サイコネバーランド

夜の

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ゼロンルート

サイコネバーランド †第8刻 ◆お茶会会議と消える記憶◆中編

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月明かりで鈍く光るブーメラン刀が首に突き付けられる。
「フェイ様、お慕いしております。」
手が縛られていてリレクターが出せない。
「や、やめ゛っ……お゛、ごっ」
俺の制止は届かずに、ゆっくりと当てられたブーメラン刀は真っ直ぐに首を切り裂き、俺の頭と体を切り離した。
ハクウさんは愛しそうに俺の頭を抱き締めて、恍惚とした表情でほおずりをする。
「ぁぁ……ぁぁぁっ……ぁああっ……嬉しい……ついに手に入れた……!私の、私だけのご主人様」
首だけになって、まだわずかに残る、視野と聴覚、痛み、全てに砂嵐がかかる。
ハクウさんが喋る度に乱れる砂嵐の音がうるさくなって意識が闇に消えていく。
「永遠に、永遠に、お慕い申します……」
砂嵐が激しくなっていきブツリと黒く途切れた。




はっと気がつくと、暗闇の中で立っていた。
首に手が行く、今俺は首を切り落とされて殺された筈だ。なのに、無傷の状態だった。一体何がどうなっているのだろう。
背後から時計の秒針の音がする。
振り向くとそこには、沢山の時計が宙に浮いていた。真ん中には一際大きな黒い時計、世界を滅ぼすあの時計だ。
黒い時計の赤い秒針がギュルギュルと回りだし、分刻みの針が10分程急激に進む。
「……!」
時計をよく見ると、世界を滅ぼしてしまう0時まで、あと20分も残されていなかった。
暗闇から、半透明のリュンが走ってきて、黒い時計を見上げる。
「リュン……!」
名前を呼ぶと、リュンはこちらを振り向いた。
黒い時計の秒針の進みが、元の速さに戻ると、意識が何かに引っ張られ、引き戻される様に景色が白くフェードアウトしていく。




「っは……!」
目を開けたら、ハクウさんに抱えられて廊下を移動している最中だった。
手足は固く縛られている。
今のは夢だろうか……………………………………いや、違う。
………………時間が……殺される少し前に戻っている……?
ハクウさんが俺を抱えたままどこかの部屋の中へ入る。このまま何もしないのはまずい、また────殺されてしまう。
手足を動かすが、縄はびくともしない。
「くっ……」
「おや、フェイ様……お目覚めになられたのですね」
「離せ!離せよ!!俺を解放しろ!」
縛られたまま、椅子に座らされる。
「フェイ様見てください、今夜は月がとても綺麗です。誓いを立てるに相応しい夜ですね」
窓際に行って空を眺めるハクウさんの手元のブーメラン刀が月夜に当てられ怪しく光った。
「どうしてこんな事……!」
「フェイ様、お慕いしております」
話を聞かないハクウさんに段々怒りが込み上げてくる。
胸の中心で砂がざわめく感覚がした。
これは密売マーケットの時、獣ゼロンから入ってきた黒い砂だろう。胸飾りが俺の怒りと、黒い砂のざわめきに反応する様にぼぅと光った。
「っ……何でこんな事をするんだよ!」
「どうか私の、永遠のご主人様になってください」
ハクウさんは、ゆっくりと歩いて来た。
人の話を聞かない……会話が噛み合わない……いや、会話をする気が無いのだろうか。
こんな所でまた殺される訳にはいかない、言い様のない怒りで爆発しそうだった。
胸の中に熱を感じる…………炎のように熱い、これは────怒りの炎。
首筋に刃をあてがわれるとツーと血がブーメラン刀を伝う。
「あぁ…フェイ様の血、綺麗です……」
刃を伝う自分の血を見て、パニックになると同時に頭に血が上った。
「っ…………けんな…………ざけんな……!ざけんな!!!」
ブツブツと口から怒りの言葉が漏れる。
ジリッ……と音を立てて手足を縛っている縄に炎が灯った。
首にあてがわれる刃に僅かに力が入ったのを感じて、頭の中が白くなる。
また死ぬ────。
嫌だ──嫌だ────!!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!ふざけんなよ!!!人の話を聞けええっ!!!」
その瞬間、手足を縛っていた縄が炎で焼け切れ、俺を中心にして青い炎がブワリと渦のように発生して部屋に広がった。
「っ……何です…………!?」
青い炎の熱に当てられた窓ガラスが高熱によって全てパンッ!と割れる
顔の半分に何かが張り付いているのが分かった、これはお面だ。自分が着ている服装も黒茶色のボロボロのものへと変わっていた。
この姿は、あの悪夢で会った、気が狂っている闇の俺と同じ姿だ。
すぐに立ち上がり、ハクウさんと距離を置く。
「はぁ……はぁ……っ俺゛はま゛だ!!こん゛な゛とこで死ね゛ね゛ぇんだよ゛っ!!!」
いつの間にか手にしていたチェーンソーをぎゅっと握りしめる。
また殺される訳にはいかない。
「フェイ様……?」
頭の中で悲鳴にも似た笑い声と砂嵐の音が反響して響く。
これはもう一人の俺の笑い声か?それとも黒い砂だろうか?
煩くてたまらない、呼吸が乱れた。
わずかに残る理性でハクウさんに言葉を発する。
「はぁ……はぁ……こっちに来るなっ!!!」
乱れる青い炎が、体から発生し続けて、部屋へ広がる。青い炎で熱されたカーテンや壁が赤く燃え始めた。
「どうして拒むのですか?」
それを聞いた途端、わずかな理性がブツリと裂き切れた。
何故そんな分かりきっている事を聞くのだろう。笑いが込み上げてくる。
「どうして?……は……はは…………あはは……あははははははは!あはははははははははははははっ!!そんなの、お前が一番良く分かってるだろっ!それともやるか?今から俺と!楽しい殺し合いをさぁあっ!!!」
チェーンソーが起動し鳴り響く。
考えるより先にハクウさんに向かって体が駆け出した。殺されるより先に殺してやる。
ハクウさんは表情を変えずに落ち着いた様子で俺を見る。
「あぁ、分かっていらっしゃるのですね……そう、私はフェイ様が欲しいのです……私だけのサクリファー……ご主人様が……!」
ハクウさんはスカートをひるがえして、太股に装着していたもう一本のブーメラン刀を取り出した。二本のブーメラン刀を構える。
二本のブーメラン刀はチェーンソーを受け止めて弾くと、ハクウさんは後退しすぐにブーメラン刀を一本空中へ投げ飛ばした。
ヒュンヒュンと音を立てて回転しながら飛んで来るブーメラン刀を、顔に当たる前に避ける、しかし何かが頬にかすったのか頬が切れて血が垂れた。
「っ!?」
おかしい、今刃は確実に避けた筈だ。
これは……ブーメラン刀の周りで、かまいたちが起きているのか?
ブーメラン刀は部屋を大回りして飛ぶと、ハクウさんの上げた手のひらに、狂い無くパシッと収まった。
「さて、それでは本気で参りましょうか、ご主人様」
「っ俺゛は!テメ゛ェ゛の!!ご主゛人゛様゛じゃね゛ーんだよっ!!!!」
向かってきたハクウさんに、チェーンソーを振り上げるように切りつけた。ハクウさんはスカートをフワリと揺らし、それをかわしながら後退してブーメラン刀を一本投げ飛ばすと、重力を感じない動きで壁へ飛んだ。ふわり、と壁にしゃがみながらこちらを向くと、勢いをつけるように壁を蹴り、飛びかかるように俺を切りつける。
「ぐっ……!」
体がよろめいたところを狙うかの様に、空を飛ぶブーメラン刀が戻ってきて腕の肉を切る。
「くそっ……いてぇな……!……ふ、くくく……はは……あははははははははっ!!!」
可笑しくて笑っていたらブーメラン刀がまた飛んできたので、チェーンソーで叩き落とすように切って防いだが、軽い金属音を立ててブーメラン刀を弾いただけだった。
弾かれたブーメラン刀は回転しながら空を飛び、ハクウさんの手へ戻る。
体の表面から発生する青い炎が止まらない。体の中の黒い砂がざわめく度に、体が軽くなっていくのを感じた。
勢いをつけてジャンプしながらチェーンソーを振りかぶる。勢いがついた一撃をハクウさんめがけて振り下ろした。
クロスされた二本のブーメラン刀がそれを受け止めるが、チェーンソーが一層けたたましく鳴り響くと、ハクウさんは力に押されて段々姿勢を低くし、しゃがみ込んでいく。
「あははははははははっ!!あははははははははっ!!このまま真っ二つになっちゃえよ!!!なぁ!!!なぁ!!」
「っ……」
想像していたよりも、俺の一撃が重かったのか、ハクウさんの顔に力が入る。二本のブーメラン刀を使って何とか俺を跳ね返した瞬間、ドアがバンッと開いて、ゼロンが部屋に入ってきた。
「フェイ……!!」
ゼロンが後ろから抱き締めるように、俺の体を取り押さえる。
「は、ははっ!!…………っあ゛ぁ゛ーーー!くそっ!!離せよっ!」
ゼロンにギュッときつく抱き締められて体が動かせない。
「はなせよっ……はぁ、はぁ、……離せっ!!」
俺は殺すんだ、あいつを。
腕から脱出しようと暴れるが、更にきつく抱き締められた。
「ダメ……戻ってきて……フェイ………」
「────……っ…………」
胸に灯った怒りの炎がゆっくり落ち着いていく。
戻ってきてだって……?………………どこに?…………………………何だ?……俺は今、何をしているんだ?
分からない、思考が戻ってきて体の力が抜けていく。
部屋を燃やしていた炎が小さく消えていき、持っていたチェーンソーも手から床に落ちると、煙のようにふっと消えた。
顔に張り付いたお面も、赤茶色の服装も、煙のように消えて、元の姿に戻る。
遅れて部屋に入ってきたリョウ先輩が、素早くハクウさんのブーメラン刀を刀で払い飛ばした。
「こんな夜更けに刃物で遊ぶのは感心しないな」
「っリョウ様、邪魔をしないで下さい……私は今、フェイ様に愛の誓いをお伝えしているのです」
ハクウさんはもう一つのブーメラン刀を構える。
「愛?フェイと会ったのは今日が初めてだろう?フッ……笑わせないでくれ」
ハクウさんは無表情でリョウ先輩を見た。
「今日、サクリファーのフェイ様に出会ったのは運命なんです。これは運命の愛なんです、邪魔しないでください」
リョウ先輩は何かを理解したのか、笑うように軽く息を吐くと、優しく微笑む。
「あぁ、なるほど……だとすれば尚更、君のそれは愛じゃないな、行きすぎたサクリファーへの執着だよ」
「執……着……?」
ハクウさんは思いもよらない言葉に少しだけ固まる。
「そう、それは執着だ……愛じゃない、君なら少し考えればそれくらい分かるだろ?」
ハクウさんは指摘された自分の中の気持ちに驚きうろたえながらも抵抗するように口を開いた。
「ち、違います!これは──」
「違わないさ、可愛そうに……よっぽど飢えていたんだな、まぁ気持ちは分からんでも無いが、フェイに手を出されると困るからな、これ以上やるなら俺が相手になるぞ?」
「ぅ……飢えて、いた……?執……着……?私、が?」
ハクウさんはワナワナと掌を見つめると、カランッとブーメラン刀を床に落として力なくペタリと座り込む。
リョウ先輩は冷たい目でそれを見下した。
「前にいたお前の主人のサクリファーのアオイと、今目の前にいるサクリファーのフェイは別人だ、一緒にするな」
「一緒になんて……していませんっ」
アオイ……?何処かで聞いたような名前だ。
少しだけ考えると、はっと思い出した。確か黒い砂漠に願って、ゼロンを産んだあの少女……ゼロンのお母さんの名前ではなかっただろうか。ゼロンのお母さんもサクリファーだったのか……。
「確かに、アオイもフェイも二人とも男のサクリファーだが、使える力の幅が歴然としているのは目に見て分かるだろう?アオイと違ってフェイはほぼ力が使えていない」
………………今、二人とも男と言っただろうか。
ゼロンのお母さん……黒い砂漠で見た時は、かわいい見た目をしていたから完全に少女だと思っていたが、どうやらあの子は少年だったらしい。
ハクウさんは、うなだれて動かなかった。
「そうやって暫く頭を冷やしていると良い…………フェイ、大事は無いか?」
「ぁ………………はい」
リョウ先輩が俺に触れようとしたら、ゼロンが俺を抱き寄せて、リョウ先輩を唸って威嚇する。
「フェイに触るな……」
「……まるでボディーガード犬だな、まぁいい、俺も部屋まで送ろう」
ハクウさんを横目に見て俺達は部屋を出た。


ぼんやりと灯りが灯る廊下を歩いていく。先程のリョウ先輩とハクウさんの会話で、ふと疑問に思った事があった。
「あの…………前にいたゼロンのお母さん……サクリファーは、男なのに力を使えたんですか?」
アオイという少年、どの程度力を使えたのかは分からないけど、さっきのリョウ先輩の言い方からすると、俺とはかなり差があるような感じだった。前にアリコーンが俺に、男のサクリファーは弱いとか、力があまり使えないとか言っていたけど……。
「あぁ、アオイは……俺の父の所属している研究所が、過去もっとも力の強かった原点の少女のサクリファーを元にして、奇跡的に作る事の出来たクローンのサクリファーだったからな、男だが力が強かったのはそのためだ……あと、可愛い見た目をしていたな、内面もバ……可愛いかったぞ」
「そうなんですか……」
今、リョウ先輩……バカと言おうとした気がするけど聞かなかった事にしよう。
それにしても……人工的に作るとか、サクリファーってそんな感じなのか……。
でも奇跡的に作れたって言ってるから、成功事例はゼロンのお母さんだけなのかもしれないな……。
「……フェイは自然発生した男のサクリファーだから力が弱いのは当たり前だ、気にするな」
「え……あ、はい」
そんなに気にしているように見えただろうか。まぁ、気にしてないと言ったら嘘になるけど……。
部屋の前に着くと、俺達はリョウ先輩と別れて、ゼロンと部屋へ入った。
扉を閉めてドアに寄りかかる、そのままズルズル……と下にへたり込んだ。気が緩んだのか、ドッと嫌な汗が出る。
さっき、俺は殺された。間違いなく死んだ、そのはずだ。
俺が死ねば世界が救われるかもしれないと思ったけど……違った。
死んだ後に見たあの黒い時計……世界を壊す時計の針が急激に進んで、気がついたら死ぬ少し前に戻されてた。
あの黒い時計が0時になったら……時計から闇が出て、世界が黒い砂漠にされてしまう………………世界が滅亡してしまう。
時計の針……0時まで残り20分も無かった………………もしかして……俺が死んだから、時間を戻す為に時計の針が進んだのか?
……心なしか体の中に微かに感じていたリュンの力……サクリファーの力も、殺される前より弱くなっている気がする。
一体何が起きているんだ?
──わからない。
────────怖い。
「──……フェイ?」
はっと見上げると、目の前のゼロンの顔が心配そうに俺を見ていた。
「あ──……」
そう簡単には死なないとゼロンに言ったばかりなのに、たった今いとも簡単に殺されてしまった。
情けなさと、よみがえる殺された時の恐怖で涙が溢れてボロボロとこぼれ出る。
「っ……」
「!…………大丈夫か?腕の傷痛むのか……?」
「っ……違う……違くて、っその……」
今死んでしまった事は、ゼロンにはとても言えない。ショックを受けるだろうし、何より心配をかけたくない。
でも、ゼロンに何て言ったら良いのか分からない。
ゼロンが心配そうに、そっとキスをしてきた。
「……フェイ、泣くな……泣くな……」
涙が止まらない俺をなだめるように、唇以外にも涙や顔に何度もキスをしてくる。
「~~っ…………うぅっ……うぅぅ……」
泣き止まない俺を見て、ゼロンは少し首をかしげた後、俺を急に抱き抱えた。
俺はベッドの上に乗せられ、力無くベッドに倒れて泣いていると、後ろから抱き締められる。
「……硬い床より……ふわふわの方が安心する……?」
「っ……うぅっ……」
「フェイ、大丈夫……だいじょーぶだぞ……」
ゼロンがあやす様に俺の頭を撫でる。
涙が止まない、ゼロンは落ち着かせようと俺の首筋に顔を埋めてキスすると、ハクウさんに噛まれた噛み跡に気がついたようで、動きが止まる。
「…………これ、あいつに噛まれたのか?……………………………毒の匂いがする……」
噛み後をパクっと口に含まれて、体がビクリと跳ねた。
そのまま、毒を吸出すように吸われる。
「ぁ……あ……っふ、あぁ──」
毒がまだ残留しているのか、痺れに似た快感が走った。
ちゅぱっと首から口を離すと、横を向いていた体を仰向けにされ、ゼロンと目が合う。
「フェイ……あいつに、何かされた……?」
あぁ、駄目だ──俺が死んだ事を知られたくなくて黙っていても、ゼロンは何かあったことに気がつく。
「っごめん、ごめんなゼロンっ……俺、全然駄目だ……」
酷く不安だった。怖くて、悲しくて、すぐに死んでしまった自分が情けなくて。
「フェイは、駄目じゃない……」
「駄目だよ……駄目だったんだっ……俺、俺は……」
ゼロンの顔を直視できない。
「……フェイは駄目じゃないぞ?……だって」
ゼロンの手が頬に添えられると、くいっと無理やり顔を合わせられる。
「っ……」
顔が近い。目の前のグリーンの瞳から目が離せない。
「フェイは……俺にとっての光だ……」
そのまま深く口づけをされる。
「んっ────」
光?俺が?
侵入してきた舌の快感によって、考えようとした思考が止まる。
「ん……む……ぅ……」
「好き……好きだよ、フェイ……」
少しだけ口を離してそう呟くと、余計な事は考えさせないと言わんばかりに、すぐにまた深いキスが落とされた。体がピクリと反応する。
どちらともなく絡み合わせた指は、お互いを求めるように動く。
まぐわう二つの影を、窓から差し込む月明かりがほのかに照した。
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