呼び出された異世界は戦争絶えない世界でした〜人類の旗の元に集う戦友たちは銃を取って立ち上がる〜

酒井 曳野

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第1章 その男、世界に降り立つ

第23話

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23話



――10分後、全員が集合した。


「集まったな?今、君たちが装備しているのが標準軍装だ。重さは20kgくらいで、これを身につけたまま走ったり、泳いだり、銃で敵を狙い撃つ事が出来るか?厳しいと思うなら辞退しろ。辞退は恥ではない」

「何言ってんだ?隊長。これくらい楽勝だろ」

「そうですね。特に問題はないです」

「いつも持ってる岩の方が重いですね!!」

「これ着心地がいいですね!あと黒色っていうのかカッコいいです!!」

 ウィリアムやイワンは心配してなかったが、ルナやステラも心配なさそうだ。レアに至っては飛び跳ねてる。体力的には全員問題ないだろう。

 次にHK416に装着してあるサイトは全員初めてだろうから説明をする。要は狙いやすくなる道具だ。カービンの扱いは、ここにいる全員分かっている。レアが少し不安だが……。

「これからドワーフの戦闘艦へ行く。本当に最後だが辞退しても大丈夫だぞ?」

「今更、何を!さっさと行って技術と素材を持って帰りましょうや!」

「あのクソドワーフ共には苦しめられましたからね。誰も生かしませんよ?」

「あとここに残るリリーたちにも伝えておきたい事があるんだ」

「な、なんだ?遺言とかなら絶対に聞かんぞ?」

「いや……万が一、敵と戦闘状態になった時のことに備えてだよ。もし戦闘になったらこれを投げる」

 俺は2種類の発煙手榴弾を取り出した。周囲にみんながこれを見つめる。

「これは?」

「発煙手榴弾だよ。これを投げると結構な量の煙が立ち昇るんだ。これが赤色でこっちが緑色の煙が出てくる。もし戦闘になって、こちらと敵の位置がハッキリしているならこれを投げる。
 敵の位置に赤色を、こちら側の位置には緑色って具合にな。だからリリーたちが援軍として駆け付ける状況になったら赤色の方を警戒しながら緑色の煙のところに合流する事を目指してくれ……いや、そこはリリーの判断に任せるよ。
 挟み撃ちにした方がいいって事もあるからな。とりあえず臨機応変に対応していこう」

「りょ、了解した」
 
 今回の任務はあくまで偵察だが、他にもやるべき事がある。技術の回収ともう1つはドワーフの生き残りの殲滅だ。もし生き残りを見逃して洞窟の存在を知られるのが1番ダメだ。だから捕虜も取らない、命乞いを受けても容赦しない。

 確実に死ぬまで銃撃をやめない。しかし、サイレンサーを今回は装着出来ていない。狭いと思われる艦内でサイレンサーなどを付けてしまったら取り回しが出来なくなる。

 もっと拳銃や短機関銃の訓練が出来れば問題ないかもしれない。ルナやステラたち女性陣には短機関銃の方が良かったかもしれないが、訓練が出来ていない。ここで敢えて訓練時間の少ない小銃を渡す意味はない。
 
 さらにここで訓練として期間を開けてしまうと生き残りがいた場合、とりあえずの避難として岩山に徒歩で接近されたら1発で俺たちの存在がバレる。
 日が経てば経つほど生き残りが行動を開始する可能性も高くなる。だからカービンに関してはサイレンサーなしで行くしかない。

 だから出来る限りの発砲は控えないといけないが、自分たち以外の動く存在は撃てと指示する。拳銃にサイレンサーを取り付ける事も考えたが、そもそも室内ではサイレンサーの消音機能はあまり意味がない。

「ここでは俺たち以外は全て敵だ。敵は全て排除する。俺たちが安心して暮らすために……行くぞ!」

「「「了解!!」」」

 そして俺たちは戦闘艦が墜落した場所から最も近い出入り口から外へ出る。相変わらず空は真っ黒な雲で覆われている。まだ夕方にもなっていないのに夜明け前のようだ。

 雨上がりだから地面が濡れている。気温は肌寒いくらいだ。日本でいう10月くらいかな。

 小隊は俺とレアを先頭に、周囲を警戒しながら進む。俺たちが外に出ると同時に入り口は閉められた。

 ドワーフの戦闘艦はここから見ると思ったより近くにあった。直線距離で約3km程度だ。だから本当に危ない。なぜなら戦闘艦からでもこちらの位置が見えるし、最悪高角砲が生きていれば余裕で砲撃される。

 本当に目がいい者や、双眼鏡などの技術があればこちらの入り口が分かるほどの距離だ。

 戦闘艦までは徒歩で30分ほどの距離ですぐに到着する。以前のエルフの時とは比べ物にならない緊張だ。初の近距離での実戦。敵の人数や位置、個人の装備も全く分からない。

「もうすぐ着くぞ。レア、何か違和感は?」 

「特にないです。……逆に静かすぎるっすね」

「分かった。中に入っても散開せずに行動する。顔を見られないようにマスクの準備もしておけよ?」

 全員が頷く。極力、音を出さない様にする。会話も最低限だ。ハンドサインとか決めておけば良かったが時間もないし地球の軍隊のハンドサインもあっちにエルフ!とか種族を表すものはない。

「あそこから入るぞ?」

 墜落した戦闘艦のすぐに横に到着した。雨のおかげで焦げ臭い匂いはあるが、完全に鎮火したようだ。今の所はレアも反応していない。

 戦闘艦は原形は留めていてもあちこち亀裂がある。本来ならどこから入る方が安全とか倒壊の危険性とか考慮するんだろうが、今はあまり時間もない。

 この問題は早く片付けないといけない。時間の経過は人類の危機へと繋がる。見える範囲で一際大きな亀裂から内部に突入する。

 まずここで俺は驚いた。

「明かりがある?電気があるのか?」

 蛍光灯の様なものがある。形が球体だから電球だな。

「電気……ですか?私たちのランタンと似ているような……でも明るさが違いますね」

「そうだ。いつかこれを洞窟に置きたいと思ってる」

「そう……ですか。でもこれが光ってるのがマズいんですか?」

「そうだ。まだ電力が生きているという事は生存者がいるかもしれない。より一層警戒が必要だ。行くぞ?」

「「了解」」

 内部の造りは地球の軍艦にかなり近い物だと思う。乗った事がないから映像の記憶でしかないが。材質は鉄か?触っただけじゃ分からないが、かなり硬い物質で出来ている。

 天井や壁には配管が張り巡らせてあり小窓もある。事故の際に人1人がギリギリ通れる幅だ。少し小さい気もするがドワーフなら通れる感じか?

「この扉は………水密扉か?」

「すいみつ…とびら?」

「ああ。なあこの船って海にもあるのか?」

 俺はルナに小声で問いかける。会話は最低限だが、確認しなければならないものは確認する。

「そう聞いています。実際に見た事はありませんが……」

「分かった」

 まさかここまで似るなんて。これはもう似ているだけで済ましていいのか?いや、人類が作り上げた軍艦も効率性や安全性を考え、進歩した技術によって最適化された姿だ。身体の形が似ているのなら、装備も同じような形へと向かっていくのだろう。

「……成瀬さん」

 ゆっくりと先頭を進む俺の肩に突然レアが手を置いた。全員がその場で停止、緊張が走る。

 
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