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前日譚
2.アイスエイジ ―無関心―
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ソノーザ家の屋敷に入ってすぐに目にしたのは、ソノーザ家の母と娘達のやり取りのことだった。
「お姉さま、そのお菓子美味しそう! ちょうだい!」
「サエナリア、お姉さんなんだから可愛いワカナに全部譲ってあげなさい」
一見すると、どこにでもある姉妹のやり取りに見えるが姉は悲しそうだ。それに全部はないだろう。何かおかしい。この母親は言葉が足りない。いや、この場合は言葉に無駄があるのか? この時はそう思っていた。
◇
その翌日。違和感が濃くなる。
「お姉さま、そのドレス奇麗! ちょうだい!」
「サエナリア、今脱いで可愛いワカナに譲ってあげなさい」
え? 屋敷の中とは言え、ここで脱ぐの? 何言ってんの? 姉も素直に脱いでるけど涙ぐんでない? おかしいんだけど……。
◇
そして長女の誕生日。
「お姉さま、そのプレゼント欲しい!」
「サエナリア、可愛いワカナに譲ってあげなさい」
は? 誕生日プレゼントでしょ? 何言ってんのこの人ら!? ていうか、姉の方も諦めた顔して妹に渡してるし! どうなってんのよ一体!?
見習いゆえに困惑する私を見た先輩侍女が呆れたように説明してくれた。
「あれがあの一家の日常よ。奥方様は姉のサエナリアお嬢様を蔑ろにして、妹のワカナお嬢様ばかり可愛がるのよ」
「ええ!? あれが日常的に起こっているのですか!?」
どういうことだろう。二人は腹違いの異母姉妹なのだろうか。だが、そんな情報は無かったはず……?
「戸惑うのも無理ないわ。サエナリアお嬢様は髪の色も瞳の色も旦那様に似て可愛くないと奥方様は思ってるの。でもワカナお嬢様は美しい奥方様に似てるでしょ」
「は、はい、言われてみれば……」
え? それってまさか……そんな理由? 仮にも自分が産んだ子でしょう?
「奥方様はね、自分に似てくれた娘の方が可愛くてしかたがないのよ。愛して結婚したわけでもない旦那様に似た子供よりもね」
「そ、そんな……」
う、うわぁ。なんてひどい親子関係なんだろう。これって、最終的に破滅しない?
その後も、他の侍女や執事が彼女たちの家庭事情に見てみぬふりをする中、私だけは目を背けないようにしていた。元々、復讐が目的だったため、この姉妹の関係を利用できないか観察してやろうと思ったのだ。
……見れば見るほど姉のサエナリアが不憫でならなくなる。お菓子もドレスもプレゼントも奪われる姿が悲しく見える。かつて財産を奪われた私達コキア一家のように。
だからこそ私は思い切った行動に出た。
「奥様、どうか私をサエナリアお嬢様の専属使用人にしてください」
「いいわ、貴女が今日からあの子の専属よ」
……なんて女だろう。私の目を見ないで即答した。おい、目を見て言えよ! 失礼だろ! それに適当に決めるなよ! 都合がいいけども腹が立つ!
こうして私はサエナリアの専属になった。当のサエナリアに挨拶すると、彼女は緊張して私に丁寧に礼儀正しく挨拶を返してくれる。顔は他の貴族令嬢より地味だけど、平民側からしてみれば十分可愛い。それに使用人の私に礼儀正しくするなんて、いい子じゃない。とてもあの夫婦の娘とは思えない。どうしてこんないい子が関心を持たれないんだろう?
その時に、ワカナがやってきた。何をするかと思えばふざけたことを言い放った。
「何よ。お姉さまの新しい専属って地味な女だったのね。ていうか、目が冷たいんだけどあっち向いててくれる?」
悪かったな変装して地味になってて! 冷たい目で! だったら来るなよ!
ワカナが去っていったのを見計らってか、サエナリアは私に妹がごめんなさいと言ってくれた。……何この子、凄くいい子なんですけど。こんないい子を私は自分の復讐のために利用するというの? 彼女だけは見逃していいような気がしないでもない。
そう思ってしまった私は、礼儀正しくて心優しい彼女に臣下の礼を取った。
「サエナリアお嬢様、これからはこの私がずっと味方になると誓います。どうか、これからよろしくお願いします」
私はサエナリア、いえ、サエナリアお嬢様に仕えると誓った。何故なら、こんな不遇な目に遭っているのに心清らかな彼女に心を奪われたからだ。ソノーザ家に仕返しするという私の復讐は後回しになった。彼女と私を幸せにする方が優先だと思うようになったのだ。
「お姉さま、そのお菓子美味しそう! ちょうだい!」
「サエナリア、お姉さんなんだから可愛いワカナに全部譲ってあげなさい」
一見すると、どこにでもある姉妹のやり取りに見えるが姉は悲しそうだ。それに全部はないだろう。何かおかしい。この母親は言葉が足りない。いや、この場合は言葉に無駄があるのか? この時はそう思っていた。
◇
その翌日。違和感が濃くなる。
「お姉さま、そのドレス奇麗! ちょうだい!」
「サエナリア、今脱いで可愛いワカナに譲ってあげなさい」
え? 屋敷の中とは言え、ここで脱ぐの? 何言ってんの? 姉も素直に脱いでるけど涙ぐんでない? おかしいんだけど……。
◇
そして長女の誕生日。
「お姉さま、そのプレゼント欲しい!」
「サエナリア、可愛いワカナに譲ってあげなさい」
は? 誕生日プレゼントでしょ? 何言ってんのこの人ら!? ていうか、姉の方も諦めた顔して妹に渡してるし! どうなってんのよ一体!?
見習いゆえに困惑する私を見た先輩侍女が呆れたように説明してくれた。
「あれがあの一家の日常よ。奥方様は姉のサエナリアお嬢様を蔑ろにして、妹のワカナお嬢様ばかり可愛がるのよ」
「ええ!? あれが日常的に起こっているのですか!?」
どういうことだろう。二人は腹違いの異母姉妹なのだろうか。だが、そんな情報は無かったはず……?
「戸惑うのも無理ないわ。サエナリアお嬢様は髪の色も瞳の色も旦那様に似て可愛くないと奥方様は思ってるの。でもワカナお嬢様は美しい奥方様に似てるでしょ」
「は、はい、言われてみれば……」
え? それってまさか……そんな理由? 仮にも自分が産んだ子でしょう?
「奥方様はね、自分に似てくれた娘の方が可愛くてしかたがないのよ。愛して結婚したわけでもない旦那様に似た子供よりもね」
「そ、そんな……」
う、うわぁ。なんてひどい親子関係なんだろう。これって、最終的に破滅しない?
その後も、他の侍女や執事が彼女たちの家庭事情に見てみぬふりをする中、私だけは目を背けないようにしていた。元々、復讐が目的だったため、この姉妹の関係を利用できないか観察してやろうと思ったのだ。
……見れば見るほど姉のサエナリアが不憫でならなくなる。お菓子もドレスもプレゼントも奪われる姿が悲しく見える。かつて財産を奪われた私達コキア一家のように。
だからこそ私は思い切った行動に出た。
「奥様、どうか私をサエナリアお嬢様の専属使用人にしてください」
「いいわ、貴女が今日からあの子の専属よ」
……なんて女だろう。私の目を見ないで即答した。おい、目を見て言えよ! 失礼だろ! それに適当に決めるなよ! 都合がいいけども腹が立つ!
こうして私はサエナリアの専属になった。当のサエナリアに挨拶すると、彼女は緊張して私に丁寧に礼儀正しく挨拶を返してくれる。顔は他の貴族令嬢より地味だけど、平民側からしてみれば十分可愛い。それに使用人の私に礼儀正しくするなんて、いい子じゃない。とてもあの夫婦の娘とは思えない。どうしてこんないい子が関心を持たれないんだろう?
その時に、ワカナがやってきた。何をするかと思えばふざけたことを言い放った。
「何よ。お姉さまの新しい専属って地味な女だったのね。ていうか、目が冷たいんだけどあっち向いててくれる?」
悪かったな変装して地味になってて! 冷たい目で! だったら来るなよ!
ワカナが去っていったのを見計らってか、サエナリアは私に妹がごめんなさいと言ってくれた。……何この子、凄くいい子なんですけど。こんないい子を私は自分の復讐のために利用するというの? 彼女だけは見逃していいような気がしないでもない。
そう思ってしまった私は、礼儀正しくて心優しい彼女に臣下の礼を取った。
「サエナリアお嬢様、これからはこの私がずっと味方になると誓います。どうか、これからよろしくお願いします」
私はサエナリア、いえ、サエナリアお嬢様に仕えると誓った。何故なら、こんな不遇な目に遭っているのに心清らかな彼女に心を奪われたからだ。ソノーザ家に仕返しするという私の復讐は後回しになった。彼女と私を幸せにする方が優先だと思うようになったのだ。
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