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 大元帥クワイエット・ソースが撤退した後、三人の勇者が合流した。


「タヒナ! 無事だったか! よかった~」

「もう、セイブンは大げさ……なんて言えないわね。心配して来てくれてありがとう」

「しかし、追い詰められたと聞いていたけど逆転していたとは……流石は魔法賢者ポエイムだね」

「いやあ、それほどでもあるさ~」

「「っ!?」」

 そして、もう一人勇者が合流してきた。

「ポエイム、お前がタヒナを助けてくれたんだってな! 本当にありがとう!」

「助けてくれてありがとう! でも、バイパーさんの支援に言ってたんじゃないの? そっちは良かったの?」

 その通りだった。ポエイムは本来、魔王軍五大元帥のストレング・ライスと交戦していたバイパーの支援に向かっていたのだった。クワイエット・ソースと戦うタヒナの援護は困難なはずなのだが……。

「そうだったんだけどね~、もうバイパーさんが勝っちゃったらしくてね。僕はそんなバイパーさんの大怪我を地長に専念してたんだ」

「「バイパーさんが勝った!?」」

「なんと、バイパー殿は勝ったというのか!? 魔王軍五大元帥最強と言われたあのストレング・ライスに!?」

 セイブンもタヒナもオルカートも驚いた。ストレング・ライスは魔王軍五大元帥の中でも一番の実力者であった。好戦的で戦闘能力ならば魔王に次ぐといわれるほどの存在。それに勝ったという事実は衝撃的であった。

「そうさ~。まあ、打ち取れてはいないけど撤退はさせられたんだ。命に係わるほどの重傷付きだけどね」

「……いや、撤退させただけでも凄い功績ではないか。バイパー殿」

「しかしよぉ、重傷をおったなんて大丈夫なのかよ!?」

「しっかり治療したんでしょうね!?」

「うん、ばっちり……と言いたいんだけど、一命をとりとめることができた。それだけは言えるね。よく息を吹き返してくれたと思うよ」

 ポエイムは笑いつつも顔が少し青くなった。重症のバイパーの姿を思い出したのだ。今まで見たことも無いほどの重傷で、そのうえで息をしているのだから震えすらしたことも。

「……そんな状態のバイパー殿を救えたのは君がいてくれたおかげだよポエイム。しかし、これでバイパー殿は戦線離脱、いやもう戦場に立てるかどうか怪しいな……」
 
「そうだねえ……戦線復帰はとても無理かもしれないね……」

 勝利は嬉しいが、バイパーの状態を知って少し気落ちするオルカート。ポエイムも同じ気持ちだった。しかし、それでもめげない者もいる。

「何言ってんだ。生きてただけでよかったじゃねえか! これからは若い俺達で魔王軍を相手に戦ってやろうぜ! バイパーさんはもう十分戦ってきたんだろ? だったら今度は俺達が頑張る番だ!」

「そうよ、まだ戦いはこれからなんでしょ。いつまでもしんみりしない!」

「セイブン……タヒナ……」

「そうだね。君たちの言う通り、僕らも含め、まだ勇者はいるんだ。ここで立ち止まっている場合じゃないよね」

「その通り! 分かったなら他の皆も助けに行こうぜ!」

「あっ、待ちなさいよセイブン!」

 こうして魔王軍大元帥たちを退けた勇者たちは先へと進む。人類の勝利のために。
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