​マイクロビキニアーマーの美少女勇者 対 アナルバイブ男爵 ―アジル・イマ戦記 勇者ラピスラズリの性受験英雄譚 学歴の頂、露出の果てに―

あめの みかな

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​第一話:『第一志望、魔王討伐(倍率:絶望)』

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​ その日は、抜けるような青空だった。

 アジル・イマなる神々の神話と、その教えを千年に渡り守り続ける大国『アルジュイエム』。
 その王都エデュカシオンの城下町は、年に一度の「選別の儀」を目前に控え、異様な緊張感に包まれていた。だが、宿屋『合格屋』の娘である私、ラピスラズリ――愛称・瑠璃には、そんな国家の行事よりも、山積みの洗濯物と、先ほどから厨房で騒いでいる酔客の相手の方が重要だった。

​「瑠璃! 王城から使いの騎士様が来てるわよ! あんた、何か悪いことでもしたんじゃないでしょうね!?」

​ 母さんの叫び声と同時に、宿屋の薄暗いエントランスに、銀色に輝く重甲冑を纏った騎士たちがなだれ込んできた。彼らの胸には、この国の支配の象徴である『十六弁の学位(ディグリー)』の紋章が刻まれている。
 騎士たちの先頭に立つのは、宮内庁の管理官――織部だった。彼は冷徹な瞳で私を射抜き、一通の羊皮紙を突きつけた。

​「ラピスラズリ。貴殿を、次代の『聖受験勇者』に選定する。……これは内定ではない。強制召喚だ」

​「……はぁ? 勇者? おじさん、人違いじゃない? 私はただの宿屋の娘で、偏差値だって平均以下よ?」

​「関係ない。貴殿の家系には、太古の昔から『羞恥心を物理エネルギーに変換する』特殊な因果律が組み込まれている。……先代の勇者が、アナルバイブ男爵に敗れた今、この国を救えるのは、貴殿の持つ『純潔なるバグ』だけなのだ」

「アナル…バイブ……?」

「そうだ、アナルバイブ男爵だ……どうかしたか?」

「どうもこうも、なんてはしたない名前の男爵なの!? 恥ずかしくないの!?」

「貴殿は何を言っておるのだ? まるでアナルバイブが卑猥なもののように聞こえるが?」

「卑猥だよ! 16歳の女の子には刺激が強すぎるんだけど!?」

​ 強引に城へと連行された私は、豪華絢爛な謁見の間で、さらに信じられない光景を目にすることになった。
 玉座に座る国王の足元。そこにある黄金の台座に捧げられていたのは、伝説の聖遺物――『王授剣(おじゅけん)』。
 そして、その横に置かれた、……あまりにも、あまりにも「小さすぎる」装備。

​「……あの、王様。……これ、何ですか? 蝶々の飾り?」

​「違うぞ、勇者よ。それが我が国の国宝ーー『マイクロビキニアーマー・ラピスラズリ』だ」

​ 国王は厳かに告げた。
 それは、数センチの布地を細い金鎖で繋ぎ合わせただけの、衣類と呼ぶにはあまりに冒涜的な造形物だった。

​「先代の勇者は、長年の戦いによってビキニアーマーの姿に『慣れて』しまった。……羞恥心を失った彼女の防御力は、偏差値三〇以下の紙装甲へと成り下がり、男爵の放つ『学歴ハラスメント』の前に散った。……勇者よ、このマイクロビキニを纏い、その剥き出しの肌に受ける視線を、羞恥という名の絶対障壁(フィールド)に変えるのだ!」

​ 私は、逃げ出したかった。
 だが、窓の外に目をやると、街の至る所で「魔物」たちが暴れていた。
 それは、アナルバイブ男爵によって、剣や魔法ではなく科学が発展した異世界から転生させられた、元・浪人生たちの成れの果て――スライムやゴブリンたちだ。
 彼らは虚ろな目で「センター試験が……」とか「赤本が足りない……」とか意味のわからないことを呻きながら、罪のない市民を襲っている。

​「……わかったわよ。やればいいんでしょ、やれば!」

​ 別室で着替えを済ませ、姿見の前に立った瞬間、私は自分の選択を激しく後悔した。
 鏡に映っているのは、勇者などではない。どこからどう見ても、公序良俗に反するサキュバス。あるいは、異世界にあるというテレビというやつの深夜のバラエティ番組でもボカシが入るレベルの露出狂。

 胸元は金鎖が食い込み、下腹部は三角形の小さな布が申し訳程度に隠しているだけ。一歩動くたびに、鎖がチリチリと鳴り、肌を冷たい空気が撫でる。

​「う、うぅ……。死にたい。誰にも見られたくない……っ!」

​ その瞬間、私の身体から、目も眩むような「紫色のオーラ」が溢れ出した。
 これこそが、羞恥心駆動型(シャイネス・ドライブ)の真骨頂。恥ずかしければ恥ずかしいほど、私の周囲には、異世界にあるという核シェルターさえ凌駕する絶対防御の幕が展開されるのだ。

​「おお……! なんという神々しい(はしたない)姿だ!」

「流石は勇者。その絶望的なまでの露出、これぞまさに『偏差値八〇』の防御力!」

​ 謁見の間の騎士たちが、一斉に私に視線を注ぐ。その不躾な、あるいは感嘆に満ちた視線が突き刺さるたびに、私の羞恥心は臨界点を超え、防御オーラはさらに巨大化していく。

​ 私は王授剣を手にし、城のバルコニーから街へと飛び出した。
 
 最初に出会ったのは、三匹の『浪人生ゴブリン』だった。彼らは折れた鉛筆を武器に、逃げ遅れた少女を追い詰めていた。

「キケケ……! お前も、不合格にしてやる! 偏差値の底へ堕ちろ!」

​「――そこまでよ! あんたたちの『不合格通知(悪事)』も、ここまでだわ!」

​ 私が上空から降り立つと、ゴブリンたちは一瞬、動きを止めた。
 そして次の瞬間、彼らは顔を真っ赤にし、泡を吹いて叫び始めた。

​「な……なんだ、あのサキュバスは!? 教育環境に悪すぎる!」

「はしたない! 風紀の乱れだ! P.T.A.を呼べ!」

​「うるさいわね! 私だって、好きでこんな格好してるんじゃないわよ!」

​ 私は、羞恥の怒りに任せて剣を振るった。
 
 ――『冥門顎昂(めいもんがっこう)』!!
 
 私の顎から放たれた暗黒の光が、空間を歪ませ、ゴブリンたちの逃げ場を塞ぐ。
 剣を振るったのに、その光は顎から出た。

「え? この剣、何か意味あるの!?」

 彼らが放つ、暗い「不合格」の怨念の弾丸は、私のマイクロビキニから発生する「見ないで!」というオーラによって、触れることさえできずに霧散していく。

​「消えなさい! そして、次はちゃんと勉強して、いい大学に入りなさい!」

​ 王授剣の閃光が、ゴブリンたちを浄化した。
 彼らは消滅する間際、なぜか穏やかな表情を浮かべ、「ああ……予備校の、自習室が……見える……」と呟いて、光の中に消えていった。

​ 私は、ハァハァと息を切らしながら、剣を収めた。
 周囲には、私の姿を見て凍りついたままの市民たちが大勢いた。
 
「……見、見ないで! 本当に、見ないでったら!」

​ 私は顔を真っ赤にしながら、次の戦場へと走り出した。

 それは、世界を救うための旅路。
 そして同時に、より過激な「ナノビキニ」へと追い詰められていく、果てなき羞恥の螺旋の始まりだった。

 今、ここにあるのは、布面積数センチの布に全てを懸けた、一人の少女の「合格」への戦いだけなのだから。

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