美少女フィギュアのパンツを見るのが何より好きな俺は、理想のヒロインのパンツ見たさにラノベ作家になることにした。

あめの みかな

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第48話「とりにくチキン」③ 加筆修正版

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 我が家のインフルエンサー様のおかげで、すっかり顔出しなしの写真が有名になってしまった珠莉だったが、

「ま、いっか」

 と、やけにあっさりした顔でそう言うと、俺と亜美の顔を交互に見てニヤニヤしだした。
 まとめサイトまで作られてしまった恥ずかしさで、頭のネジがさらに数本ぶっ飛んでしまったのだろうか。

「出かけに亜美が慌ててスマホケースをバッグに入れてたし、
『おそろいのスマホケースにしようぜ、亜美!』
『うん、日永くん、大好き!(はーと)』
 みたいな、らぶらぶなやりとりがあったのは想像できたから、わたしの写真なんかどうでもいいや。
 いつもいつも、ごちそうさまです」

 何もごちそうしてねぇ。
 ほら見ろ、亜美さんがまた顔を真っ赤にして、滝のような汗をかいてるじゃねーか。

「いじめたくなるのはわかるけど、あんまりやりすぎるなよ」

「ほほぅ! やはり、日永氏も亜美殿をいじめたくなりますか!?」

 日永氏はやめろ。そんなこと言ってるヤツ、アニメか乗車男のドラマや映画でしか見たことねーから。


 珠莉は俺たちをからかうと満足したのか、それとも気を遣ってくれたのか、まだ昼休みはだいぶ残っているのに部室を出ていった。

 ふたりきりになると、

「これ、朝頼まれたスマホケース」

 亜美は俺にスマホケースを手渡してくれた。

「あ、ありがとな」

 俺はそれを受け取ると、早速スマホにつけさせてもらった。

「わかってるかもだけど、カメラを使うときは、スマホを上にスライドさせればいいから。
 あと、一度使ったものだから、スマホを固定する両面テープが弱ってるかもしれないわ。すぐに外れたり、ずれたりするようなら、両面テープを貼り直してみて。
 直につけるより、透明なケースを買って、それを付けてから付けた方がいいかも」

 彼女は恥ずかしそうにしながら、丁寧に説明してくれた。

 小さな女の子が広げた両の手のひらから、黄金の蝶が産まれていき、無数の蝶の群れが夜空を舞う、その特徴的なデザインを改めて見て、

「これ、ピノアが編み出したダークマターの浄化方法に似てるな」

 と、俺は言った。
 ゴールデン・バタフライ・エフェクトというその魔法は、ピノアがそんな風にして手のひらから産み出した黄金の蝶の群れが、エーテルに取り憑きダークマターへと変化させた放射性物質だけを喰らい、本来あるべき形のエーテルへと浄化するというものだった。

「それね、デザインしたの珠莉なんだ。あの子が高校の美術の時間に描いた絵。
 わたし、その絵がすごく好きで、あの子、ネットにある自分だけのTシャツとかスマホケースとかをプリントして作ってくれるサイトを使って、去年のわたしの誕生日にスマホケースにしてくれたの。
 ゴールデン・バタフライ・エフェクトはそのイラストを見て思いついたんだ」

 それは本当に素敵な絵だった。
 そして、これから俺がしようとしている話にも繋がる絵でもあった。

「西日野はさ、気づいてるよな、たぶん」

 と、俺は言った。

「俺たちの夢がかなう前に、俺にははっきりとさせなきゃいけない問題があるってこと」

 彼女は頷いた。

「あなたが本当に好きなのは、わたしなのか、それともピノアなのかってことだよね」

 やっぱり気づいていた。
 気づいていない方がおかしいくらい、それは俺たちにとって一番重要な問題だった。

「前にも話したけど、あなたのピノアはもう、あなただけのヒロインじゃない。
 わたしの中にもピノアは生きてる」

「それを聞いたのは、初めて話したとき、コンビニの駐車場だったよな。
 まだ西日野が小説を書いてくれる前だったな」

「わたしは、あなたの中にいるピノアを、あなた以上に理解しようとした。
 じゃないと、あなたが望むピノアが登場する小説は書けなかったから」

「おかげで、最高にかわいかった。
 俺の理想のヒロインがただ小説に出てきただけじゃなかった。
 何倍も何十倍もかわいくなってた。
 俺にはいろんなアニメやゲームに何人も推しがいたけど、全部どうでもよくなるくらいに。
 たぶん、俺はピノア以上の推しに出会うことはこの先ないだろうな」

「最高の褒め言葉ね。
 でも、わたしにしてみたらそれは、わたしにとっての最強最悪の恋敵を、完全体どころか究極体にしてしまったようなものよね」

 その通りだった。
 俺の中にしかいなかったピノアは、はじめは人造人間を吸収するために未来からやってきたばかりのセノレのようなもので、人造人間を吸収する代わりに亜美の力を借り、パーフェクト・セノレならぬ、パーフェクト・ピノアともいうべき存在になっていた。

 それが第一部を読み終わったときの、俺の率直なピノアへの想いだった。

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