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本編
20.メタル ―精神力―
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ベーリュ・ヴァン・ソノーザに命じられて、使用人たちはやっとワカナを部屋に閉じ込めることができたようですね。かなり抵抗されたのでしょう。その顔はとても疲れ切っていました。
「遂に閉じ込められたか。いつかこんな日が来るとは思ったよ」
「それが実の父親にとはな、ざまあないな」
「上のお嬢様、確かサエナリアお嬢様だったかな? 彼女もこの事実を知ればお喜びになるだろうな。今いないのが残念だ。きっと、ざまあって思うだろうに」
……聞き捨てなりませんね。この私が注意して差し上げましょう。
「サエナリアお嬢様はそんなことを思うお方ではありませんよ」
「ん? お前は……確か、サエナリアお嬢様の専属の……」
ほう。私のことは知っているようですね。
「はい。サエナリアお嬢様の専属侍女ミルナです。お言葉ですが、サエナリアお嬢様の人柄からして、実の妹が酷い目に遭えば嘆くと思われます。あのような酷い妹だったとしても、憎むことはできないお方です。誠に残念ながら……」
誠に残念ながら、あの愚妹と愚かな両親に天罰が下される様をお嬢様と共に見ることは叶わないのです。
「そ、そうか。悪かったな、確かに良く知らないのに滅多のことを言うもんじゃねえな」
「サエナリアお嬢様はそんなにいい人なのか。俺達もそっちの専属がよかったな」
何を言ってるのです? 貴方方がお嬢様の使用人にふさわしくないでしょう。そこまでは口にしませんが。
「何言ってんだ。サエナリアお嬢様はあの女と対極にいるってんなら、顔が売りの俺達じゃ専属になれないだろ」
「はは、言えてるな」
彼らはあまり頭の方は良くなさそうです。まあ、彼らは妹の方に雇われた使用人にすぎませんしね
「皆さん、旦那様はこれからサエナリアお嬢様の捜索を始めるそうです。今一度下の階の広間に戻ってください」
「! やっぱりそうなるか。はぁ~、忙しくなるぜ」
「ちっ、これは母親の方のせいだな」
「いや、父親もそうだろ。育児放棄してたんだからな」
この場合は両親と妹のせいなのですよ。何度そう思ったか分かりませんが。
「何て口の悪い方々何でしょう……サエナリアお嬢様、貴女様の愚妹は人を見る目が腐っています。貴女様とは違って」
私の独り言はサエナリアお嬢様の部屋言向けられて口にする。もう二度とこの部屋には戻ってこないお嬢様。こんな部屋でもお嬢様は名残惜しそうにしていましたが、私もしばらくお嬢様に会えないと思うとその気持ちが分かる気がしますね。
◇
何があったのか。サエナリアお嬢様を探すと言って出て行ったベーリュが戻ってきました。しかもかなり焦っています。お嬢様が見つかったわけではなさそうですね。
「旦那様、サエナリアお嬢様を探しに行っていたのでは?」
気になって何があったのか聞いてみたら、吐き捨てるように答えてきました。
「王太子殿下がこちらにお越しになるのだ。その対応が先だ!」
おいおい。ここでカーズクズ王子のご登場かよ。案外、早く行動に出ましたね。
……いいタイミングです。これは利用するに限りますね。次女のバカにバカ王子が来たと分かるように誘導してやりましょう。
◇
まずは、ワカナの部屋の近くで王太子が来たことをほのめかしてやりましょう。大げさに。
「王太子殿下がいらしたんです! おもてなしの準備を!」
「客間は片付けたか!? 急いでくれ! 王太子が来るんだぞ!」
「王太子様が何でこんな時に来るのよ~!」
すると、どうなります?
「嘘でしょ!? 王太子が来ているというの? チャンスだわ!」
ほら、見事に引っ掛かった。何しろ、お嬢様から婚約者の立場を奪うという野心を抱いていましたからね。食いつくと思ってました。今、ベーリュとカーズは話し合っているので、そこに割り込んでもらってソノーザ公爵家の印象を悪くしてもらいましょう。ますは、同情したふりしてドアを開けるタイミングを、
「とりゃあぁぁぁーっ!」
は……?
「うぎゃあ!? ……うううう………い、痛い、痛いよお………」
え?
「くううう………なら、物で壊してやる!」
まさか?
「うおおおおぉぉぉっ!」
マジか?
「お、重………椅子って、こんなに重い物なの? あーもう! どうすればいいのよー!」
マジか。力づくでこじ開けようとしてるの? ほんとに貴族令嬢からはみ出してますよあの馬鹿は。マジでドアを突き破りそうな勢いなので、もう少し時間をおいてみましょう。
……ん? あの馬鹿な奥様、ちょっと目を離したすきに何してんの?
「やったー! ありがとうお母様!(チョロい!)」
うわあ。バカ娘を解放しちゃったよ、あの親バカは。本当に何やったんのよ。
「ワ、ワカナ? トイレはそっちじゃ……はっ!?」
しかも、肝心のワカナの笑顔は見たこともないほど悪そうな顔をしてるし。唇の端が限界まで吊り上がり、目はギラギラして見える。正直怖いほど悪役令嬢っぽいし。
「あ、あの子、これ以上やらかさないわよね!? 誰か、ワカナを連れ戻して!」
いやー、やらかしますよ奥様。相当ヤバい精神力を持ち主のご様子ですからね。
「遂に閉じ込められたか。いつかこんな日が来るとは思ったよ」
「それが実の父親にとはな、ざまあないな」
「上のお嬢様、確かサエナリアお嬢様だったかな? 彼女もこの事実を知ればお喜びになるだろうな。今いないのが残念だ。きっと、ざまあって思うだろうに」
……聞き捨てなりませんね。この私が注意して差し上げましょう。
「サエナリアお嬢様はそんなことを思うお方ではありませんよ」
「ん? お前は……確か、サエナリアお嬢様の専属の……」
ほう。私のことは知っているようですね。
「はい。サエナリアお嬢様の専属侍女ミルナです。お言葉ですが、サエナリアお嬢様の人柄からして、実の妹が酷い目に遭えば嘆くと思われます。あのような酷い妹だったとしても、憎むことはできないお方です。誠に残念ながら……」
誠に残念ながら、あの愚妹と愚かな両親に天罰が下される様をお嬢様と共に見ることは叶わないのです。
「そ、そうか。悪かったな、確かに良く知らないのに滅多のことを言うもんじゃねえな」
「サエナリアお嬢様はそんなにいい人なのか。俺達もそっちの専属がよかったな」
何を言ってるのです? 貴方方がお嬢様の使用人にふさわしくないでしょう。そこまでは口にしませんが。
「何言ってんだ。サエナリアお嬢様はあの女と対極にいるってんなら、顔が売りの俺達じゃ専属になれないだろ」
「はは、言えてるな」
彼らはあまり頭の方は良くなさそうです。まあ、彼らは妹の方に雇われた使用人にすぎませんしね
「皆さん、旦那様はこれからサエナリアお嬢様の捜索を始めるそうです。今一度下の階の広間に戻ってください」
「! やっぱりそうなるか。はぁ~、忙しくなるぜ」
「ちっ、これは母親の方のせいだな」
「いや、父親もそうだろ。育児放棄してたんだからな」
この場合は両親と妹のせいなのですよ。何度そう思ったか分かりませんが。
「何て口の悪い方々何でしょう……サエナリアお嬢様、貴女様の愚妹は人を見る目が腐っています。貴女様とは違って」
私の独り言はサエナリアお嬢様の部屋言向けられて口にする。もう二度とこの部屋には戻ってこないお嬢様。こんな部屋でもお嬢様は名残惜しそうにしていましたが、私もしばらくお嬢様に会えないと思うとその気持ちが分かる気がしますね。
◇
何があったのか。サエナリアお嬢様を探すと言って出て行ったベーリュが戻ってきました。しかもかなり焦っています。お嬢様が見つかったわけではなさそうですね。
「旦那様、サエナリアお嬢様を探しに行っていたのでは?」
気になって何があったのか聞いてみたら、吐き捨てるように答えてきました。
「王太子殿下がこちらにお越しになるのだ。その対応が先だ!」
おいおい。ここでカーズクズ王子のご登場かよ。案外、早く行動に出ましたね。
……いいタイミングです。これは利用するに限りますね。次女のバカにバカ王子が来たと分かるように誘導してやりましょう。
◇
まずは、ワカナの部屋の近くで王太子が来たことをほのめかしてやりましょう。大げさに。
「王太子殿下がいらしたんです! おもてなしの準備を!」
「客間は片付けたか!? 急いでくれ! 王太子が来るんだぞ!」
「王太子様が何でこんな時に来るのよ~!」
すると、どうなります?
「嘘でしょ!? 王太子が来ているというの? チャンスだわ!」
ほら、見事に引っ掛かった。何しろ、お嬢様から婚約者の立場を奪うという野心を抱いていましたからね。食いつくと思ってました。今、ベーリュとカーズは話し合っているので、そこに割り込んでもらってソノーザ公爵家の印象を悪くしてもらいましょう。ますは、同情したふりしてドアを開けるタイミングを、
「とりゃあぁぁぁーっ!」
は……?
「うぎゃあ!? ……うううう………い、痛い、痛いよお………」
え?
「くううう………なら、物で壊してやる!」
まさか?
「うおおおおぉぉぉっ!」
マジか?
「お、重………椅子って、こんなに重い物なの? あーもう! どうすればいいのよー!」
マジか。力づくでこじ開けようとしてるの? ほんとに貴族令嬢からはみ出してますよあの馬鹿は。マジでドアを突き破りそうな勢いなので、もう少し時間をおいてみましょう。
……ん? あの馬鹿な奥様、ちょっと目を離したすきに何してんの?
「やったー! ありがとうお母様!(チョロい!)」
うわあ。バカ娘を解放しちゃったよ、あの親バカは。本当に何やったんのよ。
「ワ、ワカナ? トイレはそっちじゃ……はっ!?」
しかも、肝心のワカナの笑顔は見たこともないほど悪そうな顔をしてるし。唇の端が限界まで吊り上がり、目はギラギラして見える。正直怖いほど悪役令嬢っぽいし。
「あ、あの子、これ以上やらかさないわよね!? 誰か、ワカナを連れ戻して!」
いやー、やらかしますよ奥様。相当ヤバい精神力を持ち主のご様子ですからね。
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