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第10話 冒険者になって初仕事でやらかした
しおりを挟む冒険者になって最初の朝だ。
今日はかなり早く起きた。
さっさと、BランクのクエストクリアしてSSランクを目指す。
とりあえず風呂入って、飯食ってウェグリアに行こう。
〈空間転移〉
これマジで便利だな。
昨日と同じ門をくぐり組合へ向かう。まだ昼前だが、市場も組合内も人で賑わっていた。
「とりあえずBランクの魔獣討伐でも受けてさっさとクリアしてしまおう。」
これでいいか。Bランク:クリムゾンウルフの討伐か
どんな魔獣か、全く分からんがまあなんとかなるだろ!余裕だろ!
クエストの紙を外し、受付まで持っていく。
「これ!お願いしまーす!」
「はい。ありが………え?これを1人で受けるのですか?!」
「そうですが…。何か問題でも?」
「いえ。そもそもあるランクの魔獣を倒す為には同じランクの冒険者が最低3人必要という目安がありまして……。カイアスさんは昨日、Bランクに仮で合格しておりますので、オススメは出来ません。他のAやBランクのチームに入れてもらってのクエストクリアでも正式にクリア扱いされますので………」
そうなのか。でも、他のパーティーに加わるのは嫌だし、邪魔にしかならない。
「私もそう思うよー。〈服従〉のスキルに仲間がいると巻き込まれるし、そうならない為に命令を複雑にしなくちゃいけない!面倒だ!面倒だ!」
あー起きたのね。それにちゃんと前後の会話も聞いてる。意外としっかりしてるね
「大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。でも、俺のスキルはパーティーには向いていないので、1人で行けます。」
受付の女性は納得いってないようだが、渋々了承してくれた。
「で、ではご武運を!危なくなったらすぐに帰ってきて下さいね?」
いい人だなぁー。スキルがあるだけでこんなに優しくなるのか、この世界は!
「おい!何ニヤついてんだ。バカイアス!!女なら私がいるだろ!私が!」
いや。あなた魔神ですし。会話だけで直接会えないし
「な、なんだと?今日の夜覚えておけよ!」
無視無視
さあ、このクリムゾンウルフというのはどこにいるんだ。クエストの詳細には……。
えーと。魔獣の渓谷の底…か……。
どこ?!
門番の人に聞くか。
「すいません。あの道を聞きたいのですが。魔獣の渓谷とはどこにあるのでしょう?」
大柄な門番が教えてくれる。
「あーそれならここから北西に数キロ行った先だよ。大きな渓谷だからすぐに分かると思うよ?冒険者かい?気をつけてな。あそこはAランク級の魔獣も出たりするらしいからね」
「ありがとうございます。気をつけます。」
ルーヴェルの門番と違ってここの人は優しいなぁー
また街から少し離れた所で、スキルを使う。
〈浮遊〉
これも便利だわ!マジで!
山越も空飛んでるから関係ないし、歩く必要もないから疲れない
あれが、渓谷か。結構デカいな。
長さ1kmはあるだろうか?それに幅も広い。
それに底の方に魔獣がウロウロしている。
さてと、クリムゾンウルフっていうと狼みたいなもんかな?
写真があるので見ながら空を飛ぶ。
うん!見つからない!
面倒になってきたから、一網打尽にしてしまおう。
「来い。セーレ 50%」
「はいはーい呼ばれましたー」
やる気ない感じだなー
渓谷の底に着地する。当然、魔獣たちに囲まれる。
この冒険者カードというのは特殊なスキル持ちが作成しているらしく、その者が討伐した魔獣を記録してくれるそうだ。
これで冒険者は最悪、素材を持ち帰らなくてもいいし、組合は嘘を見抜ける。
「さてと、やるか。声大きめでいこうかな?
………命ずる 魔獣共よ!殺し合え!!」
グオオオオオ!ガアアアアア!!
そこら中で地獄絵図だ!
魔獣同士が殺し合いを始めた。同じ種族の魔獣同士でさえ殺し合っている。
いやー楽だ!俺は寝ながら空浮いてるだけでいいんだから
ピコンッ!
ちなみにクエストクリアすると冒険者カードからクエスト達成の知らせがくる。
よしこれで終わり!
素材はスキルでいつでも作れるし要らないか!このままでいいやー!
〈空間転移〉
そうして結局どれがクリムゾンウルフなのかよく分かってないままウェグリア冒険者組合まで戻ってきた。
「受付のお姉さん!終わりました。確認をお願いします!」
「へ??もう終わったんですか?あれから3時間しか経ってないですよ?」
やべ。帰りは空間転移だった。誤魔化さないと!
「それは!運良く渓谷に着いたら目の前にクリムゾンウルフ?がいて速攻で分解して帰ってきました!」
「そ、そうですか…。まあ、無事ならそれでいいです。冒険者カードを確認させていただきますね?」
「はい!お願いしまーす!」
受付のお姉さんに冒険者カードを渡す。そのカードを機械にスキャンして討伐記録を確認出来るらしい。
「え?!えええええええ!?」
お姉さんが物凄く叫ぶ
「「「なんだなんだ?どうした!」」」
みんなが集まってくる。やめてくれ!今はまだ目立ちたくない!
「カ、カイアスさん!これはどういう事ですか?!」
「何がでしょう?」
「あなたの冒険者カードの討伐記録にクリムゾンウルフはもちろん他にもBランクの魔獣やAランクの魔獣、それに………それに!Sランクのサラマンダーもあります。冒険者カードの偽造は不可能です。どうやって1人で!
3時間で!これだけの魔獣を討伐出来たのですか?」
あーこれはやらかしたか?やらかしてるな?
そこに畳み掛けるように男がギルドに駆け込んだ。
「大変だー。今!今!魔獣の渓谷から戻った冒険者達の話だが、Sランクパーティーがサラマンダー討伐の為に、出陣したが既に誰かに狩られていて、しかもその周りにも大量の魔獣の死骸があったそうだ!
しかも素材もそのまま放置だそうだ!!これは魔王の再臨かもしれないとSランク冒険者が話していたぞ!!」
全員の目線が俺に集まる……
完全にやってしまった。どうしよ……
ええい!もうどうなっても知らん!
「みんな聞いてくれ!俺のスキルは〈破砕〉といって触れた物を全て粉々に出来るというものなんだ!だが、長い訓練のおかげでスキルが進化したんだ。〈破砕〉を直接触れていなくても伝達できるようになったんだ。
しかし!まだ慣れてなくて。出力を誤ってしまい大量に殺戮してしまったんだ!これだけの素材は持って帰れないから置いて帰ったんだ!すまない!」
シーーーン
ダメか?流石に誤魔化せないか
「「「「おおおおーーー」」」」
歓声が上がる。いけたか!!
「カイアスさん!凄いです!この魔獣の討伐記録ならこのままAランクへの昇格も確実でしょう!飛び級がないのが残念です。でもサラマンダーを討伐するなんて凄い快挙です!
36人目のSSランクに最年少で到達するかもしれませんね!」
すいません!サラマンダー見てないです!どんな奴ですか??
とりあえず冒険者になって初日でAランクになった。討伐報酬が金貨で1500枚くらい貰えた。帝都の高級ホテルですら豪華食事付きの1ヶ月宿泊で金貨5枚くらいだそうだ。
お金の価値分からなくなってきた。
もういいや。森に帰ろう。金は、後で考えよう。もう疲れた。こんなにいい意味の注目を浴びるのは初めてで異様に疲れた。帰ろ……
応援ありがとうございます!
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