうちに彼女はもうあと一歩の所まで行っていた。
僕は泣いていた。
やめてくれ。お願いだから。
すると、彼女は
「楽しかったよ。ありがとう。大好きだよ。」
そう言い残しいってしまった。
僕はもう何が何だか分からなかった。
しかし、気付いたらあと一歩のところまで来ていた。
あの時は動かなかった足が今動いている。
その事実に僕は怒り狂いそうになった。
そして、自分を責めた。
空を見上げありえないほど晴天な空に言った。
「僕もそっちへいっていい?」
返ってくるはずがない言葉を待った。
何分経っただろうか。
彼女の声が聞こえた気がした。
「おいで。待ってる。」
と。
その瞬間、僕は躊躇なく1歩前へ踏み出した。
今、僕はとても幸せだよ。
君と一緒に天国へ来れて。

その後の学校はサイレンが一晩中鳴り続いたという。
ニュースにも、
「男女学校で飛び降り〇殺」
という見出しがあったという。
世界が驚愕したという。
しかし、僕と彼女は天国でしてやったりという顔をしてその状況を眺めた。
いつか、このようなことが減りますようにと。少しの希望も乗せて。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

義務ですもの。

あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...