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46.執着?
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レフトンは目を丸くして自分の顔を指さした。
「あれ? もしかして俺がそうだっていうのかな?」
「候補の一人だと思ってるよ。ああ、肯定も否定もいらないよ。聞いてもどうせはぐらかすから勝手に思ってるからさ」
「はは、そりゃそうだな。なら。お言葉に甘えてはぐらかしてやろう」
レフトンはわざとらしく話題を変えた。もっとも、行方不明のサエナリア関連なのは変わりはない。
「サエナリア嬢、見つかるといいな。親父は兄貴のことは関係なく探そうとしてくれるみたいだしよ」
「そうみたいだね。でも、この件に関しては僕も独自に動こうと思うんだ」
ナシュカの言葉にレフトンはわざとらしく驚いた。わざとなのは、サエナリアに関心を持っている様子からすでに察していたからだ。
「へえ、お前が動くのか。結構執着してんじゃん」
「彼女が見つからないとカーズ兄さんがあのままでしょ」
あのまま、というのも先ほどカーズは二人に打ちのめされて落ち込んでいる最中だ。もはや精神が病み切っている。立ち直るにはかなりの時間が要すると思われる状態だ。ただ、早めに回復する手段があるとすれば、一番会いたい人物に会わせればいい。
「おいおい、サエナリア嬢を兄貴に合わせようってのか? とても会ってくれるとは思えねえよ。兄貴はサエナリア嬢を泣かせてんだぞ?」
「僕たちの方から先に会って、カーズ兄さんが深く反省してるって説得すればいいのさ。僕たちがサエナリア様に悪感情を抱いていないように、サエナリア様も僕たちに悪感情を抱いていないのだからね」
「ふーん、なるほど(結構考えてやがるな)」
レフトンは素直にいい考えだと思った。レフトンの知るサエナリアの性格からすれば、カーズの弟というだけで悪感情など抱くはずがない。ただ、レフトンとナシュカはカーズの弟だ。兄の身を彼女よりも理解していると思われることだろう。説得力を持たせるには自分たちがいい材料になる。ナシュカはそこまで考えているのだ。
「だけど、それはサエナリア嬢が見つかった後の話だろ? 気が早くないか?」
「そうかな? 確かに見つからなかった場合も考えておくべきだけど、無事に見つかった後のことを考えたほうが前向きでしょ?」
「前向きか、そりゃいいな。最近兄貴がらみで悪い話ばっかだしな」
苦笑するのは本心からだ。二人とも、カーズのことは身内として恥じているのだ。
「そういうわけで僕は地道な努力から始めるよ。まずは彼女の交友関係から調べてみる」
「ほーう、なら俺も見えないところで調べてやっか。可愛い弟を見習ってな」
「………僕は可愛げがない方だと思うよ。人より背は低いけどね」
「はははっ! 俺達は兄貴も含めて三兄弟だ! 弟が可愛くないはずないさ!」
そう言ってレフトンはナシュカの頭をワシャワシャと撫でる。ナシュカは微妙な顔になるが嫌がることはなかった。
「と、とにかく、僕は学園に戻るよ。信頼できる者達と手分けして探るとしよう。レフトン兄さんも何か分かったらすぐに知らせてね」
「おうっ! 任せとけ! この後で何か分かれば連絡するさ!」
レフトンは力強い笑顔を見せた。その勢いでナシュカの頭をもう一度撫でようとするが、今度は避けられてしまった。
「子供扱いしないでよね」
「はは、わりいわりい」
こうして二人は一旦分かれた。ナシュカは学園に向かい、レフトンは王宮に残った。
「あれ? もしかして俺がそうだっていうのかな?」
「候補の一人だと思ってるよ。ああ、肯定も否定もいらないよ。聞いてもどうせはぐらかすから勝手に思ってるからさ」
「はは、そりゃそうだな。なら。お言葉に甘えてはぐらかしてやろう」
レフトンはわざとらしく話題を変えた。もっとも、行方不明のサエナリア関連なのは変わりはない。
「サエナリア嬢、見つかるといいな。親父は兄貴のことは関係なく探そうとしてくれるみたいだしよ」
「そうみたいだね。でも、この件に関しては僕も独自に動こうと思うんだ」
ナシュカの言葉にレフトンはわざとらしく驚いた。わざとなのは、サエナリアに関心を持っている様子からすでに察していたからだ。
「へえ、お前が動くのか。結構執着してんじゃん」
「彼女が見つからないとカーズ兄さんがあのままでしょ」
あのまま、というのも先ほどカーズは二人に打ちのめされて落ち込んでいる最中だ。もはや精神が病み切っている。立ち直るにはかなりの時間が要すると思われる状態だ。ただ、早めに回復する手段があるとすれば、一番会いたい人物に会わせればいい。
「おいおい、サエナリア嬢を兄貴に合わせようってのか? とても会ってくれるとは思えねえよ。兄貴はサエナリア嬢を泣かせてんだぞ?」
「僕たちの方から先に会って、カーズ兄さんが深く反省してるって説得すればいいのさ。僕たちがサエナリア様に悪感情を抱いていないように、サエナリア様も僕たちに悪感情を抱いていないのだからね」
「ふーん、なるほど(結構考えてやがるな)」
レフトンは素直にいい考えだと思った。レフトンの知るサエナリアの性格からすれば、カーズの弟というだけで悪感情など抱くはずがない。ただ、レフトンとナシュカはカーズの弟だ。兄の身を彼女よりも理解していると思われることだろう。説得力を持たせるには自分たちがいい材料になる。ナシュカはそこまで考えているのだ。
「だけど、それはサエナリア嬢が見つかった後の話だろ? 気が早くないか?」
「そうかな? 確かに見つからなかった場合も考えておくべきだけど、無事に見つかった後のことを考えたほうが前向きでしょ?」
「前向きか、そりゃいいな。最近兄貴がらみで悪い話ばっかだしな」
苦笑するのは本心からだ。二人とも、カーズのことは身内として恥じているのだ。
「そういうわけで僕は地道な努力から始めるよ。まずは彼女の交友関係から調べてみる」
「ほーう、なら俺も見えないところで調べてやっか。可愛い弟を見習ってな」
「………僕は可愛げがない方だと思うよ。人より背は低いけどね」
「はははっ! 俺達は兄貴も含めて三兄弟だ! 弟が可愛くないはずないさ!」
そう言ってレフトンはナシュカの頭をワシャワシャと撫でる。ナシュカは微妙な顔になるが嫌がることはなかった。
「と、とにかく、僕は学園に戻るよ。信頼できる者達と手分けして探るとしよう。レフトン兄さんも何か分かったらすぐに知らせてね」
「おうっ! 任せとけ! この後で何か分かれば連絡するさ!」
レフトンは力強い笑顔を見せた。その勢いでナシュカの頭をもう一度撫でようとするが、今度は避けられてしまった。
「子供扱いしないでよね」
「はは、わりいわりい」
こうして二人は一旦分かれた。ナシュカは学園に向かい、レフトンは王宮に残った。
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