空想お仕事シリーズ・ボーイズサイド「僕は今日も人の死を笑いに行く」「死神のタナトーシス」「赤ワインとチーズとブロッコリーのトリアージュ」他

あめの みかな

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「ヴィランズサイドストーリー」 #58「アマツミカボシ」

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「誰かが中に入って操縦でもしてるのか? 安寿、あの甲冑のど真ん中に穴を空けてくれないか?」

「じゃあ、まずは僕たちが奴の足止めをするよ」

ーー飢(うや)かせ、ヒダルガミ。

ーー満ち足りた楽園に連れていってあげる。拐(かどわ)かせ、パイド・パイパー。

学と麻衣が立て続けにギフトを使った。

ふたりのギフトは「伝説の黒人侍」に膝をつかせ、その体には無数のネズミが覆い被さった。
ネズミたちは頭が良く、安寿が穴を空けやすいように、甲冑の胸から腹にかけて大きな円を作るように覆い被さっていた。

安寿はすぐに、そこに穴を空けた。
その穴の中には佳苗貴子が入っていた。

「伝説の黒人侍」は、このおかしな風景同様、ギフトによって作られたパワードスーツのようなものらしく、佳苗はそのパイロットのようだった。

「どうりで『伝説の黒人侍様』にしては、体が大きすぎるはずだ。小柄な女とはいえ、中に人が入って操縦してるんだからな」

佳苗が操られているということは、一目見ただけですぐにわかった。
彼女は生気がまるで感じられない目をしていたからだ。何の感情もなく、レバーのようなものをガチャガチャ操作したり、ペダルを何度も踏み込んだりしていた。

「佳苗さん、わたしがすぐに楽にしてあげるからね」

ーー来て、アマツミカボシ。

瑠璃は、要 雅雪を組紐にして奪ったそのギフトを使った。
葦原中国の平定の際、タケミカヅチやフツヌシですら従わせることの出来なかったという悪神の名を冠したそのギフトもまた、3メートルを超える姿を現し、その身体に瑠璃を取り込んだ。

「すごいね、これ。ハルクバスターみたい」

ーー感電殺拳、タケミカヅチ。

瑠璃はアマツミカボシの右手に雷を宿した拳で、佳苗貴子ごと「伝説の黒人侍」の体を貫いた。
決着はたった一撃、一瞬でついた。

「藤本花梨アンドールはどこ?」

腕を引き抜いた瑠璃は、藤本を探した。
僕たちも探したがどこにも見当たらなかった。

安寿は印鑰童子に童子切りの力を足して、上位レイヤーをすべて破壊していたし、「ファー・イースト・オブ・エデン」が使われた時、確かに彼女の声が聞こえていた。

「あの女狐が、一番欲しがってるものは何かしら……?」

アマツミカボシの拳の中で佳苗は言った。

「瑠璃さん、あなたのお陰で、何年も操り人形だったわたしの糸がようやく切れたみたい。今なら何でも教えてあげられそうだけど、あんまり時間がないかな……」

感電死していてもおかしくない黒焦げの体で、彼女は最後の力を振り絞っていた。

「梨沙ちゃんは今はどこ?」

学に問われた僕は、「僕たちの家だ」と答えた。
藤本がどうしても手に入れたいものは、彼女以外考えられなかった。彼女が持つ、上位次元から下位次元世界を書き換える力だ。

「でも、春夏冬梨沙は今は上位次元にいる。今のりさは、体はそのままだけど、春夏冬梨沙としての記憶を失い、6歳児くらいまで子ども返りしてる」

「そのことを藤本は?」

「知ってるよ。僕にりさを預けたのは彼女なんだ」

「だったら、大丈夫か……梨沙ちゃんは上位次元から自分の体をちゃんと見守ってるだろうし。『メタファー』を使ってるなら、あの子にとって僕たちの現実なんて虚構世界の出来事にしか過ぎないからね」

「あなたたち、藤本花梨アンドールという女を、少し甘く見すぎじゃないかしら……」

佳苗は今にも死んでしまいそうだった。

亜美は魔法少女姿のまま、

「この人をここで死なせたら、梨沙ちゃんを助けられなくなるかもしれない。助けるよ、いいよね? 学くん」

ステッキを彼女に向けた。

「りゅうこつ座のη(イータ)星だっけ……あの星の力、まだ残ってるの?」

「死んじゃった人を甦らせるほどの力はもうないけど、生きてる人だったら……」

助かる見込みすらないように思えた佳苗の体は、あっという間に再生していった。
亜美は恒星の活動を停止させ、その力を治癒や破壊に使える魔法少女のギフト「ステラ・ウィッチ」を持っているらしい。


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