高校男子デビュー!

いちみりヒビキ

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22 真実(2) ~アオイ~

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次の日の学校。
昇降口でリュウジを見つけると、オレはさっそく例の話を持ちかけた。

「なぁ、リュウジ」
「どうした? アオイ」

「ちょっと相談があるんだ。帰りにいいか?」
「もちろん!」

リュウジは、にっこりと笑って快諾した。

オレとリュウジは、取り留めもない話をしながら教室へと入っていく。

さて誰があんな噂を立てたのだろうか?

さり気なく教室を見回す。
今まで全く気にしていなかったけど、女子全員が敵に見えてくる。

うちのクラスとは限らない。
しかし、名前まで知っているとなるとやはりうちのクラスの誰かが怪しい。

まさか、美映留女子の中等部からこの学校に入学してきた人間がオレ以外にいるのだろうか?
そうだったら、オレの顔を知っていてもおかしくない。

オレが考え込んでいると、リュウジが耳元で囁いた。

「なぁ、アオイ。あれ、穿いてきてくれた?」
「あれって?」

リュウジは、オレの頬をツンツンと突く。

「トボケるなよ。黒いレースの……」

リュウジはオレのパンツの事を言っているのだ。
オレは体育が無い時は、レディースのショーツを穿くのだが、最近はリュウジがしつこくリクエストしてくるのだ。

そして、チャンスがあればズボンの中をのぞき込んだり、いやらしく手を突っ込んで触ったりしてくる。
パンツの何処にそんな萌えるのよく分からないが、リュウジが言うには、

「お前、わかっちゃいないな! パンティは男のロマンだろ?」

なのだそうだ。
オレは、「まぁ、確かにな……」と、知っている風を装うが、何がロマンなのか理解に苦しむ。

という事で、リュウジが喜ぶのなら、とオレは仕方なくリクエスト通りの物を身につけるのだ。
まったく、オレはリュウジに甘いぜ。

「しょうがないなぁ、リュウジはさ……ちゃんと穿いてきたって」

オレは、リュウジを睨みながら答えた。
リュウジは、目をキラキラしてパッと顔を明るくさせる。

「よっしゃ!」

リュウジは、大声を上げた。
教室のクラスメイト達は、一斉にオレ達を注目する。

「バカ! リュウジ!」
「ごめん、ごめん」

頭に手をやりペロっと舌を出した。

「まったく……リュウジはエロなんだから……ふふふ」

オレはそうぼやくのだが、リュウジの嬉しそうな顔を見ると、自然とオレも嬉しくなってしまうのだ。



さて、放課後。
二人きりになると、まずはキス。
そして、最近はエスカレートしてセックス寸前までの行為をする様になっていた。

この日は、リュウジはオレのケツを思う存分揉んだ後、「さあ、黒いレースのパンティを拝ませてもらうぜ」とオレのズボンを脱がそうとした所でストップをかけた。

「アオイ、どうしたんだよ! ここでお預けとか無いだろ!」
「ほら、朝言っただろ? 相談に乗ってくれよ」

リュウジは、手をポンと叩いた。

「そうだったな。よし、話してみろよ!」
「それがさ……」

オレは、話し始めた。



密かにオレが女子達の中で噂になっている。
その事実をアカリの情報と自分が独自に知り得た情報を併せて話した。
リュウジは、うんうん、と頷きながら聞いてくれた。

リュウジは、最後まで聞くと腕組みをしながら言った。

「へぇ。お前がね。女の子みたいにか……」
「酷いと思わない?」

オレがそう言うと、リュウジは何でもないかのように答えた。

「そっか?」

オレは自分の耳を疑った。

そっか?って何?
酷くないって事?

リュウジの顔をジッと見つめる。
冗談で言っているわけではなさそうだ。

「だって、男なのにだぞ?」
「いいじゃないか。実際、女より可愛いんだから」

「おい、リュウジ。冗談が過ぎるぞ」

オレは、リュウジを睨む。
リュウジは、まぁまぁ、とオレをなだめる。

「アオイ、まぁ、落ち着けって。俺が思うに、からかったり馬鹿にしている訳じゃないと思うぞ」
「ん? どういう事だ?」

オレの疑問にリュウジは答える。

「思い当たる節がある。きっと、アオイは知らないかもだけど……」
「何だ?」

「お前さ、学校の可愛い女子ランキングで、上位に入っているんだよ」
「へ? な、何だ。それ?」

オレは、驚いて声を上げた。

「ほら、よくあるだろ? 学校の裏サイト的なやつ。俺も最近知ったんだけどさ……」

つまり人気投票のようなものらしい。
実態は、鍵付きアカウントで管理されていて、流石に写真掲載とかまではなく、名前は伏せ字扱い。
しかし、いくら管理されていると言っても、そんなのは見ようと思えば何とでもなるし、内容が口コミで広がるのは必至。

「多分な、そこから噂が広がったんじゃないか?」

リュウジは、顎に手を当てて言った。
なるほど、それで他校の生徒が知っていたって事か。

って、オレは重要なポイントを聞き逃していた。

「ちょっと待て、リュウジ。今、女子ランキングって言ったか?」
「ああ、言った」

「オレが女子ランキングにだと!? 何の冗談だよ」

男が女子のランキングに載るってどう考えてもおかしい。
嫌がらせか?
もしそうじゃなきゃ、みんなオレを女として見ているって事じゃないか。

オレはみるみるうちに頭に血が上る。
周りの奴らは、密かにオレを女扱いしてたって事だ。
屈辱的だし、そんなの許せない。

「オレは男だし女じゃない! くそっ! 腹が立つ!」

オレは猛烈に怒り出す。
リュウジは、そっとオレの肩に手をやった。
そして、同意するように言った。

「俺も腹を立てている」
「リュウジ……」

リュウジも険しい表情を浮かべた。
オレは、リュウジのその表情を見て、救いを得たような気がした。

さすが、オレの親友だ。
ちゃんとオレの気持ちを分かってくれている。
持つべきものは、ってやつだ。

オレは、ホッと安心して、気持ちが静まるのを感じた。
リュウジさえ分かっていてくれていればいいんだ。

リュウジは言った。

「勝手にアオイの事をランキングなんかに載せやがって……俺のアオイをよ。変な虫が寄ってきたらどうするよ。いっその事、俺達付き合っている事バラすか?」
「ん、ん、ん? リュウジは、一体何を怒っているんだ?」

オレは混乱した。
リュウジが何を言っているのか、理解できない。

「何って……俺のアオイを勝手にさ……」
「いやいや、そこじゃなくてさ。ほら、オレが女子ランキングとかさ、どう考えても変だろ?」

「まぁ、変といえば変だが、俺はさして驚かないけどな。だってアオイを可愛いって思う奴が多いって事だろ? 実際、お前は一番可愛い。一位になっていてもおかしくない。って思うぞ」

オレは耳を疑った。
リュウジは、オレが女扱いをされたことを怒っているのではないのだ。

何に怒っているのはさて置き、ちっともオレが怒っていることを理解していない。
オレは、まさかと思い、確かめるようにリュウジに尋ねた。

「ちょっと、リュウジ、いいか? オレって、リュウジの目にはに男じゃなくて女のような存在に映っているのか?」
「ん? そうだな。まぁ、可愛さで言うならそうだな。うん。女以上だな」

嫌な予感が当たった。
こいつは、オレの気持ちをまったく理解していないだけでなく、オレを女として評価して言っているのだ。
オレは、あまりの事に言葉を失った。

「な、な、な」
「どうしたんだ? 驚いた顔をして」

息が苦しい。
血圧が上がって、少しふらふらする。
いや、貧血か?
オレは、息を整えた。そして、冷静にリュウジに問う。

「リュウジ……お前は、最初からそういう目でオレを見ていたのか?」
「おいおい、何で怒っているんだ? 別に可愛くてもいいじゃないか? それより、やっぱり、俺達付き合っているの公表しようぜ。そうしないと、アオイに告白する勘違い野郎が増えちまう……」

もう、冷静ではいられない。
いられる訳がない。

オレは完全にキレた。
叫ぶように言う。

「良くない! オレは男だ。男らしいし、女とは訳が違う! 可愛いなんて知るか!」
「ちょ、ちょっと、落ち着けって! 急にどうした? 褒め言葉と思っていいんだって!」

「違う、違う、そういう事じゃない!」
「いいから、落ち着けよ」

オレは、リュウジに掴みかかり暴れる。
でも、リュウジはすぐにオレの手首をつかみ簡単に押さえつけてしまう。

悔しい……。
だめだ、力ではリュウジに敵うわけがない。
オレは泣きながらリュウジに言い放った。

「離せ! 離せ! リュウジ。お前がそういう風にオレを見ていたって事がよく分かったよ。せっかく、親友だって思っていたのに……くそっ」
「へ!?」

リュウジは呆気にとられ、手の力をスッと抜いた。
オレは、腕を引き抜き、すぐにカバンを手にした。
そして、リュウジを一瞥すると、一言言った。

「帰る!」

オレは、教室の外に駆け出していた。



うっ……うう。

帰り道の道中、ずっと涙が溢れ出て止まらなかった。

オレだけが上手くいっていたと思っていた。
ちゃんと男になれていたって。

でも、リュウジも含めて周り人間は、依然としてオレの事を女として見ていたのだ。
それが分かってしまった。

いや、周りの奴はどうでもいい。
せめて、リュウジは……。
リュウジだけは、オレの事を分かってくれていると思っていた。

しかし、リュウジは俺の事を、自分好みの可愛い女に見立てていたのだ。
『付き合う』っていうのも、リュウジから見れば、結局は男と女のカップルって意味だ。
今思えば、『親友』というのも、付き合うため方便だったのかもしれない。

心を通わせる男同士の親友。
それが幻想のように崩れ去る。

ああ、オレは何を勘違いしてたんだ。

立派な男になる。
その一歩を着実に歩み出した。
勝手に一人で上手くいっていたと思っていた自分が恥ずかしいし、悔しい。


これじゃ、天国の父さんに顔向け出来ないじゃないか……。

オレは泣きながら玄関の扉を叩いた。
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