サイコネバーランド

夜の

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サイコネバーランド †第4刻 ◆黒いケモノ◆(前編)

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「ゼロン、俺フェイだけど本当に覚えてない……?」
「お前は誰なんだ……?」
「俺?俺は……」
言葉が詰まってしまった、誰だと聞かれても微妙な立位置な気がする。答えるのが難しい……。
「そ、そんな……!ゼロンはんー!ゼロンはんはワイのフィアンセだったんやで!」
チューターがここぞとばかりに嘆き叫んだ。
「あんなに愛し合ってたやないかぁ~!」
「…………刷り込みにしてももっとマシな嘘つけよ」
ぼそりと小さく呟いたのだが、聞こえていたのか、チューターが涙を煌めかせながらキッと睨んできた。
「うっさいわ!何も知らんくせして!!この泥棒猫がっ!!!」
チューターは全身を真っ赤にして頭から湯気を出し、文字通り頭を沸騰させて怒っている。
「な、にも…………思い出せない……」
ゼロンはうつ向いて、じっと両手を見ていた。
「俺……また……死んだのか……」
絶望したように顔を歪ませて何かをブツブツ言っている。記憶が無くなってしまったのがよほどショックなんだろう。
「だっ……だ大丈夫だって、一時的な事かもしれないし」
落ち着かせようと肩に触ろうとしたら、ゼロンは体が少しビクリと跳ねた。怯えるようにこっちを見ている。
「寄るな……」
「え……?」
「寄るな……!誰も近寄るな!もう嫌だ!」
俺を押し退けると、逃げるように走ってドアを押し開けた。
「ゼロ──────」
走り去るゼロンを追いかけようとしたら、チューターが頭に何度もぶつかってきた。
「ゼロンはんの事何も知らへんガキが!あてずっぽで物言うんでないわ!すっこんでろや!!このっ!!このっ!!」
「いてっ!いててっ!やめろって!」
俺に当たるだけ当たりちらしてから、チューターはゼロンを追いかける。しかし、ゼロンに拒絶され床に叩き落とされて気絶したようだ。
そんなに強く叩いたつもりはなかったのか、ゼロンは一瞬戸惑うも、そのまま行ってしまう。

確かにそうだ、チューターの言う通りだ。…………俺はゼロンの事を何も知らない。
あいつがいつも、どこで何をしていたのかも、どこに住んでいるのかも。
好きな物も、嫌いな物も。何を考えているのかさえ。何もかも知らないじゃないか。
ゼロンを呼び止めかけた手が止まった。走り去るゼロンの後ろ姿がだんだん見えなくなる。
すると、カクンと急に体から力が抜けた。
「うわっ!な、なんだ……?」
意識ははっきりしているのに視界がぼやける。
「あ……え……?」
ろれつが回らない。そういえばあの首飾りをゼロンの体に入れたままではなかったか。
確か、首飾りと距離離れるといけないような事を、前にゼロンが言っていた気がする。
頭から血の気がひいた。とうとう立っていられなくなってしまい床に崩れ落ちる。
「まっれ………ゼロ……」
走り去るゼロンに聞こえない助けを求めたのを最後に、意識は黒く塗りつぶされた。

************************

気がつくと、真っ黒い砂漠に立っていた。夜空に輝く多きな三日月が、真っ黒い砂漠を照らしている。黒い砂漠は見渡す限りどこまでも続く。
ここはどこだ?
気がつくといつの間にか、横に看板が立てられていた。
元からあったのだろうか……?看板の文字を読む。
「世界の、……終わり?」
WORLDendという言葉が、色んな国々の字で書かれている。
さっきの流れからすると、俺はあれからすぐ死んで……死後の世界に来たのだろうか?
そっか、俺……死んじゃったのか……。
馬鹿みたいにでかい月をぼんやり眺めた。
結局、リュンを連れ戻す事が出来なかった。
俺は結局、何もできないまま終わってしまった。
もう一度会いたかった。泣いてばかりいた妹をいつか幸せにしてあげたかったのに。
はぁーとため息が出る。結局いつだって何もできないのだ。
頭を抱えて座り込む。黒い砂漠の砂は、どこかで見たような気がした。
ゼロンから出てきた、蠢く砂鉄のような物と同じような気がする。
暫く背景をぼんやり眺めてから、何処に向かう訳でもないが砂漠を歩き始めた。
自分はまだ死んではいない気がしたからだ。
どこかにあるかも、わからない出口をただ歩いて探す。
黒い砂鉄のような砂の道を見ていると、やはりゼロンを思い出した。
記憶を無くして不安がっていたのに、落ち着かせるどころか錯乱させてしまって……。
あいつの事をもっと自主的に聞いて知っていれば、もしかしたらこんなことにはならなかったかもしれない。
知っていたら、あんなに怯えさせる事も無かっただろう。
どちらにしろ、聞く暇など無かったのだけれど……。
もっとどうにか出来たのではないかと考えてしまう。
ゼロンの記憶は元に戻るんだろうか。…………いや、たとえ記憶が戻らなくても関係無い。
記憶がなくたってゼロンはゼロンだし、俺はあいつの友達でいたい。
リュンとは違う好きだけれど、リュンと同じくらい会いたかった。
二人とも今頃どうしているだろう、どうしようもないこの気持ちが体を動かす。
「ゼロンの事……もっと知りたいな……」
その声に応えるように、目の前に陽炎が揺らめいた。
夜の砂漠だというのに、陽炎などおきるのだろうか。その幻影は、一人の少女の姿を映し出した。
泣いているのか、多きな目元が涙でキラキラと輝いている。少女には俺は、見えていないようだ。
「これは……蜃気楼……?」
少女はぐったりした赤子を抱きかかえている。あの様子からすると、もう死んでしまっているのかもしれない。
少女の後をついて行くように砂漠の砂でできた獣が歩いていた。
「皆、死んじゃった……だからボク、もう絶対に死なない家族が欲しい。一人ぼっちはもうやだよ」
少女は悲しそうに呟く。
「その願い、聞き遂げよう」
獣がそう喋る。その途端、彼女の周辺を風が円を描いて吹いた。
少女の抱きかかえていた赤子がふわり、と宙に浮き上がる。
そして黒い砂の中から黒い心臓が浮き上がると、砕け溶けて、赤子に吸収されるように消えた。
赤子の肌はどろりと溶け始める。
溶けてスライム状になってしまった肌は
宙に浮かびどんどん消滅していく。
「主よ、媒体がこれでは耐えられないようだ……致し方あるまい」
砂でできた獣は、数歩下がると助走をつけて赤子に牙を向いて飛びかかる。
獣は、赤子にぶつかると同時に砂になり、赤子の全体を黒い砂が覆う形になった。
黒い砂は蠢き、固まり、やがて土人形のような形になる。宙に浮いたそれに、少女は恐る恐る手を伸ばした。
心臓が脈を打つ音と共に、土人形にヒビが入り砕け落ちる。すると、その中から出てきたのは一匹の獣の赤子だった。体の赤色の模様が印象的だ。
獣の淡い金色の毛が風になびきながら、ゆっくりと少女の膝元へ降りてくる。着地すると同時に風が止み、獣はうっすらと瞳を開けた。
「初めまして、ぼくの家族…………君はね、死んでも心と体はまた一から始められる
 絶対に死なないんだ……何回だって生き返る」
「シ……ナ……ナイ……?」
「そうだよ、そうだ!覚えてるのも
 この砂漠にいる時の記憶だけにしようか。」
「キ、オク…ダケ…?」
「もし死んじゃっても、前の事は忘れて生き返れるんだ、だからそうだな……君の名前はゼロにしよう。」
少女は微笑みながらそう呟いた。
「ぼくはアオイ、今から君の家族、そうだな……君の母親がいいかな?」
「カ……ゾク……?」
「うん、大好きだよゼロ。」
アオイはゼロを抱きしめる。そこで砂漠の幻影は風に吹かれ消えた。
そして、背後からドサリと何かが落ちる音がした。
はっと振り返る。
そこには、無残にもばらばらになったゼロの死体が転がっていた。
彼の中にある心臓が脈を打つと、黒い砂漠の砂が集まり死体を元に戻していく。
再生していくと、彼の下に砂でできた黒い扉が作られた。
生き返ったゼロが目を覚ますと同時に、魔方陣のような扉は勢い良く開き強制的に落ちていく。
扉は大きな音をたてて乱暴に閉まる。最初からそこには何も無かったかのように砂になって消え去り、辺りはまた静けさに包まれた。
少しして、また空からゼロが落ちてきた。今度は体を、見事に真っ二つにされて死んでいる。
砂漠の砂は同じように、彼の体を再生しゼロは強制的に扉の向こうへ落とされる。
この後も、ゼロの死体が空から降ってきては再生され、扉の向こうへ落とされる。そういう一連の作業が何度も何度も、数えきれない程何度も繰り返された。
回を増すごとにゼロは少しづつ成長しているようだった。最終的には黒い獣の成獣がそこにはいた。
なんだろう………………見たことがある。
俺はこの獣を知っている。
後ろから獣の唸り声がして振り向いた。
「何故オレは死なない?生きてる意味が分からない、なぜ繰り返さなくてはいけない?」
獣、ゼロンは俺を見てそう言った。
「カゾクだってもういない、俺は1人だ」
きっと長い年月の間、あのアオイとかいう子も居なくなってしまったのだろう。それでもこいつは死ぬことができずに、ずっと1人なのだ。
こいつは今、どんな気持ちなんだろう。俺には想像する事しかできないけれど……。それはきっと、酷く寂しくて
一人じゃなかった時の優しい記憶を忘れてしまいたい程、孤独なんだろう。大切な暖かい記憶を、最初から知らなければ良かったと後悔……してしまう程に。
「……俺が……側にいるよ」
「な……に……?」
「俺、お前の友達だから」
ほぼ無意識にそんな言葉が口から出た。俺がゼロンに対して抱く感情は、友情が一番しっくりくるから友達で合っているはずだ。
俺が死んでもゼロンは生き続けるだろう、この先もずっと、永遠に。だからまた、寂しい思いをさせてしまうのは分かっている。
無責任だとも思うし、きっとこれは俺のエゴだ。だけど、ゼロンをこのままにしたくなかった。
最初は殺そうとしてきたり、簡単に人を傷つけたり、訳が分からない奴だったけど……。ただ物を知らない、無知なだけだとわかったから。
とても純粋なだけなのだ。少し一緒にいる間に、情が芽生えてしまっただけかもしれない。だけど、せめて俺が生きている間だけでも、こいつと一緒にいてやりたい。
寂しそうなゼロンを見たくなかった。せめて、俺が生きている間だけでもゼロンの寂しさを、埋められるだろうか。
「どうして……そんな事を言う?訳がわからない」
「友達に訳なんていらねーよ」
「トモダチ……?」
「そう、言っただろ?お前は俺の友達だって」
「………………………………………お前はなぜここにいるんだ?」
何故いるのかと聞かれても、自分でも分からないから説明のしようがない。足元の黒い砂が、みるみるうちに扉に変わっていく。
「出ていけ……」
それは拒絶の言葉だったが、嫌がっているのではなく動揺しているように聞こえる。また一人になるのが、恐いのかもしれない。
「ゼロ────」
「やめろ……!聞きたくないッ出ていけ……!」
俺の言葉はさえぎられ、同時に扉が開き俺は中へ落ちてしまった。
見下ろすゼロンの瞳が、苦しみと悲しみが入り交じったその瞳が。あの時俺を友達だと言って、死んでしまった彼のそれとどこか被った。
何でかわからない、でも今伝えなければいけないと思った。
「……ッ俺も!お前の事好きだから!友達だからな!!」
面と向かってずっと言えなかった言葉を、吐き出すように叫ぶ。
「だから……!そんな顔するなよ、ゼロン!!!」
意識は白く濁っていく。黒い獣が遠く、遠くに見えた。


「……っ」
気がつくと廊下の壁に寄りかかって座っていた。
そうだ俺、気絶していたのか……?今のは夢だったのだろうか。
口の中に少しだけ砂の不快な感覚がある、本当に夢だったのだろうか。
そんな事を考えていたら、顔に生暖かい何かが飛んできた。
これは……血だ。ゼロンが目の前で、俺を見下ろしている。
自身の腹をナイフで切り開いたのか、血と黒い砂が傷口から流れ落ちていた。
俺の目の前に放り投げたそれが、カランカランと軽い音を立てる。
俺の首飾りだ、血まみれなのを見ると先程まで、ゼロンの体中に入っていたのだろう。
「…………勝手に俺の中に入ってくるな」
「おまえ、それ……!早く手当てしないと……!」
ゼロンは、嫌いだから関わるなと言わんばかりな口調でそう言う。
だけど、目の前でそんな腹の傷を見せられたらそれどころではない。
「早く止血しないと!包帯!?いや、救急箱!?な、なんか持ってくるから……!」
「え?は?いや、いいから……」
立ち上がろうとしたら手を捕まれた。ゼロンはハッとしてすぐに手を離す。
「こ……れくらいなら平気だ、すぐに治る……」
そう言って、隣に座りうつ向く。傷口から血は止まり、黒い砂がこぼれ落ちた。少し痛みに耐えるように身を屈めた後、収まったのか安心した面持ちで静かにため息をつく。
傷は跡形もなく治っていた。そして、気まずい沈黙が訪れた。
「よ……よし!早くリュンを見つけて帰ろう!」
「リュン……?」
「あ、リュンは俺の妹なんだけど……」
そうだった、ゼロンは記憶が無いのだった。俺がネバーランドに来た理由も全て覚えていない、知らないんだ。
「俺さ、妹を探してここに来たんだ……そうだ!無事に帰れたら何かうまい物作ってやるよ、料理には自信があるんだ」
「りょうり…………なんだそれ?」
「…………お前いつも何食ってんの?」
「別に何も食わないでもへーきだ……あ、でも……かなり前に、母さんのくれたお菓子、あれは好き、おいしかった。」
「へ……へぇ……。」
ごはんの代わりに菓子を与えられていたのだろうか。あのアオイとかいう子は、料理できなかったのかな……。
しかし、何も食べないでも平気という事は、やはり人間じゃないのではないだろう。とりあえず、こいつが酷い食生活をしているであろう事は想像できた。
ふと、牢屋で会ったインディアンの子を思い出す。あの子はどうなんだろう。
「ゼロンの弟もそうなのか?」
「……オレは弟なんていない」
「そうなの?」
ということは、あの子は記憶を無くす前のゼロンの知り合いという事なんだろうか。
ゼロンは突然、何かを思い出したかのように顔色を変えると、立ち上がりさっそうと歩き出した。
「ちょっとまっ……!」
伸ばした手を叩かれる。同時に、何かが弾ける音がした。
「もう俺に、近寄らないでくれ!………………!?」
「え…………?」
叩かれた俺の手が、手首ごと吹き飛んでしまった。
「ウッウワアアアッ!!」
手首の切断面から血が吹き出した。
「いっ!アァ!アアアアアア……ッ!!」
叩かれただけで手が消し飛ぶとは思わず、痛みも加わり頭が混乱する。
「ち、力の加減ができなかった……ごめん……!」
ゼロンは自分の手首の動脈を指で切り、流れ落ちる血を俺の手の切断面にかける。
すると、吹き飛んだ筈の手がみるみる再生し、何事も無かったように手が元に戻った。ゼロンは安心したようにため息をつく。
しかし、俺の顔を見て体を強張らせるとすぐに距離をおいた。それを見て俺は、はっとする。
無意識に俺はゼロンに恐怖の目を向けてしまっていた。呼びかけようにも、適切な言葉が出てこない。
「……………っ」
俺はうつむいて、まだ血の滴る手首に触れた。
こんなに力が強いのに今まで俺が無傷でいれたのは、ゼロンが力加減をしてくれていたからだと、初めて知った。
それは、脆いガラスを扱うように。俺や他の人が壊れてしまわないように。大丈夫、こいつは恐くない。
「…………力、強いんだな……びっくりした」
「恐く……ないのか……?」
「怖くなんて─────あっ?」
そこまで言って脳がぐらりと揺れた、平衡感覚を保てない。そのまま、床に体を削るようにしながら倒れてしまった。おそらくこれは貧血だ。
「うぅ……」
頭上でそわそわしているゼロンを、ぼんやりと見た。どうすれば良いのか分からないのだろう。
「……………友達だから恐くねーよ……バカ」
ゼロンは戸惑いつつも、俺の短い前髪をそっと掴んで持ち上げる。俺の手を消し飛ばしたばかりで、直接に俺の体を触るのが怖いのかもしれない。
「……ありがとう、気持ちは嬉しい…………けど……俺は一人がいいから……」
あっさりとふられてしまった。だがこれは心からの拒絶とは違う。
「とりあえず……膝枕にしてくれよ、髪の毛引っ張られるの結構痛い」
ぱっと手を離され、額を床に打った。ゴンッと鈍い音が頭蓋骨に響く。
「あ!…………ごめん……」
そっと頭を持ち上げられ、ゼロンの太ももに乗せられた。
覗きこむゼロンの顔が思いの外近いのと、体の距離感にドキリとした。膝枕とは、こんなに近くに相手を感じるものだったか。
「どうしてそんなに俺を拒むんだ……?あのクソネズ……チューターベルだって俺より前からお前と一緒にいたんだぞ?」
その話はやめろと言わんばかりにゼロンの顔が歪んだ。
「……ひとりぼっちになるのは ……もう嫌だ……嫌なんだよっ……!」
俺の中にあった推測は確信に変わった。
ゼロンは、誰かと一緒に時を過ごしてからそれを失うのが嫌なだけなのだ。
そしてやはり、さっき見た夢は夢では無いという確信が持てた。
首飾りと俺の距離が離れた時の影響と、その時たまたま首飾りがゼロンの体内にあった事によって見えた世界だったのだろう。
「ひとりじゃないさ」
そっとゼロンの頬に触れる。
「とりあえず、今は俺が側にいるだろ?それじゃ嫌か……?」
「違うんだ、そうじゃなくて…」
「死なないんだろ?さっき見たよ…………先の事なんか今考えてもしょーがねーよ」
今のこいつは先の事ばかり見ているから、ちゃんと今を見てほしい。
「ゼロン、俺を見て?今、俺に触れるだろ?」
頬を触れていた手を目の前にさし出す。ゼロンはゆっくり手を重ねると、小さく頷いた。
「今ゼロンの側にいるよ、少なくとも今は……俺が生きてる内は寂しくなんかさせない」
「ッ──────ち、違う……フェイは全然分かってない……何も知らない癖に……」
「分かってるさ、だからさっきみたいにゼロンの事もっと教えてくれよ、俺お前の事もっと知りたい」
「オレひとりぼっちは、もう嫌なんだよ……」
「でもさ、ゼロンが一人でいても俺はお前が好きだよ」
「フェ……イ……」
重ねた掌を絡ませるように強く握ってくる。手の骨がミシミシときしんだ。
伝わっただろうか。
俺の気持ちは、少しだけでも届いただろうか。
ほんのちょっとでも心の傷を和らげられただろうか。
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