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第18話 〈大天使〉のスキルを持つ者

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 スキル


〈大天使〉
 


これが意味するのは、もはや明白だ


俺と同じ意思を持つスキル
それに大天使
魔神と対角に位置する存在。


「カイアス!今、その子にスキルを開花させるな!!」

セーレが叫ぶ。


俺の状態が只事ではないと、デュランも察知したのか、フィーナに話す。


「フィーナ。スキルの開花は周囲にどんな影響を及ぼすか分からない
 それに聞いたことがないスキルだと、今この人が多い中で開花させるとどうなるか分からない。開花は少し待とう」


フィーナも慌ててシルフィーに話す。


「そうですね!シルフィーちゃん貴方にはちゃんとスキルがあります。ただスキル解放時は、周囲に対して何か影響を及ぼしてしまうかもしれないので、後日安全な場所で開花させましょう!」


 シルフィーは残念そうな顔をしている。
 無理もないか、ドロップアウトじゃなくなるかもしれないのに、それが延期されたんだ。


落ち込むだろう。


 しかし、ここでスキルを開花させると
俺はこの子を殺さないといけなくなってしまうかもしれない。

セーレも反応している。


 既に復讐する為に行動している俺が人の道など語れたものではないが、こんな少女を手にかけるなんて事はしたくない


その日は一旦解散した。


スキル開花の方法。その天使の名前をいう…


俺のスキルは唯一無二のものではなかったのか?



「いや?そういう訳ではないよ?魔神、つまり神をスキルとしている者と天使とでは訳が違う。ただ開花の時に側にいるのはマズいと思ってねぇ」



 なあ?もしかするとドロップアウトと言われているスキルが開花しない者たちは全員そうした意思を持つスキル持ちなのだろうか?


「それは知らないよ まだドロップアウトでスキルが特殊だったのは、あんたたち2人だけだ。これだけじゃなんの判断もできないねぇ」



そうか…


ドロップアウトに関して謎は深まるばかりだ

 俺が考え込んでいるとデュランが話す。


「カイアス様。宿泊所に着きました。明日からはまた白虎の情報を聞きましょう。私は隣の部屋におりますので、御用の時は呼んでください」


「分かった。今日はありがとう」


デュランは頭を下げて自分の部屋に帰っていった。

スキルの事もシルフィーの事も聞いてこない。やはり俺に気を使ってくれているのだろう。

自分で〈服従〉させておいてあれだが、いい配下を持った。


俺も食事に風呂を済ませ、ベッドに入る

その夜の事だった。

「カイアス!起きな!!」


なんだよ?セーレ

窓の外は少し明るい
まだ夜明けじゃないか…どうしたんだ?


「おそらくスキルが開花したのさ!あの子、何かしたんだ!」


あの子って?

その時、部屋の扉が開き、デュランが入ってくる。


「カイアス様。突然の無礼をお許し下さい。緊急事態です。外を見て下さい!!」


え?なに?


俺は窓を開けて外を見る。
 明るかったのは、夜明けではない。
 街の奥、住居が集中するエリアが白い光に包まれている。


「なんだ?あれ?」


「カイアス様!私を街に向かわせて下さい!!SSランクとしてこの街は守らないと!」


「ああ!行け!原因を突き止めろ!」


返事をしてデュランは勢いよく飛び出す。

 ここは俺が初めて冒険者になり、人と触れ合えた街だ。この国は嫌いだが、この街は嫌いじゃない!

俺も向かおう。だが、目立たないようにだ。

〈破砕〉だけでは太刀打ち出来ないかもしれない。

「セーレ。50%だ!来い!」

「はいよー!だけど、カイアス。これ以上の出力を出してはいけないよ?この前のように反動が来てしまうからね?」

分かってる。
昨日、キリガネから買った防具も装着する。こんな時だが、やっぱりいい装備だ


〈服従〉〈浮遊〉〈透明〉


俺も空から姿を消して光の場所に向かう。

そういえば、セーレが気になることを言っていた。

あの子………と

「シルフィー?」

スキルがあると知って開花の方法を色々試したのか?
スキル開花前には必ず兆候がある。

夢の内容でも思い出し、口にしたのか?
それとも全く関係ない者の仕業か?

どちらにしても問題だ

光が発生している場所に辿り着いた。
既にデュランがいた。

〈透過〉解除

「デュラン!何があった?」

「カイアス様!その姿を見せて良いのですか?それは秘密のはずでは?」

「今は緊急事態だからやむを得ん。それよりこの光は?」


近くだと本当に眩しい。


「分かりません。しかし光源になったであろう家は吹き飛んでいます。夜なのもあって人通りはない為、怪我人などは不明です。既に組合の冒険者が周辺の住民を避難させたようです。」


そうか。仕事が早い。住民がいないならこの姿でも、問題ないだろう…


その時だった。


「デュラン様!」

この声は、アルフレッド?!

しまった!光に気を取られて接近に気付かなかった。


「あれ?カイ……アスさん?その姿…は?」


デュランが話を遮る。


「アルフレッド!今は気にするな!それより何故ここにいる?」


アルフは我に帰ったように話す。


「そうだ!この家、僕たちの家なんです。シルフィーが落ち込んでたので、以前楽しそうに話していた夢の話を思い出して話したんです。そうしたら何かを呟いた瞬間に光が。
 その後、吹き飛ばされたんです。僕はたまたま近くのテントに落下したので怪我はなかったですが、シルフィーが光の中に!」


やはりこの光はシルフィーか


そして光の中からシルフィーが姿を現す


「どう…したんだよ?なんだよ?その姿は!シルフィー!」



アルフが叫ぶ。


しかし声は届いていないようだ


シルフィーは俺と同じにように変化していた。

背中に4枚の天使の翼を持ち、金色の髪はフワフワと浮いている。頭上には光の輪がある。目は赤色だ。服装は白色のコートのような物に身を包んでいる。


アルフはシルフィーを呼び続けている。


するとシルフィーが動いた。こちらを指差している。
なんだ?なにをするつもりだ?


そして指先から光の弾丸が放たれた。

「え?」

その光は真っ直ぐアルフの頭部を貫いた
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