70 / 248
第48話 公爵と国王
しおりを挟む
ミロアとオルフェが屋敷で会話している一方で、王宮では公爵と国王が話し合っていた。話の内容は互いの子供達の婚約についてだ。
「――ということで、ガンマ殿下の度重なる暴挙は目に余ります。王家の有責で婚約破棄を受け入れてくださりますな、国王陛下?」
橙色に近い薄い赤髪をオールバックにし、切れ長の黒眼と貫禄のある顔立ちの大男はバーグ・レトスノム公爵。娘ミロアのために婚約破棄を申し出るべく王宮に参上したのだ。
「……ああ、分かっておるとも。受け入れようとも、レトスノム公爵」
そんな公爵を玉座に座って眺めるのは、青い瞳と白髪混じりの黒髪に長い髭を靡かせた中肉中背の男。この男こそドープアント王国の国王ファンタム・ドープアントなのだ。それと同時にミロアの婚約者ガンマの父親だ。
公爵と国王。二人して貴族として大きな権力者であり、逞しい体つきをしているのだが、今だけは互いの子供のことを考える父親であった。婚約破棄を申し出る方は笑みを浮かべながらも心の中では怒りを抱き、婚約破棄を受け入れる方は顔も心の中も落ち込んでいる。立場など関係なく。
「我が娘ミロアは今までガンマ殿下に蔑ろにされ続けました。これにはミロアの過剰な愛情表現にも問題があったでしょう。しかし、ガンマ殿下が婚約者として向き合ってくださっていれば解決したことであることは王家もすでに存じていると思います。ましてや、他の女性にうつつを抜かすなど王族にあるまじき行為。もはや王太子でいられませぬはずでは?」
「……無論だ。我が息子ガンマにも非があり、同時に我ら王家の教育も甘かったことは否定できぬ。ガンマは政略結婚に反発して遊び呆けるばかり、ミロア嬢をないがしろにすることも目に余るものがあった。挙げ句には王宮でも学園でも他の女性を……これ以上は口にすることもあるまい。ガンマとミロア嬢の婚約は我が王家の有責で破棄とする。それと同時にガンマを王太子から外し、第二王子アナーザを新たな王太子とする。ガンマはただの王子として学園を卒業後は伯爵位でも与えよう」
ミロアとガンマの婚約破棄、そしてガンマの廃嫡まで決まった。それを国王の口から聞いたバーグは心の中でほくそ笑む。娘の望んだことが叶ったのだ。後は自身が望んだことだけ。
(やっとあの馬鹿王子との婚約が破棄できた。だが、まだ油断できん。それに私はこれだけで話を終わりにするわけにはいかない。ガンマ殿下が伯爵位を賜るのも気に入らんしな)
バーグはミロアの望みと今後の将来のために王宮に来た。それが意味することは婚約破棄だけが目的ではないことを意味しているということだ。
「――ということで、ガンマ殿下の度重なる暴挙は目に余ります。王家の有責で婚約破棄を受け入れてくださりますな、国王陛下?」
橙色に近い薄い赤髪をオールバックにし、切れ長の黒眼と貫禄のある顔立ちの大男はバーグ・レトスノム公爵。娘ミロアのために婚約破棄を申し出るべく王宮に参上したのだ。
「……ああ、分かっておるとも。受け入れようとも、レトスノム公爵」
そんな公爵を玉座に座って眺めるのは、青い瞳と白髪混じりの黒髪に長い髭を靡かせた中肉中背の男。この男こそドープアント王国の国王ファンタム・ドープアントなのだ。それと同時にミロアの婚約者ガンマの父親だ。
公爵と国王。二人して貴族として大きな権力者であり、逞しい体つきをしているのだが、今だけは互いの子供のことを考える父親であった。婚約破棄を申し出る方は笑みを浮かべながらも心の中では怒りを抱き、婚約破棄を受け入れる方は顔も心の中も落ち込んでいる。立場など関係なく。
「我が娘ミロアは今までガンマ殿下に蔑ろにされ続けました。これにはミロアの過剰な愛情表現にも問題があったでしょう。しかし、ガンマ殿下が婚約者として向き合ってくださっていれば解決したことであることは王家もすでに存じていると思います。ましてや、他の女性にうつつを抜かすなど王族にあるまじき行為。もはや王太子でいられませぬはずでは?」
「……無論だ。我が息子ガンマにも非があり、同時に我ら王家の教育も甘かったことは否定できぬ。ガンマは政略結婚に反発して遊び呆けるばかり、ミロア嬢をないがしろにすることも目に余るものがあった。挙げ句には王宮でも学園でも他の女性を……これ以上は口にすることもあるまい。ガンマとミロア嬢の婚約は我が王家の有責で破棄とする。それと同時にガンマを王太子から外し、第二王子アナーザを新たな王太子とする。ガンマはただの王子として学園を卒業後は伯爵位でも与えよう」
ミロアとガンマの婚約破棄、そしてガンマの廃嫡まで決まった。それを国王の口から聞いたバーグは心の中でほくそ笑む。娘の望んだことが叶ったのだ。後は自身が望んだことだけ。
(やっとあの馬鹿王子との婚約が破棄できた。だが、まだ油断できん。それに私はこれだけで話を終わりにするわけにはいかない。ガンマ殿下が伯爵位を賜るのも気に入らんしな)
バーグはミロアの望みと今後の将来のために王宮に来た。それが意味することは婚約破棄だけが目的ではないことを意味しているということだ。
63
あなたにおすすめの小説
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】
佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。
異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。
幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。
その事実を1番隣でいつも見ていた。
一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。
25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。
これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。
何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは…
完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます
佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。
しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。
ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。
セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる