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第16話 姉に劣る
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マキナは頭を抱える。それは決してわざとらしく振る舞っているのではなく本心から苦悩しているのだ。だが、そんな姿を見せられてもカリブラはどこか気楽に考えていた。
「母上、そんなに悲観することないでしょう。僕は薄情なアスーナの代わりにあいつの妹のソルティアと婚約したんですから。ほら、ソルティアも母上に挨拶しろよ」
「そ、ソルティアです……はじめまして……!」
ソルティアが緊張気味にぎこちなく挨拶するが、マキナはその態度だけでソルティアに対する評価を決めた。アスーナとはまったく逆の評価を。
「何が代わりですか……アスーナ嬢に遥かに劣る令嬢を婚約者にして何が良いというのです!?」
「え? そんなに変わらないと思いますけど?」
「酷いです! 私はお姉様よりも顔は可愛いしスタイルもいいじゃないですか!」
ソルティアは緊張感を脱し、むっとした顔で反発した。姉のアスーナよりも自分のほうが顔とスタイルが勝っていると自負しているために『遥かに劣る』という発言が許せなかったのだ。
ただ、マキナの言っているのはそういうことではない。
「可愛さやスタイルの問題ではありません。私に対する態度に気品も礼節も及第点からほど遠いのです。令嬢が格上の貴族に対して挨拶するのに少し頭を下げるだけといい、今みたいに少し言われただけですぐ感情的になるなんて見苦しい。本当にアスーナ嬢の妹かすら怪しいものです」
「なっ……そんなの……!」
「大方、姉とは逆に遊んでばかりで甘やかされていたのでしょう。顔とスタイルを誇る様子からして、見るからに我儘そうな顔ですし」
「……っ!」
ソルティアは唇を噛む。反論したい気分だが、確かに彼女は普段から勉学を怠けて我儘に振る舞っていた。そこまで事実を言い当てられればマキナに反論できそうもない。
「そもそも貴女は以前私に会ったことがあるのに『はじめまして』はおかしいでしょう」
「ええ!? そうなのですか!?」
「以前私の方から伯爵家の屋敷に伺った時に顔を見せたのを忘れたのですか!? この耳で私は貴女の名前も聞いていましたのよ!」
「そ、そんなの覚えておりませんわ! だから仕方がないではありませんか……」
「何が仕方がないのですか……。はぁ、最低限の教育もできていないのですね。それでよくもまあ貴族令嬢でいられるものですね」
「うう……」
挙げ句には、屈辱的な苦言を浴びせられるしまつ。ソルティアは怒りに身を任せて喚きたいところであったが、マキナは侯爵夫人というはるか格上の女性である。そういう類の相手にはとても強気に出れないし出るわけにもいかない。それくらいはソルティアにもわかっていた。
(悔しいけど……カリブラ様と婚約できるチャンスだし……何より前みたいな失敗はもう嫌だし……)
以前、似たような状況で喚いて後悔した事があったのだ。格上の貴族を怒らせたことで家族全員に叱られたという苦い思い出がソルティアにあった。流石に同じ失敗だけはしたくなかったわけだ。
「母上、そんなに悲観することないでしょう。僕は薄情なアスーナの代わりにあいつの妹のソルティアと婚約したんですから。ほら、ソルティアも母上に挨拶しろよ」
「そ、ソルティアです……はじめまして……!」
ソルティアが緊張気味にぎこちなく挨拶するが、マキナはその態度だけでソルティアに対する評価を決めた。アスーナとはまったく逆の評価を。
「何が代わりですか……アスーナ嬢に遥かに劣る令嬢を婚約者にして何が良いというのです!?」
「え? そんなに変わらないと思いますけど?」
「酷いです! 私はお姉様よりも顔は可愛いしスタイルもいいじゃないですか!」
ソルティアは緊張感を脱し、むっとした顔で反発した。姉のアスーナよりも自分のほうが顔とスタイルが勝っていると自負しているために『遥かに劣る』という発言が許せなかったのだ。
ただ、マキナの言っているのはそういうことではない。
「可愛さやスタイルの問題ではありません。私に対する態度に気品も礼節も及第点からほど遠いのです。令嬢が格上の貴族に対して挨拶するのに少し頭を下げるだけといい、今みたいに少し言われただけですぐ感情的になるなんて見苦しい。本当にアスーナ嬢の妹かすら怪しいものです」
「なっ……そんなの……!」
「大方、姉とは逆に遊んでばかりで甘やかされていたのでしょう。顔とスタイルを誇る様子からして、見るからに我儘そうな顔ですし」
「……っ!」
ソルティアは唇を噛む。反論したい気分だが、確かに彼女は普段から勉学を怠けて我儘に振る舞っていた。そこまで事実を言い当てられればマキナに反論できそうもない。
「そもそも貴女は以前私に会ったことがあるのに『はじめまして』はおかしいでしょう」
「ええ!? そうなのですか!?」
「以前私の方から伯爵家の屋敷に伺った時に顔を見せたのを忘れたのですか!? この耳で私は貴女の名前も聞いていましたのよ!」
「そ、そんなの覚えておりませんわ! だから仕方がないではありませんか……」
「何が仕方がないのですか……。はぁ、最低限の教育もできていないのですね。それでよくもまあ貴族令嬢でいられるものですね」
「うう……」
挙げ句には、屈辱的な苦言を浴びせられるしまつ。ソルティアは怒りに身を任せて喚きたいところであったが、マキナは侯爵夫人というはるか格上の女性である。そういう類の相手にはとても強気に出れないし出るわけにもいかない。それくらいはソルティアにもわかっていた。
(悔しいけど……カリブラ様と婚約できるチャンスだし……何より前みたいな失敗はもう嫌だし……)
以前、似たような状況で喚いて後悔した事があったのだ。格上の貴族を怒らせたことで家族全員に叱られたという苦い思い出がソルティアにあった。流石に同じ失敗だけはしたくなかったわけだ。
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