悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu

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93.最悪?

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「あっ! やっと見つけた!」

レフトンたちがサエナリアの部屋から出た後、彼らのもとに走ってくる影が見えた。しかも、よく見ると貴族令嬢の格好をしていた。それでいて小汚く見える。

「「「………っ?」」」

「「(この声は、まさかっ!?)」」

彼女の正体に気づいた者は嫌な予感を感じた。今、この屋敷で貴族の若い令嬢は一人しかいないはずだ。地下に閉じ込められているはずだったが、この声を知っていれば嫌でも分かってしまう。

「ちょっと、そこのあんたたち! ねえ、何で私の使用人がいないのよ!? ほとんど誰もいないんだけど、どうなってんのよ! ホンット最悪っ!」

「「「(うわ~、この女か~、最悪だ……)」」」

「「(何故彼女がここにっ!?)」」

その正体はワカナ・ヴァン・ソノーザだった。ソノーザ公爵家の次女でサエナリアの妹だが、サエナリアとは真逆の性格、つまり最低最悪の我儘令嬢だ。あまりにも酷い性格のため、当主であるベーリュによって地下牢に閉じ込められたという情報があったが、今レフトンたちの前に現れてしまった。既に解放されたのだろうか。

「(ワカナ・ヴァン・ソノーザ……。とてもサエナリアさんの妹とは思えん性格の持ち主だな。学園ではその性格に似合わない美貌を駆使して馬鹿な男を食い物にしていることは知っている。嫌でも目に入ったしな。屋敷の中だと更に遠慮が無さそうだな)」

突然のワカナの登場に動揺するレフトンたち……というよりも不快感の方が強い。この屋敷の使用人である執事ウォッチと侍女ミルナも戸惑った様子だった。

「ワ、ワカナお嬢様、もう解放されたのですか?」

「旦那様から何も聞いておりませんが? 一体いつ、」

「はあ!? あんなとこ、自力で出てやったわよ! 鍵を叩いてぶっ壊してね! それよりも私の使用人はどこ行っちゃったの!?」

「こ、壊した!?(そういえば地下牢は全く手入れされてなかったような……)」

「(おいおい……)」

「(何を言っているんだこの女……?)」

「(何を聞かされているんだ僕たちは……?)」

ワカナの告白にその場にいる全員が目を丸くした。あまりにも公爵令嬢らしからぬ行為だ。

「あ、あの、彼らは、」

「もうこの際だから、あんたたちでいいからさっさと私のためにドレスとお菓子を持って来なさい!」

「「「「「…………」」」」」

地下牢から自力で脱出したら、使用人の約9割がいなくなっていたという非常事態が起こっているのに、理由も知ろうともしないでドレスとお菓子を求めるワカナにレフトンたちはドン引きした。

「(何を、考えているんだ? 頭大丈夫かこの女?)」

「(信じられん。貴族の令嬢、それも公爵令嬢の言うこととは思えん……)」

「(学園で見る貴族令嬢にこんな品のない女性はいなかったのに……この家の歪みの象徴のようだ……)」
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