hide and see

あき

文字の大きさ
上 下
22 / 26
嫌いな先生

5

しおりを挟む
「平方、俺お前のこと気になるんだけど」

結論そんなことにたどり着いた。
色々と適当な会話をしていたら急に先生がそう言った。いくらの僕でもぽかんと口を開けて思考が停止するのも仕方ないことだと思う。何言ってんだと、口調が荒くなりかける。

「気になるとは?」

抑えて抑えて出た言葉はなんと素っ頓狂なものだっただろうか。

「そのままの意味。平方、お前さ俺が嫌いかって聞いた時関わりたくは無いって返しただろ?俺それがずっと気になっててさ。」

そう言いながら先生は手元のお茶をグイッと口に含んだ。緊張。それが伝わってきた。

「平方はさ高校の時の俺に似てるんだ。だから、気になるのかと思っていたんだが違うらしいと気づいてな。」

そう言って乾いた笑いを零しながらまたお茶を口に含むと今度はゆっくりと目を閉じて床を見つめた。と言うよりも、机の端ぐらいのところを見つめていたと思う。

「自慢じゃないんだが、俺は人に好かれる方だと思う。確かに嫌われることもあったけどそれはだいたい女関係だった。それで……平方に嫌われている理由を考えたんだが分からなくてそれで「気になったんですか?」

「あぁ。そういうことだ」

顔を上げることの無い先生のつむじをじっと見つめる。綺麗な右回りのつむじだ。なんとなく押したくなるようなそんな綺麗さ。もう寝れないほど気になって気になって呼んだのかそれとも、戸惑いと興味から呼んだのか。どうやら日詰先生は僕の理由を知りたいらしい。別にそんな大層な理由もないのに。

「別にそんな深い意味は無いですよ。ただ、センセーが父さんに似てるから出来れば関わりたくないってだけですよ。別に特別な理由はありません」

そう言えば、日詰先生はぴくりと体を揺らしてゆっくりと顔を上げた。なにか言いたそうな表情と、気まづそうな表情を浮かべて。

「な、仲が悪いのか?」

「いえ、仲は悪くありませんよ。」

だから、困るのだ。仲悪くないから。喧嘩さえもしたことないのだから困るのだ。


雨がポツポツと地面を黒色に染めたと思ったら一気にザーとバケツをひっくり返したかのように降ってきた。地面は真っ黒になって水溜まりを作る。

ほら。
やっぱり大雨になった。

もうどうせなら濁さずに言ってやろう。
何故か知らない間に先生を酷く傷つけたくなった。多分、日詰先生ならそれを許してくれる気がした。


「センセー、やっぱり訂正します。俺はあなたの事が嫌いです」



しおりを挟む

処理中です...