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第5章 第4話
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鳳アンナは語った。
「小久保女史による千年細胞発見の報道がなされた際、非常にお喜びになられておりました」
これで目的に一歩近づいた、と教祖様はそのとき信者たちの前で言ったという。
小久保ハルミを「我が同士」とも表現していたらしい。
彼女はカルト教団と繋がりがあったということだろうか。
一条に見捨てられた後の彼女ならまだわかる気がしたが、千年細胞の発見時のふたりは、まだ疎遠になっていた頃のはずだ。
教祖の言う「目的」というのもよくわからなかった。
カルト教団の教祖が考えそうな目的と言えば、テロによる国家転覆や、世界中に信者を増やすことによる世界支配、昭和の特撮ヒーローに出てくる悪の秘密結社のようなイメージしかなかった。
「我が教祖はその後、小久保女史の研究が闇に葬られるようになると、一部の愚かな権力者たちが千年細胞を独占しようとしている、と仰いました」
その話は、一条やタカミから聞いた小久保ハルミと千年細胞についての話と一致していた。
アンナによれば、教祖様は「千里眼」をお持ちだったという。
千里眼、ね。憶測や想像、あるいは妄想が、偶然現実と一致しただけだろうと思ったが、ショウゴは口にはしなかった。
「その者たちが、我々の目的を邪魔している、と仰られたのです」
千里眼によって、その権力者たちの、つまりは暗殺対象者のリストが作られたという。
そして、「予知能力」によって、そのリストの誰がどこで誰と何をしているのか、何月何日何時何分何秒に暗殺可能なタイミングがあるかの詳細が語られた。
そこから幹部たちが計画を立て、信者たちによりテロが実行されたという。
おそらくタカミはそのリストや計画書を手に入れたのだろう。
そして、一条ら公安の刑事たちが暗殺テロを未然に防いだ、そういうことだろう。
ではなぜ、教祖様はお得意の千里眼や予知能力で、テロが未遂に終わることがわからなかったのだろうか。
「シンギュラリティによる邪魔が入った、と教祖は仰られていました」
シンギュラリティ、つまりは特異点か。
教祖様はライトノベルやアニメがお好きだったんだろうか。もっとも教祖様であるということ自体が、こじらせすぎた中二病の証拠なのかもしれない。
「我が教祖の千里眼や予知能力では見えない、予知できないイレギュラーな存在が警察関係者にいたために、テロは未遂に終わってしまった、と」
馬鹿馬鹿しい、苦しい言い訳だとショウゴは思ったが、ふとあることに気づいた。
今、アンナに心を読まれなかったか?
千里眼や予知能力でテロが未遂に終わることがわからなかったのか、というショウゴが抱いた疑問を彼は口にはしていなかった。
だが、その疑問に対し、アンナはシンギュラリティによる邪魔が入った、と返答したのだ。
「ええ、読んでいます、ずっと」
やはり読まれていた。
どうやら彼女はただ者ではなさそうだった。
--あなたにもできるはずでは?
ショウゴもまた彼女の心が読めた。
そして、それは彼女がはじめてというわけではなかった。
二時間ほど前に、一条を相手にしたとき、彼の心の声がずっと聞こえていた。
だから勝てた。
彼の拳銃のセーフティロックがかかったままであることなど、あれらはたまたまの幸運が重なった結果ではなく、彼の心が読めたからだったということか。
「そうですか。先ほどから気になってはいましたが、やはり一条刑事が来ているのですね」
しまった、と思った。思ってからもう一度しまった、と思った。読まれる。読まれてしまう。
「ご心配なく。一条刑事に私が何かするつもりはありませんから」
ショウゴは心から安堵した。
「アンナ? 何のお話しですか? わたくしも混ぜてくださいな」
疎外感を感じたのか、アナスタシアが割って入ってきたが、
「アナスタシア様、わたしは今大和さんと大切な話をしているのです。少しだけ我慢してくださいますか」
アンナに冷たくあしらわれたアナスタシアは、「は~~い」と不満そうに唇を尖らせて、彼女の隣で「青いイナズマが~」と、なぜかSMAPの歌のサビを口ずさんだ。
どうやら相当に自由奔放な人らしい。この人の面倒を見るのは骨が折れそうだった。大体あんた世代的に嵐かもっと若いグループだろ。
あと、ピストルの形にした指をショウゴに向けて「ゲッチュー」とパキュンと撃ったその顔が、なんというかもう、やたらかわいかった。何この生き物。
--ユワさんに言いつけますよ?
--はい、すみません。
ショウゴはアンナに心の声で釘を刺されてしまった。
「小久保女史による千年細胞発見の報道がなされた際、非常にお喜びになられておりました」
これで目的に一歩近づいた、と教祖様はそのとき信者たちの前で言ったという。
小久保ハルミを「我が同士」とも表現していたらしい。
彼女はカルト教団と繋がりがあったということだろうか。
一条に見捨てられた後の彼女ならまだわかる気がしたが、千年細胞の発見時のふたりは、まだ疎遠になっていた頃のはずだ。
教祖の言う「目的」というのもよくわからなかった。
カルト教団の教祖が考えそうな目的と言えば、テロによる国家転覆や、世界中に信者を増やすことによる世界支配、昭和の特撮ヒーローに出てくる悪の秘密結社のようなイメージしかなかった。
「我が教祖はその後、小久保女史の研究が闇に葬られるようになると、一部の愚かな権力者たちが千年細胞を独占しようとしている、と仰いました」
その話は、一条やタカミから聞いた小久保ハルミと千年細胞についての話と一致していた。
アンナによれば、教祖様は「千里眼」をお持ちだったという。
千里眼、ね。憶測や想像、あるいは妄想が、偶然現実と一致しただけだろうと思ったが、ショウゴは口にはしなかった。
「その者たちが、我々の目的を邪魔している、と仰られたのです」
千里眼によって、その権力者たちの、つまりは暗殺対象者のリストが作られたという。
そして、「予知能力」によって、そのリストの誰がどこで誰と何をしているのか、何月何日何時何分何秒に暗殺可能なタイミングがあるかの詳細が語られた。
そこから幹部たちが計画を立て、信者たちによりテロが実行されたという。
おそらくタカミはそのリストや計画書を手に入れたのだろう。
そして、一条ら公安の刑事たちが暗殺テロを未然に防いだ、そういうことだろう。
ではなぜ、教祖様はお得意の千里眼や予知能力で、テロが未遂に終わることがわからなかったのだろうか。
「シンギュラリティによる邪魔が入った、と教祖は仰られていました」
シンギュラリティ、つまりは特異点か。
教祖様はライトノベルやアニメがお好きだったんだろうか。もっとも教祖様であるということ自体が、こじらせすぎた中二病の証拠なのかもしれない。
「我が教祖の千里眼や予知能力では見えない、予知できないイレギュラーな存在が警察関係者にいたために、テロは未遂に終わってしまった、と」
馬鹿馬鹿しい、苦しい言い訳だとショウゴは思ったが、ふとあることに気づいた。
今、アンナに心を読まれなかったか?
千里眼や予知能力でテロが未遂に終わることがわからなかったのか、というショウゴが抱いた疑問を彼は口にはしていなかった。
だが、その疑問に対し、アンナはシンギュラリティによる邪魔が入った、と返答したのだ。
「ええ、読んでいます、ずっと」
やはり読まれていた。
どうやら彼女はただ者ではなさそうだった。
--あなたにもできるはずでは?
ショウゴもまた彼女の心が読めた。
そして、それは彼女がはじめてというわけではなかった。
二時間ほど前に、一条を相手にしたとき、彼の心の声がずっと聞こえていた。
だから勝てた。
彼の拳銃のセーフティロックがかかったままであることなど、あれらはたまたまの幸運が重なった結果ではなく、彼の心が読めたからだったということか。
「そうですか。先ほどから気になってはいましたが、やはり一条刑事が来ているのですね」
しまった、と思った。思ってからもう一度しまった、と思った。読まれる。読まれてしまう。
「ご心配なく。一条刑事に私が何かするつもりはありませんから」
ショウゴは心から安堵した。
「アンナ? 何のお話しですか? わたくしも混ぜてくださいな」
疎外感を感じたのか、アナスタシアが割って入ってきたが、
「アナスタシア様、わたしは今大和さんと大切な話をしているのです。少しだけ我慢してくださいますか」
アンナに冷たくあしらわれたアナスタシアは、「は~~い」と不満そうに唇を尖らせて、彼女の隣で「青いイナズマが~」と、なぜかSMAPの歌のサビを口ずさんだ。
どうやら相当に自由奔放な人らしい。この人の面倒を見るのは骨が折れそうだった。大体あんた世代的に嵐かもっと若いグループだろ。
あと、ピストルの形にした指をショウゴに向けて「ゲッチュー」とパキュンと撃ったその顔が、なんというかもう、やたらかわいかった。何この生き物。
--ユワさんに言いつけますよ?
--はい、すみません。
ショウゴはアンナに心の声で釘を刺されてしまった。
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