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しおりを挟む「今だ! 野郎ども! 襲撃だぁぁぁ!!」
「「「「「ッ!!??」」」」」
「ヒャッハー! やいテメエら命惜しくば金目のものを出せー!!」
突如、小汚い武装集団が僕達生徒や教師を囲むように現れたのだ。何十人くらいいる屈強な男達が剣や槍、弓矢をもって僕達を取り囲むんだから何が何だか分からなかったが、教師の一人が叫んだことで誰もが事態を悟った。
「こ、こいつらはもしや盗賊!? 隣国の商隊を次々に襲って混乱を招いたっていう盗賊集団か!?」
「がはははは! その通りさ!」
「「「「「と、盗賊っ!!??」」」」」
武装集団の正体が、隣国で話題となった盗賊団と分かった僕達は皆、背筋に緊張が走った。僕達は授業で剣技と魔法の鍛錬をしてきたが、こんな形で実践を受けたことはない。ましてや集団での対人戦なんて……。
「これからテメエらを殺すか犯すか売りさばく盗賊を地獄まで覚えておくがいい! シザシ、ブラリ、ゴルヴァ、こいつらを捕らえろ! 抵抗する者は殺せ!」
「「「ラジャー、ボス!」」」
盗賊達は武器を持って襲い掛かってきたが、引率の教師や護衛についてきた騎士たちが応戦する。こういうことも想定されたこともあって、すぐに盗賊団の思い通りにはならなかった。それに、ティルワーナとサンゲイも魔法と剣で戦える。
「この、なめんじゃないわよ! 死ね下郎ども!」
「非戦闘系の者は馬車へ急げ! 俺達が時間を稼ぐ! デザトスも逃げろ!」
盗賊団を相手に戦う者達と馬車で逃げる者達に分かれる。僕も剣で応戦するが時間稼ぎでもやっとだ。ここでボスだという男が弓矢を放ったことで状況は一変する。
「むぅん! マジックアロー!」
盗賊ボスの放った矢が三つに分かれて教師一人と騎士二人が頭と胸を射止められて殺されてしまったのだ。遂に視野が出たことに多くの生徒が青褪める。僕もその一人だった。
「がはははは! 見たか! これが俺様の弓矢の腕前だ! 魔法を掛け合わせれば遠距離でも容赦なく戦えるってことだ! それ、どんどん行くぞ!」
次々と放たれる矢、その度に騎士や生徒達が犠牲になる。このままではマズいと思った騎士の一人が生徒たちの馬車での逃走を急ぐ。
「皆! 急いで馬車へ行け! スモーク!」
騎士の人は魔法で煙幕を放った。盗賊どもに被るように放ったことで、逃げる時間を稼ぐ手段に出たのだ。それをすぐに理解した生徒は皆、馬車に逃げ込む。死んだ人たちを置いていくしかないけど……。
「よし! 皆急げ!」
騎士の人が生き残った生徒や教師を先導する。中には怪我をして動けない生徒や教師もいたけど、騎士の人達が背負って運んでいる。しかし、一人だけ倒れたままの生徒がいた。それは、足を怪我したサンゲイだった。気付いた僕はすぐに駆け寄ってしまった。
「サンゲイ! 大丈夫か!」
「デザトス、お前は逃げろ……! この足じゃ、もう……」
よく見れば、足だけじゃなく背中にも矢が刺さって傷を負っていた。所々血だらけで、行きも荒い。それを見た僕の行動は、彼を背負って馬車に逃げ込むことだった。
サンゲイを背負って馬車に向かう僕、当然体格のいいサンゲイの体重も重い。だけど僕だって鍛えてきたからこのぐらいの重さは気にしていられなかった。
盗賊達の声が迫ってくる中、奇跡的に待っていた馬車まで到達した僕はサンゲイを先に乗せて馬車の最後尾に乗り込んだ。それを見て確認した騎士が馬車を動かす。
そして、馬車が動き出す。盗賊達はそれでも追いすがって矢を射かけたりするから安心もできない。だから、馬車に乗っている生徒は、余計な荷物を捨てて場所を少しでも軽くして早く逃げようと行動に出た。
その『余計な荷物』の中に、僕がいたわけだ。三人の生徒が、僕を馬車から突き飛ばして落としたのだ。
突然の衝撃、馬車から落とされた衝撃を受けて驚いた僕は、馬車の方を見てすぐに理解した。あの馬車には、僕を苛めていたグループがいたのだ。三人も。彼らに落とされたんだと。
その証拠に、リーダー格のゴッグ・ロウチと取り巻きのイゴル・マーガンとセキーラ・フィロワムが笑っているのが見えた。あいつらが笑ってこちらを見ているのが、見えたから……。
馬車から落とされた僕は、みっともなく転んだり、死に物狂いで足掻きながら、回避行動を繰り返す。だが、無情にも、全身が地面の土でまみれて動きづらくなった時に盗賊に身柄を抑えられてしまった。
逃げ遅れた僕に集まってきた盗賊達は馬車で逃げた生徒を諦めたらしい。代わりに、彼らが落とした物や死んだ人たちの持ち物を漁ることにしたようだ。もちろん、逃げ遅れた僕も目についた。盗賊ボスが僕を見てニヤリと笑う。
だからこそ、僕は今、盗賊団に捕まっているわけだ。僕が着ている白を基調とした制服は上下共に汚れが目立ちボロボロになっていた。盗賊団が捕まった僕を抵抗できないように痛めつけてきたせいだ。浅い生傷も今は目に見えて多くなっていた。
息が……息が、まずいな。酸素をどうにか、取り入れないと……。落ち着け、落ち着くんだ……。呼吸をする音で盗賊が反応するかひやひやしたけど、幸いなことに興味もないらしい。僕のことなんか気にも留めないということか。呼吸は……ちょっと苦しいけど可能だ。助かった。
いや、何も助かってなんかない。僕は盗賊団が根城にしている廃村(?)にいるじゃないか。つまり、あの後で騎士団が助けに来てくれるようなことは無かったということだ。それとも、探しているけど見つけられない?
このまま見つからなかったら僕、他国で奴隷として売られてしまうか殺されるか飢えて死んじゃうよ。幼馴染を助けたのに、苛めグループの連中には最後まで虚仮にされるなんて、あんまりだ……! 家族とも仲良くなれなくて、友達とも距離が開いて……僕の人生は暗いまま終わるの?
……そんなの、嫌だよ! それに、体が痛い、痛いよ……! もう心も体も限界だ……誰か、誰か助けてよ……! 何で助けてくれないの? 先生も騎士の人も、ティルワーナとサンゲイも、僕が逃げ遅れてることに何で気付かないの?
何で僕は『また』こんな目に遭ってるんだっけ……? 僕が勇者の子孫なのに弱いから?
たいして秀でてることがないから? 苛めを受けるほど嫌われるような子供だから?
このままじゃ死ぬ? ……そんなの嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁぁ!!
「何でだよ! 僕が、『俺が』何をした! 何でこんな『つまらねえ』人生を! ふざけんなぁぁぁぁぁ!!」
『俺』は遂に発狂したかのように叫んだ。僕の中で悪意が、恐怖が、憤怒が、憎悪が、絶望が、そして殺意が広がっていく。自分でもわかるくらいどす黒く禍々しい負の感情が、僕自身を黒く染め上げるような……。
「あぁぁぁ…………あぁ?」
…………いや、違う!
「こ、これは!?」
これは、一体……何……!? 頭に膨大な情報……『他の人』の記憶が……流れ込んできた……!?
「あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
…………この後の僕、いや『俺』は夢物語みたいな、奇跡とも言えるような『神の悪戯』を感謝することになった。
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