馬鹿王子は落ちぶれました。 〜婚約破棄した公爵令嬢は有能すぎた〜

mimiaizu

文字の大きさ
25 / 33

25.

しおりを挟む

明るい場所に戻った時には絶望が待っていた。

結局、俺は王宮に戻されてしまったのだ。アノマとロカリスも捕まって厳しい取り調べを受けることになった。俺達三人とも……いや、特に俺は侮蔑に満ちた目で見られながらだった。屈辱……。


「殿下……貴方という人は……!」

「大人しくしてくださいと言ったはずですぞ……!」


オルドや宰相のスイツは嘆きながら怒りをあらわにする。普段穏やかなこの二人が怒っているのだから一番怖い男である将軍も怒り狂う勢いだった。


「何たる愚行だ! やはりマグーマ殿下に国王は務まらぬ!」


将軍のコマンダの顔はすでに鬼のようだ。俺はもう震えて黙るしかない。ただ、外務大臣のバードは妙に落ち着いていた。この男は以前から俺に興味がないような態度だったが、こんな状況でも……?


「皆さん、落ち着いてください。正直、殿下がしたことは愚行ですが、これはいい機会だと思います」

「「「「はぁっ!!??」」」」


俺も他の家臣たちも驚いた。この外務大臣は何を言ってるんだ?


「殿下とメアナイト男爵は結託していました。そして、互いのために隣国に移り住もうなどと愚かな行為に。つまり、メアナイト男爵を徹底的に取り調べる口実もマグーマ殿下を王位からより確実に遠ざける口実もできたということになります。もちろん、罪人として罰することは確定です」

「それは……」

「むぅ……」

「なるほど。そういう考え方もあるわけか……」


なんだよそれ? あんまりじゃないか?


「ちょっと待て! それじゃあ、俺が出ていこうとしたせいでアノマとロカリスが罪人扱いになるのか!?」

「ええ、貴方もです」

「俺は王子だぞ!?」

「罪は罪。例外はありません」


……その後は勝手に話が進み、俺とアノマとロカリスが裁判にかけられることが決まった。

そんな中で、国王である父ウィンビジブル・ツインローズと王妃の母バーラス・ツインローズが帰国した。もちろん、俺の現状を知られることとなる。


「愚か者め」

「馬鹿息子」


そんなことを言われながら父と母に厳しく叱責された。一切の道場もないなんて、これが親のすることだろうか? いや、ありえないだろ?


両親に比べて弟たちは違った。二人の弟が面会に来た時、悲しそうな顔を見せてくれた。


「兄上、どうしてこのようなことを……私の仕事が……」

「マグ兄様……なんで?」


トライセラは目にクマを浮かべて、尚且つ顔を青ざめて呻いた。トップスも何が起こったのか理解できないまま泣いていた。弟二人にこんな思いをさせたことに流石に俺も罪悪感が湧く。元凶が俺じゃなくてもだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

転生令嬢だと打ち明けたら、婚約破棄されました。なので復讐しようと思います。

柚木ゆず
恋愛
 前世の記憶と膨大な魔力を持つサーシャ・ミラノは、ある日婚約者である王太子ハルク・ニースに、全てを打ち明ける。  だが――。サーシャを待っていたのは、婚約破棄を始めとした手酷い裏切り。サーシャが持つ力を恐れたハルクは、サーシャから全てを奪って投獄してしまう。  信用していたのに……。  酷い……。  許せない……!。  サーシャの復讐が、今幕を開ける――。

【完結】なんで、あなたが王様になろうとしているのです?そんな方とはこっちから婚約破棄です。

西東友一
恋愛
現国王である私のお父様が病に伏せられました。 「はっはっはっ。いよいよ俺の出番だな。みなさま、心配なさるなっ!! ヴィクトリアと婚約関係にある、俺に任せろっ!!」  わたくしと婚約関係にあった貴族のネロ。 「婚約破棄ですわ」 「なっ!?」 「はぁ・・・っ」  わたくしの言いたいことが全くわからないようですね。  では、順を追ってご説明致しましょうか。 ★★★ 1万字をわずかに切るぐらいの量です。 R3.10.9に完結予定です。 ヴィクトリア女王やエリザベス女王とか好きです。 そして、主夫が大好きです!! 婚約破棄ざまぁの発展系かもしれませんし、後退系かもしれません。 婚約破棄の王道が好きな方は「箸休め」にお読みください。

婚約破棄!?なんですって??その後ろでほくそ笑む女をナデてやりたい位には感謝してる!

まと
恋愛
私、イヴリンは第一王子に婚約破棄された。 笑ってはダメ、喜んでは駄目なのよイヴリン! でも後ろでほくそ笑むあなたは私の救世主!

婚約破棄された途端、隣国の冷酷王子に溺愛されました

ほーみ
恋愛
「――本日をもって、レイラ・アストレッドとの婚約を破棄する!」 玉座の間に響き渡る鋭い声。 それは私の元婚約者である王太子・ユリウスの宣告だった。 広い空間にざわめきが広がる。 私はゆっくり顔を上げ、冷たい笑みを浮かべた。 「あら、そう。ようやく?」 「……なに?」

婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?

ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」  華やかな夜会の真っ最中。  王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。 「……あ、そうなんですね」  私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。 「で? 次のご予定は?」 「……は?」

婚約破棄された令嬢は“図書館勤務”を満喫中

かしおり
恋愛
「君は退屈だ」と婚約を破棄された令嬢クラリス。社交界にも、実家にも居場所を失った彼女がたどり着いたのは、静かな田舎町アシュベリーの図書館でした。 本の声が聞こえるような不思議な感覚と、真面目で控えめな彼女の魅力は、少しずつ周囲の人々の心を癒していきます。 そんな中、図書館に通う謎めいた青年・リュカとの出会いが、クラリスの世界を大きく変えていく―― 身分も立場も異なるふたりの静かで知的な恋は、やがて王都をも巻き込む運命へ。 癒しと知性が紡ぐ、身分差ロマンス。図書館の窓辺から始まる、幸せな未来の物語。

『私は“第二”になんて、なりたくない。だから婚約を破棄します』

春秋花壇
恋愛
「恋愛カテゴリにありますが、内容は“家族・地域・社会問題”を描く人間ドラマです」 『私は“第二”になんて、なりたくない。だから婚約を破棄します』 誰かのあとに 並ぶために この命を磨いてきたんじゃない 微笑むふりをして 手を取るふりをして 名前だけの愛に縛られるくらいなら 一人でいい でも、自分で選びたい 心の最前列に座ってくれる人を 「君を第二に」 その言葉が降るたび 私の心は音もなくひび割れていった 私のすべてを “誰かの次”として見られるなら いっそ何も与えたくない だから私は その王冠も、その椅子も、その未来も 全部、返します 私はただ、一人の人として 一番に愛されたいだけだったのに

処理中です...