悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu

文字の大きさ
46 / 149

46.執着?

しおりを挟む
レフトンは目を丸くして自分の顔を指さした。

「あれ? もしかして俺がそうだっていうのかな?」

「候補の一人だと思ってるよ。ああ、肯定も否定もいらないよ。聞いてもどうせはぐらかすから勝手に思ってるからさ」

「はは、そりゃそうだな。なら。お言葉に甘えてはぐらかしてやろう」

レフトンはわざとらしく話題を変えた。もっとも、行方不明のサエナリア関連なのは変わりはない。

「サエナリア嬢、見つかるといいな。親父は兄貴のことは関係なく探そうとしてくれるみたいだしよ」

「そうみたいだね。でも、この件に関しては僕も独自に動こうと思うんだ」

ナシュカの言葉にレフトンはわざとらしく驚いた。わざとなのは、サエナリアに関心を持っている様子からすでに察していたからだ。

「へえ、お前が動くのか。結構執着してんじゃん」

「彼女が見つからないとカーズ兄さんがあのままでしょ」

あのまま、というのも先ほどカーズは二人に打ちのめされて落ち込んでいる最中だ。もはや精神が病み切っている。立ち直るにはかなりの時間が要すると思われる状態だ。ただ、早めに回復する手段があるとすれば、一番会いたい人物に会わせればいい。

「おいおい、サエナリア嬢を兄貴に合わせようってのか? とても会ってくれるとは思えねえよ。兄貴はサエナリア嬢を泣かせてんだぞ?」

「僕たちの方から先に会って、カーズ兄さんが深く反省してるって説得すればいいのさ。僕たちがサエナリア様に悪感情を抱いていないように、サエナリア様も僕たちに悪感情を抱いていないのだからね」

「ふーん、なるほど(結構考えてやがるな)」

レフトンは素直にいい考えだと思った。レフトンの知るサエナリアの性格からすれば、カーズの弟というだけで悪感情など抱くはずがない。ただ、レフトンとナシュカはカーズの弟だ。兄の身を彼女よりも理解していると思われることだろう。説得力を持たせるには自分たちがいい材料になる。ナシュカはそこまで考えているのだ。

「だけど、それはサエナリア嬢が見つかった後の話だろ? 気が早くないか?」

「そうかな? 確かに見つからなかった場合も考えておくべきだけど、無事に見つかった後のことを考えたほうが前向きでしょ?」

「前向きか、そりゃいいな。最近兄貴がらみで悪い話ばっかだしな」

苦笑するのは本心からだ。二人とも、カーズのことは身内として恥じているのだ。

「そういうわけで僕は地道な努力から始めるよ。まずは彼女の交友関係から調べてみる」

「ほーう、なら俺も見えないところで調べてやっか。可愛い弟を見習ってな」

「………僕は可愛げがない方だと思うよ。人より背は低いけどね」

「はははっ! 俺達は兄貴も含めて三兄弟だ! 弟が可愛くないはずないさ!」

そう言ってレフトンはナシュカの頭をワシャワシャと撫でる。ナシュカは微妙な顔になるが嫌がることはなかった。

「と、とにかく、僕は学園に戻るよ。信頼できる者達と手分けして探るとしよう。レフトン兄さんも何か分かったらすぐに知らせてね」

「おうっ! 任せとけ! この後で何か分かれば連絡するさ!」

レフトンは力強い笑顔を見せた。その勢いでナシュカの頭をもう一度撫でようとするが、今度は避けられてしまった。

「子供扱いしないでよね」

「はは、わりいわりい」

こうして二人は一旦分かれた。ナシュカは学園に向かい、レフトンは王宮に残った。
しおりを挟む
感想 309

あなたにおすすめの小説

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

【完結済】監視される悪役令嬢、自滅するヒロイン

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 タイトル通り

処理中です...