ひとりの少女を守るために70億の命を犠牲になんてできないから、ひとりの少女を犠牲にしてみた結果、事態がさらに悪化した件。

あめの みかな

文字の大きさ
41 / 123

第5章 第6話

しおりを挟む
「私は、我が教祖には実際のところ何の力もなかったのではないかと考えているのです」

「大丈夫なんですか? お隣に教祖様の娘さんがいらっしゃいますが」

「あ、全然大丈夫です。アナスタシア様のことはお気になさらず」

 不思議なふたりだな、とショウゴは思った。
 従者に明らかに馬鹿にされている(雑に扱われている?)というのに、アナスタシアは怒りもせず、にこにことただ笑っているだけだ。
 よほどの信頼関係がなければ、こんな風には簡単にはなれないだろう。

「我が教祖が天啓のように授かったという千里眼や未来予知は、別の能力者が見たものを、まるで本当に天からの啓示であるかのようにして、我が教祖に錯覚させ見せていただけではないのかと思うのです」

「だから、コントロールすることができなかった?」

 そうです、とアンナは答えた。

「潜在意識の増幅もまた同じだったのではないのかと」

「アンナさんは、どうしてそう思うのですか?」

「警察に逮捕されるまでの間しか、教団の施設内にいる間だけにしか、天啓は我が教祖には授けられなかったからです」

 教祖様には自分が逮捕されることも、裁判で死刑判決が出ることもまた予知できなかったのだという。
 死刑判決こそ出たものの、あまりに罪状が多すぎるため、生きている間にすべての裁判が終わることはないだろう、事実上の終身刑だと、面会に訪れたアナスタシアたちや弁護士と話していたらしいが、ある日突然法務大臣が死刑執行のサインをした。
 それもまた予知できないまま、死刑が執行されてしまったのだそうだ。

「潜在意識の増幅もまた、逮捕前までしかその能力が発動することはありませんでした。
 警察や検察の取り調べはともかく、裁判には多くの傍聴人や信者たちが集まり、拘置所には多くの犯罪者たちや教団幹部らがいたというのに」

 確かに妙な話だった。
 教祖様はおそらくお前はもう用済みだと天から言われているようなお気持ちだったことだろう。

「我が教祖は、他者の肉体への憑依を行うことも過去に何度もあったのですが」

「やべー能力だな」

 そのチートすぎる能力が使えていれば死刑執行から逃れることも出来ただろう。
 朝倉現人という肉体だけを死刑にし、自称ではあるが至高神の化身であるその魂、あるいは精神を、死刑執行人や看守などに憑依させ、次々と肉体を乗り換えていくことで死を超越した存在になることも出来たはずだった。
 だが、出来なかった。他の死刑囚と同様に死刑が執行されてしまった。至高神の化身なのに。

「ですから私は、我が教祖の力はすべて、我が教祖が自ら行っていると信者たちに思わせ、警察やマスコミ、そして国民すべてに、千のコスモの会がカルト教団であると思わせたかった何者か、シンギュラリティによって、神の神業であるかのように仕組まれたものであったのではないかと考えているのです」

 だとすれば、教祖様とは別に千のコスモの会の信者を意のままに操っていた人物がいたということになる。
 その人物が、ひとりの少女を犠牲にすれば、70億の人間の命が助かると世界中に信じこませたのだとしたら。

「私たちとあなたには共通の敵がいるということになるのではありませんか?」

「そういうことになりますね。
 でも、なぜ雨野タカミではなく俺に?」

 それを話したのか、アンナの考えがよくわからなかった。
 タカミの方が教団についても事件についても詳しく理解が早かっただろう。

「彼は、テロを未然に防げたのは、自分のハッキングのおかげだと思っているのでしょう?」

 ハッキングに意味がなかったと知れば、タカミは自分のしたことは何だったのかと思うだろう。

「我が教祖を利用し、千のコスモの会をカルト教団に仕立て上げた能力者の存在を信じてはくれないでしょうね」

 タカミには、人の心を読むアンナの特殊能力さえ理解できない。
 教団の関係者の言葉なら尚更だ。

「それに彼は警察の関係者ですから」

 確かにそうだった。

 雨野タカミがシンギュラリティである可能性はゼロではないのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。  怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——  どれもがただの作り話かもしれない。  だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。  本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。  最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

処理中です...