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第161話 偽物
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いや正確に言えば……気づいたつもり、のようだった。
「この写真機にはすでに不貞の証拠がいくつも撮られているんだ! こいつを調べれば嫌でもその証拠写真が出てくるんだ! その写真を見れば、ミロアだってオルフェ・イーノックとの婚約なんか嫌になるに決まってる!」
「……何が言いたいので?」
「結局、ミロアは最終的に婚約破棄することになるはずだ! はは! 残念だったな! 結果的にはミロアの婚約を無効にできるってわけだ! ははははは!」
追い詰められた顔から一転して勝ち誇ったように笑い始めるガンマ。だが、ミロアたちは呆れるしかなかった。
「いえ、そんな事はありませんよ?」
「…………は?」
「オルフェは浮気なんてしていませんよ? その写真機に写る写真にもオルフェはいませんからね?」
「な、何だと!?」
「貴方方の計画のことはオルフェにも伝えてあるのに、ノコノコと引っかかりにいかせるわけがないでしょう?」
「っ!?」
ガンマの顔が驚愕に変わった。ミロアの言葉を聞いて、確かに計画のことを知らされたオルフェが罠に引っかかるなどありえないことくらい分かったのだ。
「ちょ、ちょっとまてよ! 僕達は確かにオルフェ・イーノックを見かけてミーヤに誘惑させたんだぞ!?」
「つまり殿下は、少し前に執心していた男爵令嬢を都合のいいように駒として利用されたのですね?」
「あ、いや、それは……」
元騎士団長の男に睨まれてガンマは口ごもる。その代わりにローイが話の続きを引き受ける。
「……つまり、我々がオルフェ・イーノックだと思っていた銀髪灰眼の男は偽物であったわけですね……?」
「そういうことだな」
「な、何ーっ!?」
偽物。つまり、ガンマたちは全くの別人を対象にしていたということだ。ガンマは衝撃を受けたようだが、すでに違和感を感じ取って偽物の可能性に気づいたローイはガックリと項垂れるだけだった。
(やはりそういうことか……あの表情が一定にし続けている顔を作り物だと早くに気づいていれば、都合が良すぎると不信感を抱ければ、すぐに撤退したのに……)
「う、嘘だ! それじゃあ、本物は一体どこにいるってんだよ!?」
本物はどこか。混乱するガンマはキョロキョロと周りを見るが、そんなことをしても無駄だった。本物はいつもと違う格好をしていたのだから。
だからこそ、この男はこのタイミングでガンマの目の前に出るのだ。
「私をお探しですか? ガンマ殿下」
「何だ!? 従者ごときが何のようだ!?」
「……っ!?」
ガンマの目の前に出たこの男は、ガンマたちのように従者の格好をしていて、それでいて銀髪灰眼の美形の男。それでいて礼儀正しく、ローイがよく知る顔でもあった。
「お、お前は……!」
「何だローイ、こいつを知っているのか!?」
「よく知っているでしょう。ミロアの幼馴染ということでいつも私に突っかかてきていましたからね」
「…………幼馴染?」
幼馴染。ミロアの幼馴染。それだけ聞いてガンマもやっと気づいた。この従者の姿をしていた男が誰なのか。
「この写真機にはすでに不貞の証拠がいくつも撮られているんだ! こいつを調べれば嫌でもその証拠写真が出てくるんだ! その写真を見れば、ミロアだってオルフェ・イーノックとの婚約なんか嫌になるに決まってる!」
「……何が言いたいので?」
「結局、ミロアは最終的に婚約破棄することになるはずだ! はは! 残念だったな! 結果的にはミロアの婚約を無効にできるってわけだ! ははははは!」
追い詰められた顔から一転して勝ち誇ったように笑い始めるガンマ。だが、ミロアたちは呆れるしかなかった。
「いえ、そんな事はありませんよ?」
「…………は?」
「オルフェは浮気なんてしていませんよ? その写真機に写る写真にもオルフェはいませんからね?」
「な、何だと!?」
「貴方方の計画のことはオルフェにも伝えてあるのに、ノコノコと引っかかりにいかせるわけがないでしょう?」
「っ!?」
ガンマの顔が驚愕に変わった。ミロアの言葉を聞いて、確かに計画のことを知らされたオルフェが罠に引っかかるなどありえないことくらい分かったのだ。
「ちょ、ちょっとまてよ! 僕達は確かにオルフェ・イーノックを見かけてミーヤに誘惑させたんだぞ!?」
「つまり殿下は、少し前に執心していた男爵令嬢を都合のいいように駒として利用されたのですね?」
「あ、いや、それは……」
元騎士団長の男に睨まれてガンマは口ごもる。その代わりにローイが話の続きを引き受ける。
「……つまり、我々がオルフェ・イーノックだと思っていた銀髪灰眼の男は偽物であったわけですね……?」
「そういうことだな」
「な、何ーっ!?」
偽物。つまり、ガンマたちは全くの別人を対象にしていたということだ。ガンマは衝撃を受けたようだが、すでに違和感を感じ取って偽物の可能性に気づいたローイはガックリと項垂れるだけだった。
(やはりそういうことか……あの表情が一定にし続けている顔を作り物だと早くに気づいていれば、都合が良すぎると不信感を抱ければ、すぐに撤退したのに……)
「う、嘘だ! それじゃあ、本物は一体どこにいるってんだよ!?」
本物はどこか。混乱するガンマはキョロキョロと周りを見るが、そんなことをしても無駄だった。本物はいつもと違う格好をしていたのだから。
だからこそ、この男はこのタイミングでガンマの目の前に出るのだ。
「私をお探しですか? ガンマ殿下」
「何だ!? 従者ごときが何のようだ!?」
「……っ!?」
ガンマの目の前に出たこの男は、ガンマたちのように従者の格好をしていて、それでいて銀髪灰眼の美形の男。それでいて礼儀正しく、ローイがよく知る顔でもあった。
「お、お前は……!」
「何だローイ、こいつを知っているのか!?」
「よく知っているでしょう。ミロアの幼馴染ということでいつも私に突っかかてきていましたからね」
「…………幼馴染?」
幼馴染。ミロアの幼馴染。それだけ聞いてガンマもやっと気づいた。この従者の姿をしていた男が誰なのか。
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