37 / 123
第5章 第2話
しおりを挟む
「あのよくわからない映像がどうかしたの?」
アナスタシアの言葉に、
「やはり、よく理解してらっしゃらなかったのですね」
アンナは呆れた様子だった。
彼女からあの映像や4年前の出来事についての説明を簡単に受けたアナスタシアは、
「まぁ!まぁ!!まぁ!!!まぁ!!!!」
と、感嘆の声を漏らした。
どうやらふたりは本当に良い家柄の人達のようだ。
テレビやスマホなどを電力なしで一斉に起動させたエーテルの存在を知り、同じ県内の神喰村にある実家が所有するヘリコプターの迎えを近くの公園で待つつもりだということだった。
空に逃げ、空に留まり続けることで、アリステラが起こす災厄から逃れようと考えているようだった。
エレベーターが1階に着いたとき、
「世界を敵にまわしてでも愛する女性を守ろうとしただなんて、なんて素敵なお話ですの!!」
開くドアを前にアナスタシアは大きな瞳に涙をためて、ショウゴの手を取った。
「あの、着きました、よ? アナ……アナスタシア……さん?」
「アンナ! わたくし、こんな殿方とお付き合いしたいですわ!!」
「アナスタシア様、エレベーターが到着しましたよ」
「あ、あら、そう……残念ね」
アンナは一度開いたドアが閉じてしまわないように、開こうとするドアにもたれかかり、腕を組んでいた。怒っているように見えた。
「そ、それじゃあ、アナスタシアさん、アンナさん、失礼しますね」
ショウゴはいそいそとその場をあとにしようとした。同じマンションの階下の住人とはいえ、あまり関わってはいけない気がした。一言で言えば、変な人だった。
だが彼はその腕を、
「大和ショウゴさん」
再びアンナに名前を呼ばれ捕まれてしまった。
「どちらに行かれるおつもりか存じませんが、あなたを行かせるつもりは私はありません」
彼女は彼の腕に爪が食い込むほど強く掴んでいた。
「どうして? アンナ? どうして?
ショウゴさんはそのユワさんという方に瓜二つの女性の元へ向かうに違いありませんわ!
急いでらっしゃるのよ!! その手を離しなさい!!!」
アンナはアナスタシアに「できません」ときっぱりと断った。
「わたしの言うことが聞けないの!?」
「聞けません」
そして、「大和ショウゴさん」と三度、彼の名を呼んだ。
「あなたは、千のコスモの会をご存知ですね?」
それは、13年前に首相暗殺を企て、一条とタカミがそれを阻止したカルト教団の名前だったはずだ。
つい先ほど、その当時の首相が一体どんな人物であったのか、ショウゴとタカミは一条から聞かされたばかりだった。
随分タイムリーな話題だなと思った。
「ちょっと! アンナ!!
せっかくこんな素敵な殿方とお知り合いになれたのに、あなた一体何を言うつもり!?」
「こちらのお方は、戸籍上のご本名は朝倉麗音様。麗しい音と書いてレイン様とお読みします」
麗しい音、レイン、一年中雨が降り続けるこの街に、なんて相応しい名前だろうか。
だが、その苗字と名前にショウゴは聞き覚えがあった。つい先ほど聞いたばかりのような気さえした。
「アナスタシア様というお名前は、この世界を創造した劣悪で傲慢な神とは異なり、正しき千の宇宙(コスモ)を創造された善なる至高神(アイコーン)の化身であるレイン様のお父上、朝倉現人(あさくら あらひと)様から頂かれたコスモネーム」
やはりそうか、とショウゴは思った。
「あぁ、なんてこと! ひどいわ、アンナ!! ひどい! ひどい! ひどいひどい!!」
悲痛な声を上げて泣くアナスタシア=朝倉レインは、千のコスモの会の教祖にして、当時の首相暗殺を指示した死刑囚、朝倉現人の四女だった。
「それが、俺と何か関係があるんですか?」
ショウゴが平静を装おい答えると、レインの顔がぱぁっと開けた。
彼がそうしたのは、千のコスモの会についてもまた、小久保ハルミや千年細胞についてと同じで、首相暗殺テロ未遂事件が起きた当時、彼はまだ幼く、よくは知らなかったからだ。
それに、彼と共に暮らすタカミが、一条と共に千のコスモの会による首相暗殺テロを未然に防いだことを知っているのは警察でもごく一部の人間だけだと聞いていたからだった。
だが、レインの表情を見る限り、彼女は何か勘違いをしてい……
「わたくしが、あの父の娘と知っても尚、変わらずわたくしに接してくださるなんて……」
やはり勘違いしていた。
アナスタシアの言葉に、
「やはり、よく理解してらっしゃらなかったのですね」
アンナは呆れた様子だった。
彼女からあの映像や4年前の出来事についての説明を簡単に受けたアナスタシアは、
「まぁ!まぁ!!まぁ!!!まぁ!!!!」
と、感嘆の声を漏らした。
どうやらふたりは本当に良い家柄の人達のようだ。
テレビやスマホなどを電力なしで一斉に起動させたエーテルの存在を知り、同じ県内の神喰村にある実家が所有するヘリコプターの迎えを近くの公園で待つつもりだということだった。
空に逃げ、空に留まり続けることで、アリステラが起こす災厄から逃れようと考えているようだった。
エレベーターが1階に着いたとき、
「世界を敵にまわしてでも愛する女性を守ろうとしただなんて、なんて素敵なお話ですの!!」
開くドアを前にアナスタシアは大きな瞳に涙をためて、ショウゴの手を取った。
「あの、着きました、よ? アナ……アナスタシア……さん?」
「アンナ! わたくし、こんな殿方とお付き合いしたいですわ!!」
「アナスタシア様、エレベーターが到着しましたよ」
「あ、あら、そう……残念ね」
アンナは一度開いたドアが閉じてしまわないように、開こうとするドアにもたれかかり、腕を組んでいた。怒っているように見えた。
「そ、それじゃあ、アナスタシアさん、アンナさん、失礼しますね」
ショウゴはいそいそとその場をあとにしようとした。同じマンションの階下の住人とはいえ、あまり関わってはいけない気がした。一言で言えば、変な人だった。
だが彼はその腕を、
「大和ショウゴさん」
再びアンナに名前を呼ばれ捕まれてしまった。
「どちらに行かれるおつもりか存じませんが、あなたを行かせるつもりは私はありません」
彼女は彼の腕に爪が食い込むほど強く掴んでいた。
「どうして? アンナ? どうして?
ショウゴさんはそのユワさんという方に瓜二つの女性の元へ向かうに違いありませんわ!
急いでらっしゃるのよ!! その手を離しなさい!!!」
アンナはアナスタシアに「できません」ときっぱりと断った。
「わたしの言うことが聞けないの!?」
「聞けません」
そして、「大和ショウゴさん」と三度、彼の名を呼んだ。
「あなたは、千のコスモの会をご存知ですね?」
それは、13年前に首相暗殺を企て、一条とタカミがそれを阻止したカルト教団の名前だったはずだ。
つい先ほど、その当時の首相が一体どんな人物であったのか、ショウゴとタカミは一条から聞かされたばかりだった。
随分タイムリーな話題だなと思った。
「ちょっと! アンナ!!
せっかくこんな素敵な殿方とお知り合いになれたのに、あなた一体何を言うつもり!?」
「こちらのお方は、戸籍上のご本名は朝倉麗音様。麗しい音と書いてレイン様とお読みします」
麗しい音、レイン、一年中雨が降り続けるこの街に、なんて相応しい名前だろうか。
だが、その苗字と名前にショウゴは聞き覚えがあった。つい先ほど聞いたばかりのような気さえした。
「アナスタシア様というお名前は、この世界を創造した劣悪で傲慢な神とは異なり、正しき千の宇宙(コスモ)を創造された善なる至高神(アイコーン)の化身であるレイン様のお父上、朝倉現人(あさくら あらひと)様から頂かれたコスモネーム」
やはりそうか、とショウゴは思った。
「あぁ、なんてこと! ひどいわ、アンナ!! ひどい! ひどい! ひどいひどい!!」
悲痛な声を上げて泣くアナスタシア=朝倉レインは、千のコスモの会の教祖にして、当時の首相暗殺を指示した死刑囚、朝倉現人の四女だった。
「それが、俺と何か関係があるんですか?」
ショウゴが平静を装おい答えると、レインの顔がぱぁっと開けた。
彼がそうしたのは、千のコスモの会についてもまた、小久保ハルミや千年細胞についてと同じで、首相暗殺テロ未遂事件が起きた当時、彼はまだ幼く、よくは知らなかったからだ。
それに、彼と共に暮らすタカミが、一条と共に千のコスモの会による首相暗殺テロを未然に防いだことを知っているのは警察でもごく一部の人間だけだと聞いていたからだった。
だが、レインの表情を見る限り、彼女は何か勘違いをしてい……
「わたくしが、あの父の娘と知っても尚、変わらずわたくしに接してくださるなんて……」
やはり勘違いしていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる